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心理的リアクタンスとは?意味や具体例とともに理論的背景や実験、対策法について解説

小学生のころ、保護者に「宿題をやりなさい!」と言われ、ますます宿題がやりたくなくなって反抗してしまったという経験は多くの方がしたことがあるでしょう。

心理学的にはこのような反応のことを心理的リアクタンスと呼びます。それでは、心理的リアクタンスとはどのような意味があるのでしょうか。その具体例や理論的背景、心理学実験に加え、対策法についてもご紹介します。

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心理的リアクタンスとは

心理的リアクタンスとはブレーム,Jによって提唱された概念です。

心理的リアクタンスの意味と具体例

心理的リアクタンスは、説得状況において反発する反応のことを指します。

そして、この概念での主題は、「個人の自由とその自由に対する侵害との対決に関する心理的過程」であるということです。

これだけでは何のことかわからないため、具体例を挙げてみましょう。

Aさんは商社に勤めるサラリーマンで、結婚し奥さんと子どもと暮らしています。

仕事も順調ですが、最近昇進したことで業務量も増え、残業により帰宅時間が遅くなることも増えてきました。

休日は友達と趣味のマージャンをするために、朝から一日中出かけていることが多く、家で過ごすことはほとんどありません。

1週間の仕事を終え、休日を迎えたある朝、奥さんから「今日もマージャンに行くんでしょ?子どもの友達が家に遊びに来て忙しいから、出かけるなら早くして」と言われました。

するとAさんは「あぁ」とあいまいな返事だけを残し、リビングのソファで普段は見ることのないニュース番組をダラダラと見始めました。

いつもならありえない行動に奥さんは混乱し、その後2人は口論してしまいました。

 

心理的リアクタンスの理論

一見すると上述した具体例は単なる夫婦喧嘩のようにも見えますが、この時Aさんの心の中にはどのようなことが起こっていたのでしょうか。

心理的リアクタンスの理論に基づいて考えていきましょう。

まず、心理的リアクタンスとは、個人の持つ自由に対する侵害によって喚起される、自由を回復する方向に動機づけられた状況のことを指します。

そして、心理的リアクタンスの理論において扱う自由とは、客観的現実としての自由ではなく、あくまで主観的な自由であるということです。

例えば上記の例でいうならば、Aさんは次のような自由を持っています。

  1. マージャンをする自由としない自由
  2. テレビを見ながらだらだらする自由としない自由

これに対し、奥さんの「今日もマージャンに出かけるだろうから、早く行って」という旨の発言は、Aさんの「1.マージャンをしない自由」そして「2.テレビを見ながらだらだらする自由」を侵害していると言えます。

そのため、Aさんの心の中では自由を侵害されたことに対する反発が無意識的に起こり、普段は家で滅多にすることのないテレビをだらだらと見ながらマージャンに出かけないという行動をとったのです。

心理的リアクタンス理論における自由の概念

心理的リアクタンス理論においては、一言で自由と言っても、2種類の要素から構成されたものになっています。

  1. 自由の実感:望むままに行動をとることができるという実感
  2. 行動の自由:外から観察可能な行動に加え、思考や意思決定のような内面反応も含む「行動」を実行するだけの能力と、それが行動をとる本人にとって許容できるものであるかという認識

そして、この自由は「自由が存在するという知識」、「自由を行使する権利」、「自由が保持される強度」、「絶対的な自由と条件付きの自由」という4つの性質を備えています。

【自由の性質】

  • 自由が存在するという知識:自分がある行動を行うことができるという知識
  • 自由を行使する能力:ある行動を実行するための能力を自分は備えているという認識
  • 自由が保持される強度:上記の知識・能力を持っているという認識の確信の度合い
  • 絶対的な自由と条件付きの自由:ある行動がまったくもって制約を受けるのか、それともある程度の制約の中で行使される権利が認められているのか

自由の侵害の形態

上記のような自由に行われる行動を侵害することには、いくつかのパターンがあるとされています。

ブレームは「削除-脅威」・「恣意的-偶発的」の2軸から4タイプの自由の侵害の分類を行いました。

  • 自由の削除:自由が取り返しのつかない形で失われたことを指す
  • 自由の脅威:自由の維持が脅かされている状況を指す
  • 恣意的侵害:自由を奪おうとする圧力が意図的に向けられている場合を指す
  • 偶発的侵害:あるでき事により、たまたま自由が侵害されてしまった状況を指す

これらの掛け合わせによって、

  1. 恣意的削除
  2. 偶発的削除
  3. 恣意的脅威
  4. 偶発的脅威

の4パターンの自由の侵害の形態が存在します。

心理的リアクタンスの個人差や強さに影響する要因

しかし、何か自由を侵害されたとしても、それが直ちに反発心へと変わるとは限りません。

人によってはAさんのように「マージャンに行ってくれば?」と言われれば、「それもそうだな」と同意する人もいるでしょう。

そのような、心理的リアクタンスの個人差や強さに関連する要因としてはどのようなものがあるのでしょうか。

自由への期待度・重要性

先行研究で指摘されているものとしては、「自由への期待度」と「自由の重要度」という2つの変数が関わっていることが指摘されています。

例えば、仕事に行かなくてはいけないという当たり前の状況が分かっていれば、自由に家で過ごすことの自由が侵害されていてもそれほど心理的な反発は生まれないはずです。

これは、「仕事をしている平日は自由に過ごすことができる」という期待が低いからでしょう。

また、犬を散歩に連れていくという本人にとってそれほど重要ではない自由が侵害された場合も、反発は生じにくいはずです。そもそもそれほど重要ではないことができなくなったとしても本人が困らないためです。

このように、心理的リアクタンスの喚起及びその反発の強さは、「自由への期待度」と「自由の重要度」という2つの要因を掛け合わせた交互作用によって決定されると考えられています。

コミュニケーションの圧力

説得的コミュニケーション研究では、相手に特定の立場をとるように押し付けたり、同意を示すように強要することは逆効果であり、むしろ抵抗や反発を生んでしまうことが指摘されています。

このようなコミュニケーションにおける圧力は心理的リアクタンスとどのような関連をするのでしょうか。

心理的リアクタンス理論における説得的コミュニケーションは、態度の自由への脅威に該当するします。

なお、このような態度の自由への脅威には、自分と同じ立場をとるよう強要する「順態度的脅威」と、今とは真逆の立場をとるように強要する「反態度的脅威」の2種類に分けることができ、順態度的脅威のほうがリアクタンスを引き起こしやすいことが指摘されています。

リアクタンス特性

心理的リアクタンスの生じやすさについては個人差があることが分かっています。

高本ら(2005)は、そのような個人差を測定するリアクタンス特性尺度の開発を試みました。

作成されたリアクタンス特性尺度は全23項目、4因子から構成され、それぞれの下位因子は次のようになっています。

【リアクタンス特性尺度】

  1. 直接的な自由回復の行使:他者からの行動の制約に対する自由の回復を目指す
  2. 意思決定の自由:自由への干渉に対する感情的反発や抵抗
  3. 感情的反発:他者からの影響に対し、内的な反発を示す
  4. 脅威の感受性:他者の干渉や規則に対する認知

このようなリアクタンス特性の高い人は、自由を侵害するような説得に対し過敏に反応しやすいと考えられます。

心理的リアクタンスへの対策

心理的リアクタンスに影響を与える要因をみてきましたが、それでは、相手を説得したい場合に心理的リアクタンスが生じないようにするには、どのような対策を取れば良いのでしょうか。

ユーモア

説得に関する研究では、ユーモアは説得効果を促進すると考えられてきました。

その理由としては、ユーモアの使用によってメッセージの受け手の感情にポジティブな影響をもたらすこと、ユーモアの内容に注意が向き、反論を考える思考過程を邪魔し、ユーモアを言う相手のことを肯定的に捉える効果があるためとされています。

牧野(2000)は、ユーモアを呈示した実験群と呈示を行わない統制群の間で生じる心理的リアクタンスの違いについて検討を行いました。

その結果、ユーモアを呈示した実験群は心理的リアクタンスの喚起が低かったという結果が示されました。

つまり、ユーモアは心理的リアクタンスの喚起を抑制する効果があるというのです。

なお、ユーモアには洒落や言葉遊びなどの遊戯的ユーモアと風刺や皮肉などの攻撃的ユーモアの2つがありますが、どちらにおいても心理的リアクタンスの喚起が抑えられることが確認されています。

心理的リアクタンスについて学べる本

心理的リアクタンスについて学べる本をまとめました。

社会心理学パースペクティブ (1)

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社会心理学の分野で説得の研究は精力的に行われてきましたが、そのような自由を侵害する他者からの働きかけに関する抵抗としての心理的リアクタンスが取り上げられた本書により、説得に関する心理学理論も含め学習してみるのはいかがでしょうか。

説得におけるリアクタンス効果の研究―自由侵害の社会心理学

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心理的リアクタンスは相手への反発であり、自分の欲求を主張する程度と大きな関連を持っています。

そのため、海外に比べ、自己主張が控えめな日本においては心理的リアクタンスの喚起が海外の研究と同様に起こるとは限らず、日本でも追試や文化差を考慮した研究が求められます。

そのため、日本の心理的リアクタンス研究において代表的な今城周造先生の書かれた本書は必読の一冊となるでしょう。

円滑な対人関係構築のために

心理的リアクタンスは個人差はあれ、誰にでも起こりうる現象です。

相手が自分の発言に対し、反発し怒りだしてしまったとしたらそれは心理的リアクタンスかもしれません。

そのような場合、相手のどのような自由を侵害してしまったのかを考えることができれば大事な人間関係も壊れることなく仲直りができるでしょう。

ぜひ、今後も心理的リアクタンスの理論について学びを深めましょう。

参考文献

  • 深田博己(1996)『心理的リアクタンス理論(1)』広島大学教育学部紀要 第一部 心理学 (45), 35-44
  • 高本雪子・吉見恒平・深田博己(2005)『リアクタンス特性尺度の検討』広島大学心理学研究 (5), 51-68, 2005
  • 牧野幸志(2000)『心理的リアクタンスに及ぼすユーモアの効果』高松大学紀要 (34), 43-52

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    • この記事を書いた人

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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