均衡化とは?意味や具体例をピアジェの発達理論に基づいて解説

2022-01-22

今回は心理学における「均衡化」の概念について紹介します。一般的に、均衡とは釣り合いやバランスがとれた状態のことを指します。

私たちは新しいものを知るとき、驚きや困惑が生じて認知が不均衡な状態に生じますが、既に知っていることを修正したり、新しい見方を手に入れたりしてバランスを取り、均衡な状態に戻していきます。

心理学者であるピアジェは、このような過程を「均衡化」と表し、この均衡化によって認知機能が発達していくと考えました。今回は、均衡化が進む過程について具体例を挙げながら整理していきます。

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(ピアジェの発達理論における)均衡化とは

均衡化(きんこうか)

とは、スイスの心理学者であるピアジェ(Piaget)による認知発達理論(認知発達段階説)において用いられた概念です。

ピアジェの理論によると、人は外界の事象を認識するための枠組みである「シェマ」を持っており、外界の事象を自己のシェマに取り入れる「同化」と、外界の事象に自己のシェマを修正する「調節」によって外界を理解しています。

そして、この同化や調節を繰り返す過程を「均衡化」と言います。均衡化によって、シェマを広げたり、高度なシェマを獲得することができるようになり、認知機能が発達していくと考えられています。

「同化」とは

外界の事象や結果を自己のシェマに取り入れることを指します。同化によって自身の持っているシェマに新しい知識が加わり、シェマを豊かにすることができます。

例えば、りんごに対して「赤くて丸い」シェマを持っている状態で初めてりんごを食べたとき、自身のりんごに対するシェマに「甘い」という知識が取り入れられることを同化と言います。

「調節」とは

外界の事象や結果に自己のシェマを変容させることを指します。持っているシェマでは矛盾が生じて同化できない際に、既存のシェマを調節することで認知的なバランスを取っており、シェマを広げることができます。

例えば、りんごに対して「赤くて丸い」というシェマを持っている状態で、青りんごと出会い、これもりんごであると教わります。

しかし、既存のシェマではりんごは赤いものであり、矛盾が生じてしまうため「赤くないりんごも存在する」という内容にシェマを修正することで理解しようとする働きを調節と言います。

※「シェマ」「同化」「調節」についてはこちらの記事でも解説しておりますのでご参照ください。

シェマの同化・調節・均衡化の例

シェマの同化・調節、均衡化について具体例を挙げながら整理していきます。

例えば、子どもが水槽で泳いでいる金魚を見たとき、それは魚という生き物だと教わります。すると、子どもは魚に対して、水中で泳ぐ生き物というシェマを獲得します。

しかし、水族館でイルカが泳いでいる様子を見たとき、水中を泳ぐ生き物なのでイルカを魚であると認識しますが、イルカは魚ではないと教わります。このとき、水中を泳ぐ生き物は魚だというシェマが存在しているため、水中を泳いでいるのに魚ではないと認識することに矛盾が生じます。

そこで、水中を泳ぐ生物が必ずしも魚ではないと魚に対するシェマを修正することで理解しようとし、この過程を調節と呼びます。それ以降は、魚に対するシェマが修正されているため、水中を泳いでいるクジラも魚ではないと教わってもスムーズに認識することができるようになります。

加えて、魚は卵から産まれるが、イルカは赤ちゃんとして産まれることを教わります。これによって、魚に対するシェマに、水中を泳ぐこと以外にも卵から産まれることが付け加えられ、この過程を同化と言います。

その後も、魚はエラ呼吸であるなど魚の特徴や様々な生物の分類を教わる中で、魚(や他の生物)に対するシェマへの同化や調節を繰り返し、シェマが高度になっていく過程を均衡化と表します。

教育場面における均衡化

例えば、教育場面においても同化・調節・均衡化のプロセスは役立てられます。

人が新しいものを学習する際、既に持っているシェマを手掛かりとして、そこに新たな情報を取り込んでシェマに同化させたり、既存の情報を修正してシェマを調節したりすることを理解しようとします。

そのため、新しいことを教える際には、既に持っているシェマを意識しておくことが肝要となり、まだ知らない事項を既に持っているシェマに関連付けて教えることで、シェマの同化や調節を図り、シェマを高次な水準へと変容させ学習を促進させることが考えられます。

均衡化について学べる本

最後に、均衡化を含めたピアジェの発達理論について詳しく学ぶ上で参考になる書籍を紹介します。

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内容及び表現が難解なところはありますが、ピアジェの原著であり、ピアジェの理論に関して詳しく学びたい方にはおすすめできます。

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こちらもピアジェによる著書であり、ピアジェの発達理論が解説されている一冊です。文庫サイズであり、コンパクトにまとめられています。

均衡化とは少しずつ外界のことを理解していくプロセス

シェマ

同化調節を繰り返す「均衡化」によって認知機能が発達していく過程を説明してきました。

ピアジェの発達理論は乳幼児の発達の色合いが強いですが、どの時期においても新しい環境や出来事と出会い続ける中、均衡化を通じて外界のことを理解していき世界を広げているとも考えられます。

参考文献

  • 無藤 隆・岡本 祐子・大坪 治彦 編集(2009)『よくわかる発達心理学』ミネルヴァ書房
  • 藤崎 亜由子・羽野 ゆつ子・渋谷 郁子・網谷 綾香  編集(2019)『あなたと生きる発達心理学: 子どもの世界を発見する保育のおもしろさを求めて』ナカニシヤ出版
  • 日下正一 著(1985)『ジャン・ピアジェの「均衡化」概念について(3)』長野大学紀要6(4) 122-10

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    • この記事を書いた人

    blue_horizon

    民間企業在職中に心理カウンセラーを志し、心理学を学び始める。臨床心理士指定大学院卒業後は、司法及び産業領域の心理職として稼働。公認心理師・臨床心理士。

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