サクセスフル・エイジングとは?その意味や理論モデルをわかりやすく解説

2022-08-05

後期高齢者が増えることが予想されている現代社会では、高齢者がどのように生きるのかということが大きな課題となっています。

後期高齢化社会の現状改善策として大きな注目を集めているのが、サクセスフル・エイジングという概念です。それではサクセスフル・エイジングとはいったいどのようなものなのでしょうか。その意味や理論モデルをわかりやすく解説していきます。

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サクセスフル・エイジングとは

後期高齢者がこれからどんどん増えてくる現代社会では、平均寿命がとても長くなっています。

しかし、その伸びた寿命の期間をよりよく過ごす健康寿命との乖離は深刻な問題となっており、いかに老年期を健康に、いきいきと過ごすのかということが非常に重要です。

そこで今注目されているのがサクセスフル・エイジングという概念なのです。

サクセスフル・エイジングの意味

それではサクセスフル・エイジングとはいったいどのような意味なのでしょうか。

代表的なものとしては次のような定義が挙げられます。

【代表的なサクセスフル・エイジングの定義】

  • 年齢による喪失を最小限に食い止めながら、肯定的な分野拡大の方法を見出し、人生に納得し満足して過ごしているプロセス
  • 加齢に伴う資源の減衰にうまく適応し、残された期間の人生を全うすることのできる状態

老年期は身体的衰え、退職などライフスタイルの変化による人間関係の変化、認知的機能の減衰などそれまでは生活で当たり前であった様々な資源が減ってくる時期です。

そのため、自身に残された資源をより有効に活用するスキルを身に着けることこそが、老年期をいきいきと過ごすことへとつながるでしょう。

その際に注目すべき概念が世界保健機構(WHO)が提唱するライフスキルです。

【ライフスキルとは】

日常生活で生じる様々な問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対処するための能力。

具体的には次のようなスキルが挙げられる。

  1. 意思決定と問題解決
  2. 批判的思考と創造的思考
  3. コミュニケーションと対人関係
  4. 自己認識と共感
  5. ストレスと感情への対処

このような適切なライフスキルの獲得は社会で聞きていくために必要なソーシャルスキルやコーピング、自己効力感などを高める「社会で生きる術」であると考えられています。

つまり、老年期をいきいきと過ごすサクセスフル・エイジングの達成のカギを握っているのは、いかに豊かなライフスキルを備えているかということになるでしょう。

サクセスフル・エイジングと関連する理論モデル

サクセスフル・エイジングは様々な学問領域から注目されている概念です。

今回は医学・社会学・心理学の3領域から、サクセスフル・エイジングをとらえようとする理論モデルを紹介します。

社会学におけるモデル

社会学における有名な理論としては、活動理論が挙げられます。

この理論は1950年代に提唱されたもので、社会とのかかわりを重視した社会学におけるモデルの1つです。

名前にもあるように、高齢者には若者と同じような心理・社会的ニーズが備わっているという前提に立ち、退職など活動から引退させようとする社会からの要請に抗い、これまでと同じように活動することがサクセスフルであるという立場をとります。

また、この理論への反証として離脱理論というものも唱えられています。

これは活動理論とは正反対に、若者へと世代交代していく社会システムがあるという前提に立ち、そのような社会からの離脱を受け入れる高齢者をサクセスフルであるとするのです。

医学におけるモデル

医学における代表的なサクセスフル・エイジングのモデルは、1990年代にロウとカーンによって提唱されました。

このモデルでは次のような要因を満たしている場合をサクセスフルであるととらえます。

  • 疾患に罹患していない
  • 機能に障害がない
  • 社会参加している

加齢は、代謝の低下、機能の衰えなどから疾患への罹患リスクを高めます。

しかし、多くの場合、不適切な生活習慣などの積み重ねなど人為的なリスク要因が疾患の発症率に大きくかかわっており、このような要因は制御可能です。

そのため、上記のような病気にかかるリスクの少なく、高い機能を維持できている状態をサクセスフルであると考えるのです。

心理学におけるモデル

心理学的観点からは成長・発達という観点から良好な心理状態をサクセスフルであるとするSOC理論(選択的最適化補償理論)が提唱されています。

この理論では、次のような要素から最適な状態が構成されるとしています。

  • 自己受容
  • 人生の意味
  • 環境制御
  • 人間的成長
  • 自律性
  • 肯定的人間関係

そして、サクセスフルな状態に至るためには、衰えゆく資源を有効に活用する「最適化」や必要に応じて外部に助けを求める「補償」、そもそも実現可能な目標を選びなおす「選択」などの手段を用いて、最適な状態を目指すという理論がSOC理論の特徴なのです。

サクセスフル・エイジングについて学べる本

サクセスフル・エイジングについて学べる本をまとめました。

初学者の方でも読み進めやすい入門書をまとめてみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみてください。

サクセスフル・エイジング しあわせな老いを迎える心理学

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高齢化の進む現代社会では、サクセスフル・エイジングは避けられない問いとなります。

ぜひ本書から幸せな老いを迎えるために必要なことを学びましょう。

サクセスフル・エイジング:予防医学・健康科学・コミュニティから考えるQOLの向上

サクセスフル・エイジングを考えるうえで幸福感を高める心理学理論はもちろんですが、身体の健康そして、コミュニティとのかかわりという視点を排除することはできません。

ぜひ本書で、新たな視点からサクセスフル・エイジングを見てみましょう。

老年期をよりよく過ごすために

後期高齢化社会となりつつある現代では、老年期の生活の質(QOL)をどのようにして高めるのかということが大きな課題となっています。

サクセスフル・エイジングを学ぶと、そのヒントが得られるでしょう。

ぜひこれからもサクセスフル・エイジングについて詳しく学んでいきましょう。

【参考文献】

  • 杉澤秀博(2015)『豊かな生き方、豊かな社会を考える サクセスフル・エイジングとは何か : 高齢期の生き方のモデル』たばこ総合研究センター 編 (476) 12-17
  • 加藤克彦・矢澤美香子(2021)『企業人の健康で幸せな老後のために : サクセスフルエイジングへの提言』武蔵野大学心理臨床センター紀要 21 33-43
  • 山本真由美(2014)『サクセスフル・エイジングと高齢期の発達課題「老年的超越」 』徳島大学人間科学研究 22 1-9

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    • この記事を書いた人

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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