新生児微笑とは?いつまで続く?社会的微笑との違いや自閉症との関連も解説

2022-09-22

赤ちゃんの見せる微笑みは非常に可愛らしく、癒される人も多いはずです。

しかし、このような生まれたばかりの赤ちゃんはなぜ笑うのでしょうか。今回は新生児微笑を取り上げ、社会的微笑との違いやいつまで続くのか、自閉症と関連があるのかについてわかりやすく解説していきます。

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新生児微笑とは

新生児微笑とは、主に新生児期にみられる微笑みのような表情であり、外的刺激とは関係なしに口角が横に引き上げられる表情のことを指します。

新生児期に特徴的にみられるため、新生児微笑と呼ばれますがそのほかにも様々な呼び方で表現されることも特徴です。

【新生児微笑の呼称】

  • 自発的微笑
  • 内因性微笑
  • 生理的微笑
  • 天使のほほえみ
  • 虫笑い

新生児はなぜ笑う?

それではなぜ、新生児微笑は生じるのでしょうか。

実は新生児微笑は睡眠と深い関連があることが指摘されています。

新生児だけでなく、私たちは寝ている間、2種類の睡眠を繰り返しています。

  • REM睡眠:Rapid-Eye-Movementの略で、睡眠中に高速の眼球運動がみられる浅い眠り
  • NonREM睡眠:眼球運動の見られない深い眠り

このうち、浅い眠りであるREM睡眠中やうとうととまどろんでいるときに新生児微笑はよく観察されることが知られており、生後半年頃までの新生児を観察した研究ではREM睡眠中10分あたり平均2階程度の新生児微笑がみられるという報告もあります。

私たちは何か面白いことがあった時、親しい相手と会ったとき、相手に良い印象を与えたい時などに笑顔という表情を示します。

確かに新生児微笑は気持ちよさそうに寝ているときにみられる現象であるため「心地よさ」のような快の状態を表す表情のように思えますが、いまだに新生児微笑が起こるときの内的な状態に関しては分かっておらず、何らかの快の情動を示す根拠は見つかっていません。

ただ、脳内メカニズムを調べた研究によれば、REM睡眠を調節する中枢である脳幹の活動によって生じる生理的な反射である可能性が高いという報告からも、私たちの普段の笑顔と新生児微笑は大きく異なるであろうことが伺えます。

新生児微笑はいつまでみられる?

新生児微笑は、新生児にみられる原始反射と近いものであるようにも考えることが出来ますが、いつごろから見られ、いつごろ消失するのでしょうか。

基本的に新生児微笑は生後数時間から数日という生後間もないころからみられる現象であることが大きな特徴です。

そして、生後4か月ごろまではREM睡眠中に頻繁にみられますが、次第に生起頻度は減少し、生後8か月ごろにはほとんど見られなくなるとされています。

なお、4次元超音波診断装置によって胎児の表情を分析した研究では、もっともはやい例で在児22週2日で新生児微笑が確認され、出産時よりも微笑の持続時間が長かったという報告もあるほどです。

新生児微笑と社会的微笑の違い

新生児微笑と比較される、乳幼児の「ほほえみ」としては社会的微笑が挙げられます。

社会的微笑とは

社会的微笑とは生後1~2か月ほどから見られ始める微笑みの表情です。社会的微笑は人の声や顔を知覚したときのみ見られる反応であり、明らかに特定の刺激に対する反応として観察されます

そのため、睡眠中の無意識的な生理反応に近い新生児微笑とは大きく異なると言えるでしょう。

なお、生後3か月ごろまでは誰に対しても微笑みを見せますが、生後8か月頃になると養育者など特定の人物にのみ笑顔を見せるようになります。

これは人物の認識ができていることの表れであり、安心できる人物を見分ける人見知りや愛着関係の始まりであるともとらえることが出来ます。

社会的微笑の種類

なお、社会的微笑は口角の上昇及び口開けの有無と頬の上昇の有無によって次の4種類に分類されます。

口開けなし口開けあり
頬の上昇なしSimple SmilePlay Smile
頬の上昇ありCheek-raise SmileBig Smile

このとき、口開けは母親を見つめている際に、頬の上昇は母親が微笑みかけているときにみられることが多く、異なる状況で生じる笑顔であるため、質的に異なることが指摘されています。

より詳細には、頬の上昇は快の情動を共有する(楽しいね、嬉しいねなど)際に見られ、口開けは遊びなどで情動的に興奮している状態を反映していると考えられています。

このように、新生児微笑と社会的微笑は質的に大きく異なるものであり、乳幼児は笑顔が分化していくことで、より社会性を帯びたコミュニケーションを身に着けていくのです。

新生児微笑と自閉症の関連

自閉症(自閉スペクトラム症)は、対人コミュニケーションや興味関心を示す対象の限定などにより社会適応に支障をきたす発達障害です。

これは生まれながらの脳機能の障害により生じるもので、不適切な養育によりしつけができていなかったり、愛情不足であるために生じるものではありません。

より幼いころに発達障害を発見し、早期のうちに適切な療育を行うことは必要ですが、新生児微笑は自閉症を見つけるためのポイントとなりうるのでしょうか。

結論から言えば、REM睡眠中にみられる新生児微笑と自閉症の明確な関連は指摘されていません。どちらかといえば、自閉症には社会的微笑のほうが関連すると考えられます。

自閉症の特徴

自閉症には次のような特徴があります。

【自閉症の特徴】

  • 社会的相互作用の障害:アイコンタクトなど非言語的なコミュニケーションが苦手
  • コミュニケーションの障害:言語的なコミュニケーションの障害
  • 想像性の障害:興味関心の幅が限局される

自閉症はアイコンタクトなどの非言語的なコミュニケーションが成立しなかったり、養育者に対して関心を示さないような特徴があります。

このことから、特定の人に対して注目し、笑いかけるような社会的微笑が成立しにくいと考えられています。

しかし、これにより診断を下せるわけではありません。赤ちゃんの発達には個人差も大きく、逆に社会的微笑が見られたからといって自閉症である可能性を除外はできないのです。

社会的微笑の出現が遅いと感じても、慌てず赤ちゃんを温かく見守りながら育てる姿勢が何よりも大切です。

新生児微笑について学べる本

新生児微笑について学べる本をまとめました。

初学者の方でも読み進めやすい入門書をまとめてみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみてください。

270動画でわかる赤ちゃんの発達地図: 胎児・新生児期から歩行するまでの発達のつながりが理解できる

新生児微笑は赤ちゃんの発達における1つの過程です。

ぜひ、新生児微笑に加え、乳幼児がどのような発達を遂げていくのか確認をしてみましょう。

児童精神医学にもとづく 乳幼児の発達障害「解体新書」

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新生児微笑など乳幼児期の発達に興味のある方は、子どもが発達障害であるかどうかに興味のある方も多いでしょう。

何よりも避けたいのは、発達障害かもしれないと不安になり、子どもを障害という目線で見るようになってしまうことです。

ぜひ本書を読んで、子どもの発達を落ち着いて見守れるよう知識を身につけましょう。

赤ちゃんのほほえみを楽しみながら見守りましょう

新生児微笑は子どもが発達するうえで必ず通るべき道です。

私たちが笑うときと状況は異なり、眠っているときの神経反射によって生じる現象ですが、この時に乳幼児をかわいいと感じ、愛情を注ぐ母親の情緒にあふれた接し方はその後の子どもの発達を大きく促進するものです。

赤ちゃんのほほえみを楽しみながら、その成長を見守ることがとても大切なのです。

【参考文献】

  • 松阪崇久(2013)『新生児・乳児の笑いの発達と進化』笑い学研究 20 (0), 17-31
  • 池田正人(2018)『乳児の自発的微笑と外発的・社会的微笑の質的な違い』笑い学研究 25 (0), 42-55
  • 村上太郎(2017)『乳幼児期の笑いの発達過程 :エピソード分類による手法を用いた検討』九州女子大学紀要 53 (2), 271-284

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    • この記事を書いた人

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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