発達の最近接領域とは?意味や活用例についてわかりやすく解説

2022-08-08

発達の最近接領域とは、ヴィゴツキーが提唱した理論であり、自力では難しいが、誰かのサポートをあればできることの領域を指します。

自力一人ででできることばかりに取り組んでいても効果的な成長や発達は望めず、この発達の最近接領域に取り組むことが成長・発達が促す上で重要であるとされています。

今回は、発達の最近接領域とは何か、関連概念や具体例を挙げながら整理していきます。

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発達の最近接領域(Zone of Proximal Development:ZPD)とは

発達の最近接領域とは、旧ソビエト連邦(ロシア)の心理学者であるヴィゴツキー(Vygotsky)によって提唱された理論です。英語ではZone of Proximal Development(ZPD)と表記されます。

発達の最近接領域とは、現時点で自力で課題を解決できる水準(現下の発達水準)と他者の助けを借りれば解決できる水準(潜在的発達水準)の差を指します。

つまり、既に一人でできることと、まだ自分ではできないことの間にある、一人ではできないけど、外部の助けがあればできる領域のことを指し、この領域での学習が効果的な成長・発達を促すことが期待されています。

ヴィゴツキーの発達理論では、子どもは他者との関わりを通じて発達を遂げると考えられており、できるようになるまで発達を待つのではなく、発達の最近接領域に対して働き掛けることが重要であると考えられています。

具体的には、現時点で解決できる内容より多少難しい課題を与えた上で、助言を与えたり、自分より高い発達水準にある仲間と協同して取り組ませたりすることで課題を達成させるプロセスとなります。

※ヴィゴツキーの発達理論については、こちらの記事も併せて参照してください

足場かけ(Scaffolding)と発達の最近接領域

足場かけとは、学習者の課題解決を促すために、周囲がどのようにサポートしていくかに関する理論であり、アメリカの心理学者のブルーナー(Bruner)らによって提唱されました。

足場かけは、周囲の働き掛けによって学習者が一人では解決できない高次の課題を遂行できるとの考えから、ヴィゴツキーの発達の最近接領域における援助の在り方について述べています。

足場と言えば、建築現場等で作業員の作業をサポートするために一時的に設置されるもので、建物が建設されると取り外されます。

ここで言う足場も同様で、学習者が一つ上のステップに行けるサポート(足場)を周囲は与え、自力ででできるようになれば学習者が自立できるように次第に足場を外していくプロセスを辿ります。

発達の最近接領域の活用

発達の最近接領域は、教育や保育の領域で活用されることが多いと言われています。

例えば、自力で解けるドリルの問題をたくさん解く学習と、教師が助言を与えながら難しい問題を1問解く学習を比較すると、発達の最近接領域の考え方に基づけば後者の方が効果が高いと考えらます。

そして、一人では解けなかった問題を教師からの助言を得て解くうちに、次第に助言がなくても自力で解けるようになっていき、学力が身に付いていきます。

そのほか、逆上がりを練習している子どもに対するサポートとして、足の蹴り上げはできているが、腰の回転がうまくできていないことが分かった場合を例に挙げてみます。

この場合、大人が子どもの腰に手を添え、腰の回し方のコツを身に付けさせることで、逆上がりを完成させるサポートをが考えられます。こうした大人のサポートによって達成可能な水準が発達の最近接領域と言えます。

肝要なのは、できないことの中からサポートがあればできるかもしれないことを抽出し、発達の最近接領域に対して適切なサポートを与えることにあります。周囲が過干渉に何でもやり過ぎると成長する機会が失われますし、放任し過ぎていると上のステップに辿り付けないことが懸念されます。

 発達の最近接領域について学べる本

最後に、発達の最近接領域を含めたヴィゴツキーの理論について詳しく学ぶ上で参考になる書籍を紹介します。

発達の最近接領域をはじめとした、ヴィゴツキーの発達理論を詳細にまとめられており、ヴィゴツキーの理論についての理解を深めることができる1冊と言えます。

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発達の最近接領域のほか、教育、言語や芸術など様々な視点からヴィゴツキーの理論について紹介されており、1冊でヴィゴツキーの理論の全体像が掴みやすい内容となっています。

現状把握によって発達の最近接領域を見極めること重要

一人では難しいけど、周囲のサポートがあればできるといった発達の最近接領域が成長・発達を促す上で効果的であることをお伝えしました。

重要となるのが、発達の最近接領域を見極めることです。どこまで一人で遂行することができ、誰かの協力があれば達成できる領域はどこまでなのか、学習者の現状を正しく把握することが必要です。

指導者と学習者がコミュニケーションを取りながら発達の最近接領域を捉え、周囲が適切なサポートを与えることで、学習者が自身の可能性を広げていき成長・発達を遂げていくことが期待されます。

参考文献

  • 無藤隆 森敏昭 遠藤由美 玉瀬耕治 著(2018)『心理学 新版 (New Liberal Arts Selection) 』有斐閣
  • 柴田義松 著(2006)『ヴィゴツキー入門』子どもの未来社

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    • この記事を書いた人

    blue_horizon

    民間企業在職中に心理カウンセラーを志し、心理学を学び始める。臨床心理士指定大学院卒業後は、司法及び産業領域の心理職として稼働。公認心理師・臨床心理士。

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