心理学の用語 発達・教育

前操作期とは?ピアジェの発達段階における位置付けや特徴を解説

今回は、前操作期という、あまり聞き慣れない用語について学びます。発達心理学者であるピアジェによる発達段階の1つです。映画「STAND BY ME ドラえもん2」に出てくる幼少期ののび太には、まさにこの前操作期にあたる幼児らしさが表れています。

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ピアジェによる認知発達理論

スイスの発達心理学者であるピアジェ(Piaget, J.)は、知能の発達を研究した人です。自分の3人の子供の観察及び実験から、子供の知能の発達は子供が能動的に周囲に働きかけることで、段階的に進んで行く事を明らかにしました(認知発達理論)。その段階は、次の4つからなっています。

①感覚運動期(0歳〜2歳頃)

②前操作期(2歳頃〜7歳頃)

③具体的操作期(7歳頃〜11歳頃)

④形式的操作期(11歳頃〜)

前操作期の読み方と定義

前操作期(preoperational period)の読み方は「ゼンソウサキ」です。

ピアジェの認知発達理論の2段階目で、表象の働きは発達しているもののまだ不十分な段階を指します。表象というのは、実際に目の前にないものを思い浮かべる事です。例えば、「みかんがあるけど、食べる?」と言われると、前操作期の幼児はみかんが目の前になくてもそれを思い浮かべ、「うん!」と返事ができるのです。

前操作期の特徴

前操作期の特徴を、2つの視点から見ていきましょう。1つは表象や象徴機能の発達、もう1つは自己中心性です。

表象や象徴機能の発達

表象は、目の前にない物を思い浮かべる事です。象徴機能は、ある物事を他の物事や記号などで表す事です。

記号の代表的なものとして言葉があります。前操作期ではこれらが未熟ではありながら発達してくるため、「見立てる」事や何かの「ふりをする」事ができるようになってきます。

自己中心性

私達は、自分が見ている世界と他の人が見ている世界が違う事を知っています。けれども前操作期の幼児は、自分から見えている世界に捉われ、それ以外の見え方を認識する事が苦手です。

このように、自分からの見え方に捉われたり特徴的な部分以外を無視する傾向を自己中心性と言います。

例えば、映画「STAND BY ME ドラえもん2」に出てくる前操作期ののび太は、冬なのに「花火を買って来て」とおばあちゃんにねだります。

おばあちゃんは町中の玩具屋さんを探しますがどこにも売っていません。そんなおばあちゃんに前操作期ののび太は「おばあちゃんなんかあっちへ行け!」と怒るのです。自己中心性がよく表れているシーンではないでしょうか。

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前操作期の子供の遊び

前操作期は見立てやふりができるようになることから、ふり遊び、ごっこ遊びをするようになります。みなさんも、テレビで見るヒーローになりきって戦ったり、本当の食べ物がなくてもおままごとをしていたのではないでしょうか。前操作期ののび太としずかちゃんも、おままごとをしていました。

前操作期の前半ではごっこ遊びをしていても、お互いの交流が少ない状態です。それが4歳頃からお互いのやりとりが増え、遊びの目的も明確になっていきます。

前操作期の子供に必要なこと

前操作期の特徴を説明してきました。ここでは、教育と看護という2つの側面から、前操作期の子供にとって必要なことを見てみましょう。

教育

ピアジェは、教育の目標は単に既存の知識を子供に覚えさせる事ではなく、創造的かつ主体的に問題に取り組む子供を育てる事と考えました。

この考え方に基づくと、前操作期の子供に対する教育においても、課題を子供自ら選び、その課題への取り組みを教師が見守るという事が好ましいと言えます。日本でも、モンテッソーリ教育を実践してしている園での教育が、ピアジェの理想に近いと考えられます。

就学前から、子供の意見を聞かずに親が決めた習い事をさせるよりも、子供が興味を持つ事を一緒に探索していく姿勢が大切と言えます。子供が1人でゲームをしているよりも、ごっこ遊びをできる機会を持たせてあげる事も必要でしょう。

看護

前操作期の幼児は、所謂インフォームド・コンセントの対象ではありません。手術や予防接種でも、親の同意があれば良い事になっています。とはいえ、子供自身が安心して医療を受けるために説明を受ける権利があります。

プレパレーションは、医療行為によるストレスを軽減させるための配慮です。これまで見てきた前操作期の特徴を考慮すると、どのようなプレパレーションが有効でしょうか。

見立て遊びやごっこ遊びを利用して、ぬいぐるみやおもちゃを使って治療で経験する事を事前に理解する事ができるでしょう。お医者さんごっこのできるおもちゃもあります。子供が自分のお人形におもちゃの注射をして、「痛くないよ」などと励ます光景も見る事があります。

ピアジェの発達理論について学べる本

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放送大学の教材です。発達心理学を初めて学ぶ人向けに書かれているので大変分かりやすいです。乳児期から老年期までを7つの段階に分けて説明してあり、ピアジェの発達理論についても各箇所で記載されています。

生涯発達心理学 認知・対人関係・自己から読み解く

発達は大人になって以降も続くという仮定の上で、子供から大人の発達までを解説しています。ピアジェの発達理論についても、実験例を取り上げながら分かりやすく説明がなされています。

想像力が育まれる前操作期

今回は、ピアジェの発達理論の2段階目に位置付けられる前操作期について学びました。

客観的に物事を見る能力がない代わりに、ごっこ遊びの世界に浸ったりぬいぐるみと会話が出来たり、豊かな想像の世界で生きる事ができる貴重な時期です。このような前操作期にある子供には、大人の論理的な思考を押し付けず、想像力を働かせて関わりたいものです。

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参考文献

向田久美子(2017) 「新訂 発達心理学概論」NHK出版

鈴木忠・飯牟礼悦子・滝口のぞみ(2016)「生涯発達心理学 認知・対人関係・自己から読み解く」有斐閣

斎藤法子(2018) 「ピアジェ教育とモンテエッソーリ教育 J.PIAGET 第22回夏季研修会会報誌」日本ピアジェ会

林裕子(2005) 「プレパレーションの実践に向けて 医療を受ける子どもへのかかわり方」岸本出版印刷

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    • この記事を書いた人

    こころ

     臨床心理学・実験心理学等を学んだ後、心理カウンセラーとして勤務。現在はライターとして活動中。

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