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社会的参照とは?視覚的断崖実験や大人に見られる行動を具体例と共に解説

社会的参照という言葉を聞いたことがありますか?気分をアゲたいから大人気YouTuberのフワちゃんの動画でも見ようかな、と思ったら、それはあなたが社会的参照を無意識に利用しているのかもしれません。社会的参照の意味、視覚的断崖実験、大人に見られる行動などを学んでいきます。

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社会的参照とは

社会的参照は元々は乳児の行動を説明する用語です。まずは基本的な意味や具体例を見ていきましょう。

社会的参照の意味

乳児が自分で判断できない状況にある時、他者の表情や声などを手掛かりとして、自分の行動を決めることを社会的参照と言います。

社会的参照には、①主体である乳児、②情報源である他者、③刺激となる状況の3つの存在が必要です。さらに、主体が他者に対して愛着などの情緒的信頼感を持っていること、刺激に対して直接行動する前に評価をする能力を持っていること、表情が意味する評価を理解していること、などの条件も必要です。

社会的参照の具体例

社会的参照は、どのような場面で見られるでしょうか。

母親に抱っこされている乳児が、外で初めて犬を見たとします。大きくて見たことのない生き物が近づいてきます。乳児は母親の顔を見ると、母親は「可愛いワンワンだね」と言って微笑んでいます。このような母親の反応を見た乳児は、安心して犬を見ていられるでしょう。

反対に、母親が「怖いね」と言って抱っこする手に力が入ったなら、乳児はどうでしょう?怖くて泣き出してしまうかもしれません。

このように、自分が判断できない状況に遭遇した時に、信頼できる相手の反応を手がかりとすることが社会的参照です。

社会的参照の発達的意義・役割

社会的参照の発達的意義と役割を3つの点から見ていきます。

知識の獲得

社会的参照を行わないとしたら、子供が知識を獲得するために、自分の力でトライアンドエラーを繰り返さなければなりません。知識の乏しい子供が大人と同じだけの知識を吸収していくには、膨大な時間がかかってしまうでしょう。

また、犬に咬まれて初めて「犬は咬むものだ」と認識したり、知らない人からもらったお菓子を食べて初めて危険を体験するのでは、あまりにリスキーです。

社会的参照は、子供がより安全で効率的に知識を得ていく役割を果たしているのです。

コミュニケーショの能力の発達

大人の反応を手掛かりとして自分で行った行動が上手く行くと、その大人に対する信頼感が増します。この経験を積み重ねて行くことで、愛着関係が築かれ、コミュニケーション能力の発達に役立つと考えられます。

自己肯定感の向上

社会的参照は、エインズワースの提唱した安全基地の利用と大変似ています。養育者が安全基地として果たす役割が重要とされるように、社会的参照においても、参照される側の役割が大切でしょう。

子供が判断に迷い手掛かりを求めて来た時、大人が適切に対応することで、子供は「受け止めてもらえた」と感じ自己肯定感が得られると考えられます。

エインズワースと彼女が提唱した安全基地については、以下の記事で詳しく解説しています。

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ギブソンの視覚的断崖を用いた実験

ギブソン(Gibson)らは、乳児の深さに対する反応を調べるために、視覚的断崖装置を開発しました。この装置を使い、ソース(sorce)らは社会的参照の実験を行いました。

実験で使用された装置

高床式の台の表面に強化ガラスが貼られています。ガラスは透明で底が見えるようになっています。台の半分は、ガラスの直ぐ真下にチェック模様の床がありますが、もう半分はチェック模様の床が1メートル下にあります。

そのため、浅い床側のガラスの上から深い床側を見ると、崖のように見えるのです。

実験の手続き

ソース(Sorce)らは、この視覚的弾劾を使い、1歳児の社会的参照を示す実験を行いました。

はいはいをしている生後12ヶ月の赤ちゃんを、チェック模様の床が浅い位置にある方に載せます。深い方の床の深さが1メートルの時、30センチメートルの時にそれぞれ渡れるかどうかを観察しました。

また、深さが30センチの場合に、台の向こう側(赤ちゃんから見て断崖を渡った先)にいる母親が微笑む時と怯えたり不安な表情をする時に、赤ちゃんがどのように行動するかを観察しました。

実験結果

まず、チェック模様の床の深さが1メートルの場合には、赤ちゃんは浅い方からガラスを通して深い方を覗き込み、渡ろうとはしませんでした。深さ1メートルでは、赤ちゃんは渡るのは危険だという事を自分だけで判断したのです。この場合、社会的参照は起こりません。

次に、チェック模様の床の深さが30センチメートルの場合には、赤ちゃんは浅い方からガラスを通して覗き込んだ際、渡れるのかどうか判断に迷います。この場合には、向こう側にいる母親の方を見るという社会的参照が起こりました。母親がにっこりと微笑むと、19人中14人の赤ちゃんがガラス板を渡りました。反対に、母親が不安そうな表情をすると、赤ちゃんはひとりも渡ろうとはしなかったのです。

実験結果の意味

このように、どうして良いか自分だけで判断ができない場合に、赤ちゃんは他者の表情から読み取れる感情を手がかりにして行動を決めるのです。

なお、赤ちゃんが手がかりとする他者は誰でも良いという訳ではありません。母親など、自分を世話してくれる特定の養育者に限られます。この時期の赤ちゃんは、自分にとって特別な養育者の表情をその他の表情と区別できるようになります。見慣れない人を見て泣き出したりする人見知りが起きてくるのもそのためです。

大人の社会的参照による行動

社会的参照は、赤ちゃんの時だけでなく、成長してからも見られます。

YoutubeやTwitterで情報を発信した事がある人は、登録者数や「いいね」の数が気になったことはないでしょうか。自分が発信した情報に対して、他の人がどのような感情を持っているのかを確認しようとする行動は、大人の社会的参照と言えるでしょう。

特に、あなたが信用している相手からOKのサインをもらえたら、これで良いのだと自信を持てるのではないでしょうか。

占いや、時には心理カウンセリングも、大人の社会的参照となる場合もあります。勿論、これらを利用しても結果的に自分の意思を貫く場合もあるでしょう。けれど、自分が今悩んでいる事について、「それで良い」とか「今はやめた方が良い」というような判断を占い師やカウンセラーに求める場合は、社会的参照と言えるでしょう。

社会的参照について学べる本

生涯発達心理学 認知・対人関係・自己から読み解く

発達を成人以降も続くと捉える生涯発達心理学が、分かりやすく解説されています。その中で、0歳児が他者の意図に気づいて行く認知発達の1つとして、社会的参照について解説されています。

発達心理学概論

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初めて発達心理学を学ぶ人のために作成された放送大学の教材です。乳児期から老年期までを7つの段階に分け、分かりやすく解説されています。

社会的参照とソーシャルディスタンス

今私達は、新型コロナウイルスの感染予防のため、ソーシャルディスタンスや三密の回避に取り組んでいます。大切な人と会うのを我慢しなければならなかったり、会えてもマスクをしながらのコミュニケーションなど、対面での社会的参照の機会が減り、かつ難しくなって来ています。

そんな中で、オンラインがこれだけ急速に普及したのも、何とか人と人との繋がりを保とうという強い意思の表れでしょう。物理的に離れてしまう分、今後の社会的参照にはより想像力が必要となってくるなど、その意義も変わってくるのかもしれません。

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参考文献

遠藤利彦・小沢晢史(2001) 「乳幼児期における社会的参照の発達的意味及びその発達プロセスに関する理論的検討」 心理学研究71(6),498-514

藤田智子・大桃伸一(2016) 「保育者が乳幼児と信頼関係を築くためのかかわりに関する事例研究:社会的参照を手がかりとして 人間生活学研究(7),67-74

向田久美子(2017)「発達心理学概論」NHK出版

Sorce, J, F. Ended, R.N., Campos, J.J. & Klinnert, M.D. (1985) Maternal emotional signaling: Its effect on the visual cliff behavior  of 1-year-olds. Developmental Psychology,71.746-762

鈴木忠・飯牟礼悦子・滝口のぞみ(2016) 「生涯発達心理学」 有斐閣

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    • この記事を書いた人

    こころ

     臨床心理学・実験心理学等を学んだ後、心理カウンセラーとして勤務。現在はライターとして活動中。

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