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レジリエンスの意味と鍛え方|「鬼滅の刃」を例にビジネスや教育での重要性を解説

レジリエンスということばを聞いたことがあるでしょうか?私達が強く生きていくために必要な回復を意味するレジリエンスについて、その内容を学んでいきましょう。レジリエンスを高めるためのトレーニング、ビジネスや教育の場においても注目を集めている理由から本のご紹介までしていきたいと思います。

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レジリエンスとは

まず初めに、レジリエンスという言葉の意味を学んで行きましょう。

レジリエンスの意味

今日では心理学用語として定着しているレジリエンスという言葉ですが、ストレスという言葉と同じく元々は物理学分野での概念でした。力を加えられた物体が元に戻ろうとして跳ね返す力、復元しようとする特性のことです。

例えば、良く膨らませた風船を指でそっと押してみます。押している間、指に風船から戻ろうとする力を感じるでしょう。これがレジリエンスです。そして実際に指を離すと、風船はまた元の形に戻ります。

このような物体の特性についての概念を、人間の心の健康と結びつけて考えていくのが、心理学におけるレジリエンスです。風船と違い心は目には見えませんが、ストレスを受けて歪んだ時に、また健康な心の状態に戻ろうとする働きと言えるでしょう。

「鬼滅の刃」とレジリエンス

アニメ「鬼滅の刃」で描かれているテーマの1つを、このレジリエンスで考えてみましょう。

主人公の炭治郎は、家族を鬼に殺されるという計り知れないストレスを経験します。炭治郎が受けた傷は、家族を失ったことだけではなく、自分がその場にいて家族を守れなかったこと、自分だけが無事であったことなど、自分を責める気持ちによるものも大きかったと思われます。

これほどの大きな傷に一旦は押し潰されそうになりながらも、炭次郎の心は強くそのストレスを跳ね返そうとしていきます。鬼にされてしまった最愛の妹、禰豆子を人間に戻すため、さらに殺された母や兄弟の仇を討つために鬼殺隊に入隊し精進していくこの姿勢こそが、レジリエンスです。

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レジリエンスに関する心理学的研究

レジリエンス研究は1970年代から報告されています。当時は、厳しい生育環境下にも関わらず良い適応を示す子どもの研究などが行われていました。

レジリエンスという言葉は、初めは「回復する」という意味で使用されていましたが、その後様々な意味合いで用いられるようになりました。

レジリエンスをどう捉えるかという立場には、「個人が持つ能力や資質」「適応までのプロセス」「肯定的な結果そのもの」などがあります。

国内でのレジリエンス研究は、小花和(1999)の行った阪神・淡路大震災における母子関係の調査報告が始まりとされています。その後、幅広い分野における研究報告がなされています。

このような、レジリエンス研究の意義について、佐藤ら(2017)は、次のように述べています。

レジリエンスを導くための個人特性や社会資源が少しずつ明らかとなってきたことで、個別介入だけではなく予防の視点からの対応も可能になった。

例えば子供の問題であれば、これまでは不登校や引きこもりなどの既に起きてしまった問題に対して対処するという方法はとられていました。けれどレジリエンス研究の発展により、レジリエンスを高めるという予防的対応を取ることができるようになったということです。

レジリエンスを構成する要素

レジリエンスの構成要素については様々な分類の仕方があります。今回は、平野(2010)による分類を見ていきましょう。

まず、レジリエンスは資質的要因と獲得的要因とに分けられます。資質的要因は、元々の気質と関連が強いもので、獲得的要因は、後から身につけやすい要因です。

資質的要因には、次の4つがあります。

・楽観性:不安を持たず肯定的な期待を持てる力

・統御力:衝動性が少なく、ネガティブな感情をコントロールできる力

・社交性:もともと自分の知らない相手への不安や恐怖が少なく、コミュニケーションを図れる能力

・行動力:もともとの積極性や忍耐力により目標・意欲を持ち、それらを努力して実行できる力

獲得的要因には、次の3つがあります。

・問題解決志向:状況改善のために問題を積極的に解決する意思を持ち、解決方法を学ぶ力

・自己理解:自分のことを理解し、自分の特性に合った目標設定や行動をすることができる力

・他者心理の理解:相手の心理を理解し、ありのままを受け止められる力

「鬼滅の刃」とレジリエンスの構成要素

ここでは、「鬼滅の刃」の登場人物たちが、どのようなレジリエンスの構成要素を持っているのか、見ていきたいと思います。

竈門炭治郎

炭治郎については、「統御力」が挙げられます。映画「『鬼滅の刃』無限列車編」で、炭治郎は悪夢の中で家族から酷い言葉を浴びせられます。家族を守れなかったことで自分を責める気持ちのある炭治郎にとって、これほど辛いことはありません。

それでも、炭治郎はその悪夢に振り回されず、家族への信頼や愛情を維持し続けることができました。これが、炭治郎の「統御力」でしょう。

竈門禰豆子

禰豆子も、兄炭治郎と同様に強い「統御力」を持っています。本来なら、禰豆子は鬼にされた時点で、人間を喰らう行動を取っておかしくないはずです。

鬼である禰豆子が、兄炭治郎のみならず他のいかなる人間も喰らわず、むしろ人間を守って鬼と闘う行動をするためには、計り知れない「統御力」が働いていると考えられます。

我妻善逸

善逸のレジリエンスで際立っているのは、「自己理解」です。自分の弱さを知っていること、自分が泣き虫であることを隠さないことが善逸の強さに繋がっています。

唯一使える剣技「雷の呼吸 壱ノ型」を極め、恐怖で気を失うほどの極限のストレス下で鬼を切り裂くほどの威力を発揮するなど、「自己理解」をレジリエンスに最大限活かしていると言えるでしょう。

煉獄杏寿郎

煉獄さんは柱であるだけに、レジリエンスの構成要素全てを併せ持っているように見えます。その中で、ここでは「問題解決志向」を挙げてみたいと思います。

映画「『鬼滅の刃』無限列車編」で乗客全員を守るために、煉獄さんは炭治郎達に素早く的確な指示を与えていきます。この並外れた「問題解決志向」が、煉獄さんの強いレジリエンス要因の1つと考えられます。

以上、「鬼滅の刃」の登場人物の持つ強さに照らし合わせて、レジリエンスの構成要因を見てきました。他の構成要因も、登場人物の強さの中に見つけていくと、レジリエンスの理解が深まると思います。

レジリエンスの高め方・鍛え方

これまでレジリエンスについて学んできて、自分はレジリエンスが低いとか、レジリエンスを鍛えるにはどうすれば良いのだろうか、と思う人もいるかもしれません。レジリエンスの力は誰にでもあり、トレーニングによって鍛えることができると考えられています。

レジリエンス・トレーニング

レジリエンス・トレーニングを教える久世浩司氏によると、ハードワークでも心が折れない人の3つの習慣と、レジリエンスを高める7つの技術が紹介されています(久世、2014)。

ハードワークでも心が折れない人の習慣として、次の3つが挙げられています。

①ネガティブ連鎖をその日のうちに断ち切る

②ストレス体験のたびにレジリエンス・マッスルを鍛える

③ときおり立ち止まり、振り返りの時間を持つ

レジリエンスを高める技術としては、次の7つが挙げられています。

①ネガティブ感情の悪循環から脱出する

②役に立たない「思い込み」を手懐ける

③「やればできる」と信じる自己効力感を身につける

④自分を特徴づける「強み」を活用する

⑤心の支えとなる「サポーター」を持つ

⑥感謝のポジティブ感情を高める

⑦痛い体験から意味を学ぶ

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    • この記事を書いた人

    こころ

     臨床心理学・実験心理学等を学んだ後、心理カウンセラーとして勤務。現在はライターとして活動中。

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