形式的操作期とは?その特徴を具体例でわかりやすく解説

2022-07-29

子どもの認知発達段階において最終段階にあるのが形式的操作期と呼ばれる発達段階です。

それでは形式的操作期とはいったいどのような特徴を持っているのでしょうか。算数の問題を例に挙げながら、形式的操作期の特徴をわかりやすく解説していきます。

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形式的操作期とは

形式的操作期とはピアジェが提唱した認知的発達段階論における最終段階です。

【ピアジェの認知発達段階論】

  1. 感覚運動期
  2. 前操作期
  3. 具体的操作期
  4. 形式的操作期

形式的操作期はおおむね12歳以上の子どもが該当する時期であるとされており、大人と近しいような認知機能の発達がみられる段階であるとされています。

形式的操作期の特徴

形式的操作期の前段階である具体的操作期では、現実に目の前に存在する具体的事物を対象とした論理的思考が可能となる段階です。

これに対し、形式的操作期は思考を行ううえで目の前に具体的事物がなくても行うことができます。

つまり、抽象的な事柄を対象とした論理的思考が可能となるのが形式的操作期の大きな特徴なのです。

形式的操作期における算数の問題の例

形式的操作期の抽象的な思考といわれても、イメージが浮かびにくい方もいらっしゃると思います。

そのため、算数の例を考えてみましょう。

具体的操作期に該当する小学生の時期の算数の問題は、1+1=2のように計算する数字があらかじめ示されていたり、「太郎君はリンゴを3個、花子ちゃんはリンゴを5個持っています。二人合わせて何個持っているでしょう」のように文章題においても、計算の対象となるものは具体性を帯びています。

しかし、形式的操作期に入った12歳以降、つまり中学生からは数学においてより抽象的な計算を行うようになります。

例えば、一次関数y=ax+bのように現実には存在しない、抽象的な概念も計算の対象となってくるでしょう。

このように、認知的な発達段階にあわせて明確に思考で行うことが異なってくることがわかります。

形式的操作期と自尊感情

形式的操作期は主に中学生以降の時期を指し、この時期は反抗期や思春期など子どもと接するうえで非常に難しい時期を迎えます。

そして、多くの心理学研究で指摘されていることに、思春期は自尊感情が低下するということがあります。

このとき、第二次性徴を迎え、男らしさ、女らしさが如実に表れてくるこの時期における容姿の変化への混乱・葛藤といった身体的要因や、小学校から中学校という生活環境の大きな変化などによる影響は否定できません。

しかし、発達段階においても思春期は具体的操作期から形式的操作期への移行期であり、徐々に思考が発達していくことによって、周囲の環境などの現実を批判的に検討することができるようになるわけです。

この批判の方向性が外側へ向かえば反抗期となり、自己に向かえば自尊感情の低下を生じさせると考えられているのです。

認知的発達段階における自尊感情の低下

加藤ら(2018)は、思春期に自尊感情が低下と成熟への拒否という身体的要因及び批判的思考態度という認知発達的要因との関連を検討しています。

その結果、成熟への拒否感という身体的要因は影響を与えず、批判的思考態度のみが自尊感情の低下に影響を与えていました。

思春期に自尊感情が低下するという現象は形式的操作期に到達し、批判的思考態度を持つようになるため、つまり、認知的発達による起こる現象の1つの可能性があるのです。

確かに自尊感情の低下は精神的健康を害するものであり、短期的にみれば好ましくないものでしょう。

しかし、これが発達において多くの子どもが通らなければならない道であると考えると、子どもが健全な発達を遂げている指標であるとも考えることができるのです。

形式的操作期について学べる本

形式的操作期について学べる本をまとめました。

初学者の方でも読み進めやすい入門書をまとめてみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみてください。

ピアジェに学ぶ認知発達の科学

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形式的操作期はピアジェの認知発達理論の採取段階に位置付けられています。

本書から形式的操作期に加え、子どもがどのように認知的発達を遂げていくのかを学んでいくことで、より子どもの認知能力についての近いが深まるでしょう。

思春期の心とからだ図鑑

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思春期は形式的操作期へ移行する過渡期であり、身体的変化に加え、認知機能の発達により複雑な思考が生じてくる時期でもあります。

そのような変化の多い時期に批判的思考態度によって悩み、自己嫌悪に陥ってしまうことも少なくないでしょう。

ぜひ、本書の思春期のこころの変化に目を通しながら、形式的操作期という発達段階がどのようにかかわっているのかについて考えてみましょう。

認知的発達から見える変化

認知的発達は身体の発達と違い、外見から見ることはできません。

しかし、子どものなかで日々育っている能力であり、それによって思考や感情、行動などに影響を与えています。

ぜひこれからも形式的操作期に至ることでみられる心理的な特徴について学んでいきましょう。

【参考文献】

  • 西村泰夫(2009)『心理学論考ノート--「ヒト」はいかに「人」になるか:知性の生成変換過程とその数理構造』放送大学研究年報/ 放送大学 編 (27) 35-54
  • 中垣啓(2011)『ピアジェ発達段階論の意義と射程』発達心理学研究 22 (4), 369-380
  • 加藤弘通・太田正義・松下真実子・三井由里(2018)『思春期になぜ自尊感情が下がるのか?』青年心理学研究 30 (1), 25-40

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    • この記事を書いた人

    t8201f

    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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