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心理的離乳とは?その時期や具体例、できない原因と対処法を解説

心理的離乳とは、「青年が親から自立していく過程」と定義できます。中高生のとき、親の過度な心配がもどかしく感じたような体験はありませんか? これは心理的離乳の途中過程といえます。このような心理的離乳について、身近な例を交えながらわかりやすく解説します。

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心理的離乳とは

心理的離乳を一言で表すと「青年が親から自立していく過程」です。ここでいう青年とは主に12歳~20歳のことを指します。

子は青年から大人になるにあたって、自我の発達が進み、「親から独立したい」という感情が強くなります。それに対し、親は青年になっても子に干渉し続け、自身の保護下に置こうとします。

この結果、青年の独立したいという気持ちは抑えられ、反抗的な態度へとつながります。青年は親の干渉と独立心の間で葛藤しながら、やがて家族から独立していきます。

青年がこの葛藤を乗り越えて、自立していくためには、親が青年を理解し、適切な距離感をもって接することが必要です。

ホリングワースによる心理的離乳の提唱

心理的離乳はホリングワース(1928)によって提唱されました。心理的離乳について、ホリングワースは以下のように定義しています。

ホリングワースによれば、青年たちは12歳から20歳の間に、家族の監督から離れて、独立した人格になろうとする衝動が生じる。

このような家族の監督から離脱し、独立した人間関係になる過程を心理的離乳(psychological  weaning)と呼ぶ

引用元:松村康平・西平直喜編(1962) 朝倉心理学講座 第三巻 青年心理学

心理的離乳の意味と定義

なぜ「心理的離乳」と呼ばれるか、それはこの概念を赤ちゃんの離乳と対比しているためです。

赤ちゃんの離乳は母親からの独立の第一歩といえますが、心理的離乳も親から独立するという点では同じです。心理的離乳は青年期(11~20歳)に起こる、より高レベルな独立、という点で離乳と区別できます。

心理的離乳の具体例

心理的離乳の成功と失敗を大学受験の例で考えてみましょう。

心理的離乳に成功している親子の例

子は医者になりたいという希望の元、オープンキャンパスや大学のパンフレットで情報を集め、志望校を決定した。親は志望校を決める過程で、子の相談相手になったが、最後の志望校決定については子に委ねた。

心理的離乳に失敗している親子の例

子は漠然と大学に行きたいとは思っているが、どのような大学に行けばわからないので、親に相談した。すると、親が○○大学を勧め、親がここにしなさいと言ったので、子はその大学を受けることにした

心理的離乳の時期

心理的離乳は先ほども述べたように、青年期(12~20歳)の子に起こります。世間で広く使用される「思春期」は青年期の前期(11~14歳)にあたり、それ以降を青年後期、ということもあります。

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心理的離乳に関する心理学的研究

ここからは、心理的離乳に関する研究をご紹介します。

親子関係の変化から見た心理的離乳への過程の分析

落合・佐藤(1996)によると、心理的離乳は以下の5段階に分けることができます。

第1段階:親が子どもを抱え込む親子関係/親が子と手を切る親子関係

第2段階:親が外界にある危険から子どもを守ろうとする親子関係

第3段階::子どもである青年が困った時に、親が助けたり、励まして子どもを支える親子関係

第4段階:子どもが親から信頼・承認されている親子関係

第5段階:親が子どもをたよりにする親子関係

上記のような心理的離乳の段階を経て、親子関係は「親が子どもを保護する支配的な関係」から「親と子が対等に話し合う関係」へと変化していきます。

心理的離乳ができない場合の原因と対応

心理的離乳ができない場合として大きく分けて2つのパターンが考えられます。

1、親が子に過干渉しすぎている

1の原因としては、親が子のことを心配しすぎていることが挙げられます。

このような親は、子どもの自立する機会を奪い、仕事や人生において必要な能力が養えないまま子どもを社会に送り出してしまうしてしまう危険性があります。

対応策

1の対応として、親が子の行動を理解し、適度の距離感を保つ必要があります。例えば、親と子が友人関係のように対等で、何でも気兼ねなく相談できる関係です。

2、子が親に頼りきりである

2の原因としては、子が親離れできていないことが挙げられます。

このような状態であると、子が自立することができず、いつまでも親の言いなりになったままになってしまいます。近年では「パラサイトシングル」といって、大人になっても独身のまま親の実家に住み続ける子どもが問題となっています。

対応策

2の対応として、自立する環境づくりなどが挙げられます。近年では、採用されて入社する際、実家から出て社寮に入ることを義務付ける企業もあります。このように、子どもが親に依存する環境を物理的に取り払ってしまう方法もあります。

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心理的離乳からより良い親子関係を考える

心理的離乳の概念を学ぶことで、青年期における適切な親子関係について理解することが可能となります。

今回解説した内容を基に、日常生活での親子のやり取りを改めて見直すことで、より良い親子関係を築くことができるかもしれません。

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参考文献

松村康平・西平直喜編(1962) 朝倉心理学講座 第三巻 青年心理学 朝倉書店

落合良行・佐藤有耕(1996)親子関係からみた心理的離乳への過程の分析 教育心理学研究 44 11‐22

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    • この記事を書いた人

    kaedama2

    大学3年生。国立大学にて心理学を専攻中。

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