ストレンジ・シチュエーション法とは?エインズワースのアタッチメント観察法と4つのタイプ

2020-11-16

アタッチメント(愛着)障害を始め、いじめ、引きこもり、離婚、ドラッグなど、多くの問題がアタッチメント形成の影響を受けていると考えられます。

今回は、アタッチメントを測定するためにエインズワースが開発した観察法であるストレンジ・シチュエーション法を学んでいきます。

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ストレンジ・シチュエーション法

そもそも、ストレンジ・シチュエーション法とはどのようなものなのでしょうか。

ストレンジ・シチュエーション法の意味と定義

ストレンジ(strange)とは、英語で「未知の」「見慣れない」という意味です。シチュエーション(situation)とは、英語で「状況」という意味です。つまり、ストレンジ・シチュエーションは未知の状況という意味になります。

ストレンジ・シチュエーション法は、アタッチメント(愛着)の個人差を測る方法です。

方法は後述しますが、親子は2回の分離と再会を経験し、子どもは知らない場所や見知らぬ人、親との分離というストレスを体験します。そうしたストレスや不安を喚起する状況で子どもの親や見知らぬ人に対しての振る舞いを観察し、アタッチメントの特徴を測定します。

エインズワースが考案した実験観察法

ストレンジシチュエーション法は、エインズワースが考案した実験観察法です。その背景にあるボウルビイのアタッチメント理論については、後述します。

1970年代、メアリー・エインズワースは、1歳児と母親とのやり取りをマジックミラー越しに観察することで、アタッチメントパターンを見出そうとしました。

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ストレンジ・シチュエーション法と過去問

ストレンジ・シチュエーション法は、いろいろな試験にも出題されています。

公認心理師試験、保育士試験、精神保険福祉士試験、社会福祉士試験、言語聴覚士試験、などで出題があります。

ストレンジ・シチュエーション法の分離・再会場面で子供がどのように行動するのか、その子どものアタッチメントは安定的か不安定なのか、母親(養育者)は日頃どのような関わりをしているのか、に着目して学んでいくと良いでしょう。

ストレンジ・シチュエーション法の手順

ストレンジ・シチュエーション法の手順を見ていきましょう。

参加者は、母親、子ども、ストレンジャー(子どもにとって未知の人)の3人です。観察のポイントは母親との分離場面(④⑥)と母親との再会場面(⑤⑧)です。

①母親と子どもが実験室内に入る。

②母親が着席し、子どもはおもちゃで遊ぶなど自由に過ごす。

③ストレンジャーが部屋に入り、着席する。

母親のみが退室する。ストレンジャーが子どもに近づき働きかける。(1度目の母子分離)

母親が入室し、ストレンジャーが退室する。母親は子どもに話しかけ遊びに誘う。(1度目の母子再会)

母親が退室すし、子どもがひとり残される。(2度目の母子分離)

⑦ストレンジャーが入室し、子どもに働きかける。

⑧母親が入室し、子どもに働きかける。ストレンジャーは退室する。(2度目の母子再会)

全体の流れを解説している動画がこちらです。解説は英語ですが、上の手順と照らし合わせながら見てみてください。

ストレンジ・シチュエーション法で分類される4つのタイプ

ストレンジ・シチュエーション法の手続きで、上に示した母親との分離と再会場面での子どもの様子によって子どもの特徴が当初3つに分類され、その後3つのタイプでは説明できないタイプが見出され、現在では以下の4タイプに分けられます。

それぞれのタイプにおける子どもの特徴に加え、そのタイプの子どもの母親が日常どのような関わりをする事が多いのかも見てみましょう。

Aタイプ:回避型(avoidant)

母親と離れてもほとんど泣いたり混乱をする事がありません。母親との再会時には、母親から目を逸らすなど、母親を避けようとします。母親を安全基地として部屋を探索するというよりも、母親の存在がないかのように自由に振る舞う事が多いです。

Aタイプの子どもの母親は、子どもからの働きかけに対して拒否的に振る舞うことが多いとされています。子どもに対して微笑んだり身体接触をしたりする事も少なく、子どもが苦痛を示した時にむしろ子どもを遠ざける事もあります。

Bタイプ:安定型(secure)

母親と離れる時に多少泣いたり混乱をするものの、母親が戻ってくると抱き付いたりしてすぐに気持ちを落ち着ける事ができます。母親を安全基地として、積極的に遊ぶ事ができます。

Bタイプの子どもの母親は、子どもの欲求などに敏感で、子どもに対して無理な働きかけをする事が少ないとされています。子どもとのやり取りも平和的で、遊びや身体接触を楽しむ様子が見られます。

Cタイプ:アンビバレント型(ambivalent)

母親と離れる時に強い不安や混乱が見られます。母親が戻ってきても、怒りがなら母親を叩くなどネガティブな感情の切り替えがなかなかできません。母親を安全基地として自由に遊ぶ事が苦手で、常に母親の側にいようとする傾向があります。

Cタイプの子どもの母親は、子どもとの関わりはありますが、それは子どもの欲求に応じたものというよりは母親の都合に合わせたものである事が多いとされています。そのため、子どもからの働きかけに対する反応がズレることが多くなります。

Dタイプ:無秩序・無方向型(disorganized/disoriented)

Dタイプはエインズワースの初期の実験にはなくその後見出されたタイプです。戻ってきた母親に対して顔を背けながら近づいたり、母親にしがみついた直後に床に倒れ込んだりといった、本来なら両立しにくい行動を同時に取ります。

また、虚な表情のままじっと動かなくなってしまう事もあり、何をしたいのかが読み取りにくいタイプです。さらに母親に対して怯える様子を見せる事もあり、逆にストレンジャーに対して親しげな態度を取ることもあります。

Dタイプの子供の母親は、抑うつ傾向が高く精神的に不安であり、子どもへの虐待が見られる事が多いとされています。ストレスに対して極めて脆弱で、情緒的に引きこもりやすいタイプです。

 

これらの4つのタイプについて、子どもの様子や母親の特徴を表にまとめてみました。

アタッチメントのタイプ子どもの様子母親の特徴
Aタイプ
(回避型)
・母親との分離に際してあまり混乱した様子を示さず、再開時にも母親を喜んで迎え入れる様子が相対的に乏しい・子どもからの働きかけに対して拒否的に振る舞うことが多い
・子どもへの身体接触が少なく、子どもが近接を求めて行くと遠ざけることもある
Bタイプ
(安定型)
・母親との分離に際して多少混乱するものの、再開時には喜びと安堵の表情を見せながら、積極的に身体接触を求めていく・子どもの欲求などに敏感で、子どもに対して無理な働きかけをする事が少ない
・子どもとのやり取りも平和的で、遊びや身体接触を楽しむ
Cタイプ
(アンビバレント型)
・母親との分離に際して強い不安や混乱が見られる。再開時には近接を求める一方、で激しい怒りを伴った抵抗的態度を示す・子どもとの関りはあるが、母親の都合に合わせたものであることが多く、一貫していない
Dタイプ
(無秩序・無方向型)
・母親に対する態度に一貫性がない・抑うつ傾向が高く、精神的に極度に不安定
・虐待や不適切に養育を施している場合も多い

補足

ストレンジ・シチュエーション法は、あくまでも1歳頃の子どもを対象とした実験です。そのため、この時期に分類された子どもの特徴が、大人になるまでずっと続くとは限りません。勿論、子どもの行動の特徴を見て、親の関わり方を決めつけるのも良くないでしょう。

ボウルビイのアタッチメント(愛着)理論

アタッチメントの意味

ボウルビイが当初意味したアタッチメント(attachment)とは、生物が他の生物にくっつこうとする事でした。例えば敵に襲われた時、単体でいるよりも仲間といる方が安全です。つまり、単体でいる事で生じる危機を回避し、より安全な状況を作り出す行為がアタッチメントの元々の意味でした。

ボウルビイのアタッチメント理論

児童精神科医であったボウルビイは、施設児や戦災孤児などへの心理臨床的介入などを行なっていました。そのような経験から、「母性的養育の剥奪」(maternal deprivation)という考えを持つようになりました。

「母性的養育の剥奪」とは、幼い頃十分な養育が受けられないと、心身発達が遅れるとともに、成人するまで影響が及ぶという考え方です。この事から、幼い子どもと養育者の間の特別な繋がりが生涯に大きな影響を及ぼすというのが、アタッチメント理論です。

例えば、幼少期に養育者と安定した繋がりが経験できた子どもは、大人になっても精神的に自立し、パートナーと安定した関係が築ける、といった考え方です。

ケーススタディ

<問題>

ボウルビイのアタッチメント理論に基づくと、大人になって次のようなアタッチメントパターンを持つ場合、幼少期にどのような経験をしていた可能性が考えられるでしょうか。

「感情が揺れ動き、どのような感情を見せるのかが周囲から予測がつかない。パートナーに安心感を求める気持ちはあるのに、傷つくのが怖くて近づけない。」

<考え方>

感情の揺れ動き、両立し難い感情を同時に持つことから、幼少期に無秩序型のアタッチメントパターンが形成されていたと考えられます。虐待を受けるなど、養育者の予測のつかない態度により怯える経験をしていたのかもしれません。

補足:愛着形成について

愛着とは、既に紹介したように、特定の養育者との情緒的な結びつきのことを指します。

愛着形成は、乳幼児の発達のみならず、その後(大人になっても)の対人関係や情緒面に大きく影響するものと言われています。

愛着が形成されていると

基本的信頼が生まれる

基本的信頼は、自分をあるがままに受け入れてくれる他者がいる安心感と自分は他者に受け入れられる価値のある人間であるという自分自身に対する信頼感を指します。

子どもの要求に速やかに応え、解決してあげる親の対応が子どもの基本的信頼を育てると言われており、他者と情緒的で深い人間関係を築く基盤となります。

養育者を安全基地として利用する

愛着が形成されていると、養育者にいつも接触していなくても安心・安全を感じることが出来るようになります。

そして、養育者を安全基地として使用しながら探索活動を行い、社会性を獲得していくことができるようになると言われています。

愛着が形成されていないと

愛着障害が生じる

愛着障害とは、養育者との愛着がうまく形成されないことで、情緒面や対人関係などで問題が生じることを表します。反応性愛着障害脱抑制型愛着障害に分けられます。

反応性愛着障害

警戒心や恐怖心が強く人に近づかない、周囲からの働きかけに反応しない、自分を制御できずに攻撃的になるなど対人関係における障害が見られます。

脱抑制型愛着障害

誰にでも見境なく接触しようとするなど愛着行動を示したり、他者の気を惹こうとするあまりに不注意や乱暴な行為に走ったりするなど対人関係における障害が見られます。

アタッチメント理論について知れる本

アタッチメント理論について学べる本を3冊紹介します。

アタッチメントと臨床領域

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アタッチメントの解説に留まらず、実際の臨床現場でどのようにアタッチメント理論が取り入れられているのかが紹介されています。

母の友 5月号

子育て中の親のための月刊誌なので、わかりやすい文章で書かれています。心理学者の遠藤氏が書かれた本号の特集記事「アタッチメント入門」も、やさしい言葉で綴られています。

新訂 発達心理学概論

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放送大学の教材であり、発達心理学を初めて学ぶ人向けに分かりやすくまとめられた1冊です。今回のテーマであるストレンジ・シチュエーション法についても丁寧に解説されています。

関連するキーワード

今回ご紹介したストレンジ・シチュエーション法に関連するキーワードをまとめます。サイト内に記事があるものについてはリンクを付けておりますので、併せてご参照ください。

愛着(アタッチメント) ※リンク先はボウルビイの愛着理論の解説

・愛着障害

・マターナル・デプリベーション

・基本的信頼

分離不安

ストレンジ・シチュエーション法とアタッチメント

今回は、アタッチメントの把握方法であるストレンジ・シチュエーション法について学びました。4タイプには子供と養育者の特徴が見られ、愛着障害や毒親といった問題とも結び付く部分もあります。

けれどこれを読んでいる皆さんには、分類による特徴を短絡的な判断のために使うのではなく、他のあらゆる影響にも広く目を向けながら、知識を実生活や臨床現場に活かしていって頂きたいと願っています。

【記事のまとめ】

ストレンジ・シチュエーション法は、アタッチメント(愛着)の個人差を測る方法

・親子は2回の分離と再会を経験し、子どもは知らない場所や見知らぬ大人、親との分離という不安やストレスがある状況下の振る舞いを観察

Aタイプ(回避型)は、母親との分離に際してあまり混乱した様子を示さず、再開時にも母親を喜んで迎え入れる様子がに乏しい

Bタイプ(安定型)は、母親との分離に際して多少混乱するものの、再開時には喜びと安堵の表情を見せながら、積極的に身体接触を求めていく

Cタイプ(アンビバレント型)は、母親との分離に際して強い不安や混乱が見られる。再開時には近接を求める一方、で激しい怒りを伴った抵抗的態度を示す

Dタイプ(無秩序・無方向型)は、母親に対する態度に一貫性がない

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参考文献

数井みゆき・遠藤年利彦(編著)(2007) 「アタッチメントと臨床領域」ミネルヴァ書房

向田久美子(2017)「発達心理学概論」NHK出版

遠藤利彦(2019)「アタッチメント入門」母の友5月号、14-21

鈴木忠・飯牟礼悦子・滝口のぞみ(2016)「生涯発達心理学 認知・対人関係・自己から読み解く」 有斐閣

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    • この記事を書いた人

    こころ

     臨床心理学・実験心理学等を学んだ後、心理カウンセラーとして勤務。現在はライターとして活動中。

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