自己決定感とは?その意味や自己決定感を高める方法について解説

2022-08-15

仕事や勉強などに取り組むときに、やる気をもって取り組みたいと考えることは少なくないでしょう。

心理学的にはやる気を持っている状態のことを動機づけられている状態と呼びますが、この動機づけを構成する重要な要素として自己決定感が注目されています。

それでは自己決定感とはいったいどのようなものなのでしょうか。自己決定感の意味や高める方法、なぜ自己決定感が大事なのかについて解説していきます。

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自己決定感とは

心理学的には、やる気をもって物事に取り組んでいる状態を動機づけられている状態と呼びます。

動機づけは大きく次のような種類に分かれます。

【動機づけの種類】

  • 内発的動機付け:その課題が楽しいなど内的な理由によって課題へのコミットが高まる
  • 外発的動機付け:お金など外的な報酬によって課題へのコミットが高まる

自己決定感の意味

動機づけの中でも、活動へのやる気が持続したり、自己成長などにつながるなどのメリットがあるのが内発的動機付けであり、この内発的動機付けを構成する要素に自己決定感があります。

自己決定感は次のように定義されています。

【自己決定感の定義】

自己決定感とは、自己が何者にも拘束されず自発的に行動しているという感覚

自己決定感が大事な理由

内発的動機付けを構成する要素として、自己決定感と自己有能感の2つがあります。そのうち自己決定感のほうが内発的動機付けを規定する、より基本的な構成要素であるとされています。

つまり、自己決定感が高まる状況では、内発的動機付けは高まり、逆に自己決定感が低下する状況では内発的動機付けは低下してしまうと考えられているのです。

自己決定感と自己有能感

碓井(1992)は、自己決定感と自己有能感という2つの要素が内発的動機付けにどのように影響を与えるのかを検討する研究を行いました。

その結果、自己決定感の違いによって自己有能感が内発的動機付けに与える効果が異なることが示されたのです。

確かに、課題を正しくこなし「自分には能力がある」と思える自己有能感も内発的動機付けを高めます。しかし、自己決定感の低い状況においては、課題の成果を褒める正のフィードバックを与えても内発的動機付けは変化を示さなかったのです。

すなわち、自分で取り組むものを選ぶことのできない強制される状況においては(自己決定感の低い状況)、いかに高い成績を残し、褒められて自分には能力があると思えても、やる気にはつながらないと言えるでしょう。

このように、自己決定感は内発的動機付けを規定する、最も基本的な心理的要因であるという点で非常に重要なのです。

自己決定感を高める方法

それでは、自己決定感を高めるためにはどのようにすればよいのでしょうか。

もちろん、何らかの意思決定を行う場合に、自分で決定するということが自己決定感を形成するうえで欠かせません。

しかし、進路選択でやりたいことがわからず、自己決定ができないというように、誰しもが自己決定感を高めるための意思決定ができるわけではありません。

そこで、川嶋・蓮見(2019)は、幼少期の親からの意思決定支援と自己決定感の関連について検討しています。

その結果、親の意思決定支援スタイルのうち「急がせる」(早く決めなさいと指示をするなど)は自己決定感と負の相関が、「認める」(子どもの意思決定に口を出さず受け止めるなど)は自己決定感と正の相関があることが示されました。

このことから、幼少期から子ども自身の意思決定を尊重し、認める養育が自己決定感を高めるのだと考えられるのです。

自己決定感について学べる本

自己決定感について学べる本をまとめました。

初学者の方でも読み進めやすい入門書をまとめてみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみてください。

内発的動機づけと自律的動機づけ: 教育心理学の神話を問い直す

自己決定感は内発的動機づけを規定する最も基本的な心理的要因です。

それでは、内発的動機づけとはいったいどのようなものなのでしょうか。

ぜひ、本書から詳しく学んでみましょう。

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自己決定感がどのようにモチベーションにかかわっているのかを学ぶためには自己決定理論を学ぶ必要があるでしょう。

本書では、自己決定理論を詳しく取り上げた章が設けられており、これから自己決定理論を学ぶ方にお勧めの1冊です。

自分で決めたことは失敗してもポジティブでいられる

自己決定感の高い、自分で取り組むことを自分で選んだ状態だとしても課題に失敗するかどうかは別問題です。

しかし、自己決定感が高ければ、「自分で選んだことであり、失敗も経験の1つだ」と失敗をポジティブにとらえられることでモチベーションが低下しにくいとも言われています。

進路選択や転職など意思決定を行わなければならない重要な局面であっても自己決定感が高い状況を保つことは重要であり、現代社会において重視される心理的要因であると言えるでしょう。

【参考文献】

  • 碓井真史(1992)『「内発的動機づけに及ぼす自己有能感と自己決定感の効果』社会心理学研究 7 (2), 85-91
  • 脳科学研究所(2015)『自己決定感課題成績を向上させる効果の神経基盤』玉川大学脳科学研究所紀要 8 34-34
  • 川嶋健太郎・蓮見元子(2019)『【論文】大学生の幼少期の親からの意思決定支援の認知と自己決定感 』東海学院大学研究年報 4 45-51

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    • この記事を書いた人

    t8201f

    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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