レディネスとは?その意味や教育における意義をわかりやすく解説

2020-11-05

レディネスとは、学習に対する準備性を意味し、ソーンダイクによって提唱されました。準備性とは、学習に対する準備的適応や構えを言います。

今や教育の重要問題として注目を集めるようになったレディネスについて、実生活を例に分かりやすく解説していきます。

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レディネスとは

レディネスとは何か、まずは簡単に説明してみます。

レディネスの意味

レディネスとは、「学習のレディネス(Readinness to learn)」と言い、子どもの身体的成熟の水準と、訓練(学習)との関係を示します。アメリカの教育心理学者であるソーンダイク(Thorndike,E.L.)によって提唱されました。

例えば、生後直後の子どもは「おっぱいを吸う」という行動の学習に対してレディネス(準備性)を有していると考えられますが、「自転車に乗る」という行動の学習に対してのレディネスは持っていません。

この様に、行動の学習には、それを可能とする程度の成熟があった上で可能となります。この成熟による学習の準備をレディネスと言います。

レディネスと成熟優位説

レディネスと関連する理論に、ゲゼルの成熟優位説があります。

これは発達に関する理論で、個人の発達は胎児期から潜在しており、出生以後の環境や経験の役割は少ないとする説です。つまり、性格や知的能力などは、出生後の学習や環境よりも遺伝的な要因によって規定されるだろうということです。

成熟優位説によれば、教育や訓練は早ければ早いほど良いわけではなく、成熟した状態になっていること(レディネスを有していること)が必要だといいます。

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レディネスに関する心理学的研究

ここからは、レディネスに関する代表的な実験をご紹介します。

ゲゼルによる実験

ゲゼル(Getes,A.L.)は、一卵性双生児の乳幼児を対象に、階段上り学習の実験を行いました。

この実験において、双子の片割れであるAは、生後46週目から階段上りの訓練を受け、もう片方のBは生後53週目から階段上りの訓練を受けました。

すると、双子が生後53週目の時点では、Aの方が階段を早く登ることが出来ましたが、Bも階段上りの訓練を十分に受けると、AとBの間に差は見られませんでした。

つまり、ある程度成熟した後に訓練をしたBの方が、Aに比べて訓練の時間が短かったにも関わらず、同程度の成績を収めたのです。

この結果から、ゲゼルは「子どもにレディネスが備わった後に学習を行わせる方が望ましい」と結論付けました。

レディネスに対する批判

しかし、こうしたゲゼルの結論には以下の批判がされました。

  • 対象を乳幼児に限定しているため、学習の適正期を生後53週としてよいのか不明瞭である。
  • 乳幼児は普段から身体を動かしていため、そうした訓練外の運動が訓練として役だったのではないか。
  • 成熟は加齢により一定量の増加と仮定されているが、加齢によりむしろ学習効率が落ちるものがある。

ヴィゴツキーによる発達理論とレディネス:最近接発達領域(発達の最近接領域)

ヴィゴツキー(Vygotsky,L.S.)は、発達と教育の問題から、思考などの高次な認知機能の発達においては、ただレディネスを有するようになるまで待つのではなく、レディネスを促進するような教育が必要であると強調しました。

発達しつつある水準(子供が一人で問題解決できる現在の発達水準)と予測的発達水準(他者が手を貸して達成できる将来の発達水準)の差を「最近接発達領域(発達の最近接領域)」と定義し、教育者がこの領域を認識して適切な働きかけを行うことが重要だとしたのです。

実生活におけるレディネスの意義

レディネスという概念と関連する発達理論について紹介してきました。

それでは、日常生活においてレディネスはどういった意義を持ち、どのように活用できるのでしょうか。

教育:レディネス・プログラム(Readiness program)

特に教育現場において、レディネスは有効に活用されています。

その一つが「レディネス・プログラム(Readiness program)」です。

「レディネス・プログラム」では、新しい教材や単元の指導の最初の段階として、それまでの学習の習熟の程度を測ったり、学習に対する態度を測定することで、その後、必要とされる指導を行っていきます。

看護:看護師の養成

看護師の養成場面においてもレディネスが注目されています。

看護学生の実習や授業で、上手く出来なかった体験やもっとこうすれば良かったという気づきは、看護学生たちの今後の学習のレディネス形成に役立つとされています。

ビジネ:状況対応リーダーシップ・モデル(SL理論)

ビジネスの場では、レディネスは企業のリーダーの行動決定などに有効とされています。

ハーシー(Hersey, P.)とブランチャード(Blanchard,K.H.)は、メンバーのレディネスの度合いによって、最適なリーダーシップ行動は異なるとし、どのような状況でどういったリーダー行動が最適かを決定する状況対応リーダーシップ・モデル(Situational leadership Model:SL理論)を提唱しました。

レディネスをチェックできるサイト

一般社団法人 雇用問題研究会のサイトでは、レディネス・テストを受けることが出来ます。

有料にはなってしまいますが、職業レディネス・テストはリクルートの自己分析などで近年注目を集めています。これから就職活動を控えている学生の皆さんは一度受けてみると良いでしょう。

レディネスについて学べる本

レディネスについてもっと詳しく知りたいという方のために、3冊ほどオススメの本をご紹介します。

書きを育てる 学習レディネス指導シリーズ(2)

レディネスを教育に活かしたいという方には学習レディネス指導シリーズがオススメです。「書き」や「計算」など、シリーズによって内容が違うので、用途に合わせて読むと役に立つかと思います。

動かない人も動く 心・技・体のレディネスデザイン入門

ビジネスの分野でレディネスの考え方を活かしたいという方にはこちらの本がオススメです。

「あの人は全然働かない」という社員をモチベーションの視点だけでなく、レディネスの視点から読み解くという面白い視点の本です。

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大学院受験や臨床心理士・公認心理士試験のためにレディネスを勉強したいという方にはこちらの辞典がオススメです。

レディネスは臨床心理学辞典には載っていないため、こちらの辞典で詳しく学べます。

レディネスは「成熟」か「環境」か

学習は発達的成熟によりレディネスが備わるという「成熟優位説」について説明しました。しかし、学習は年齢による成熟だけでレディネスが形成されるのでしょうか。

ゲゼルは

「身体的成熟や精神年齢など単一の機能や条件だけから読みや算数の学習の最適期を決定することは困難である」

と指摘しています。

つまり、レディネスは「成熟」だけで形成されるものではありません。そこには教育という「環境」の要因も入ってくるのです。

最近の動向として、レディネスが年齢的成熟だけで形成されるという自然発生論は破棄され、レディネスは指導され形成されるべきものとする促進的な立場が有効になっています。

子どもが自転車を乗れるようになる。計算を出来るようになる。これには年齢的成熟ももちろん大切ですが、教育も欠かせません。レディネスの形成は「成熟」と「環境」の両輪が備わってこそ、形作られるものなのでしょう。

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参考文献

  • 書きを育てる(学習レディネス指導シリーズ(2)). (2004). 細村迪夫. コレール社.
  • 教科学習のレディネスと就学期の発達課題に関する一考察. (1999). 丸山美和子. 社会学部論集 第32号.
  • 自己効力感および職業レディネスによる看護大学生の看護管理実習の評価に関する研究. (2008). 飯島佐和子. 賀沢弥貴. 平井さよ子. 愛知県立看護大学紀要. Vol.14, 9-18.

 

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    • この記事を書いた人

    こっけ

    臨床心理学学科大学卒業後、臨床心理学研究科の大学院に在学。恋愛をテーマに研究。19歳で上級心理カウンセラー資格習得。20歳で心理学検定10領域全領域を合格し、心理学検定特一級を習得。

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