発達加速現象とは?具体例やメリット・デメリットなどを含めて解説

ここでは、発達加速現象について解説していきます。

まず、この現象の定義を例を交えつつ説明します。その後、発達加速現象が起こった背景を述べ、この現象がどのような影響(メリットやデメリット)をもたらしたのかについて、まとめていきます。

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発達加速現象とは

はじめに、発達加速現象とはどのような概念なのかについて、見ていきましょう。

発達加速現象の意味・定義

発達加速現象は、文字通り発達心理学に含まれる概念の1つです。現代心理学辞典によれば、発達加速現象は次のように定義されます。

”世代”が新しくなるにつれ、身体的な発達が促進される現象をいう。身長・体重・胸囲などの量的側面の成長速度が加速化することをさす成長加速と、初潮・精通などの性成熟や乳歯・永久歯の発生の低年齢化など、質的変化の開始年齢の早期化をさす成熟前傾がある。

発達加速と聞くと、つい”身体的な成長が速くなること”と思いがちですが、上記のように、第二次性徴の低年齢化といった質的変化も含んだ概念であると分かります。

別な言い方をすれば、発達加速現象は、児童期を短縮させ、思春期の開始を早める現象と言うこともできるでしょう。

発達加速現象の具体例

発達加速と言っても、果たして”どのくらい加速する”のでしょうか。”身長”を例に、この現象の影響力の大きさについて見ていきましょう。

学校保健統計(文部科学省,2005)によれば、日本において17歳男性(ほぼ最終的な成長水準に到達するとみなされる年齢が17歳)の平均身長が、1982年に170.1cmとなり、はじめて170cmを超えました。

第二次世界大戦後の1948年では160.6cmでしたから、実に9.5cm増加していることになります。女子に関しても、1982年の平均身長157.3cmに対し、1948年は152.1cmと、5.2cmの差が生じたのです。

このように、発達加速現象における(量的)変化は、多くの人から見て一目瞭然と言えるものであると分かります。

ところで、ここで疑問を抱く方もいるのではないでしょうか。男性の平均身長は、1948年から1982年の34年間で9.5cm伸びました。同じ理屈で考えれば、現在の平均身長は180cmを超えていることになります。ですが、周囲に180cmを超えている人は少ない、と感じる方が多いはずです。

その疑問は実際その通りで、発達加速現象により、高度経済成長期には身長や初潮の開始年齢に顕著な加速化が認められたものの、現代では、発達加速の程度は緩やかになっているとされています。

発達加速現象の原因

次に、発達加速現象が発生した背景を見ていきます。

前述の通り、発達加速現象は高度経済成長期に顕著に認められはしたものの、その原因については諸説あります。

タンパク質などの栄養説が中心ではありますが、それ以外にも、例えば居住地域や家族数、社会経済条件、遺伝学的要因、母娘相関など、多くの仮説が提出されています。これらはすべて、思春期変化の時期に影響を与える要因でもあります。

現在は、特定の原因論では説明することが出来ず、都市化刺激説のような、心理・社会的ストレスも考慮した現代社会の変化全体を考慮する立場が有力です(Adams,1981)。

発達加速現象に関する研究・論文

ここでは、発達加速現象に関する研究や論文として、野呂らが1997年に発表したものを紹介します。

発達加速現象の 再考 (3)-少子化の中の子どもの身体発育について-

”発達加速現象の再考”というタイトルで、1995年から1997年まで、合計3回にわたり発表されたもののうち、3回目に発表されたものが本研究です。

この研究は、発達加速現象の捉え直しや、本現象の説明概念である”都市化”の吟味などを目的として行われました。その背景には、例えば中国において、都市化が進んでいる南部よりも、遅れている東北部のほうが身体の大型化が進んでいる、といった事実がありました。

そこで本研究では、”都市化”概念の中に、近年の少子化傾向を重要な条件として含め、その関連を日本および中国における乳幼児期の身体発育値資料により分析考察を行いました。

結果、発達加速現象の身体発達(量的側面)は、鈍化しつつも年々伸びていることなどを明らかにしたのです。

発達加速現象のメリット・デメリット

ここからは、発達加速現象が、どのような影響(メリット・デメリット)を持つのかについて、見ていきましょう。

発達加速現象のメリット

まずはメリットから見ていきます。

分かりやすいところとしては、身体的に成熟することで、自信や周囲の信望を高められることが考えられるでしょう。これは男子に見られる傾向で、身体が大きかったり、力が強かったりする男子は、仲間内で人気がある・リーダーになる場合が多いとされています。

発達加速現象のデメリット

続いてデメリットを考えます。デメリットとしては、例えば以下のことが考えられます。

発達加速現象は、定義の項で説明した通り、児童期を短縮させ、思春期の開始を早めます。つまり、発達における児童期の課題が未解決のまま、あるいは身体的変化への心理的な準備が不十分のまま、思春期を迎えることになりやすいということです。

体と心がアンバランスだと、性の問題やアイデンティティの問題が増加するとも考えられています。

発達加速現象について学べる本

最後に、発達加速現象について学べる書籍を2冊ほどご紹介します。

朝倉心理学講座 発達心理学

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発達心理学の概論書になります。類書の中には、発達加速現象が索引に載っていないものもありますが、本書では”青年と発達加速”という項を設け、10ページ以上にわたって説明がされています。

決定版 面白いほどよくわかる!心理学

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発達加速現象についての記述は多くありませんが、本書の特徴はその読みやすさにあります。発達加速現象に関して言えば、本書の”人間の成長で見る心理学”という章に含まれています。

この章は、さらに赤ちゃん、子ども、青年期、中高年期などと項立てられており、流れの中でいろいろな概念を学べるようになっているのです。イラストも豊富で、初学者向けの1冊と言えるでしょう。

発達加速現象を学び、子どもたちの支援に生かす

今回は、発達加速現象について、定義や具体例、背景にある要因などを見てきました。

身体が大きくなると、嬉しい気持ちが生じる場合もある一方で、そのことがコンプレックスになったり、心身のアンバランスさから様々な問題が発生したりする場合もあります。中高生は特に、自分が周囲からどう見られているか、強く意識する時期でもあります。

その意味で、発達加速現象という知識を持つことは、子どもを援助するときに役立つかもしれません。ぜひ文献などに当たり、理解を深めていってください。

参考文献

  • Adams,J.F.(1981).『Earlier menarche,greater height and weight.A stimulation-stress factor hypothesis』Genetic Psychology Monographs(104),3-22
  • 子安増生,丹野義彦他(2021).『現代心理学辞典』有斐閣
  • 野呂アイ,潘連明,野呂元(1997).『発達加速現象の再考(3) : 少子化の中の子どもの身体発育について』日本教育心理学会総会発表論文集39(0), 159
  • 文部科学省(2005).『平成16年度学校保健統計調査報告書』

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    • この記事を書いた人

    もってぃ

     もってぃと申します。公認心理師と臨床心理士の資格を所持しており、心理職として働いています。これまでは、学校や教育センター、児童相談所などで勤務してまいりました。 趣味は読書や将棋、ゲームに音楽鑑賞です。将棋は妙に長続きしていて、勢いでアマチュア四段の免状を取得しました。

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