GHQ(精神健康調査票)は心理臨床の現場や心理学研究において最も用いられている心理検査の1つです。
それでは、GHQとはどのような特徴のある検査なのでしょうか。その質問項目や解釈法についてもご紹介します。
目次
GHQ(精神健康調査票)とは
GHQ(General Health Questionnaire)とは、1970年代にゴールドバーグ,D.P.によって開発された質問紙検査です。
この検査は世界各国で使用されており、38か国もの翻訳版が存在する既存の質問紙尺度の中で最も広く使用されているものの一つです。
日本でもGHQは邦訳版が開発されており、日本語版でのGHQは精神健康調査票とも訳され、標準化がなされています。
GHQの特徴
GHQは神経症の症状把握や評価・発見に優れているスクリーニングテストです。
特に、質問内容がこころの内側を深く探るようなものではなく、質問内容が日常的なものであるよう工夫されているため、人種や文化などが異なっても実施が可能であり、豊富な翻訳版が開発されていることから、心理学研究においても国際間比較が可能であるということが大きな特徴です。
GHQの種類
実は、ゴールドバーグが開発したGHQの原版は60項目で作成されていました。
しかし、その簡便に精神的な健康度を測定できるという利点から、短縮版が複数開発されています。
主な短縮版とその特徴は次の通りです。
GHQ-60 | 神経症の検出や症状把握に有効なスクリーニングテスト |
GHQ-30 | 身体症状や睡眠障害、不安や気分変調、抑うつ傾向などを捉えることができます |
GHQ-28 | 身体症状・不安と不眠・社会的活動障害・抑うつ傾向の4つの症状を捉えます |
GHQ-12 | 時間が欠けられない質問紙研究などで、より簡便な実施を求めて作られた短縮版 |
このように、項目数も抑えられているため、被検者の負担も少なく、短時間で実施できます。
そして、検査の実施において特段熟練度を求められないため、心理臨床の現場だけでなく学校や産業領域でも広く実施されています。
GHQの解釈
GHQの得点化には2つのパターンがあります。
【GHQの採点方法】
- GHQ採点:0点・1点を「0」、2点・3点を「1」と採点する(0・0・1・1)
- リッカート法:0点から3点それぞれをそのまま評定する
GHQ採点は心理臨床の現場において、精神的に問題がある人をスクリーニングする際に有用な採点方法であり、問題がある・ないを決定するカットオフポイントは、GHQ-60だと17点以上、GHQ-12だと3点とされています。
また、リッカート法はGHQを心理学研究として用いる場合によく用いられる方法です。
この方法では、得点が高くなるほど精神的不健康の度合いが高くなるという形で解釈されることが多く、他の心理的要因や介入と比較する際に用いられることが多いでしょう。
GHQについて学べる本
GHQについて学べる本をまとめました。
質問紙調査と心理測定尺度―計画から実施・解析まで
GHQは心理学研究においてもっとも用いられている心理測定尺度の1つです。
そのような尺度を用いて研究を行う際にどのようなことに気を付ければよいのかをしっかりと学びましょう。
公認心理師のための「心理査定」講義 (臨床心理フロンティア)
GHQは心理臨床の現場でスクリーニングテストとして用いられることが多い心理検査ですが、心理的に問題を抱える人の検出力は87.1%と謝って、心理的に健康な人を不健康と誤認してしまう確率が12.9%もあるということも事実です。
そのため、GHQを含むクライエントの状態像を心理査定でしっかりと見極めましょう。
GHQ開発による心理学研究の発展
GHQは精神的健康を一目見てわかるよう可視化するツールであり、その実施の簡便さから多くの国でも用いられ世界中で広まった心理検査の1つです。
これにより、国際間比較が可能になり、様々な心理療法の介入効果や精神的健康を害する、守る心理的要因を検討する研究に大きく貢献しています。
心理学論文を読む際にも多く出てくる基本的な尺度であるため、しっかりとその内容について学んでおきましょう。
【参考文献】
- 井上果子(2012)『中学生版 精神健康調査票JHQ-12の作成』横浜国立大学大学院教育学研究科教育相談・支援総合センター研究論集(12), 53-59
- 酒井渉・野口裕之(2015)『大学生を対象とした精神的健康度調査の共通尺度化による比較検討』教育心理学研究 63(2), 111-120
- 清水裕士・大坊郁夫(2014)『潜在ランク理論による精神的健康調査票(GHQ)の順序的評価』心理学研究 85(5), 464-473
- 金安亨太・山田治・鈴木康一・松田ひろし(2003)『6 総合病院におけるGHQ(精神健康調査票)の有用性(第5回新潟GHP研究会)』新潟医学会雑誌117(6), 328-328