全般性不安障害とは?原因・症状・診断基準と治療法について解説

仕事のことや、家族のことなど生活には様々な不安を抱かせる要因があります。しかし、たいていの場合は、問題が解決したり、時間が経過すると共に不安が薄れ、健康に過ごしていけるものです。

そのような生活上の様々な事物に対する漠然とした不安感が長期間にわたって持続する場合は全般性不安障害かもしれません。それでは全般性不安障害とはいったいどのような障害なのでしょうか。その原因や症状、診断基準、治療法などについてご紹介します。

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全般性不安障害とは

全般性不安障害とは、生活上の様々な事物に対する漠然とした不安感が長期間にわたって続く精神障害です。

Generalized Anxiety Disorderの頭文字をとってGADとも呼ばれることがあります。

全般性不安障害の歴史

全般性不安障害の原点は、フロイト,Sが提唱した不安神経症にあると言われています。

フロイトによる不安神経症

フロイトは精神分析と呼ばれる理論を展開したことで非常に有名ですが、その理論では、こころには自我と呼ばれる現実に即した形で働く機能とイドと呼ばれる自分とは認められず無意識に抑圧されている領域があるという前提があります。

イドからは、生きるために必要な欲求が昇ってくるため、望ましくないものが自我の中に入り込んでこないように自我は防衛を行うのですが、あまりにも欲求が充足されず欲求不満状態が続いたり、自我がストレスなどによって弱っていると、イドからさらに強い欲求が昇ってきたときに対処できるだろうかという非常に不快な感情が生じます。

フロイトはこれが不安の正体であり、このような心(自我とイドの間で生じる)の葛藤によって不安症状が前面に出るものを不安神経症と名付けました。

そして、フロイトはそれを「悪いことが起こるのではないかという予期不安」である急性不安と「対象が限定されず、漠然とした浮動不安」である慢性不安の2つに分けました。

しかし、フロイト自身が急性不安の症状に苦しめられていたこともあり、精神分析での研究は主に急性不安を対象としたものとなり、慢性不安は急性不安に先立つ不全発作、あるいはその背景にある要因としかとらえられていませんでした。

急性不安と慢性不安の分離

その後も急性不安と慢性不安は明確に分離されることないまま時が過ぎていきましたが、1964年に抗うつ薬であるイミプラミンという薬剤がパニック発作にも有効であるという知見が世界的に広まりを見せます。

これにより、急性不安は神経症のような心の葛藤によるものではなく、薬の作用する自律神経機構や身体レベルの変動によって生じるものであるという見方が強まり、急性不安を慢性不安から分離させました。

こうして、不安神経症と呼ばれるものから急性不安を取り除いたもの、つまり、不安を主症状とする精神疾患のうち急性不安ではない残ったものが全般性不安障害だと考えられているのです。

不安とは何か

不安障害は不安を主症状とする精神障害であり、全般性不安障害もその1つです。

痛みと同じように不安を感じたことのない人が存在しないように、不安というものは非常に日常的な用語です。

それでは、不安とはいったいどのような概念なのでしょうか。

そもそも不安とは英語でAnxietyという単語で表現され、ラテン語のAnxietasさらに古くは古代ギリシャ語のAnghという単語がルーツとなっていると言われています。

このAnghとは動悸や息苦しさ、不快感などの身体感覚と関連付けられた苦悶という意味を持っています。このような背景もあり、不安は心理的な側面と身体的な側面を含んだ概念であると言えます。

そして、不安障害においてみられる不安症状は次のようなものを含んでいます。

  1. 主観的な不安感
  2. 生理的な反応(動悸・発汗・呼吸困難・胃腸症状など)
  3. 行動面(回避行動・強迫行為など)

不安という概念を心理学ストレスモデルに基づいて考えると、不安は状況を脅威的であり、自分に関連していると認知することで生じる情動であるとされています。

例えば、近所で強盗があったというニュースを聞くと多くの人は強い不安感を感じるはずですが、外国で強盗が起こったというニュースからは感じられないはずです。

これは強盗という出来事が自分の日常に近しいかどうかということが関連しています。脅威となりうる刺激を、自分の脅威として知覚・認知することで情動的反応や身体的興奮を引き起こします。

その後、そのような反応のコントロールを通じて、行動として出力されるのです。

恐怖と心配

このような不安のプロセスは恐怖と心配という2つに分けることができます。

恐怖とは具体的で外的な刺激に基づく不安感情であり、心配はより漠然とした脅威刺激及びその認知に基づいた不安感情です。

この2つは似たような体験がなされますが、詳しくは次のような違いがあります。

恐怖心配
脅威刺激が具体的である
特定の手がかりによって生起する
脅威は合理的である
始まりと終わりが明確である
持続的な覚醒状態がある

つまり、恐怖は実際に脅威が明確に提示されている状況をきっかけとして生じる感情であり、その状況から刺激が取り去られる、もしくはその状況から移動してしまえばそれ以上維持されない一過性の感情であると言えます。

これに対し、心配は曖昧さを持つことが非常に特徴です。

心配は恐怖に比べるとその感情の強度は弱い感情ですが、必ずしも心配を引き起こすきっかけは必ずしも明確でないために終わりがいつになるのかも定まらず、持続的であるという特徴があります。

そのため、外的な刺激に左右される恐怖とは異なり、心配は内的なプロセス、つまり、脅威刺激の程度や自己への関与度の評価、脅威の到来予測、脅威に対する問題解決などの能動的なプロセスが関与していると考えられています。

不安障害群の中での全般性不安障害

このように考えると、不安を主症状とする不安障害にも、恐怖と特徴としているものと心配を特徴とするものと分けることができそうです。

不安障害には、分離不安障害、選択制緘黙、限局性恐怖症、社交不安性障害、パニック障害、広場恐怖などがありますが、これらは恐怖との関連が強い障害です。

これに対し、心配に関連する不安障害こそが全般性不安障害です。

全般性不安障害の原因

全般性不安障害の原因は現在の医学でもはっきりとしたことは分かっていません。

しかし、多くの精神障害に言えることですが、全般性不安障害も遺伝的な要因と環境的な要因の双方が関連しあうことで発症すると考えられています。

不安障害に対する薬物療法の研究が進むことによって脳内の神経伝達物質の分泌異常が症状の発現に関わっていることが分かってきました。

そのため、そのような分泌異常を起こしやすい脳の機構が遺伝されると考えられています。

また、そのような遺伝的なリスクに対し、強いストレスがかかったり、虐待などのネガティブなイベントを経験することも発症に関わるとされています。

特に、全般性不安障害の患者は心配の持つ機能や性質に対する捉え方である、メタ認知が特徴的であることが指摘されています。

【心配に関するメタ認知】

  • ポジティブなメタ認知:心配することは問題解決に役立つ
  • ネガティブなメタ認知:心配はコントロールできない

全般性不安障害では誰もが持っているポジティブなメタ認知に加えて、ネガティブなメタ認知、つまり心配に対する心配も活性化しやすいため、全般性不安障害が発症、維持されると考えられています。

全般性不安障害の症状と診断基準

全般性不安障害は他の不安障害と異なり、心配に関連した不安障害でした。

それでは全般性不安障害ではどのような症状を呈するのでしょうか。

DSM-5による症状と診断基準

米国精神医学会によるDSM-5では、次のような症状が見られたら全般性不安障害であると言えるとする診断基準を示しています。

【DSM-5による全般性不安障害の診断基準】

A.(仕事や学業などの)多数の出来事または活動について過剰な不安と心配(予期憂慮)が起こる日のほうが起こらない日より多い状態が少なくとも6ヶ月間にわたる。

B.その人は、その心配を抑制することが難しいと感じている。

C.その不安および心配は、以下の6つの症状のうち3つ(またはそれ以上)を伴っている(過去6ヶ月間、少なくとも数個の症状が、起こる日のほうが起こらない日より多い)。注:子どもの場合は1項目だけが必要。

ⅰ落ち着きのなさ、緊張感、または神経の高ぶり
ⅱ疲労しやすいこと
ⅲ集中困難、または心が空白になること
ⅳ易怒性
Ⅴ筋肉の緊張
Ⅵ睡眠障害(入眠または睡眠維持の困難、または落ち着かず、熟眠感のない睡眠)
D.その不安、心配、または身体症状が、臨床的に意味のある苦痛、または、社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

E.その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症)の生理学的作用によるものではない。

F.その障害は、他の精神疾患ではうまく説明できない

全庵性不安障害と併存疾患

全般性不安障害は他の精神障害と併発しやすいということが大きな特徴です。

生涯での精神障害の併発率は90%、ある時点での併存率は65%と言われます。

全般性不安障害と併発しやすい精神障害の併発率は次の通りです。

【同時点での併発率】

  • 大うつ病性障害:8~39%
  • 単一恐怖:20~50%
  • パニック障害:21~55%
  • 社交不安障害:16~59%
  • アルコール依存症:11%

このような併存疾患は治療における重要な情報となると共に、研究者によっては全般性不安障害が単一の疾患なのか、それとも他の精神障害の前駆症状や残遺症状ではないかという見方すらあります。

全般性不安障害の治療法

全般性不安障害の治療法は大きく分けて、薬物療法と心理療法の2つに分けられます。

薬物療法で用いられることが多いのはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬やベンゾジアゼピン誘導体などの抗不安薬が用いられます。

しかし、併存疾患の存在や副作用の大きさなどによっては薬物療法を適用できないこともあるでしょう。

そのようなときでも心理療法によっても治療が行うことができます。

慢性的な心配を特徴とする全般性不安障害では、心配に対するネガティブなメタ認知が特徴的です。

そのため、認知の歪みを修正し、不適応的な行動を変容させることを目的とした認知行動療法が全般性不安障害の治療法としては有効です。

全般性不安障害について学べる本

全般性不安障害について学べる本をまとめました。

完全版 不安のメカニズム: ストレス・不安・恐怖を克服し人生を取り戻すためのセルフヘルプガイド (単行本)

全般性不安障害は不安を主症状とした精神障害です。

そのため、不安という感情がどのようなメカニズムで人間の認知や行動、身体に作用するのかをしっかりと理解しておかなければなりません。

不安のメカニズムと、不安を克服し人生を取り戻すために自分でできる対処法をまとめてある本書に目を通し、不安というものを的確に捉えられるようにしましょう。

こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳

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全般性不安障害は、心配という種類の不安と深い関わりを持つという特徴があり、心配に対するネガティブなメタ認知という特徴的な認知の歪みがみられます。

そのため、認知の歪みに対するアプローチは非常に有効となるでしょう。

うつや不安障害に特徴的な認知の歪みは自分で意識することが非常に難しいため、本書に基づいて自身の認知の特徴について書き出してみることで何らかのヒントが得られるかもしれません。

不安障害群における全般性不安障害

全般性不安障害は他の不安障害と異なり、心配と深い関わりを持つという点で一線を画す不安障害です。

しかし、その概念が生まれるには、不安を主症状とする不安神経症の中で、特徴的なものが独立していき、残ったものが全般性不安障害として残ったという背景があります。

そして、その併存疾患の多さから、他の疾患の前駆症状もしくは残遺症状として現れるもので、独立した疾患として診断に値しないのではないかという批判すらあります。

精神障害については現代の医学でわからない点も多く、今後の全般性不安障害という概念の変化について注意しておきましょう。

【参考文献】

  • 金吉晴(2013)『不安障害』日本内科学会雑誌 102(1), 183-189
  • 大坪天平(2012)『全般性不安障害の現在とこれから』精神神經學雜誌114(9), 1049-1055
  • 吉村晋平(2018)『心理学に基づく"不安"との付き合い方』追手門学院大学地域支援心理研究センター紀要(14), 9-15
  • 岸野有里・富田望・熊野宏昭(2015)『全般性不安障害のメタ認知モデルと思考制御の必要性に関する信念の関連』早稲田大学臨床心理学研究 14(1), 79-87

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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