自律訓練法とは?やり方や効果、注意点と学べる研修・書籍について解説

2021-07-22

日頃、仕事や対人関係など様々な要因からストレスを感じることがあると思います。適度なストレスは、パフォーマンスやモチベーションを高める上で必要なものですが、過剰なストレスは、心身の不調を来たすため注意が必要です。

ストレスを軽減するためには「リラクセーション法」が有効であると言われています。自分に合ったリラクセーション法を習得・活用することは、上手にストレスと付き合い、心身健やかに暮らしていく助けとなります。

ここでは、代表的なリラクセーション法である「自律訓練法」を取り上げ、自律訓練法とは何か、やり方や効果、注意点、そして自律訓練法が学べる研修や書籍などを紹介します。

なお、こちらの記事では、リラクセーション法全般について解説しています。併せてご参照ください。
 >リラクセーション法とは?主な種類と方法、効果や注意点について解説

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自律訓練法とは

自律訓練法とは、ドイツの精神医学者であるシュルツにより開発されたリラクセーション法です。やり方は後述しますが、式」と呼ばれる身体の状態を感じる言葉を唱えながら、身体の変化を感じることで意識的にリラックスした状態を作り出す方法です。

催眠状態に入ると、心身の緊張が緩み、リラックスした状態となります。シュルツは、催眠状態に入った多くの人が、腕や脚が重く・温かくなると感じたとの報告から、その重感や温感を再現する自己暗示によって催眠状態を作り出す方法を考案しました。

これが体系化されたものが自律訓練法であり、自らを催眠状態に導くために、自己暗示を掛けるといった自己催眠から発展した方法と言えます。

自律訓練法の効果

自律訓練法は、自己暗示によって催眠状態を作り出し、リラックスした状態へと導きます。リラックスした状態では、緊張や興奮が促される交感神経の活動を抑えられ、心身を休める副交感神経が優位に働きます。この2つの自律神経のバランスを調整することが、心身の健康を保つことにつながります。

自律訓練法には、緊張や不安、抑うつ、不眠など心身のストレス反応を和らげる効果が期待されており、心理療法として不安や緊張に付随する症状の改善等に活用されています。

さらに、疲労回復など心身の健康の維持・増進、パフォーマンス向上の効果が期待されるとして、医療機関のみならずスポーツや教育、産業など幅広い領域で役立てられています。

自律訓練法のやり方

自律訓練法は、身体感覚を心の中で繰り返しつぶやく言葉(公式)を積み重ねることでリラックスした状態を深めていきます。

公式には背景公式及び6段階の公式があり、背景公式で気持ちを落ち着けてから、第1公式から順に進めていきます。1つの公式ができるようになれば次の公式へと進み、順次身体の変化を感じていきます。そして、終了時に消去動作を行って元の状態に戻すといった流れとなります。

自律訓練法の実施においては、1回3~5分間の練習を1日2~3回行うといった短い練習を繰り返すことが勧められています。習得にはある程度の期間の練習を要しますが、継続して練習する中で次第に身体変化の感覚を掴むことができるようになります。

実施において大切なことは、その部位に変化を出そうとするのではなく、さりげなく気持ちを向けて、ぼんやりと身体の変化を味わう「受動的注意集中」の構えとなります。

準備

自律訓練法を行うに当たっては、集中しやすい環境を整えることが必要です。

例えば、静かで落ち着いた場所で行うこと、空腹時は避けてトイレも事前に済ませておくこと、ベルトや時計など身体を締め付けるものを外しておくことなどが挙げられます。

姿勢としては、椅子に深く腰を掛ける、仰向けに寝るなど、なるべく力が抜けて楽な姿勢で臨みます。

背景公式(安静練習):「気持ちが落ち着いている」

まずは、背景公式によって気持ちを落ち着いている状態を作り出します。腹式呼吸をしながら身体の力を緩めていき、「気持ちが落ち着いている」という公式を心の中で繰り返します。

この時、気持ちを落ち着かせようとするのではなく、公式を唱えながら、ぼんやりと落ち着いている状態を感じ取るといった受動的注意集中の構えが大切です。

第1公式(四肢重感練習):「両腕・両脚が重たい」

利き腕から始めます。右利きの場合なら「右腕が重たい」という公式を繰り返しながら、右腕にぼんやりと注意を向けます。

重みを感じるということは、筋肉が緩んだ状態であると言え、リラックスした状態に近づいているとも考えられます。

利き腕に重みを感じることができるようになれば、反対の腕に移り「左腕が重たい」と唱えながら、左腕の重みを感じます。そして、両腕、片方ずつの脚、両脚と移行し、最終的には「両腕・両脚が重たい」といった公式となります。

第2公式(四肢温感練習):「両腕・両脚が温かい」

第1公式と同じ流れで、右利きの場合なら「右腕が温かい」という公式を繰り返しながら、右腕にぼんやりと注意を向けます。

じんわりと温かみを感じることができるようになれば、反対の腕、両腕、片方ずつの脚、両脚と移ります。リラックスするほど血管が拡張し、血流が増加するため、自然と温かさを感じることができることができるようになると言われています。

第3公式以降は、意識を集中させる部位に不調があると悪化する場合が懸念されるため、専門家による指導の下で取り組むことが望ましいとされています。(第1公式・第2公式は自身で取り組むことができ、第2公式までの実施でも自律訓練法としての効果は見込まれます)

第3公式(心臓調整練習):「心臓が規則正しく打っている」

「心臓が規則正しく打っている」という公式を繰り返しながら、鼓動に意識を向けます。心拍数を変えようとするのではなく、心臓が静かに規則正しく鼓動していることをそのまま感じることで、リラックスした状態が深まるとされています。

第4公式(呼吸調整練習):「楽に息をしている」

「楽に息をしている」という公式を繰り返しながら、呼吸をそのままに感じます。リラックスした状態においては、楽に深い呼吸をしていると感じることができるとされています。

第5公式(腹部温感練習):「お腹が温かい」

腹部に意識を向け「お腹が温かい」という公式を繰り返し唱えます。腹部に温かみを感じることができれば、リラックスした状態であると言えます。

第6公式(額部涼感練習):「額が気持ちよく涼しい」

「額が心地良く涼しい」という公式を繰り返しながら、額に意識を向けます。リラックスした状態においては、手足や腹部に温かみを感じるとともに、額に爽やかで涼しい風を受けている感覚を得ることができると言われています。

消去動作

練習中は深いリラックス状態となり、覚醒水準が下がってぼんやりとするため、終了時に消去動作を行うことが必要です。

手足の屈伸や背伸びなどの動作を行うことではっきりとした意識に戻し、その後の日常生活に集中できるよう調整しておきます。

ただし、不眠の改善などを目的に入眠前に練習する場合は、消去動作を行わず、終了後そのまま寝ることもあります。

自律訓練法を行う際の注意点

自律訓練法のやり方の部分でも記述しましたが、意識を集中させる部位に不調があると症状を悪化させてしまう場合があることに注意を払う必要があります。そのため、何らかの疾患等により医療機関にかかっている場合は、実施について医師に相談しておくことが望ましいと言えます。

特に、第3公式以降は禁忌と言われる症状が存在します。例えば、心臓に疾患のある場合は第3公式、呼吸器に疾患がある場合は第4公式、消化器に疾患のある場合や妊娠中であれば第5公式、頭痛やてんかんがある場合は第6公式を省略するとされています。

そのほか、終了時に消去動作を行うことが必要です。既に説明しましたが、消去動作を行わないと、ぼんやりとした状態のままとなるため、ふらつきやだるさが生じて、その後の活動に支障を来たす場合があるため注意しましょう。

自律訓練法に関する研修・ワークショップ

自律訓練法の効果を十分に得るためには、継続して練習することのほか、研修やワークショップの受講を通して、正しい練習方法を身に付けておくことも肝要です。

様々な学会や組織で研修やワークショップが開かれていますが、代表的なものとして日本自律訓練学会が挙げられます。年1回学術大会も開催されており、学会認定のワークショップや講習会も行われています。

自律訓練法について学べる本

最後に、自律訓練法について詳しく学ぶ上で参考になる書籍を紹介します。

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自律訓練法のやり方や効果、注意点などが分かりやすくまとめられており、自律訓練法とは何かを掴む上では適している書籍です。

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文字だけでは分かりにくい場合には、動画を視聴することも一法です。実際のやり方を見ることができるため、イメージしやすくなると考えられます。

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自律訓練法のほか、呼吸法や漸進性弛緩法などのリラクセーション法がまとめられています。学校場面での活用を想定したものですが、声掛けの文言が紹介されているなど、実施に当たって参考となる内容となっています。

短時間でも意識的にリラックスする時間を持つこと

日々慌ただしく生活する中では、じっくりと休息を取ることは容易ではありませんが、短時間でもリラックスできる時間を意識的に持ち、心身を休めることが肝要です。

自律訓練法は、その名のとおり練習を重ねて習得するものですが、身に付けることができれば、いつでもどこでも無理なく取り組めるリラクセーション法となり得ます。第2公式までは自身で取り組める内容ですので、興味を持たれた方は是非試してみてはいかがでしょうか。

参考文献

  • 佐々木雄二 著(2008)『自律訓練法 新装版―1日10分でリラックスできる』ごま書房
  • 佐々木雄二 著(1984)『自律訓練法の実際:心身の健康のために』創元社
  • 藤原忠雄 著(2006)『学校で使える5つのリラクセーション技法』ほんの森出版
  • 島悟・佐藤恵美 著(2007)『ストレスマネジメント入門』日経文庫
  • 日本自律訓練学会ホームページ『自律訓練法とは』(2021年7月19日参照)

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    • この記事を書いた人

    blue_horizon

    民間企業在職中に心理カウンセラーを志し、心理学を学び始める。臨床心理士指定大学院卒業後は、司法及び産業領域の心理職として稼働。公認心理師・臨床心理士。

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