反社会性パーソナリティ障害とは?定義や特徴、治療方法について解説

2021-07-21

反社会性パーソナリティ障害とは、法律などの社会規範を守らず、他者を欺いたり傷つけたりする事を平然と行うパーソナリティ障害です。

本記事では、反社会性パーソナリティ障害の定義や診断基準と特徴に加え、治療とサポートの方法について解説していきます。記事の後半では、より詳しく学びたい方に向けて、反社会性パーソナリティ障害について学べる本もご紹介します。

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反社会性パーソナリティ障害とは

まず、反社会性パーソナリティ障害とはどのようなものなのか、その意味や定義をみていきましょう。

パーソナリティ障害とは

反社会性パーソナリティ障害を含むパーソナリティ障害とは、そもそもどのようなものなのでしょうか。

パーソナリティとは、生まれつき持った性質である気質と、生きていく中で形成される性格とが入り混じったものです。このパーソナリティは人それぞれ違い、一定の範囲で凸凹があって当然です。時にはそれがその人の魅力にもなりますよね。

けれどもパーソナリティの偏りがあまりにも極端な場合、社会生活に支障をきたすことにもなりかねません。

このように、社会生活に支障をきたすほど著しいパーソナリティの偏りを、パーソナリティ障害と呼びます。(以前は人格障害と呼ばれていました)実践的には、DSMー5というアメリカ精神医学会が作成している精神疾患の診断基準を踏まえて診断がなされます。

当たり前の事ですが、障害と名前をつけるのは、差別や偏見を生むためではなく、本人や周囲の人の辛さをサポートするためです。

抑うつ、リストカット、摂食障害、アルコール依存、引きこもり等、今困っている事に対応するために、パーソナリティ障害の理解を役立てるのだ、ということを忘れてはなりません。

反社会性パーソナリティ障害の意味と定義

反社会性パーソナリティ障害は、DSMー5において、境界性パーソナリティ障害や自己愛性パーソナリティ障害とともに、クラスターB群に分類されています。

反社会性パーソナリティ障害と診断される人は、法律等を無視し、他者の権利を侵害し、反社会的な行為を繰り返します

反社会性パーソナリティ障害は、ルールを守ろうとする意識や他者への想像力の足りなさから、ルールを逸脱した不誠実な行動をとる障害と言えるでしょう。

反社会性パーソナリティ障害の特徴

反社会性パーソナリティ障害には、どのような特徴が見られるのでしょうか。ここでは、行動・認知スタイル・生育歴について取り上げてみていきましょう。

行動

反社会性パーソナリティ障害の人の行動は、衝動的で、傷害や窃盗などの犯罪行為につながることもあります。診断がされるのは18歳以降ですが、15歳までに、いわゆる非行を繰り返し行なっていることがあります。

認知スタイル

白か黒かという柔軟性に欠けた考え方をし、自己中心的で敵対的です。目的達成のために、人を傷つけることにためらわない場合も少なくありません。弱さを嫌い、同情や共感を示さず、信頼を得たり責任を果たすことに価値を認めない場合もあります。

生育歴

両親の愛情不足、またはその反対に溺愛されて育っていたり、虐待やネグレクトを受けたケースも多いと言われています。元々ADHD(注意欠如・多動性障害)などの発達障害を持っている子供への不適切な対応が指摘されることもあります。

このような生育歴の特徴について考えるのは、生育環境や養育者を非難するためではなく、あくまでも本人の状況を理解し支援に結びつけるためです。

さらに、このような特徴を踏まえて、子供を育てるという事について親や将来親になる人への教育や支えが、反社会性パーソナリティ障害の予防につながることが示唆されます。

反社会性パーソナリティ障害の治療とサポート

反社会性パーソナリティ障害の治療はどのように行われるのでしょうか。また、サポートの際に留意する点はどのようなことでしょうか。

受診まで

反社会性パーソナリティ障害を持つ人は、相手を従わせようとはしても、自ら助けてもらおうとはなかなか考えません。そのため、本人が進んで受診を希望することはあまりなく、逮捕などが受診に結びつくこともあります。

一般診療の困難さ

治療は、本人と治療者との間で治療契約を交わし、それを遵守する事が前提として行われます。

この点、反社会性パーソナリティ障害を持つ人は約束を守ろうとする意思に欠け、信頼関係を築くことも容易ではないので、一般的な医療機関での治療には向いていません。

そのため、矯正施設等で反社会性パーソナリティ障害の治療のために作られたプログラムに基づき、治療や教育を受け社会復帰を目指して行くことになります。

サポートの留意点

反社会性パーソナリティ障害の克服には、失われた信頼関係の構築が不可欠です。これは容易なことではありません。

信頼関係を築くためには、相手を否定するのでもなく、相手の言いなりになるのでもなく、中立的な態度を保ち続ける必要があります。中立的な態度を保ちつつ、相手を信じ見守り続ける存在との出会いが、反社会性パーソナリティ障害の克服に大きな影響を与えるとされています。

さらに、反社会性パーソナリティ障害の激しさは年齢とともに落ち着く事が多いこと(晩熟現象)も、希望の1つとなるでしょう。

パーソナリティ障害の相談機関

反社会性パーソナリティ障害の専門医療機関はあまりありません。反社会性パーソナリティ障害かどうかも、自分や周囲の人では診断もできません。

まずは、目の前にある具体的な辛さや苦しさを相談していくことが第一歩となります。

全国の相談窓口をまとめたサイトをご紹介しておきます。

反社会性パーソナリティ障害について学べる本

反社会性パーソナリティ障害について学べる本をご紹介します。

豊富なカラーイラストで読みやすい「ウルトラ図解 パーソナリティ障害」

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パーソナリティ障害について、日本精神神経学会の専門医が監修した一般向けの本です。

パーソナリティ障害に関する基礎知識の他、10種類のパーソナリティ障害それぞれについて、特徴や治療方針、周囲のサポートが説明されています。反社会性パーソナリティ障害については、第2章78ページ〜記載されています。

カラーのイラストが豊富で、気軽に手に取りやすい本です。

上級者向け「良心をもたない人たちへの対処法」

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著者はアメリカの臨床心理学者です。本書は著者の豊富な事例をもとに、「良心をもたない人」(=ソシオパス)への関わり方を解説したものです。

著者の言う「ソシオパス」は、反社会性パーソナリティ障害と共通する部分もありますが、全くイコールではありません。「ソシオパス」と呼ばれる人が、自分の子供であったり職場の上司や同僚であった場合に、自分や家族の身をどのように守るかという視点で書かれています。

「ソシオパス」に対する敵対的な著者の見方を極端に感じたり、不快に思われる可能性もあるため、上級者向けとしました。まずは、中立的な視点から反社会性パーソナリティ障害を理解した上で読まれることをお勧めします。

障害から個性へ

「個性的」と言う言葉は魅力的でもあります。けれども「パーソナリティ障害」という言葉に魅力を感じる人は少ないでしょう。けれどもこの2つには、白と黒のようなはっきりとした区別があるわけではないのです。

大切な事は、障害かどうかではなく、本人や周囲の人がより「生きやすくなること」です。誰かとの関わりの中で生き辛さを感じているのなら、専門家に相談する勇気を持っていただきたいと思います。

「誰か」が悪いわけではなく、「障害」が私たちが生きることの邪魔をしているのです。

反社会性パーソナリティ障害という診断が、本人や周囲の人への差別や偏見のためではなく、その理解やサポートのために使われる事を、心から願っています。

参考文献

  • 牛島定信(2012) 図解 やさしくわかるパーソナリティ障害 ナツメ社
  • 岡田尊司(2014) パーソナリティ障害がわかる本ー「障害」を「個性」に変えるために 筑摩書房
  • 林直樹(監修)(2018) ウルトラ図解 パーソナリティ障害 法研
  • マーサ・スタウト(著)、秋山勝(訳)(2020) 良心をもたない人たちへの対処法 草思社

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    • この記事を書いた人

    こころ

     臨床心理学・実験心理学等を学んだ後、心理カウンセラーとして勤務。現在はライターとして活動中。

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