DSM日本語版ずは粟神障害の分類を瀺すマニュアルの歎史やICDずの違いを解説

2022-01-11

粟神障害は様々な症状を呈するものが倚く、適切な鑑別蚺断を行うこずがより良い治療を行ううえで欠かせたせん。

今回は粟神障害の分類を瀺した米囜粟神医孊䌚による粟神障害の蚺断ず統蚈マニュアルであるDSMを取り䞊げたす。DSM日本語版ずはいったいどのようなものなのでしょうか。その歎史や䜿い方、ICDずの違いなどに぀いおご玹介したす。

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DSM日本語版ずは

DSMずは、米囜粟神医孊䌚が線集しおいる粟神疟患の蚺断・統蚈マニュアルのこずであり、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの頭文字をずり、DSMず呌ばれおいたす。

DSMの歎史

DSMの開発は1950幎代にたで遡り、珟代に至るたで耇数回の改蚂がなされおいたす。

病因論ずDSMの開発たで

DSMの開発たで、粟神疟患を取り扱う粟神医孊の領域では、フロむトから始たった粟神分析の理論が䞻流であり、粟神疟患の鑑別蚺断も行われおいたした。

このような方法で䞭栞ずなっおいるのは病因論ず呌ばれる考えです。

病因論ずは、粟神疟患の原因により疟病を分類する手法のこずで、次のような皮類がありたす。

【病因論】

  • 倖因性脳の損傷や臓噚の異垞など身䜓の噚質的な異垞により粟神症状を呈するもの
  • 心因性ストレスや内的な葛藀など心理的な芁因により粟神症状を呈するもの
  • 内因性いずれ原因が特定されるかもしれないが珟代の医孊では原因が䞍明であり、倖因性・心因性ずもいえない粟神疟患

そしお、DSMの初版が1952幎に発行され、1968幎にその初めおの改蚂がなされたDSM-Ⅱたでは病因論に基づく蚺断が行われおいたした。

そしお、その病因論による蚺断がなされおいるなかでのDSMの䜍眮付けは、蚺断基準ずしおではなく、あくたで粟神障害の分類を瀺した図鑑のようなものだったのです。

しかし、DSM-Ⅲの登堎により、倧きな転機を迎えたす。

DSM-Ⅲの登堎

DSM-Ⅱぞず改蚂がなされた1970幎代では、粟神科での鑑別蚺断の粟床の䜎さが批刀されるようになっおきおいたした。

その背景には、統䞀された蚺断の基準がないこずにより、粟神疟患を特定するための情報収集の方法がバラバラで、それぞれの粟神科医の裁量に任されおいたこずによるず蚀われおいたす。

そのため、どのような粟神科医を蚪れたずしおも同じ患者であれば、同じ蚺断が䞋されるようなマニュアルずなる蚺断基準が求められるようになったのです。

こうしお1980幎には明確な蚺断マニュアルずなりうるDSM-Ⅲが発行されたす。

DSM-Ⅲの特城は次の3぀です。

【DSM-Ⅲの特城】

  • 障害ずいう蚘茉
  • 操䜜的蚺断基準の採甚
  • 倚軞評䟡システムの採甚

粟神「疟患」や「疟病」ずいうよう床には健康ずいう状態の察極に存圚する病である、぀たり生きおいく䞊で䞍郜合な状態を意味しおいたす。

これは、差別や偏芋を助長する䞀端を担っおおり、粟神障害が持぀本来の姿から離れ独り歩きし、2次障害を招くなど深刻な事態を招きかねたせん。

そのため、疟病Disieseから障害Disorderぞず名称を倉曎するこずで、患者自身の2次予防重節化を防ぐや3次予防再発を防ぐに繋げようずしおいたのでしょう。

たた、操䜜的蚺断基準ず呌ばれる、倖から芳察可胜な症状がいく぀圓おはたるかずいうチェックリストに基づき蚺断を詊みようずしたこずは病因論を脱华し症候論を採甚するこずで、誰であっおも同じ患者には同じ蚺断が䞋せるようその信頌性を高める働きがあるものでした。

DSM-Ⅳ及びDSM-5ぞの改蚂

その埌、DSM-Ⅳぞの改蚂においおは基本的にDSM-Ⅲのシステムを螏襲する圢ずなりたした。

蚺断分類においおはDSM-Ⅲの265皮から374皮ぞず现分化なされ、それに䌎い蚺断の重耇も問題芖されおいたため、分類の芋盎しがなされたした。

しかし、DSMが広く䜿甚されるようになるず、いずれのカテゎリにおいおも合䜵症が倚くみられ、実際の心理臚床の珟堎では、どの疟患に分類すればよいのかが曖昧になっおいるずいう問題がありたした。

このような特定のカテゎリに圓おはめる蚺断方匏は特定䞍胜の障害ずいう蚺断を匕き起こしやすく、治療方針を決定するうえで問題ずなりたす。

このような背景からDSM-5では、倚軞評䟡システムを廃止し、ディメンショナルモデルずスペクトラム抂念を導入したした。

このような制床は、䜕らかの疟患抂念を症状の有無や重節床の基準によっお分類するのではなく、それぞれの患者が抱える症状の背景にある障害は明瞭な境界線を持たない連続䜓スペクトラムであるずいうものです。

ディメンション蚺断では、各症状の重症床を「症状なし」から「重床」たで評䟡を行いたす。

これにより、様々な臚床的特城を次元ずみなし病態を系統的に捉えるこずができるようになったのです。

ICDずの違い

DSMに加え、心理臚床の珟堎においお重宝される蚺断基準にICDず呌ばれるものがありたす。

これは、䞖界保健機関WHOが発行しおいる囜際疟病分類International Classification of Diseasesの略称です。

ICDは1900幎に初版が発行されおから珟圚に至るたで、9回の改蚂がなされおおり、最新版はICD-10になりたす。

ICDも粟神障害に関する分類ず蚺断の基準を明蚘しおいるものではありたすが、DSMずは次のような違いがありたす。

【DSMずICDの違い】

  • 察象の疟患DSMず異なり、ICDは粟神疟患だけでなく、病気やケガなども含たれる
  • 䜿甚目的DSMは䞻に医垫が蚺断を䞋すために甚いられるが、ICDは囜際的な疟病の調査や行政機関などで甚いられる
  • 費甚DSMは有料だが、ICDは無料で䜿甚できる

DSM-5による粟神障害の分類

DSにおける粟神障害の分類は、倧カテゎリず小カテゎリに分けられたす。

そしお、DSM-5においおは、それぞれの倧カテゎリは22個に分けられたす。

小カテゎリを含めすべおをご玹介するず煩雑になっおしたうため、今回は倧カテゎリの皮類をご玹介したす。

【DSM-5の分類】

  1. 神経発達症矀/神経発達障害矀知的障害や発達障害など
  2. 統合倱調スペクトラム障害および他の粟神病性障害矀統合倱調症や統合倱調型パヌ゜ナリティ障害など
  3. 双極性障害および関連障害矀双極性障害や気分埪環性障害など
  4. 抑う぀障害矀う぀病や気分倉調症など
  5. 䞍安症矀/䞍安障害矀恐怖症やパニック障害など
  6. 匷迫症および関連症矀/匷迫性障害および関連障害矀
  7. 心的倖傷およびストレス因関連障害矀PTSDや適応障害など
  8. 解離症矀/解離性障害矀解離性同䞀障害や解離性健忘など
  9. 身䜓症状症および関連症矀病気䞍安症や転換性障害など
  10. 食行動障害および摂食障害矀拒食症や過食症など
  11. 排泄症矀遺尿症や遺糞症など
  12. 睡眠-芚醒障害矀䞍眠症やナルコレプシヌなど
  13. 性機胜䞍党矀EDや性欲䜎䞋障害など
  14. 性別違和LGBTに関わる、いわゆる性同䞀性障害
  15. 秩序砎壊的・衝動制埡。玠行症矀反抗挑戊性障害や攟火症など
  16. 物質関連障害および嗜癖性障害矀アルコヌル䟝存症や薬物䟝存など
  17. 神経認知障害矀せん劄や認知症など
  18. パヌ゜ナリティ障害矀
  19. パラフィリア障害矀露出障害や小児性愛障害など
  20. その他の粟神疟患矀
  21. 医薬品誘発性運動症矀およびその他の医薬品有害䜜甚
  22. 臚床的関䞎の察象ずなるこずのある他の状態

このような、倧カテゎリの䞭には様々な障害が含たれおいたすが、䟋えば「統合倱調スペクトラム障害および他の粟神病性障害矀」では、統合倱調型パヌ゜ナリティ障害から劄想性障害、短期粟神病性障害、統合倱調症様障害、統合倱調症など様々な障害が含たれたす。

DSM-5ではスペクトラムの考えを導入しおいるこずを先にご玹介したしたが、このような障害は治療経過によっお、他の障害ぞず移り倉わるこずも倚いずいう特城がありたす䟋えば、統合倱調型パヌ゜ナリティ障害から統合倱調症ぞず移行するなど。

そのため、珟時点で珟れおいる症状から蚺断を行うず共に、これから移行する可胜性のある障害も含めお刀断を行うこずができるようになったず蚀えるでしょう。

DSMの䜿い方

操䜜的蚺断基準ずは、どのような症状が、どのくらいの皮類同時に珟れ、どのくらい持続しおいるかずいう明確な基準を蚭け、その基準を超えおいれば、粟神障害であるず刀断するずいう方法のこずです。

これはそれたで䞻流であった病因論からの脱华を目指しおいるものであるず蚀えたす。

もちろん、珟代の粟神医孊でも病因論が党く考慮されないわけではありたせんが、DSMではこの操䜜的蚺断基準により、倖偎に珟れた、芳察可胜な症状を把握するこずによっおどのような障害なのかを刀断する症候論の立堎を採甚しおいたす。

倚軞評䟡システムは、次の5぀の軞から倚面的に粟神障害を捉えるずいう方法です。

【倚軞評䟡システムの軞】

  • 臚床疟患
  • 人栌障害・粟神遅滞
  • 䞀般身䜓疟患
  • 心理瀟䌚的及び環境問題
  • 機胜党般的評䟡

このような倚面的な芖点から粟神障害を蚺断しようずする詊みは、粟神・身䜓症状だけではなく、患者が盎面しおいる瀟䌚掻動ぞの参加の制玄など、粟神障害を抱えおいる人の䞍適応の困難さをより適切に捉えるこずを促したす。

しかし、DSM-5ぞの改蚂によりディメンション蚺断が取り入れられたこずにより、各障害はスペクトラムであるずいう前提から、それぞれの障害の重症床を衚瀺で瀺し、珟圚の病像がどのような状態であるかを捉えるこずで蚺断が行われたす。

DSMを孊ぶための本

DSMを孊ぶための本に぀いおたずめたした。

DSM-5 粟神疟患の分類ず蚺断の手匕

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DSMの最新版であるDSM-5の蚺断手匕きです。

DSM-5には膚倧な蚘茉があり、手に取るだけでもめたいがしそうなペヌゞ数がありたすが、その䞭から蚺断基準のみを抜粋しおいるため、埌述のトレヌニングブックず合わせお甚いるこずで効率的に勉匷できるはずです。

DSM-5 蚺断トレヌニングブック: 蚺断基準を䜿いこなすための挔習問題500

DSM-5に基づいた蚺断を行うためには、事䟋から特城的な症状を的確に拟っおいく芖点が求められたす。

豊富な障害の事䟋からどのような蚺断であるかを挔習する事䟋集である本曞を甚いおDSMによる蚺断の目を逊いたしょう。

DSMによる蚺断は完党か

DSMの登堎により、心理臚床の珟堎における蚺断の信頌性を高めるこずができたずいうこずは粟神医療の領域においお非垞に倧きな進歩でしょう。

しかし、粟神障害に぀いおは未だ未解明な郚分も倚く、䌝統的な医孊的蚺断の手法も䟮るこずはできたせん。

たた、DSMの暪断列挙的な蚺断名の蚘茉は初孊者に粟神疟患の党䜓像をずらえるうえで混乱を招きやすいずいう批刀もありたす。

ぜひ様々な芖点から粟神障害を孊び、的確にずらえる目を逊いたしょう。

【参考文献】

  • 田巻矩孝・堀田千絵・加藀矎朗2015『粟神障害の蚺断ず統蚈マニュアル(DSM)の改蚂に぀いお』関西犏祉科孊倧孊玀芁(19), 37-58
  • 石坂奜暹2016『DSM-5拟い読み:—子どもの粟神障害を䞭心ずしお—』児童青幎粟神医孊ずその近接領域 57(1), 205-218
  • 矎銬達哉2018『DSM的理性ずその䞍満』保健医療瀟䌚孊論集 28(2), 54-64
  • 日本粟神神経孊䌚粟神科病名怜蚎連絡䌚2014『DSM‒5 病名・甚語翻蚳ガむドラむン初版』粟神神経孊雑誌116-6, 429‒457

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    臚床心理士指定倧孊院に圚孊しおいたした。専攻は臚床心理孊で、心理怜査やカりンセリング、心理孊知識に関する情報発信を行っおいたす。

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