摂食障害とは?原因やなりやすい性格と診断方法、治し方を解説

2022-02-14

私たちは日常的にご飯を食べることでその生命活動を維持しており、食行動というものは日常から切り離すことのできない重要な行動の1つです。そして、その食行動に異常をきたす場合には、健康はおろか生命の危険すらあるでしょう。

そのような、食行動に異常をきたす精神障害のことを摂食障害と言います。それでは摂食障害とはいったいどのような精神障害なのでしょうか。その原因やなりやすい性格、診断、治し方、相談先、学会についてご紹介します。

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摂食障害とは

摂食障害とは、過度に食を拒むもしくは過度に食を摂取する食行動の異常と、それに伴う体型や体重が本人にとって大きな意味を持つことを特徴とする精神障害です。

摂食障害の歴史

接触障害の歴史は19世紀まで遡ることができます。

食行動の異常と精神障害の結び付け

「食べない」という拒食の問題は、内臓の異常であったり、体型が変化するなど身体的な症状をきたすため、精神的な異常ではなく、胃の病気など身体的な疾患と結びつけられて考えられていました

しかし、モートンというロンドンの意思が1869年に拒食という症状は生理学的な問題のみならず激しい心の悲哀という心理的な要因と結びつけ、「神経性消耗症」という概念を提唱します。

こうして食行動の異常を示す摂食障害は精神障害の1つとして捉えられるようになります。

摂食障害とヒステリー

モートンの提唱と同時期に、当時流行っていたヒステリーという精神障害(今でいう解離性障害と転換性障害)と拒食を結びつける動きがみられていました。

1868年にガル、そして1873年にラセーグは、ヒステリー患者が痩せるという症状を示すことに注目し、ヒステリー性無食欲症という症例を発表しています。

ガルはヒステリー性の無食欲症状を、自我の機能異常による中枢神経や末梢神経の異常が関わっていると考えました。

また、ラセーグは拒食が周囲の人々を媒介して生じるものであると考え、家族の影響を指摘しています。

このようにして、ヒステリーと摂食障害の関係性に関する指摘がなされたものの、ヒステリー研究の大家であるジャネは拒食がヒステリー性のものであるとは限らないとして、ナディアという少女の症例を呈示します。

ナディアは拒食の症状を示していましたが、その根底には、小さな可愛い少女のままでいるために成長に必要な食事を拒否し、醜く見える恐怖から自分の身体を隠すという行動をとっていました。

このことから摂食障害にはヒステリー性のものと、成長しないままでいたいという「成熟拒否」を中核とするものの2パターンがあるという考えが浸透していきます。

神経性無食欲症と神経性過食症の登場

ジャネが拒食の問題に触れてから摂食障害に関する研究は大きく進むと思われましたが、その後心理臨床の現場で一世を風靡する治療法である精神分析の創始者であるフロイトが拒食という症状にあまり関心を示さなかったことで一時的に停滞します。

その後改めて摂食障害に関する研究が大きな転換を見せたのは1962年のことです。

精神分析医のブルッフは拒食によって生じる痩せ症状や無月経などは、内面的変化が表現に現れたものに過ぎず、この問題の中核にあるのは自我同一性の問題であるとして、次の3つの特徴を示しました。

【ブルッフによる摂食障害の特徴】

  • 身体像・自己認知の深い混乱
  • 内的・外的刺激の誤った解釈
  • 内的な無力感

そして、このような特徴の根底には、子どものころ保護者が自分の欲求を子どもの欲求に置き換えてしまい、子どもの欲求を保護者が正しく受け取って返すことができないために、子どもは自分自身の欲求が分からなくなってしまうために生じると考えました。

その後、1973年にフェイグナー研究のための診断基準を作成し、神経性無食欲症という疾患概念を浸透させます。

このような基準確立によって、神経性無食欲症の中核には、体重減少と痩せによる心身の症状、食に対する歪んだ態度のみならず、身体への嫌悪や体重増加・肥満への恐怖なども重要な要素として含まれるようになります。

こうして、拒食の問題がクローズアップされていく中で、正反対の食行動を示す過食の問題にも光が当たります。

日本の下坂は神経性無食欲症の人に過食の症状がみられることを報告しており、1970年代になると、欧米で過食が前面に出ている症例が法臆されるようになります。

こうして1979年にラッセル神経性過食症という疾患概念を提唱し、神経性無食欲症とは別のものであると主張しました。

DSMによる摂食障害概念の成立

このような研究用の診断基準確立により、1980年に米国精神医学会が発行したDSM-Ⅲでは、神経性無食欲症に加え、過食症という概念が紹介され、その診断基準が示されました。

しかし、当時は気晴らしのための無茶食いなどの食行動の異常にしか触れられず、児童青年期に発症するという限定がつき、神経性無食欲症概念の一部と捉えられていました。

しかし、1994年にDSM-Ⅳへ改訂がなされることで、神経性無食欲症と神経性過食症は独立した別の疾患であると記載がなされ、摂食障害という精神障害にはその2つの疾患によって構成されているという現在受け入れられている概念へと確立がなされたのです。

摂食障害の種類

DSM-Ⅳでは、大きく神経性無食欲症と神経性過食症の2つに分けられました。

そして、それぞれの疾患はさらに細分化することができます。

【神経性無食欲症の下位類型】

  • 制限型:食事を摂ることを拒むという拒食行動による体重減少を示す
  • 無茶食い/排出型:拒食行動を示す期間に、無茶食いをしてしまい、体重増加を恐れるために下剤や嘔吐など行うことで、体重が減少してしまう

【神経性過食症の下位類型】

  • 排出型:無茶食いを行った後に下剤や利尿剤、嘔吐などの症状を示す(神経性無食欲症と異なり、体重減少は見られない点で異なる)
  • 非排出型:無茶食いを行う過食行動を行うが、下剤の使用などは行わない

【特定不能の摂食障害】

上記の摂食障害のどの診断基準も満たさないもの

 

摂食障害の原因

現在の心理学研究に基づけば、摂食障害は一つの原因によって発症するのではなく、紳士的、生理的、家庭・社会・文化的要因など様々な要因が複雑に作用しあうことで発症すると考えられています。

そして、発症のリスクとなる準備因子を持っている人に対し、ダイエットやストレスなどの誘発要因が加わることによって発症するのです。

摂食障害の準備因子としては、社会的文化的要因・環境的要因・個人的要因の3つに分類することができます。

社会文化的要因

社会文化的要因とは、摂食障害を引き起こすような社会的な風潮のことです。

現代の雑誌モデルや芸能人など望ましいとされる外見の人の多くは痩せた体型をしています。

そして、そのような望ましいイメージは雑誌やテレビ、SNSなどのメディアによって情報が拡散され、私たちの中に良いイメージとして残ることで、社会的風潮が出来上がります。

摂食障害は女性に多いことが知られていますが、このような社会的風潮の増加が痩身願望を助長し、痩せていない自分への自己イメージの低下を引き起こすため、過剰なダイエットなどの行動を導いているという指摘があります。

環境的要因

環境的要因の主要なものとしては家庭環境が挙げられます。

摂食障害患者には、愛情に欠ける家庭もしくは過保護すぎる家庭などが特徴的であるということが古くから指摘されています。

特に夫婦間の問題が子どもへと転嫁されるケースも散見されており、実際にはうまくいっていない夫婦関係を子どもの病気という共通の目標によって回避しようとしたり、妻や夫への不満を子どもを通じて解消しようとする三角関係など、歪んだ家族システムは摂食障害の発症リスクとなることが知られています。

個人的要因

個人的要因は、身体的な要因や性格・行動。認知の特性など幅広い要因を含んでいます。

その中でも、摂食障害患者に主に共通する特徴は次のようなものだと言われています。

  • 真面目な優等生
  • 完璧主義
  • 自己愛的
  • 病識の乏しさ
  • 自信がない
  • 強迫的
  • 認知の歪み

これらの特徴を兼ね備えた摂食障害患者といったいどのような人なのでしょうか。

環境的要因でも述べたように摂食障害患者の家庭環境は歪んだ構造を持っているものが多いとされています。

そのため、親に愛されるという経験の乏しさから、自信が無く、親から愛される人間になるためにはもっと良い子でいなければと真面目な優等生を目指します。

そして、もっと細く可愛い自分でいれば親ももっと愛してくれるに違いないとボディイメージが歪み、完璧を求めるため、強迫的に痩せるための努力を行います。

しかし、どこまで痩せる努力をしても認知が歪んでいるため、自分が生命の危険があるほど痩せてしまっているということに気付きにくく、病識に欠けてしまっているのです。

摂食障害の症状と診断基準

米国精神医学会の発行するDSM-5では、次のような症状が見られれば摂食障害であるとする診断基準を呈示しています。

【神経性無食欲症】

  1. 必要量と比べてカロリー摂取を制限し、年齢、性別、成長曲線、身体的健康状態に対する有意に低い体重に至る。有意に低い体重とは、正常の下限を下回る体重で、子どもまたは青年の場合は、期待される量低体重を下回ると定義される。
  2. 有意に低い体重であるにもかかわらず、体重増加または肥満になることに対する強い恐怖、または体重増加を妨げる持続する行動がある。
  3. 自分の体重または体型の体験の仕方における障害、自己評価に対する体重や体型の不相応な影響、または現在の低体重の深刻さに対する認識の持続的欠如

※病型分類

  • 制限型:この3ヶ月において過食や排出行動(自己誘発性嘔吐、下剤や利尿剤、浣腸剤の誤用)を繰り返していない。
  • 過食/排出型:この3ヶ月において過食や排出行動(自己誘発性嘔吐、下剤や利尿剤、浣腸剤の誤用)をくり返している。

【神経性過食症】

  1. 反復する過食エピソード、過食エピソードは以下の両方によって特徴づけられる。
    1. 他とははっきり区別される時間帯に(例:任意の2時間の間の中で)、ほとんどの人が同様の状況で同様の時間内に食べる量よりも明らかに多い食物を食べる。
    2. そのエピソードの間は、食べることを抑制できないという感覚(例:食べるのをやめることができない、または、食べる物の種類や量を抑制できないという感覚)
  2. 体重の増加を防ぐための反復する不適切な代償行動、例えば、自己誘発性嘔吐;緩下剤、利尿薬、その他の医薬品の乱用;絶食;過剰な運動など
  3. 過食と不適切な代償行動がともに平均して3ヶ月にわたって少なくとも週1回は起こっている。
  4. 自己評価が体型および体重の影響を過度に受けている
  5. その障害は、神経性やせ症のエピソードの期間にのみ起こるものではない。

出典:American Psychiatric Association(高橋三郎・大野裕監訳)(2014)『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院

摂食障害の治し方

摂食障害は複数ある準備因子に誘発因子が加わることで発症するとされています。

中でも、家族システムの歪みやボディイメージを含む認知の歪みは顕著であり、これらにアプローチする心理療法の有効性が指摘されています。

家族療法

家族システムの歪みに対しては家族療法と呼ばれる心理療法が有効です。

家族療法とは、子ども(IP)の発症した精神障害は家族システムの機能不全であるとし、示された症状は家族システムの歪みの原因でもあり、結果でもあるとする考えに基づき家族全体を巻き込んで、機能回復に努めます。

特に摂食障害の家庭には過干渉気味な過程も多いことには先に触れましたが、体重の現象を過度に心配し、無理やり食事を摂らせようとすることによって精神的な負担が大きくなり自傷行為などに及んでしまう可能性も否定できません。

そのため、摂食障害に関する正しい知識を共有すると共に、適切な距離での家族関係を構築できるよう介入することが重要なのです。

認知行動療法

また、摂食障害患者は完璧主義であったり、ボディイメージが歪んでいるなど特有の認知の歪みを見せます。

そのため、そのような認知の歪みを修正し、行動を変容させることで、気分の安定を図る認知行動療法は有効でしょう。

特に、健康を害するほど痩せているにも関わらず、体重計の数字や鏡に映った自分の体系を見てもまだ太っているなど客観性の欠けた重篤な認知の歪みを見せるため、もっと痩せなければ自分には価値が無いという自己愛的な認知の歪みを修正することで、食事の拒否や過食嘔吐などの異常な食行動を変容させていくことが求められます。

薬物療法

場合によっては薬物療法が検討されることもあります。

特に神経性過食症に対してはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を始めとする抗うつ薬、抗てんかん薬、非定型抗精神病薬などの有効性が指摘されていました。

SSRIの一つであるフルオキセチン(プロザック)は、唯一神経性過食症の治療において保険適用が認められている抗うつ薬です。

しかし、これらの薬物療法による過食や肥満に対する体重減少効果はそれほど顕著ではありません。

そもそも、摂食障害の病態生理が生理学的に解明されているわけではないため、薬物療法はあくまで補助的なものであり、心理療法と併用して用いられることが求められます。

摂食障害の相談先

摂食障害を巡る問題は非常に深刻であり、2014年から厚生労働省は摂食障害支援拠点病院設置事業を始めました。

これにより、摂食障害を専門的に治療することのできる病院は宮城県、千葉県、静岡県、福岡県の4県に設置されています。

また、これらの県に住んでいない人でも摂食障害に関して相談ができるように火曜日と木曜日の9:00から15:00までは「相談ほっとライン」と呼ばれる相談事業が国立国際医療研究センター国府台病院心療内科によって運営されています。

そのため、摂食障害の当事者や家族、学校関係者、医療福祉専門職の方はこの相談ほっとラインを利用してみると良いかもしれません。

摂食障害の学会

摂食障害を取り扱う学会としては日本摂食障害学会が挙げられます。

日本摂食障害学会では学会誌の発行や学術大会の開催などを行うことで、摂食障害とその関連領域の学術研究の進歩・向上・啓発に寄与することを目的として活動しています。

摂食障害について詳しく学びたいという方は学会への入会を検討してみるのはいかがでしょうか。

摂食障害について学べる本

摂食障害について学べる本をまとめました。初学者の方でも手に取りやすい入門書を選びましたので、興味のある本があればぜひ手に取ってみてください。

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摂食障害において示される異常な食行動は、周囲から見れば異様なものですが、本人にとっては何も病的なものであると自覚されていないケースが多いと思います。

そのため、摂食障害かもしれないと気づくことが治療の第1歩となるのです。

ぜひ本書で摂食障害と気づくためのポイントについて学びましょう。

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摂食障害は、その日から食事のとり方を変えれば治るというような簡単なものではありません。

日常で欠かすことのできない食行動の様式は個人に深く根付いており、それを変容させることは非常に苦労するものなのです。

ぜひ、本書で摂食障害から回復するためのワークを学びましょう。

生命の危険につながる場合も

摂食障害は、早期に適切な介入を行わなければ、死に至る可能性もある非常に重篤な精神障害です。

その一方で、明確な生理学的原因が特定されているわけではないため、それだけで治療を行えるような薬物はなく、重篤化を防ぐためにもより早期の発見・介入が求められます。

ぜひこれからも摂食障害に関する知識を深めていきましょう。

【参考文献】

  • 谷口麻起子(2008)『摂食障害研究の展望』甲子園大学紀要(36), 241-260
  • 奥田紗史美・岡本祐子(2005)『摂食障害に関する研究の動向と展望』広島大学大学院教育学研究科紀要. 第三部, 教育人間科学関連領域 (54), 319-327
  • 石川俊夫・田村奈穂(2014)『摂食障害の治療・研究の最近の動向について(<特集>摂食障害の最近の動向)』心身医学 54(2), 122-127
  • 摂食障害全国支援センター:相談ほっとラインhttps://sessyoku-hotline.jp/
  • 日本摂食障害医学会http://www.jsed.org/
  • American Psychiatric Association(高橋三郎・大野裕監訳)(2014)『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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