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ハイダーのバランス理論(P-O-X理論)とは?具体例や研究論文を交えてわかりやすく解説

ここでは、ハイダーのバランス理論について説明しています。

まず、バランス理論の概要や特徴を押さえます。その後、バランス理論に関する研究や具体例に触れていただき、理解を深めていきましょう。

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バランス理論(P-O-X理論)とは

まず、バランス理論とはどのようなものなのについて、説明をしていきます。

ハイダーによるバランス理論の概要

バランス理論は、社会心理学に含まれる一理論です。現代心理学辞典には、バランス理論について以下の記述があります。

”認知的斉合性理論”の1つで、ハイダー(Heider,F.)が提唱した理論。P-O-Xモデルともいう。特定人物もしくは知覚者(P)、特定他者(O)、態度対象(X)の三者関係の斉一性を考えており、他者存在が態度形成に関与する可能性を指摘する。

ここでいう態度とは、”対象に対する、好みの評価的な判断に基づいた心理的な傾向”のことです。

そして人間は自分の態度について、認知的な調和を取ろうとするとされており、この理論を認知的斉合性理論と呼びます。

その1つが今回ご紹介するバランス理論というわけです。

バランス理論では、三者関係について、好意的ならば+、非好意的であれば-で表します。そして、3つの関係の積が+(プラス)ならば均衡状態、-(マイナス)ならば不均衡状態であると捉えるのです。

均衡状態であれば何も問題はありませんが、不均衡状態はバランスがとれておらず、ストレスが生じてしまいます。そこで、対象に対する自分や相手の態度を変える(態度変化)などして、不均衡状態を解消(ストレスを解消)する必要があるのです。

バランス理論の具体例

もう少し具体的に見ていきましょう。

例えば、「自分-友人-ゲーム」という三者関係があるとします。自分はP、友人はO、ゲームはXです。

仮に、自分はゲームも友人も好きだが、友人はゲームが嫌いだったとします。このとき、PとOは+、PとXも+、OとXは-ですので、三者の積は-となります。

これは不均衡状態であると言えます。そこで、友人に影響されて自分もゲームをやらなくなる(PとOが-になる)、友人とゲームの話題を話さなくなる(PとOが-になる)と言った方法を取ることで、三者関係を均衡状態にすることが出来るのです。

バランス理論のP-O-Xモデル

次に、バランス理論の根幹を成すP-O-Xモデルについて、もう少し詳しく見ていきます。

P-O-Xモデルとは

概要のところでも触れましたが、ハイダーによれば、個人Pのある対象Xに対する態度は、他者Oの心情関係に依存します。これをハイダーは、P-O-Xモデルと呼びました。

均衡状態と不均衡状態

心情関係には好意的な場合と非好意的な場合とがあります。前者であれば+、後者であれば-と表記することは、先に述べた通りです。

このとき+であれば、心情関係は均衡状態という安定した状態にあると考えられます。

しかし、-の場合は不均衡状態にあると考えられ、この不均衡を解消する方向に変化が生じると、ハイダーは考えました。

バランス理論に関する心理学的研究・論文

バランス理論の概要を押さえたところで、ここからはより理解を深めて頂きます。まずは、バランス理論に関する論文を2つほどご紹介します。

家族関係の変化をバランス理論から捉える試み

萩臺らが2017年に行った研究です。

父親の物理的・心理的・機能的な不在と、母子密着状態にある家庭において、その悪循環を切断・予防するためにバランス理論が援用、検討されました。

結果、母子関係が正、父子関係が正になれば、負であった父母関係がバランス状態に導かれ正になり、三者関係が良好に変化することが示されました。

バランス理論と固有値分解

小杉らが2004年に行った研究です。

概要の項で均衡状態を問題のない状態、不均衡状態をストレスが生じる状態と述べましたが、実はハイダー自身は、なぜそのような定義が成立するのかについては言及していませんでした。

そこで、本研究ではバランス理論の基盤として認知的経済性の原則を取り上げ、バランス理論が、認知的経済性を最大化するよう働くプロセスであることを示しました。

多くの場合「これが定義です」と言われると鵜呑みしてしまいがちですが、本研究は、そこに”なぜ”と問うた研究であると言えるでしょう。

バランス理論の実生活への応用

 ここでは、私たちの生活において、バランス理論がどう活用できるかを見ていきます。

人間関係

人間関係におけるバランス理論の例は既に挙げましたが、ここでは別な例を挙げてみます。先ほどはPはOを好きでしたが、今回は嫌いであった場合を考えてみます。

例えば、Pが、あるアイドルXを好きだったとします(PとXは+)。そして、Pが良く思っていないOが、そのXを好きだったとします(PとOは-、OとXが+)。

この場合、三者関係は-ですので、この不均衡状態を解消すべく、例えばPはXを好きではなくなるかもしれません。

マーケティング

マーケティングにおいては少し事情が異なります。

自分はある商品が好きで、お客様はその商品に興味がないが、自分とお客様の心情関係は不明である場合があるからです。このとき、PとXは+、OとXは-、PとOは不明となります。

ここで考えられる工夫は、Oに自分を好きになってもらう努力をすることです。するとPとOの関係は+になり、三者関係は-になります。

この不均衡状態を解消するためには、OもXを好きになる必要があります。すると三者関係は+となり、商品を購入してもらえるかもしれません。

恋愛

恋愛においては、例えば相手が好きな趣味を自分も好きになる、といった態度変化が考えられます。

例えば、自分(P)は料理(X)が好きではないけど、相手(O)は料理が好きである場合、三者関係は不均衡状態にあります。

しかし、相手を料理嫌いにすることは困難ですから、自分が料理を好きになるように努力することが、均衡状態にするためには必要と言えます。

バランス理論について学べる本

最後に、バランス理論について学べる本を2冊ほどご紹介します。

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社会心理学の概論書になります。具体例が豊富で、重要な用語は青字で書かれるという工夫がなされています。

バランス理論については、第6章態度と態度変化”に記述があります。

バランス理論以外にも認知的斉合性理論は存在しますから、他の理論と対比させながら学ぶことで、理解が定着することでしょう。

眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学

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本書の特徴は、社会心理学の用語を日常生活と結びつけて説明している点にあります。

”渋谷のハロウィンはなぜ暴徒化した?”、”人の残忍さはどこから来るのか?”など、日々の生活の中で生じる事象を例に説明しているので、理屈だけでなく、感覚的に理解しやすい内容となっています。

バランス理論を上手に使い、人間関係を円滑に

バランス理論について、具体例や論文を交えて説明してきました。

バランス理論はとてもシンプルであり、何をすれば不均衡状態(ストレス)が改善されるかが分かりやすい、ということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

特に人間関係においては、ストレスはつきものです。バランス理論の考え方を学んでおくことは、人間関係を円滑にするうえで、私たちの助けになってくれることでしょう。

参考文献

  • 唐沢かおり編(2015).『朝倉心理学講座<7>社会心理学』朝倉書店
  • 小杉 考司,藤澤 隆史,藤原 武弘(2004).『バランス理論と固有値分解』理論と方法 19(1), 87-100, 数理社会学会
  • 子安増生,丹野義彦他(2021).『現代心理学辞典』有斐閣
  • 萩臺 美紀,小林 千緩,奥野 雅子(2017).『家族関係の変化をバランス理論から捉える試み』現代行動科学会誌(33),65

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    • この記事を書いた人

    もってぃ

     もってぃと申します。公認心理師と臨床心理士の資格を所持しており、心理職として働いています。これまでは、学校や教育センター、児童相談所などで勤務してまいりました。 趣味は読書や将棋、ゲームに音楽鑑賞です。将棋は妙に長続きしていて、勢いでアマチュア四段の免状を取得しました。

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