バンドワゴン効果とは、多数の人が支持している(ように見える)物事に対して、より一層支持が高くなる現象を表しています。
流行している物が欲しくなるといった体験は皆様もおありかもしれませんが、ここには「多くの人が持っているから自分も欲しい」「流行に乗り遅れたくない」などの心理が作用していると考えられます。
そして、所有・利用する人が増えるほどに支持が集まっていき、結果として大流行していくといった流れもバンドワゴン効果が作用していると言われています。
今回は、バンドワゴン効果の意味について関連概念(ヴェブレン効果・スノッブ効果など)と併せて整理するとともに、日常生活における具体例・活用例を挙げながら解説していきます。
目次
バンドワゴン効果とは
バンドワゴン効果は、アメリカの経済学者であるライベンシュタインが1950年に発表した論文である『消費者需要理論におけるバンドワゴン効果、スノッブ効果、およびヴェブレン効果』にて言及された概念です。
バンドワゴン効果は、「多くの人が支持しているから、自分も同じようにしよう」との集団心理を反映したものであり、多数と思われる意見・行動に個人の意見・行動が引きずられることによって、多数派への支持が一層高くなる現象を表しています。
因みに、バンドワゴンとはパレードを先導する楽隊車を意味しており、多数派の意見が楽隊車に例えられます。そして、楽隊車の後ろに付いていく人が現れ、その光景を見た人がさらに付いていくうちに大勢になる様子が、バンドワゴン効果の由来であると言われています。
バンドワゴン効果は多数派を支持することから「勝ち馬に乗る」とも言い表されていますが、逆に劣勢の場合に同情が集まって逆転する現象もあり、これを「アンダードッグ(負け犬)効果」と言います。
なお、バンドワゴン効果とアンダードッグ効果は総称して「アナウンス効果」と呼ばれ、メディアによる予測や世論調査の報道が人々の心理に影響を及ぼし、人の行動が変化する現象を指します。
バンドワゴン効果が起こる仕組み
では、なぜバンドワゴン効果が起こるのでしょうか。その要因としては「同調効果」と呼ばれる、自分の考えや行動を周囲に合わせて同調してしまう心理現象が影響していると考えられます。
人は周囲と同じ意見・行動であることに安心し、逆に自分だけが周囲と異なる状況に不安を感じる心理状態(同調効果)が作用し、これによってバンドワゴン効果は生じます。
例えば、多くの人に支持されている映画として紹介されると、多くの人が見ているのだから良い映画なのだろうと感じて見に行く人、あるいは流行に乗り遅れたくないと感じて見に行く人が現れます。
こうした気持ちの動きが同調であり、結果として多数の人が映画を見ることになります。さらに、その情報を知った人が追随し、一層多くの人が映画を見るという現象(バンドワゴン効果)が生じます。
同調効果とは
同調とは、個人の意見・行動を集団に合わせることを指し、よくまとまっている集団や本人以外の意見や行動が一致している場合に起こりやすいとされています。
同調効果を示す実験としては、心理学者のアッシュの同調実験が代表的です。
参加者以外がいわゆるサクラであるグループにおいて、参加者単独で回答するとほぼ正解できる問題でも、他のメンバー(サクラ)が続けて誤答すると約75%が同調して誤答したという結果があります。
なお、同調についてはこちらの記事で詳しく解説されていますので、併せてご覧ください。
日常生活におけるバンドワゴン効果の具体例
バンドワゴン効果は日常生活の中にも多く潜んでいる現象です。いくつか具体例を挙げていきます。
消費者行動
例えば、テレビ番組で「今話題のスイーツ」などと紹介されると、話題になっているのであれば食べたいと追随する人が多く現れ、店に行列ができるような現象が挙げられます。
そして、行列ができる店もバンドワゴン効果の一例です。行列が出来る=多くの人に支持されていると考え、行列に並ぶ人が現れ続け、近くに類似した店があるにもかかわらず、行列ができた店に客が集中する現象もバンドワゴン効果の作用です。
そのほか、書店で本が平積みされているコーナーがありますが、この平積みされている本はその書店が売れ筋だと思う本を並べていることが多いと言われます。
そのため消費者は、売れ筋なら面白いだろうと考えて購入していき、結果として他の本に比べて多く売れる現象が起こります。こうした消費者行動にもバンドワゴン効果が影響していると考えられます。
選挙(投票)
選挙において、投票期日前に報道される選挙予想は有権者の投票行動に影響を与えるとされています。
支持したい特定の候補者がいない場合、優勢であると報道された候補者に投票しやすい傾向があると言われており、これもバンドワゴン効果の作用であると考えらます。
背景としては、どうせ投票をするのであれば勝ちそうな候補者に入れようと(投票した候補者が落選することへの落胆を回避する面もある)いう心理が働き、優勢であると報じられた候補者への支持がさらに高まる結果を引き起こします。
バンドワゴン効果の活用事例
バンドワゴン効果を有効に活用することができれば、大勢の支持を集めやすくすることが可能となり、ビジネス・投資・マーケティングなど様々な分野において活用されています。
マーケティング・広告
多くの人に商品やサービスを購入・利用してもらうため、広告などのマーケティング活動を行います。このとき、消費者の購買意欲を高める戦略のひとつとして、バンドワゴン効果が活用されています。
例えば、「今、一番売れています」と宣伝されている商品を見ると、そんなに売れているのであれば良い商品だろう。取り残されるのも嫌だし、買ってみようという具合に購買意欲が湧いてきます。
そのほか、近年ではSNS利用者の増加に伴い、インフルエンサーと呼ばれる発信力の強いユーザーに商品やサービスを紹介してもらうという手法(インフエンサーマーケディング)も行われています。
多数のフォロワーがいるインフルエンサーが紹介しているから、良い商品・サービスなのだろう思わせるなど消費者行動に影響を与え、バンドワゴン効果が発生することが期待されます。
投資(株・FXなど)
株式やFXなど投資の世界においてもバンドワゴン効果が生じます。
例えば、株価は買いたい人(売りたい人より)が多ければ価格が上がり、逆に売りたい人が(買いたい人より)多くなると下がるといった仕組みで変動しています。
株価が上昇し続けている銘柄において、多くの人がこの銘柄が良いと考えているのだと感じ、追随する形で購入する人が増え、株価がさらに上昇する現象がバンドワゴン効果の作用であると言えます。
しかし、価格の上昇はずっと続くわけではなく、ブームが終わり売却する人が現れてきます。すると、ここでもバンドワゴン効果が起こり、売却する動きに追随する形で売却が重なる中、株価が下落していくという流れが生じてきます。
投資で利益を出していくためには、こうしたバンドワゴン効果などの人の集団心理によって価格が変動する場合がある点を理解しておくことが重要であると言われています。
ビジネス(営業活動)
バンドワゴン効果が営業活動に用いることも少なくありません。
例えば、売れ行きが好調であることをデータで示し、多くの人からの支持を得ている商品であることを訴えることも、多数が支持している行動に追随するバンドワゴン効果が期待できる方法です。
「ほとんどのお客様がこの商品を選んでいます」という台詞もバンドワゴン効果を誘う効果的なひと押しとなる場合もあります。
そのほか、営業担当者個人への支持を高める手段のひとつとして、予定が混み合っていて忙しいことを伝え、多くの顧客から支持されていることをアピールすることも、バンドワゴン効果を引き起こすことが期待されます。
バンドワゴン効果の関連概念
バンドワゴン効果を提唱したライベンシュタインは、そのほかに「ヴェブレン効果」や「スノップ効果」という概念についても示しています。
ヴェブレン効果
ヴェブレン効果とは、高価であることに価値を感じる現象を指し、顕示効果とも言われます。
高額ブランドを購入する心理などが挙げられます。ここには、高額な商品を購入し、身に付けている自分を周囲に見せびらかしたいといった自己顕示欲を満たそうとすることが背景にあると考えられます。
スノッブ効果
スノッブ効果とは、他者とは違うもの・他者が持っていないものが欲しくなる現象を指しています。
バンドワゴン効果が周囲に同調する動きであることに対して、周囲との差別化を図る・自分らしくあろうとする動きがスノッブ効果と言えます。
こうした個性的な自分でありたい・目立ちたいといった心理から他の人が持っていないものを手に入れたくなり、他の人が持っているものに興味がなくなるといったスノッブ効果が生じると考えられます。
そのほか、限定性・希少性の高いものを手に入れることで優越感を満たしたいとの心理にもスノッブ効果が働いており、期間限定・日本に10個だけといった、キャッチコピーはスノッブ効果に訴求しているものと考えられます。
バンドワゴン効果について学べる本
最後に、バンドワゴン効果について学ぶ上で参考になる書籍を紹介します。
バンドワゴン効果や同調効果などは社会心理学の分野で紹介されることが多いです。集団の中で人はどのように行動するか、社会現象と心理の関係などが分かりやすく紹介されています。
行動心理学とは、行動パターンから心理を読み取っていくアプローチを指し、バンドワゴン効果もひとつの例として紹介されています。イラストも多く、非常に分かりやすい内容となっています。
仕組みを理解すれば、様々な場面で活用できる
バンドワゴン効果は、多数が支持している(ように見える)意見や行動は正しいと感じる心理効果であり、様々な具体例を紹介してきました。
活用事例でも示したとおり、仕組みを理解し、うまく利用することが出来れば、メッセージを伝えやすくなったり、商品やサービスが売れたりするといったメリットをもたらします。
一方、周りが良いと評価しているものは良いに違いないと思い込みやすい心理傾向があるということは自覚し、周囲に惑わされることなく判断しようとする意識も時には必要となります。
参考文献
- 山岸俊男 監修(2011)『徹底図解 社会心理学―歴史に残る心理学実験から現代の学際的研究まで』新星出版社
- 阿部誠 監修(2021)『サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学 (サクッとわかるビジネス教養)』新星出版社
- 齊藤勇 著(2015)『今日から使える行動心理学 (スッキリわかるシリーズ) 』ナツメ社