「これから心理学を本気で学ぶにはどの本を読めばいいの?」「心理学を学び始めたばかりなんだけど、オススメの本はある?」そんな方に向けて、年間数百冊の本を読む、臨床心理学系大学院生の著者がオススメの心理学本を厳選しました。
簡単に楽しんで読める入門書から、心理学の歴史的名著まで、本当にオススメできる本を厳選し、ご紹介します。
目次
初心者が心理学を学ぶのにオススメの本は?
心理学を学ぶのに、いきなり難しい専門書や名著を読むことはオススメできません。初学者の皆さんは、まず「心理学の楽しさを知る」ことから始めることが第一歩です。
学び始めに挫折してしまう原因
「難しくて、挫折してしまった」心理学に関わらず、どの様な学問においても、こうした経験を持つ方は多いのではないでしょうか。物事を学ぼうとする際の失敗の原因は実はたった一つしかありません。
続けられないことです。
心理学は、あくまで科学です。この学問の成り立ちの背景には統計があります。いきなり専門書を読もうとすると、「○○を説明変数とし、××を目的変数とした、重回帰分析を行ったところ、△△に有意性が認められて云々」といった難しい話が出てきてしまいます。
ここで、「私はこの本を理解できないから駄目なんだ。心理学は難しいんだ」といった苦い思い出だけを残してしまい、心理学を「続けられない」ために挫折してしまう原因となります。
初心者にオススメの本とは
本は、その内容の100%を理解する必要はありません。分かる所だけ理解するというスタンスが何より重要となってきます。
しかし、「じゃあ、どの本だったら理解できるの?」「入門にも満たないレベルの私は、どんな本を選べばいいの?」といった疑問が湧いてくるかもしれません。
次節で、初学者の方向けに、失敗しない本の選び方をご紹介します。
心理学を学ぶときの本の選び方
良い本とは何か。心理学本を選ぶ際の基準は主に以下の3つに分かれます。
- 「難易度」
- 「エビデンス」
- 「具体的利用可能性」
それぞれについて詳しく説明していきます。
難易度
多くの方が、本の「難易度」を見誤ってしまうために、挫折を経験します。本は詳細まで書かれており、情報量が多いから良いという物ではありません。
いきなり、初学者が上級者向けの本を読んでも、何が書いてあるのかサッパリ理解できず、根性で完読したとしても、何が書いてあったのか思い出すことすらできないといったことになりかねません。
本を選ぶ際は、「書いてある内容の50%程が分かるもの」を選ぶように心がけましょう。100%知っている内容しか書いていない本は、読んでも時間の無駄ですが、10%も理解できない本を読んでも、同様に時間の無駄となってしまいます。
難しい本を読んでいるからといって、凄くもかっこよくもありません。自分のレベルに適した本を選び、着実に知識を蓄えることこそが、読書の本質と言えます。
エビデンス
エビデンス(Evidence)とは、科学的根拠という意味です。心理学は、科学であるため、エビデンスが重視される学問です。
しかしながら、心理学の本は、エビデンスの弱いものが多いというのも事実です。「成功者の○○」「女を口説く必勝の心理学」等々、枚挙に切りがありませんが、何の科学的根拠もなく、「○○をするとモテる」「××をすると成功する」など説き、これを心理学と言い張っています。
しかし、エビデンスのない心理学とは、言ってしまえば迷信です。せっかくお金を掛けて本を買い、時間を掛けて読んでも、間違った知識であると意味がありません。その本のエビデンスの強さは、巻末を見ればわかります。
巻末の参考文献が豊富な本を選びましょう。参考文献とは、その本を執筆する上で、参考にした本や論文のことです。
参考文献が「おもしろ心理学研究(著)」といった本は、あまりエビデンスの質が良くありません。参考文献には、専門書や、学術論文が記載されている本を選ぶことをおススメします。
具体的利用可能性
「共分散構造分析をRで行う方法」を知る本があったとして、これを読むことでどんな知識を得られるでしょう。もちろん、統計ソフトRで共分散構造分析を行う方法という知識が得られます。しかし、この知識を得たとして、あなたは具体的に知識を役立てることが出来るでしょうか?
普段から論文を執筆している上級者の方は、もちろん「Yes」と答えるかもしれません。「丁度、これから書く論文で、共分散構造分析をやろうと思ってたんだ」という方には、上述の様な本は、まさに具体的利用可能性が高く、「良書」となります。
しかし、「心理学をこれから学びたい。友達の相談に乗ってあげられる様になりたい」といった方が、この知識を役立てることが出来ますでしょうか?
もちろん、「No」です。前述の本は、打って変わって、初学者には「駄書」となってしまいます。
このように、「その本が自分にとって役に立つのか」「どの様に役に立つのか」を基準に選ぶと、あなたにとってのり「良書」が選べます。
【超入門】初心者・高校生でも理解しやすい心理学の本3選
それでは、実際にオススメの本をご紹介します。また、先ほどの基準に沿って★☆で評価を書いておきます(★が多い程、レベル高です)。
その本があなたにとって「良書」となり得るかの判断の目安にしてください。
植木理恵のすぐに使える行動心理学 (著)植木理恵
「ホンマでっか!?TV」のレギュラーメンバーである心理学者の植木理恵先生が一般読者向けに書いた心理学本です。
「あの人のあの行動ってどういう意味?」「意中の人を射止めるには、心理学的にどうすればいいの?」こうした疑問を、教育心理学会から優秀論文賞を受賞した、教育心理学者の植木先生がズバリお答えしてくれます。
「まずは心理学ってどういうものなの?」という入門の入門者向けです。
- 難易度: ★★☆☆☆
- エビデンス: ★★★☆☆
- 具体的利用可能性: ★★★★☆
知識を操る超読書術 (著)メンタリスト DaiGo
メンタリストDaiGoさんが書く本は、非常に読みやすく、参考文献も豊富で、日常場面で具体的に利用できる知識を提供してくれます。
「どうやったら、より効率的な読書が出来るの?」という方にはオススメ。こちらの記事の延長としてもお読みいただける内容です。
「心理学を始める下準備がしたい」という方にオススメ。
- 難易度: ★☆☆☆☆
- エビデンス: ★★★★☆
- 具体的利用可能性: ★★★★★
嫌われる勇気 (著)岸見一郎. 古賀史健
ベストセラーとなった嫌われる勇気。著者は哲学者ですが、アドラー心理学を題材とした自己啓発本です。哲学者と青年の対話を綴ったものであり、小説の様に読めます。
今あなたが抱えている問題の正体を浮き彫りにし、どの様にしたら、他人と良好なコミュニケーションを取って行けるのか。どの様にしたら、幸せになれるのかを、説得力を持って教えてくれます。
「心理学に興味を持ちたい」という方は、まずこれを読んでみると良いかと思います。心理学の奥深さ、大切さを知るきっかけとなります。
- 難易度: ★★☆☆☆
- エビデンス: ★☆☆☆☆
- 具体的利用可能性: ★★★★★
【入門】心理学の概要を理解する本5選
心理学を学び始めたばかりの方。心理学系学部生の方や、心理学関連資格の習得を目指している方には、以下の本がオススメです。学問としての心理学の入り口となる本を5冊紹介します。
よくわかる心理学 (編)無藤隆 他
よく分かる○○シリーズは、心理学の学び初めに最適な本です。
「学問としての心理学って、つまりどういうものなの?」という疑問について、ざっと広く理解したい方にオススメ。大学生は授業の予習として、資格習得希望者は参考書の一つとして、お手元に置かれて損のない本です。
- 難易度: ★★☆☆☆
- エビデンス: ★★★★★
- 具体的利用可能性: ★★★☆☆
パブロフの犬:実験でたどる心理学の歴史 (著)アダム・ハート=デイヴィス
「心理学ってどういうものなの?」「どんな歴史から成り立っているの?」こうした疑問を解決するのにオススメの1冊です。
実際にあった心理学実験・研究から心理学の歴史をたどっていきます。初学者の方にも読みやすく、「心理学」というもののイメージを作るのに適した本です。
- 難易度: ★★☆☆☆
- エビデンス: ★★★★★
- 具体的利用可能性: ★☆☆☆☆
選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (著)シーナ・アイエンガー
一冊、テーマに絞った心理学本を紹介します。こちらの本は「選択」について科学的に考察を展開した本です。一般の読者も読みやすく、科学としての心理学のコアな部分まで見えてくる1冊です。入門から中級への橋渡しとオススメ本です。
- 難易度: ★★★☆☆
- エビデンス: ★★★★★
- 具体的利用可能性: ★★★★☆
スタンフォードの自分を変える教室 (著)ケリー・マクゴニガル
日本でも大ヒットした自己啓発本です。スタンフォード大学の心理学教授、ケリー・マクゴニガル先生の講義が元になっています。
各節末には、エクササイズが用意されており、実際の科学的知見に基づいたエクササイズを行ってみる体験型の本です。プロの心理学者が、心理学を日常生活にどのように活かしているのか、参考になります。
- 難易度: ★★☆☆☆
- エビデンス: ★★★★☆
- 具体的利用可能性: ★★★★☆
マンガで分かる心療内科 (著)ゆうきゆう,ソウ
少し心理学本という記事タイトルから脱線するかもしれませんが、「マンガで分かる○○」シリーズもおススメです。
特にこちらの「マンガで分かる心療内科」は精神科医が原作を務めており、アニメ化もしているヒット作品です。「遊び」として楽しく読めるのに、勉強になります。勉強の合間の休憩としての勉強にオススメです。
- 難易度: ★☆☆☆☆
- エビデンス: ★★★★☆
- 具体的利用可能性: ★★☆☆☆
心理学を学ぶのに必要な知識を身に付ける本3選
学問としての心理学を学ぶための下準備となる本を3冊紹介します。これらは、大学・大学院へ入学し、プロのカウンセラーを目指している方々には、絶対に読んでおいて欲しい本です。
本当に分かりやすい すごい大切なことが書いてある ごく初歩の統計の本 (著)吉田寿夫
心理学を学ぶ上で欠かせない、けど挫折しがちな分野が「心理統計学」です。
統計の本にはたくさんの入門書があり、多くの統計学者が「どうしたら分かりやすい本が書けるだろうか」と日夜頭を悩ませ、執筆に明け暮れています。しかし、多くの入門書が、それでも初学者には難しいのが現実です。
こちらの統計の本は、数ある統計学関連の入門書の中でも読みやすい本です。心理学を学ぶ準備として必読の一冊です。
- 難易度: ★★☆☆☆
- エビデンス: ★★★☆☆
- 具体的利用可能性: ★★★★☆
ステップアップ心理学シリーズ 心理学入門 心を科学する10のアプローチ (著)板口典弘, 相場花恵
心理学を学ぶにあたっての、地図となる一冊であると言えます。「心理学ってどういうものなのかな?」「心理学ってどういう点で科学なのかな?」こうした問いに答えてくれる本です。
- 難易度: ★★☆☆☆
- エビデンス: ★★☆☆☆
- 具体的利用可能性: ★★★★☆
ゼロからはじめる心理学・入門--人の心を知る科学 (著)金沢創, 他
こちらも心理学を学ぶにあたっての、下準備として最適な本です。お手頃で読みやすく、心理学系大学では、教科書として使っている学校も多い本です。
- 難易度: ★★☆☆☆
- エビデンス: ★★★☆☆
- 具体的利用可能性: ★★★★☆
心理学を学ぶのに読んでおきたい名著3選
心理学の名著といったら。日本には素晴らしい心理学本がたくさんあります。
その中でも、心理学界では「名著」と名高く、その中でも比較的多くの方に読みやすく実りの多い本を3冊厳選しました。確実に読んで欲しい、人生でこの3冊だけは絶対に読むべき本です。
影響力の武器: なぜ、人は動かされるのか (著)ロバート・B・チャルディーニ
メンタリストDaigoさんが、「心理学に興味を持つきっかけとなった、バイブル(聖書)の様な1冊」として紹介していた、影響力の武器。
社会心理学の本では、最も有名な1冊であり、まさに名著、まさに聖書の様な1冊です。人間や動物のあらゆる行動に対し、心理学はどこまで説明が出来るのかを試みた1冊と言えます。
また、ここで紹介される知識は、日常生活でも利用しやすいものが多く、心理学を学ぶ者のみならず、ビジネスマンにもオススメしたい1冊です。
- 難易度: ★★★☆☆
- エビデンス: ★★★★★
- 具体的利用可能性: ★★★★★
ヒルガードの心理学 (著)スーザン・ノーレン・ホークセマ, 他
ヒルガードの心理学は、心理学を学ぶ上で「世界標準の教科書」とされています。著者は、ストレス関連成長や、思考の反芻に関する実験で有名なNolen-Hoeksema、プライミングや犯罪被害者心理の研究で有名な、Loftus,Geoffey,R.等々、第一線で活躍する心理学者、数十人による共同著書です。
また、英語の原作版は、大学院受験、心理英語対策に日本でも幅広く使われています。心理英語系の受験対策参考書のほとんどが、ヒルガードの心理学の原著を基にしています。原著も簡単な英語で比較的読みやすいため、大学院受験をお考えの方は、ぜひ読んでみてください。
- 難易度: ★★★☆☆
- エビデンス: ★★★★★
- 具体的利用可能性: ★★★★☆
愛するということ (著)エーリッヒ・フロム
最後にオススメしたい1冊はこちらです。新フロイト派のErich-frommが本気で「人を愛するとは何だろうか」を考えた、哲学書であり、心理学の真髄を表す1冊でもあります。
古典的な心理学を学びたい方にオススメであり、同時に、結婚されている方や、彼氏・彼女がいる方などにも読んでもらいたい1冊です。
あなたは、お隣のパートナーを愛せていますでしょうか。これからも愛することが出来ますでしょうか。フロムは「愛する」ということを、「技術」であると説明しています。この技術の磨き方、習得の仕方が綴られた、人生を変える1冊です。
- 難易度: ★★★★☆
- エビデンス: ★★☆☆☆
- 具体的利用可能性: ★★★★★
【一般向け】心理学の面白い本おすすめ5選
心理学を学ぶというよりは、「手っ取り早く心理学の良い所を知って、日常生活で利用したい」をいう方にオススメの本を厳選しました。
心理学の小難しいところをすっ飛ばしてしまって、簡単に読めて、身になる一般読者にオススメです。
ベッドの上の心理学 (著)メンタリストDaiGo
メンタリストのDaiGoさんが書かれた、本気で夜の保健体育を科学する本です。満足度の高い性体験は科学により、どの様に作ることが出来るのか。ぜひ、枕元に置いておくべき1冊です。
- 難易度: ★☆☆☆☆
- エビデンス: ★★★☆☆
- 具体的利用可能性: ★★★★★
超常現象の科学 なぜ人は幽霊が見えるのか (著)リチャード・ワイズマン
「幽霊とは何か」「金縛りとは何か」こうした超常現象の疑問を、科学的に解説する心理学本です。ヒーリングや、占いなどを好きで、普段からそうしたことにお金を使っている人は読まない方が良いかもしれません。
- 難易度: ★☆☆☆☆
- エビデンス: ★★★★★
- 具体的利用可能性: ★★★★★
脳からストレスを消す技術 (著)有田秀穂
ストレスは、脳から起こるものです。コルチゾールやノルアドレナリン、セロトニンと言った神経伝達物質を、私達は意図的にコントロールすることが出来るのでしょうか?一般の方にも読みやすい生理心理学系の本です。
- 難易度: ★★☆☆☆
- エビデンス: ★★☆☆☆
- 具体的利用可能性: ★★★★☆
とっさのしぐさで本音を見抜く (著)トルステン・ハーフェナー
海外のメンタリスト、トルステン・ハーフェナーが書いた、読心術の本です。仕草や持ち物、行動からその人の性格が心理状態を見抜くには、どの様にしたらよいのかを教えてくれます。
- 難易度: ★★☆☆☆
- エビデンス: ★★★☆☆
- 具体的利用可能性: ★★★★☆
プロカウンセラーの聞く技術 (著)東山紘久
一般読者向けに書かれた傾聴に関する本ですが、実際の臨床心理学関連の大学のシラバスにも記載されるような、充実した内容の本です。
自称聞き上手がやってしまいがちな傾聴に関する罠や、相手を信頼させる傾聴術について書かれています。
- 難易度: ★★☆☆☆
- エビデンス: ★☆☆☆☆
- 具体的利用可能性: ★★★★★
読書で大切なのは、あなたにとっての名著を見つけること
ここまでご紹介してきた20冊ですが、実際はここには記載できなかったけど、この20冊以上に面白い心理学本もごまんとあります。また、当記事の著者である私ですら知らない、名著がまだまだあるはずです。
便宜的に、この記事では3つの基準を目安として心理学本の選び方を提示しました。しかし、本当に重要なことは、あなたの基準であなたにとっての名著を見つけることです。
読書はあなたの知識を深めるだけでなく、人間としての味わい深さを増し、人格の成熟を促進します。あなたが「人生を変える1冊」に出会えることを祈っています。