学校心理士とは?受験資格や合格率、准学校心理士との違いについても解説

2022-08-19

学校現場では不登校やいじめなど心理的なサポートを必要とするケースは多くありますが、学校の先生だけでは十分な支援を行えない場合も少なくありません。

そのような学校現場において心理学的知識を生かし、支援活動を行うスペシャリストが学校心理士です。

それでは学校心理士とはどのような資格なのでしょうか。学校心理士になることのメリットや、受験資格と合格率、学校心理士と准学校心理士との違いについても解説していきます。

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学校心理士とは

学校心理士とは、学校現場において教育相談活動や障害児教育などの心理教育的援助サービスの実践を積んできた専門家のことを指します。

そして、臨床心理士のバックグラウンドとなる学問が臨床心理学であるように、学校心理士は学校心理学と呼ばれる心理学を学んだ専門家なのです。

学校心理士の特徴

対人援助サービスを行うという点では同じ臨床心理士と学校心理士ですが、どのような違いがあるのでしょうか。

まず、両者には次のような共通点があります。

【臨床心理士と学校心理士の共通点】

  • 援助ニーズの多い人に対する援助サービスの理論と方法の考案
  • 専門的ヘルパーによる援助サービスの理論と方法の考案
  • アセスメント・カウンセリング・コンサルテーションの実施

臨床心理学における学校現場での役割は援助を必要とする人へのカウンセリングといった個人的支援に加え、学校現場にかかわる教員や保護者、ソーシャルワーカーなどを巻きこむ臨床心理学的地域援助が挙げられます。

そして、そのような主要業務は学校心理士も同様です。

それに加え、学校心理士は学校現場というフィールドにおいて次のような専門性を活かしています。

【学校心理士の特徴】

  • 子どもを1つの人格とみるのと同時に、学校教育のサービス対象となる児童生徒としても見る
  • 個人としての子どもよりも、環境の中にいる子どもを援助の焦点として強調する
  • 援助ニーズの大きさにかかわらず、全ての子どもを心理教育的援助サービスの対象とする
  • 教師や保護者を援助サービスの主な担い手としてとらえる
  • 援助サービスの提供にあたり、心理学だけではなく学校教育の知見も統合する

このように、学校心理士は教育現場に特化した対人援助サービス従事者であり、逆に精神疾患での長期的な援助の専門性は臨床心理士と比較すると高くはありません

そのため、学校で長期間のカウンセリングを行うのではなく、必要に応じて専門機関へリファー(紹介)する対応が行われるようです。

学校心理士になるメリット

学校心理士になるメリットは学校心理学の専門知識と技能を持って、学校における心理援助サービスの実践を行う資格が得られることでしょう。

学校現場における不登校児は小学校・中学校合わせて19万6127人(令和2年度)となっており、いじめや学級崩壊、高校中退、発達障害など教育現場をめぐる心理的援助のニーズは高まっています。

そして、学校心理士はこのような学校現場を取り巻く問題に対し、子どもへの直接的な援助・教員や保護者への間接的な援助を通じて問題の解決を目指すことを目的としているのです。

学校現場で活躍する心理職の代表例としてはスクールカウンセラーがあります。

多くの自治体でその募集要件は臨床心理士・精神科医・心理学系大学教授などとなっていますが、「一定の相談業務の経験を有するものを「スクールカウンセラーに準ずるもの」として任用することができ、その準ずるものに学校心理士が含まれていす。

学校心理士の受験資格と合格率

それでは学校心理士になりたい人はどのような手続きを踏む必要があるのでしょうか。

学校心理士になるための最も代表的な方法としては、学校心理学に関する所定の科目を大学院で修了し、1年以上の実務経験を経る必要があります

  • 学校心理学関連の大学院修士課程を修了し、1年以上の実務経験
  • 公認心理士関係の大学院修士課程を修了し、1年以上の実務経験
  • 教職大学院の専門職学位課程を修了し、1年以上の実務経験

また、このような大学院修了というルートのほかにも、次のような学校心理士の受験資格取得方法があります。

  • 教員等(幼稚園・小・中・高等学校、特別支援学校等)として教育活動を行い、学校心理学に関する実務経験が5年以上あるもの
  • 専門相談機関(教育センターや児童相談所など)において、5年以上の実務経験を有するもの
  • 大学・短大・専門学校等で2年以上学校心理学の授業もしくは指導を行い、学校心理学の8領域において十分な研究実績を有しているもの。(大学等の非常勤講師の場合は年間で4コマ以上の講義を担当している必要がある)
  • 学校において管理職(校長・園長・副校長・教頭など)または教育委員会における管理職等として心理教育的援助サービスに関する指導の役割を3年以上になっているもの

このような受験資格を有する人は、筆記試験、面接試験、ケースレポートの審査を経て合否の判定がなされます。

なお、試験の合格率は公表されておらず不明ですが、臨床心理士の合格率が6割前後であることを考えると、同等の合格率ではないかと考えられています。

学校心理士と准学校心理士の違い

学校心理士に準ずる資格として准学校心理士という資格も設けられています。

この資格は日本学校心理士会によって認定を受けた大学や短大、専門学校において学校心理学の領域の単位を取得することで資格を得ることができます(個人での申し込みではなく、学校から修了者を一括して申請します)。

この准学校心理士は通常よりも短い実務経験期間で学校心理士を受験することができるため、学校心理士の資格取得を考えている人は、大学院への進学だけでなく准学校心理士の資格取得も検討してはいかがでしょうか。

学校心理士について学べる本

学校心理士について学べる本をまとめました。

初学者の方でも読み進めやすい入門書をまとめてみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみてください。

よくわかる学校心理学 (やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ)

学校心理士のバックグラウンドとなるのは、学校心理学と呼ばれる心理学です。

そのため、学校心理士を志すひとは学校心理学を学ぶことは必須となるでしょう。

ぜひ本書から学校心理学とはどのような学問であるのか、どのような専門知識を得られるのかについて学びましょう。

学校心理学ケースレポートハンドブック:子どもの援助に関わる教師・スクールカウンセラーのために

学校心理士は実際の学校現場で、学校心理学の専門性をどのように活かすべきなのでしょうか。

学校心理学の知見に基づいて、子どもの援助を行うケースをまとめた本書に目を通せば、きっと学校心理士として現場での求められることのイメージがつかめるでしょう。

学校現場の問題に対処するために

いじめや不登校の問題は連日ニュースで報道され、心を痛めている人も少なくありません。

そのような深刻化する問題により良い援助を行うために、学校現場における心理学的援助の専門家である学校心理士の力はますます求められることとなるでしょう。

ぜひ、学校現場での心理的援助に興味のある方は学校心理学、そして学校心理士について詳しく学んでみましょう。

【参考文献】

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    • この記事を書いた人

    t8201f

    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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