クロンバックのα係数とは?心理学研究における信頼性の基準の求め方をわかりやすく解説

2022-05-19

心理学研究で示された結果が本当に正しいのかを示すために重要になるのが信頼性です。

例え、新しい知見が述べられたとしても、いつもその研究で行ったような結果が示されるような信頼に足る根拠がなければ科学的な議論はできません。そして、その信頼性を検討する基準としておく用いられているのがクロンバックのα係数です。

それでは、クロンバックのα係数とはいったいどのようなものなのか早速見ていきましょう。

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クロンバックのα係数とは

クロンバックのα係数とは、研究データの解析における信頼性を示す基準の1つであり、1951年にクロンバックという学者によって開発された係数です。

厳密には、研究結果の信頼性を内的整合性という観点から示す基準です。

信頼性とは

それでは信頼性とはいったい何なのでしょうか。

研究を行う際には、何らかのデータを収集し、それを分析することでもたらされる結果を解釈することが必要です。

しかし、同じ人に同じ条件で検査を行い、いつも同じような結果を示す信頼できるものでなければ、その分析結果は十分な根拠があるとは言えないでしょう。

例えば、ものの重さを計る秤に10個のリンゴを1つずつ乗せ、その平均値を求める状況を想像してください。

その平均値が正しいものであるためには、それぞれのリンゴの重さを正確に測定することのできる秤が壊れていないものである必要があります。

しかし、同じリンゴを乗せた時、ある時は100gを示し、ある時は1000gを示すようであれば、それは秤が壊れているため、正確に重さを計るための信頼性に欠けていることになります。

心理学研究における質問紙法では、質問項目が常に回答者の心理的特徴を正確に捉えられる測度であるのかどうかを検討する必要があるのです。

そして、尺度の内的整合性を確かめることで、信頼性が高いかを判断する基準にクロンバックのα係数が使用されるのです。

クロンバックのα係数の求め方

内的整合性とは、尺度内の各質問項目で測ろうとしているものが同じ心理的要因であることを指しています。

例えば、不安という概念を測定するための質問紙に次のような項目で構成されていたらどうでしょうか。

  1. つまらないことを心配しすぎる
  2. 気が落ち着かず、じっとしていられない
  3. 鏡で自分の姿を見るのが好きである
  4. みんな私の話を聞きたがる

下線を引いた3番4番の項目は自己愛の高さを測るための項目です。

このような質問項目で3番や4番の項目の得点が高くなったことにより、全体の合計得点が高くなったからと言って、本当にその結果が不安の高い人を検出していると断定することはできないでしょう。

そのため、それぞれの質問項目の関連の強さ、相関を検討するのがクロンバックのα係数です。

クロンバックのα係数を求めるための数式は次の通りです。

【クロンバックのα係数を求めるための数式】

α=項目数÷項目数-1×(1-(各項目の分散の合計÷合計点の分散)

多くの場合、統計ソフトを用いて解析を行うため、実際にこの数式に触れることはほとんどありません。

また、この数値は1~0までの間を取って示されますが、示された結果が十分な信頼性を有しているかどうかという判断は概ね0.8以上の値を取っているのかどうかに注目すると良いでしょう。

クロンバックのα係数の値があまりにも低い場合は、その検査結果の信頼性が十分ではないため、相関の低くなっている項目を削除して調査を行うなどの工夫が必要となります。

クロンバックのα係数について学べる本

クロンバックのα係数について学べる本をまとめました。初学者の方でも手に取りやすい入門書をまとめてみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみて下さい。

質問紙調査と心理測定尺度―計画から実施・解析まで

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質問紙の開発を行う場合はもちろんのこと、質問紙調査を行う場合も調査によって得られたデータが十分な信頼性を有しているのかを検討することは欠かせません。

このような、質問紙法に絶対必要な事柄を網羅してある本書から、信頼性はなぜ必要なのか、どのような流れで質問紙調査を行っていくのかについて詳しく学びましょう。

心理学マニュアル 質問紙法

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もう1冊入門書をご紹介します。

心理学研究における質問紙法の立ち位置から尺度の作成、データの処理など必要事項をわかりやすくまとめてあります。

調査の実際例も載っているため、クロンバックのα係数が調査の中でどのように用いられているのか目を通してみましょう。

信頼性と妥当性の元で学術的な議論ができる

目には見えないこころを扱う心理学では、調査で得られたデータが本当にしっかりとしているものなのか、つまり信頼性と妥当性を有しているのかを確認することは必須です。

実際の調査の際にも積極的に用いることができるよう、クロンバックのα係数についてしっかりと学びましょう。

【参考文献】

  •  岡田謙介(2015)『心理学と心理測定における信頼性について』教育心理学年報 54 (0), 71-83
  •  岡田謙介(2011)『クロンバックのαに代わる信頼性の推定法について』日本テスト学会誌 7 (1), 37-50
  • 岡田謙介(2011)『クロンバックのα係数とは何だったのか : 信頼性係数のレビューと実データ分析』専修人間科学論集. 心理学篇 1 91-98

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    • この記事を書いた人

    t8201f

    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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