実験法とは?具体的な手順や長所と短所、心理学研究での利用法を解説

2021-12-31

科学としての心理学には、客観性を担保しつつ、目には見えないこころというものの働きを捉えようといくつかの研究法が存在します。

今回はその中でも実験法を取り上げます。実験法とはどのような手順で行われるのでしょうか。その長所や短所、具体的な例も併せてご紹介していきます。

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実験法とは

実験法とは、その名の通り、何らかの実験を用いてデータを収集し、その分析をすることでこころの働きを捉えようとするものです。

世界初の心理学実験

心理学が始まったのは1879年と100年以上前に遡ります。

ライプツィヒ大学というところで世界初の心理学実験室を開設したヴント,W.は、それまで人間の感覚を対象としていた生理学的実験では人間のこころの働きを探ることはできないと考え、内観法と呼ばれる心理学実験を行ったことで非常に有名です。

ヴントは、被検者に何らかの刺激を与え、そこで生じる意識の内容を自己報告してもらい、それを分析することによって、人間の意識を構成する要素を詳しくとらえようとしていたのです。

このような経緯から、現代においてもヴントの残した功績は高く評価されており、「実験心理学の父」として語り継がれています。

実験法の手順

実験法は実際にどのような手順で行われるのでしょうか。

実験法における因果関係

実験法は、特に因果関係と呼ばれる関係性を特定することに優れています。

因果関係とは、明確な原因と結果の関係があると言い切ることのできる関係を指しており、次のような特徴を持っています。

【因果関係の特徴】

  • 独立変数が従属変数よりも時間的に先行している。(原因の方が先に生じており、その後結果としての変化が生じる)
  • 明確な原因と結果の2変数が関連していること
  • 結果へ原因以外以外の要因が影響をしていないこと

原因となり実験者が操作可能なものを独立変数、結果となり独立変数の影響を受けるものを従属変数と呼びます。

因果関係と相関関係の違い

因果関係とよく似ているものとして相関関係と呼ばれるものがありますが、これらは混同されやすいため注意が必要です。

相関関係は一方の値が変化するとそれと対応してもう片方の値も変化をするという関係性を示したものです。

例えば、珈琲を飲む人は、肺がんになりやすいという例を考えてみましょう。この時、珈琲という変数は、肺がんという結果の原因になりうるでしょうか。

答えはNoです。

珈琲を飲む人には喫煙者が多いという事実により、珈琲を飲む人が肺がんになりやすいかのように見えてしまいます。しかし、実際に因果関係を持っているのは喫煙と肺がんの関係性であり、あくまで珈琲と肺がんの関係性は相関関係に過ぎないのです。

実験計画の立て方

実験法では、そのような因果関係を特定するためにどのような実験デザインを組むかを検討します。

実験デザインの種類

実験デザインには次の種類が挙げられます。

【実験デザインの種類】

  • 参加者間計画:二つの異なる条件(実験群と統制群)に参加者を2分し、独立変数の操作を行うのと行わないのでどのような違いが出るのかを確認する。
  • 参加者内計画:同じ参加者に2つの条件どちらにも参加してもらい、2回のデータの差を比較する。

独立変数の数による実験計画の違い

実験で用いる独立変数は1つだけとは限りません。

例えば、うつ病の人に対し、睡眠薬を服薬することとリラクセーション法を実施したときの効果を測定したいという場合は、睡眠薬とリラクセーション法という2つ要因の効果を測定することとなります。

そして、その要因の中の種類を水準と呼び、要因×水準ごとに群を分け、比較することとなります。

これだけではイメージがつかみづらいため、次の例を見てみてください。

【1要因(1元配置)実験計画】

じゃんけんをするとき、何を出せば勝ちやすいのかという要因を調べたい際には、じゃんけんのとき必ず「グーを出す人」、「チョキを出す人」、「パーを出す人」それぞれを実験で集めた人の中でじゃんけんを行い、勝率という結果にどのように影響するのかを検討します。この時は1要因3水準の実験となります。

【2要因(2元配置)実験計画】

これは2つの要因を組み合わせて扱う実験であり、それぞれの要因に水準があるので、比較を行う群はとても多くなります。

例えば、性別によってじゃんけんで何を出せば勝ちやすいのかを調べる際には、じゃんけんという3水準×性別(男性・女性)という2水準で、計6群のじゃんけんの結果を比較することとなります。

グーチョキパー
男性男性グー群男性チョキ群男性パー群
女性女性グー群女性チョキ群女性パー群

そして、この6群の勝率を比較し、それぞれの群で統計的に有意に勝率が高い群、低い群が無いかを検討します。

実験法の長所と短所

実験法の長所は、検証したい特定の独立変数と従属変数の関係を調べること、つまり因果関係があるのかどうかを検討することができるということが挙げられます。

しかし、あくまで、実験という条件の中で行われるものであるため、自然な日常生活の中で本当に再現されるのかということは保証が出来ません。これが実験法の短所です。

実験法の具体例

それでは、実験法は実際にはどのように行われるのでしょうか。

今回は、藤森・坂野(2006)の行った不安の喚起が身体反応の近くに及ぼす影響について検討した実験をご紹介します。

人間の不安という現象には非常に様々な反応が生じることが知られています。

例えば、心拍数が上がる、冷や汗をかくなどの身体的反応や心理的に緊張し、主観的に非常に不快に感じる心理的反応、そしてそのような場面を避けようとする回避行動などです。

そして、先行研究から、心拍数が上がっているなどの身体的な反応を自らが自覚することは、不安を維持したり、促進してしまうことが指摘されています。

しかし、これまでの研究では、不安が喚起されている最中のスピーチ場面における不安と身体反応知覚の関連を検討したものが多かったのですが、スピーチ場面以外の場面と比較してどうなのかについては調べられてはいませんでした。

そこでこの研究では、それぞれの実験課題下における、身体反応の知覚と不安の関連を関連を比較検討しています。

実験における課題

【実験条件の3つの課題】

  • スピーチ課題:実験操作として、生理的・主観的な覚醒を目的としてスピーチを実施する
  • 運動課題:認知的には覚醒しないが、生理的には覚醒する身体的覚醒を目的としてペダル漕ぎ運動を行わせる
  • 安静課題:主観的にも生理的に覚醒しないことを目的として、目を開けたまま安静にするよう教示する

なお、気分の覚醒や身体的覚醒に影響を与えるであろう他の要因を排除するために、実験参加前日から以下の聞き取りを行いました。

  • 薬物、アルコール、カフェイン、たばこなど刺激物を摂取していないこ
  • 1時間以内に激しい運動をしていないこと
  • 体調が良好なこと、精神的に安定していること
  • 前夜適度な睡眠をとっていること
  • (女性は)月経に関連した身体・精神症状がないこと

これにより、独立変数である「実験条件の3つの課題」以外で従属変数である「身体反応の知覚と不安の関連」に影響を与える要因が無いよう統制をしました。

実験手続き

実験手続きは次のような形式で行われています。

【実験手続き】

  1. 実験に関する説明がなされた後、実験参加承諾書、体調アンケートへの記入を求めた
  2. 身体反応の指標としての心拍数と皮膚伝導水準を測定するセンサーを装着した後、平常時のベースラインを測定した
  3. 課題遂行前に、不安感や自身の身体反応の知覚、スピーチ場面における不安反応を測定する質問紙検査を実施した
  4. 1~3の課題(スピーチ課題~安静課題)を実施し、それぞれの課題が行われた直後に③で実施した質問紙検査を行った
  5. 全ての課題が終了した後、センサーを取り外し、実験は終了

実験の結果

スピーチ場面における不安反応という要因を高低の2水準によって分け、それぞれの課題の際(3水準)に生じている、主観的不安感や身体反応知覚、生理的な反応の結果を検討しました。

すると、不安の高低に関わらず、スピーチを行っている際は、心拍や皮膚伝導水準の知覚と身体反応の知覚のずれが小さい一方で、運動課題中や安静課題中はその知覚のずれが大きいことが示されました。

実験法について学べる本

実験法について学べる本をまとめました。

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そのため、しっかりと実験法をやる前にどのように組み立てていくのかを本書で学びましょう。

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現在では基本とされている、心理学の知見がどのような実験手続きによって明らかとなったのかを紹介している本書は、必ず自身の実験を行う際に役立つでしょう。

実験法の特徴を掴んで利用しよう

実験法は因果関係を特定することに優れた研究法です。しかし、だからといってそのほかの研究法を軽視してよいというわけではありません。

実験法でわかるのはあくまで想定している条件下での因果関係でしかなく、実験法で得られた知見がどのような場面でも通用するとは限りません。

多角的な研究を行えるよう、特徴や長所・短所を知った上で、実験法以外の心理学研究の方法についても詳しく学んでいきましょう。

【参考文献】

  • 天野成昭(2018)『心理実験のキーポイント』日本音響学会誌 74(12), 641-648
  • 井垣竹春(2015)『シングルケースデザインの現状と展望(記念シンポジウム)』行動分析学研究 29(Suppl), 174-187
  • 藤森麻衣子・坂野雄二(2006)『不安の喚起が身体反応知覚に及ぼす影響について(原著)』行動療法研究 32(2), 93-103

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    • この記事を書いた人

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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