心理学の歴史と研究法

観察法とは?種類や具体例、長所・短所についてわかりやすく解説

観察法とは、対象者を注意深く客観的に見て、内面に対する理解を深めていく方法です。心理学において最も基礎的な研究方法の1つとして知られています。観察法には多くの種類が存在しますが、その特徴をきちんと把握すれば様々な場面での応用が可能となります。今回はそんな観察法の基礎知識から具体例、長所や短所について詳しく見ていきましょう。

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観察法とは

まずは観察法の基礎知識についてご紹介します。

観察法の意味と定義

観察法とは、人間の行動を注意深く見ることによって対象者を理解しようとする研究方法である

引用:心理学研究法入門 調査・実験から実践まで

観察法は、対象者の行動を「観て察する」という非常にシンプルな研究方法です。しかしただ観ているだけでは、人の心の内や行動の仕組みを正確に理解することは困難と言えるでしょう。

真の人間理解へと繋げるには、心理学的な観点から高い水準の観察を行う必要があります。そのため観察者は、工夫を用いて厳密に研究を進めなくてはなりません。

観察法の長所と短所

次に、観察法の長所と短所について見ていきましょう。

観察法の長所

  • いつどこでも用いることができる(自然的観察法の場合)
  • 日常の行動を観察するため、対象者は時間の拘束を受けずに済む
  • 異なる場面や状況を観察したり、時間をおいて再度観察することで行動の変化が分かる
  • さまざまな要因が絡み合った複雑な事象も把握できる
  • 非言語的な反応、観察状況、行動の経過を細やかに記録できる
  • 質問紙法や面接法に適応できない対象者(乳児や高齢者、障害者など)の研究も行える

研究法の短所と注意点

  • 行動が生起する場面や時間を選べない(自然的観察法の場合)
  • 観察者の存在が、対象者の緊張や不信感に繋がることがある
  • データに観察者の主観が入りやすい

観察法の短所は注意点でもあります。実施の際は上記のことに気を付けながら行いましょう。

観察法の種類

観察法は、表のように研究方法が細かく分類されています。

観察事態自然的観察法実験的観察法
偶然的観察組織的観察
観察形態参加観察法非参加観察法
交流的観察面接観察非交流的観察直接観察間接観察

 

観察法を大別すると「自然的観察法」と「実験的観察法」の2つに分かれます。また、観察形態には「参加観察法」と「非参加観察法」の2種類が存在します。以下にそれぞれの特徴をまとめました。

自然的観察法

自然的観察法とは、限りなく普段の生活に近い自然な状況下で、人の行動を観察する方法です。(この記事では主に自然的観察法についての詳しい解説を行っていきます)

自然的観察法は「偶然的観察」と「組織的観察」に分けることもできます。

  • 偶然的観察:偶然の機会に観察できた出来事を記録すること(日常的観察とも言う)
  • 組織的観察:事前に観察対象や、対象単位(時間・場面・事象)をサンプリング※し、研究目的に沿って観察すること

※サンプリングとは研究対象を選ぶ手続きのこと、または研究の対象となるもののことを指す。

実験的観察法

実験的観察法とは、観察者が意図的に条件を設定し系列的に変化させ(独立変数の操作)、対象者の行動や内的状態がどのように変わるかを観察(従属変数の測定)する方法です。

実験的観察法では、目的の行動と条件の因果関係や、人間行動のメカニズムを知ることができます。

参加観察法

参加観察法とは、観察者自身が、観察対象となっている集団の生活に参加し、その一員としての役割を演じながら、そこに生起する事象を多角的に、長期にわたり観察する方法

引用:心理学研究法入門 調査・実験から実践まで

参加観察法は研究目的に沿って、観察者と対象者の位置を調整することができます。

  • 交流的観察:対象者と何らかのやり取りをしながら観察を行う
  • 面接観察:面接を通して対象者の観察を行う
  • 非交流的観察:対象者との接点を最小限に抑えて観察を行う

非参加観察法

非参加観察法とは、観察者が第三者として対象者を観察する方法です。マジックミラーや視聴覚機器を用いて研究を進めます。対象者に観察者の存在を意識させずに済むのが最大のメリットです。

非参加観察法にも以下のような分類があります。

  • 直接観察:観察者がその状況を直接観察すること
  • 間接観察:ビデオなどを用いて状況を記録し、後から観察すること

観察方法とその例

次に、日常的観察法における実際の観察方法と具体例を見ていきましょう。また以下の観察方法は、複数の方法を組み合わせて実施される場合が多いです。

時間見本法

時間見本法とは、ある一定の時間内で観察すべき行動を抽出する方法です。適当な時間間隔を置いて観察を行うことで、対象者の行動の流れを把握することができます。

対象となる行動が起こりやすいか否かで観察時間も変化します。変動的な行動の場合、誤ったデータを取らぬよう、観察時間を長くとることが望ましいです。

例1:直接的に観察できる、長い時間間隔を設けた方法

Parten(1932) は 幼児遊びの研究を行いました。その際「何もしない」「ひとり遊び」「傍観的行動」「共同遊び」などのカテゴリーを設定し、1分ごとの時間見本法で、幼児が遊ぶ様子を観察しています。

例2:ビデオなどの観察装置を用いないと区切れない、短い時間間隔を設けた方法

kawai(1991) は幼児が物に手を伸ばす際の調節行動の発達変化について分析しています。その際、幼児の様子をビデオに録画しコマ送りにしながら、基準となる手の位置の確認が行われました。

場面見本法

場面見本法とは、目的の行動が最も起こりやすそうな場面や、関連性の高い意味のある場面を選択し、そこで起きた行動を観察する方法です。

複数の場面行動を比較することで、意図的な状況操作を加えなくても場面による行動の変化を理解することができます。

例1:交通量調査・通行人調査

街中でよく見かける交通量調査や通行人調査などにも場面見本法が用いられています。

例2:場面見本法を用いた心理学研究

外山(1998) は保育園における食事場面での幼児の席取りの行動観察を行いました。その際、食事場面だけではなく、午前中の活動が終わり昼食にの準備が始まるまでの時間もサンプリングされています。

事象見本法

事象見本法とは、特定の事柄や行動に焦点を当て、生起、経過、結果を観察する方法です。行動の一連の流れやその背景を知れるといった長所があります。

例:事象見本法を用いた心理学研究

倉持(1992) は幼稚園の自由遊び時間に起きる「いざこざ」に焦点を充て、観察を行いました。「いざこざ」が始まると、その始まりから終わりまでをテープレコーダーに記録するという事象見本法を用いています。

日誌法

日誌法とは、親や周りの保護者達が子どもたちを観察し、育児日誌や保育日誌に記録する方法です。観察者と対象者の接する時間や場面が長いほど、有益な観察記録を得ることができます。しかし主観が入りやすかったり、着目する行動に偏りが出やすいというデメリットもあるので注意が必要です。

例:日誌法を用いた心理学研究

やまだ(1987) や麻生(1992) は自身の子どもを観察対象とし、特別な場面や時間を指定することなく、新鮮で驚きを伴った行動を日誌法で記録していきました。そのため、観察記録は非常に膨大な量にのぼったと言います。

観察の記録方法

観察方法と同じく重要なのが記録方法です。それぞれの特徴と適した使用方法について見ていきましょう。

行動目録法

行動目録法とは、観察したい行動やその場面で起こりやすそうな行動をあらかじめ観察前に選び出しておく方法です。観察時にその行動が起きたら都度チェックしていくため、「チェックリスト法」とも呼ばれています。

時間見本法との相性がよく、指定時間内に起きた行動の頻度を調べるのに適しています。

評定尺度法

評定尺度法とは、観察対象となる行動、個人の態度・傾向、集団のやり取り、雰囲気などの強さを、事前に設定した評定尺度で記録する方法です。

行動目録法が行動の生起頻度だったのに対し、評定尺度法は行動のあり方や、人や物との関係性がどういったものかを記録するのに適しています。

しかし観察者の印象に左右されやすい方法のため、最近の心理学研究では主要な結果として採用されにくい傾向にあります。

行動描写法

行動描写法とは、その状況で起きている行動を時系列に沿って自由に記述する方法です。「逸話記録法」や「エピソード記録法」とも呼ばれています。

前述した2つの記録方法は観察と同時に終えられるものでしたが、行動描写法では観察終了後に適切な言葉を用いて行動を記録しなくてはなりません。しかし、事前に決めた項目に無理に落とし込まず、行動の一部始終を言語化できるため、質的調査には非常に適した記録方法となります。

行動描写法では、対象となる行動だけでなく、観察された状況や文脈についても記録しておきましょう。その際、観察者側から感じられた印象についても記述すると、より分析の役に立ちます。

観察方法に適した記録・分析方法

ここまでご紹介してきた観察方法と記録方法には最適な組み合わせが存在します。それぞれの特徴を把握し、より質の高いデータ収集を行いましょう。

観察方法サンプリング記録方法分析方法
時間見本法時間行動目録法・評定尺度法・行動描写法統計的分析
場面見本法場面行動目録法・評定尺度法・行動描写法統計的分析
事象見本法事象行動目録法・評定尺度法・行動描写法記述的分析
日誌法特徴的な行動行動描写法記述的分析

※日誌法は偶然的観察、それ以外は組織的観察に属します

観察法について学べる本

観察法の知識をより深めることができる書籍をご紹介します。

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理論や技法は勿論のこと、今回の記事ではご紹介しきれなかった研究結果の統計的な処理方法まで、観察法の基礎的な内容が丁寧に解説されています。

さまざまな分野における観察法についても触れられているため、基礎と応用、どちらの観点からも知識を深めることができます。

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本書は「観察法の理論と技法」「観察データの解析」「観察法による心理学的研究の実例」の全3部から構成された一冊です。中でも第3部「観察法による心理学的研究の実例」では10個の例が掲載されており、観察法の具体的な使用方法について詳しく学ぶことができます。

また、先に3部に目を通し、目指すべきゴールを把握してから1部を読む方法もお勧めです。こうすることで、理論と技法についての理解がさらに深まるでしょう。

科学的に人を観察する

私たちは日頃から、他者の行動や表情を見て心の内を推測しています。しかしその全てが的を得ているかと言えば、そうではありません。

心理学研究における観察を行う際は、客観的で科学的な視点が求められます。対象者をより深く正確に理解するために、充分な知識と技術を身に着けておくことが大切です。

参考文献

  • 南風原朝和・市川伸一・下山晴彦 (2001)『心理学研究法入門 調査・実験から実戦まで』東京大学出版会
  • 徳田克己・髙見令英 (2003)『ヒューマンサービスに関わる人のための教育心理学』文化書房博文社 11

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    • この記事を書いた人

    kinu

    臨床心理学科卒。主に発達心理学、学校心理学について学んでいました。

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