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質問紙法とは?代表的な質問紙の例と特徴や長所・短所を解説

心理学は目に見えないこころを扱う学問です。そのため、その一部を何らかの目に見える形する心理検査を通じて、こころを捉えようとしてきました。そこで今回は、心理検査の代表的な手法として質問紙法を取り上げます。その長所や短所、具体例を通じて、質問紙法の特徴をご紹介します。

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質問紙法とは

質問紙法とは、心理検査の手法の一つであり、被検者に一連の質問項目を提示し、「はい」「いいえ」「どちらでもない」などの回答を選ばせることでクライエントの心理的特徴を捉えようとする心理検査の手法のことを指します。

測定内容はパーソナリティを多面的に捉えようとするものと検査時の被検者の心理状態を捉えるものに大別されます。

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質問紙法の長所と短所

心理検査を用いても被検者のこころの全てを把握できるわけではなく、その手法ごとに長所と短所が存在します。

長所短所
①施行・結果の整理が容易である。①回答が被検者の主観に依存するため、社会的望ましさなどによって回答に歪みが生じる可能性がある。
②集団実施が可能である。②無意識の層まで測定が困難。
③統計的・客観的データが得られる。③回答者が置かれた状況を統制しにくい。
④(多くの質問紙法では)短時間で済む。④観察法に比べ、行動過程を記録できない。
⑤解釈に検査者の主観が入りにくい。⑤被検者の言語理解能力に依存する

質問紙法は豊富な種類が存在し、実施も簡便なものが多いため、被検者への負担も少ないという特徴があります。

そのため、検査目的に沿って、必要な種類を組み合わせて検査を実施することができます。

このように、心理検査を組み合わせて用いることをテストバッテリーと呼びます。

質問紙法による調査:教示方法

質問紙法には教示文と質問項目の2つのパートに分けることができます。

質問紙法の教示文

教示文とは質問紙に回答する前に実施する質問紙調査の目的や回答方法について説明する文章のことです。

例えば、一般的なアンケートに回答する際でも、どのような調査なのかを分かっているのといないのでは答える際の不安が生じるなど心境に大きな差が生まれますよね。

このように、質問紙調査でも教示によっては質問紙項目が同じでも教示によって回答傾向が大きく異なる可能性があります。そのため、検査の実施前に被検者が不安や疑問を抱かないようしっかりとした教示を行う必要があるのです。

ここでは、主な教示方法をご紹介します。

場面想定法

教示によってある特定の状況を作り出し、その状況での心理的な傾向を測定する方法です。

例えば、「あなたが交通事故にあった際、こころにどのような思いが生じますか?以下の設問に答えてください」のように、被検者が仮にある状況に置かれたとしてという条件のもとで回答を求めます。

なお、場面想定法で提示する状況設定の刺激のことはビネットと呼ばれます。

回想法

教示によって過去の出来事や考え、感情について思い出すよう教示する方法です。

例えば、「学生時代のテスト期間中についてお尋ねします」のように過去の出来事を思い出し、その時の心境を答えるよう促すのです。

なお、場面想定法では、過去の出来事を被検者が体験していない場合をどのようにするのか、あまりにも昔の出来事だった場合、回答の信頼性と妥当性に支障をきたすといった課題も残されています。

質問紙法による調査:回答の方法

質問紙調査は事前に用意された質問項目に回答してもらうことでデータを収集します。ここでは、主な回答方法の種類をご紹介します。

リッカート法

リッカート法とは「全く当てはまらない」から「非常に当てはまる」のように段階的な選択肢を用意し、その中で最も適当なものを選んで回答させる方式です。

質問紙法でもっとも用いられている回答形式であり、統計的な分析にもかけやすいという利点があります。

心理学の研究を見ていると、5件法や7件法といった記述が出てきますが、これはリッカート法の中でも1つの回答項目にどれだけ選択肢が並べられているかを表しています。

二件法

2件法は、「はい」、「いいえ」のように質問文に対し、2つの選択肢のどちらかを選んで回答してもらう方式です。

この場合、教示や質問項目刺激が曖昧だと、被検者の中で疑問や迷いが生じ、どちらかを選べない(どちらともいえない)という第3の回答が生まれてしまう可能性があることに注意する必要があります。

複数選択法

質問文に対し、「当てはまるものを全て選んでください」や「当てはまるものを○○個選んでください」のように、1つの質問から選択肢を複数選んで回答させる方式です。

順位法

質問文に対し、項目を並べ替えて回答するよう求める方式です。

例えば、「あなたの好きなテレビ番組は何ですか。次の項目を好きな順に並び替えてください」のように順位をつけさせるものが挙げられます。

VAS(Visual Analogue Scale)

VASとは10㎝ほどの線分を用い、質問項目に対する主観的な程度を直線状に印をつけることで評定する方法のことです。

例えば、急性の慢性疼痛などを対象として、線分の左端が「痛みがない」、右端が「最悪の痛み」として痛みがどの程度なのかを線分に印をつけることで主観的な感覚を測定したりします。

VASは評定が容易にでき、数量的に評定しにくいものも対象と出来るという利点があります。

自由記述法

自由記述法は質問文の後に設けられた回答欄に自由に記述を行わせる方式です。

自由記述法で得られた回答は統計的な分析を行うことはできませんが、それを基に被検者のより深い心理を捉えることができるという利点があります。

質問紙法の代表例

代表的な質問紙の例をいくつかご紹介します。

MMPI(ミネソタ多面人格目録)

MMPIとは、ハサウェイ,S.Rとマッキンリー,J.Cが開発した質問紙です。

MMPIは被検者のパーソナリティを捉えるパーソナリティ検査の一つであり、精神医学的診断を行うための補助ツールとして開発された経緯にもあるように、臨床場面で多く活用されています。

MMPIの大きな特徴としては、14の下位尺度から構成されている(10の臨床尺度と4の妥当性尺度)ことが挙げられます。

特に妥当性尺度は質問紙法の欠点でもある、虚偽の回答を検出するために設けられたものであるため、MMPIの検査結果は信頼性と妥当性に優れているとされています。

東大式エゴグラム(TEG)

エゴグラムは精神科医のデュセイ,Jによって開発された心理検査です。

エゴグラムはバーン,Eが提唱した交流分析と呼ばれる心理療法を基としており、その弟子であるデュセイは交流分析を行ううえで重要となる5つのこころ(批判的な親・養護的な親・大人・自由な子ども・順応した子ども)を測定し、クライエントのパーソナリティの偏りを捉えることを目的として開発されてます。

日本においてもっとも用いられているエゴグラムは東大式エゴグラム(TEG)と呼ばれる検査であり、得られた測定結果をグラフ化することで被検者の性格傾向や行動パターンが捉えやすいという特徴があります。

STAI(状態不安-特性不安検査)

STAIとはスピルバーガー,C.Dらが作成した「不安」を測定する質問紙です。

そもそも不安という概念は次の2つに分けることができます。

特性不安:性格傾向としての不安。慎重・心配性などといった不安を感じやすい傾向のことであり、特性不安が高いほど、慢性的・日常的に不安を抱えているとみなされます。

状態不安:一時的な不安。ある特定の状況や物事に直面したときに感じられるものですぐに解消されるという特徴があります。

不安をこの2つに分けて測定することは心理療法において重要な意味を持つことがあります。

例えば、状態不安が強い人に対し鎮静剤等の薬物療法を適用すると即効性が認められますが、特性不安の強い人に投薬や心理療法を行っても効果が表れるまで比較的長期の経過を要するという違いがあります。

そのため、STAIのようにどの不安が強いのかを測定することは治療計画を立てるうえでも重要な指標となることがあるのです。

GHQ精神健康調査票

GHQ精神健康調査票とはイギリスのゴールドバーグ,Dが開発した軽度な精神障害症状や神経症症状をを発見するための質問紙です。

2~3週間前から現在までの健康状態で、精神的・身体的問題があるかどうかについて尋ねており、質問内容も日常的で身近なものとなっているため、人種や宗教、文化、社会が異なっている場合も実施でき、国際比較研究も可能とされます。

このような特徴は災害現場などでも重宝されるようです。

災害など未曽有の事態に巻き込まれた場合、ASD(急性ストレス障害)を発症する人も少なくありません。

しかし、災害現場で一人ずつ症状を丁寧に聞き取り診断を行うだけの余裕はなく、ストレス障害の疑いがある人をふるいにかけるスクリーニングテストとして有用です。

また、短時間で容易に実施ができるという特徴から病院や、学校、企業等でも用いられています。

質問紙法について学べる本

質問紙法をこれから学ぶ方へおすすめの書籍をまとめました。

質問紙調査と心理測定尺度―計画から実施・解析まで

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質問紙法は心理臨床の現場だけでなく、研究の分野でもっとも用いられている手法です。

この本は質問紙調査を一度も経験したことのない初学者が押さえておくべき基本的な知識から、研究の計画、データの整理・解析、論文・レポートのまとめ方と調査に係る一連の関連分野まで網羅されている良書です。

これから質問紙を使って心理学研究を考えている方はぜひ手に取ってみてください。

[三訂]臨床心理アセスメントハンドブック

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公認心理士も第3期の試験が終わり、今後も医療や教育・福祉・司法・産業など様々な領域での需要が増していくものと思われます。

心理士の強みの1つであるアセスメントに用いられることもある質問紙法はもちろんのこと、アセスメントの目的や狙いに沿った計画を立て、得られた結果を心理療法に生かすまでの効果的なアセスメントを実施するために必要なことがまとめられている良書です。

質問紙法で得られた結果の過信は禁物

心理臨床の現場では、心理検査を実施する場面も多いですが、情報収集を心理検査だけに頼ってしまうのは厳禁です。

質問紙法や投映法と呼ばれる心理検査にはそれぞれに測定できる限界があることを忘れてはいけません。

あくまで、面接による情報の収集、見立ての際の補助ツールとして心理検査を有効に用いるように心がけましょう。

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参考文献

  • 山下利之(2015)『特集③人間工学のための計測手法 第3部:心理計測と解析(1):-質問紙による計測と解析-』人間工学 51(4), 226-233
  • 中里克治・水口公信(1982)『新しい不安尺度STAI日本版の作成 : 女性を対象とした成績』心身医学 22(2), 107-112

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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