心理学の用語 臨床・心理療法

投影法とは?検査の種類と長所・短所―心理テストは無意識を測定できるのか?

投影法とは、無意識に潜む欲求や感情などを引き出す精神分析的発想に基づくもので、ロールシャッハテストやTAT(風景構成法)、バウムテストなどに代表されます。

投影法は、無意識に潜む欲求や感情などを引き出し、無意識の水準から被検査者の性格や特性を理解するものです。

しかし、この投影法とは、一般的に質問紙を配り回答してもらう質問紙法とは何が違うのでしょうか?

投影法の長所や短所、それぞれの投影法検査の特徴について解説していきます。

このサイトは心理学の知識をより多くの人に伝え、
日常に役立てていただくことを目指して運営しています。

Twitterでは更新情報などをお伝えしていますので、ぜひフォローしてご覧ください。
→Twitterのフォローはこちら 

投影法とは

心理検査は主に投影法・質問紙法・作業検査法の3つに分けられます。それぞれどういったものか簡単に説明したいと思います。

投影法

投影法は、先に説明した通り、精神分析的発想を理論的背景としています。曖昧な図形や文章を提示したり、あるいは自由に木の絵を描かせたりすることで、被検査者が意識していない深層心理の性格を映し出すことを目的としています。

質問紙法

質問紙法は、統計学的に標準化された明瞭な質問文に対し回答させ、被検査者の意識的な性格を記述することを目的としています。理論的背景としては主に特性論と類型論の2つに立脚しています。

特性論とは、「Aさんは○○の傾向が強く、××の傾向は弱い」「Bさんは○○の傾向は弱く、××の傾向は中程度である」と言ったように、それぞれの性格特性の程度について評価するものです。

類型論とは、「Aさんは○○タイプ」「Bさんは××タイプ」といったように人の性格をある基準に従って型に当てはめて捉えるものです。ひと昔前に流行った血液型診断などはこの類型論に当てはまります。

※質問紙法については、以下の記事で詳しく解説しています。

質問紙法とは?代表的な質問紙の例と特徴や長所・短所を解説

続きを見る

作業検査法

作業検査法では、一定の検査時間内である精神的な作業(単純計算を繰り返し行ってもらうなど)を課し、その反応パターンや作業量により性格を診断するものです。

投影法の長所と短所

それでは、投影法にはどのような長所と短所があるのでしょうか。

投影法の長所

投影法は長所として主に以下の3つを挙げることができます。

①被検査者の深層心理の性格を診断することができる

質問紙法のテストでは被検査者は意識して質問に回答しているため、被検査者の意識できる水準の性格しか反映できません。

しかし、投影法では被検査者の意識できない深い水準の性格を反映する精神分析的発想を理論的背景にしているため、被検査者自身も知らなかった無意識を診断することが可能です。

②被検査者が回答を婉曲させることが難しい

質問紙法のテストでは、被検査者は故意に嘘の回答をすることで、検査者にみせたい自分を偽ることが可能です。

しかし、投影法では一般的に、被検査者は自身のどのような回答がどのように診断されるのか分からないため、虚偽的な回答をすることが困難です。

③被検査者にテストの意図を悟られないようにできる

投影法のテストでは、検査者は被検査者に対し、どの様な意図や目的を持って検査しているのか隠すことが可能です。

投影法の短所

投影法の短所として主に以下の3つを挙げることができます。

①投影法の検査には明確な診断基準がない

質問紙のテストでは、「○○と答えたら××という性格だ」と明確な診断基準を持って測定することが可能ですが、投影法検査にはそれがありません。「○○と答えるとどの様な性格と考えられるか」を明確に診断することが困難なのです。

②統計的な裏付けが弱い

投影法のテストは数量的に処理することが困難であるため、統計解析を行うことも困難です。

つまり、質問紙のテストでは「Aさんは○○の傾向が平均よりも高いため、○○な性格と言える」と解釈できますが、投影法ではその平均がないため、被検査者のある性格特性が一般比べてどれだけ高いのか、あるは低いのか診断することが困難です。

③投影法を使うには技術を要する

一般的な質問紙のテストでは、テストを配布し被検査者に回答してもらうだけで済みます。

しかし、投影法テストでは検査中に被検査者とどの様なやり取りをするか。検査データをどのように解釈・診断するかについて正解がありません。

検査中のやりとりにより検査データは影響を受け、その上で検査データをどのように解釈・診断するかは検査者の主観に基づきます。よって、投影法を使うには熟練したセラピストでなければ困難だと言われています。

投影法を用いた心理検査の種類

投影法検査はどのようなものがあるのでしょうか。以下で主要な8種類の投影法検査について簡単に説明していきます。

ロールシャッハテスト(Rorschach Test)

スイスの精神科医ヘルマン・ロールシャッハによって開発された精神診断法検査です。

左右対称のインクの染みからなる10枚の図版を被検査者に1枚ずつ提示し、それが何に見えるかを自由に反応させるという回答方法を取ります。

豊富なデータに基づく客観的・量的解釈に加え、その場での被検査者の心的力動を解釈することも可能です。解釈においては特に検査者に習熟が要求されるテストの一つです。

TAT 主題統覚検査 (Thematic Apperception Test)

モーガン,C.D.とマレー,H.A.によって考案された投影法検査であり、主題統覚検査や絵画統覚検査と呼ばれます。

日常生活での光景が描かれた絵を1枚ずつ提示し、その登場人物の内面、そして過去・現在・未来について自由に物語を語ってもらいます。その物語の内容を分析することで、被検査者のパーソナリティや欲求を探り出すという方法を取ります。

SCT 文章完成テスト (Sentence Completion Test)

「私が嫌いなのは..」など、未完成の文章を完成させるパーソナリティ検査です。

反応分には自己概念や対人関係、家族関係などが投影され、パーソナリティの全体像を把握することが可能です。被検査者の反応選択はかなり自由であり、施行方法も簡単で集団での施行や持ち帰りでの施行も可能です。

しかし一方で、その回答の自由さゆえに、解釈・診断に客観性を保つことが困難であり、検査者の習熟が要求されるテストの一つです。

P-Fスタディ (Picture Frustration Study)

絵画欲求不満テストとも呼ばれます。ローゼンツァイク,S.によって開発された検査です。

欲求不満状況に対する反応のタイプから、被検査者の性格傾向を把握することを目的としています。日常の欲求不満場面について、漫画風に描かれた24枚の刺激図版に対し、空白の登場人物のフキダシを自由に記述してもらうという方法を取ります。

ゾンディテスト (Szondi-test)

ゾンディテストとは、ハンガリー生まれの精神科医L・ゾンディによって開発された投影法検査です。正確には実験衝動診断法(Experimentelle Triedbiagnostik)と言います。

8枚の衝動疾患者の顔写真を提示し、被験者にそれぞれ「好き―嫌い」を評定させ、被検査者の衝動性や社会性などを記述することを目的としています。

バウムテスト (Baum Test)

「樹木がテスト(The Tree Test)」とも言います。コッホ,K.によって開発された投影法の心理テストで、A4版の紙と鉛筆、消しゴムを用意して「木の絵を1本描いて下さい」または「実のなる木の絵を1本描いて下さい」と教示します。

描かれた木の全体的な印象や、樹木各部の形状や特徴、図版のどの位置にどれくらいの大きさで描いたかなどを手掛かりに解釈・診断します。被検査者の自由度は大きいが、その分、客観的な解釈が困難であり、他の心理テストと併用して使われることが多いです。

HTP (House-Tree-Person Test)

「家屋・樹木・人物画法テスト」とも言います。バック,J.によって開発されました。家・木・人の絵を描かせた後、それらが被検査者にとってどのような意味があるか64項目の質問を行います。

各描画像には、自己イメージが投影されていると同時に、家族や対人関係でのイメージも投影されているという前提のもと、性格を多角的に捉えることを目的としています。

家屋・樹木・人物・その反対の性別の人物という4枚を描かせるように改良されたHTPPもあります。

風景構成法 (Landscape Montage Technique; LMT)

日本の心理学者、中井久夫によって開発された心理検査兼、芸術療法です。

A4の紙にサインペンで検査者が枠を描き、被検査者に「川・山・田・道・家・木・人・花・動物・石・付け加えたいその他のもの」を順に書き入れさせ、最後にクレヨンで色付けをさせ、全体で一つの風景を完成させます。

どのように川を描いたか、人の数は何人か、どこに何が描かれたかなど、各部の特徴から被検査者の性格を全体的に解釈・診断することを目的の一つとしています。

投影法について学べる本

ここまで何度か述べて来たとおり、投影法は検査者の習熟が必要なものです。そこで、以下3冊ほど、実際、臨床の現場で投影法検査を行っている心理士に読まれているものの多い本を紹介します。

京大心理臨床シリーズ①バウムの心理臨床

created by Rinker
¥4,039 (2021/09/27 02:59:15時点 Amazon調べ-詳細)

投影法検査、精神分析理論の国内最高峰である京都大学の出版する、京大心理臨床シリーズは、投影法についてより知識を深めたいという方には必読です。

特にシリーズ①はバウムについてあらゆる視点から解説されていて、読んでいて飽きない1冊です。

新・心理診断法―ロールシャッハテストの解説と研究

created by Rinker
¥13,916 (2021/09/27 08:19:24時点 Amazon調べ-詳細)

もしあなたが臨床心理士と会うことがあれば「片口式の本持ってますか?」と聞いてみて下さい。

片口安史によって書かれた、この「新・心理診断法(通称・片口)」は、臨床系大学院を出た臨床心理士であれば大半の人が持っていると言っても過言ではない名著です。

これから心理系大学院への進学を目指す方、現場で実際にロールシャッハテストを使いたい方はぜひ一冊持っておきたい本です。

「心理テスト」はウソでした。

心理検査を行う者は、心理検査の有効性を理解することはもちろんですが、その反面心理検査への疑問を持ち、心理検査の限界を把握しておく必要があります。

一般向けに書かれた本ですが、非常に読みやすく、衝撃的な内容ですので、ぜひ一度は読んでおいて欲しい1冊です。心理検査を信じられなくなります。

心理テストは無意識を測定できるか?

「投影法は無意識を診断するものだ。特にロールシャッハテストは素晴らしい。心理学を学ぶ者は必ず知っておいて欲しい心理テストだ。ロールシャッハテストは被検査者の少し先の未来が見える。」

この様に言う学者が実際います。事実、心理学者を対象に行った「大学院生に学んでほしい心理検査法」として、ロールシャッハテストは堂々のランキング1位を獲得しています。しかし、ロールシャッハテストは本当にそれほど素晴らしい心理テストなのでしょうか。

1980年、セント・ジョウンズ大学のルイス・アロンは、過去1年間で酷いストレスに曝された大学生と、ストレスにさらされなかった大学生を対象にロールシャッハテストを実施しました。研究者の予想は、両グループにストレスやトラウマを測る指標である刺激体験es得点で差が出るだろうというものでした。

しかし結果、両グループに得点の差はほとんど見られませんでした。つまり、ロールシャッハテストでは、目の前の被検査者が過去に酷いストレスに曝されていたのかどうかすら当てることが出来なかったのです。

現在はこういった批判を背景に、世界では投影法の心理検査が衰退の一路を辿っています。日本では、まだまだ投影法による検査を行う施設や学校、病院を多く見かけますが、今後は減っていくかもしれません。今後、こうした統計上の批判に対し、投影法を専門とする心理士はどのように立ち向かっていくのか、目が離せません。

質問紙法とは?代表的な質問紙の例と特徴や長所・短所を解説

続きを見る

参考文献

・Meyer,G.J. Response frequency problems in the Rorschach: Clinical and research implications with suggestions for the future. Journal of Personality Assessment, 1992, 58, 231-244.

・Meyer,G.J. The Rorschach's factor structure: A Contemporary investigation and historical review. Jornal of Personality and Assessment, 1992, 59, 117-136.

・心理臨床大辞典. (1999). (編集)氏原寛. 亀口憲治. 成田善弘. 東山紘久. 山中康弘.

関連記事

    • この記事を書いた人

    こっけ

    臨床心理学学科大学卒業後、臨床心理学研究科の大学院に在学。恋愛をテーマに研究。19歳で上級心理カウンセラー資格習得。20歳で心理学検定10領域全領域を合格し、心理学検定特一級を習得。

    -心理学の用語, 臨床・心理療法

    © 2020-2021 Psycho Psycho