テストバッテリーとは?その重要性や組み合わせ例、やり方と注意点を解説

2022-03-02

社会不適応に陥ったクライエントが来所をしてからまず行わなければならないのが、心理アセスメントであり、この時に心理検査の実施は必要不可欠と言えるでしょう。しかし、必要な検査を組みあわせて用いるテストバッテリーはどのように行えばよいのでしょうか。その重要性や組み合わせ例、やり方、注意点などをご紹介します。

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テストバッテリーとは

テストバッテリーとは、心理アセスメントにおいて使用する心理検査を複数組み合わせて用いることを指します。

テストバッテリーの重要性

そもそも、心理アセスメントは主訴や症状、既往歴、家族情報などを聞き取る面接を行いますが、それに加えて次のような目的で実施されます。

【心理検査の目的】

  • 面接の中で測りきれなかったクライエントの情報収集
  • 面接での語りから捉えられた特徴が心理検査においても再現されるのかという客観的な指標
  • 面接を実施することが困難である状況でのスクリーニング

1つの心理検査でクライエントの全てがわかるわけではありません。

そのため、心理検査の目的が達成できるよう、それぞれの検査を組み合わせて用いることで効果的な治療に役立つクライエントの情報収集ができるのです。

テストバッテリーのやり方

テストバッテリーの組み合わせ方には様々な方法があります。

しかし、テストバッテリーを考える際に、それぞれの心理検査の持っている特徴をきちんと把握しておく必要があります。

【代表的な心理検査】

  • 質問紙法:質問項目への回答により被検者の心理的特徴を探る
  • 投映法:あいまいな刺激に対する回答や描画によって被検者の心理的特徴を探る
  • 作業検査法:作業課題への取り組みを評価することによって被検者の心理的特徴を探る
  • 知能検査:決められた課題への取り組みによって被検者の知的能力を探る

テストバッテリーの組み合わせ例

テストバッテリーの最も代表的な例としては質問紙法と投映法を組み合わせる方法が挙げられます。

質問紙法は被検者の意識的な側面を測定できるという特徴があります。

しかし、意識面を測定できる半面で、回答を歪曲しやすいというデメリットがあるのです。

これに対し、投映法は無意識の内容を探ることができると言われています。

そのため、意識面を測定できる質問紙法と無意識面を測定できる投映法というバッテリーを組み、両者の結果を照らし合わせることでより客観的な結果が導き出されるでしょう。

その他にも、クライエントの示す特徴が知的能力の問題からくるものなのか、それともパーソナリティ特徴からくるものなのかを調べるために、知能検査とパーソナリティ検査を組み合わせるなどの場合もあります。

このように、ケースに応じて適宜バッテリーを組む検査は変更する必要があるのです。

テストバッテリーの注意点

テストバッテリーを組む際に最も考えなければならないのが、アセスメントの目的から外れないということです。

そもそも、治療行為はクライエントの最善の利益のために行われます。大量の検査を行い、何でもかんでもクライエントの情報を探ろうとする姿勢はクライエントの利益を考慮していません。

そのため、目的を達成するために最小限の検査の組み合わせを心がけましょう

また、投映法は無意識の内容を探りますが、クライエントのこころへの負担も大きいとされています(これを自我への侵襲性が高いと言います)。統合失調症など病理の深い患者に対し、負担の大きい検査を行う場合は注意が必要です。

また、項目数が多かったり施行に時間がかかる質問紙検査(MMPIなど)や知能検査のバッテリーを組む場合にはクライエントの体力も考え、別日に検査を行うなど工夫しましょう。

テストバッテリーについて学べる本

テストバッテリーについて学べる本をまとめました。初学者の方でも手に取りやすい入門書をまとめてみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみてください。

表で覚える心理検査25(第二版)

テストバッテリーを考える際には、様々な種類のある心理検査の持つ特徴をしっかりと学ばなければなりません。

ぜひ、本書で心理検査を幅広く学びましょう。

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心理検査について学ぶということは、心理検査がどのようなものであるかだけでなく、どのように実施すればよいのかも含まれます。

実際に施行している姿をイメージできなければ、クライエントの負担を減らすという視点を得られないでしょう。

ぜひ本書で心理検査の実施のイロハを学んでください。

テストバッテリーを有効に活用しましょう

心理臨床の現場では、スクリーニングなどの状況を除き、ほとんどのケースでテストバッテリーを組むことが多いでしょう。

それほど、クライエントの全体像を掴むためには慎重になるべきであり、自分の得意な検査だけ実施できれば良いということはありません。

そのため、豊富な種類のある心理検査になるべく触れてみるようにすることが、実際の現場でよいアセスメントを行うことに繋がるのです。

 

【参考文献】

  • 丹野義彦(2001)『実証にもとづく臨床心理学に向けて』教育心理学年報 40(0), 157-168
  • 土屋マチ・森田美弥子(2013)『投映法と水準仮説に関する文献展望 : 有効なテスト・バッテリー構築のために』名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要. 心理発達科学 60, 111-119
  • 橋爪敏彦(2004)『アルツハイマー病の重症度と痴呆テストバッテリーの意義』東京慈恵会医科大学雑誌 119(1), 41-50

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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