HTPテスト(HTPP・S-HTP)とは?目的・やり方・解釈方法と診断への用いられ方を解説

2021-11-30

心理検査には様々な種類がありますが、中には紙に絵を描いてもらい、そこに表現された内容から個人のパーソナリティや状態像を捉えようとするものがあります。

今回はそのような描画法の1つであるHTPテストを取り上げ、目的ややり方、結果の解釈方法、診断への用いられ方などについてご紹介します。

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HTPテストとは

HTPテストとは、紙に絵を描いてもらい、そこに表現された内容からクライエントのパーソナリティや心理的特徴を読み取る描画法の心理検査です。

この検査のHTPとは、(HOUSE)、(TREE)、(PERSON)の頭文字をとったものです。

この検査を開発したバック,J.K.によれば、描かれるそれぞれの対象は次のようなものを反映しているとされます。

  • 家:家族に対するイメージや家庭環境を反映する
  • 木:言語化が難しいような無意識的自己像や感情、欲求、エネルギーを反映する
  • 人:意識的な自己像や感情、もしくは養育者などの重要な人物に対するイメージや人間関係全体に対するイメージなどを反映する

HTPテストの特徴

HTPテストを含む描画法は、心理検査の中でも無意識的な部分を捉えることのできる投影法に分類されます。

そのため、クライエントの意識の部分を把握することのできる質問紙法やアセスメント面接と組み合わせることで、より全体的なクライエントの状態像をつかむことができます。

また、絵を描いて表現をするということ自体に言語化できない想いを外に吐き出すことで、カタルシスという治療効果が見込めることも大きな特徴です。

HTPテストのメリット・デメリット

HTPテストのメリットとしては、投影法の特徴である被検者の無意識的な部分を把握することが可能となる点が挙げられます。

そして、描画法の特徴である言語能力に依らず、手続きが複雑でないことから幅広い対象に用いられる点もメリットです。

また、HTPテストは、描かれた家・木・人から、家族イメージや家庭環境、自己像(意識・無意識)などを把握することができ、家族関係や対人関係の問題が把握しやすいテストと言えます。

一方、デメリットとしては、投影法全般に言えることではありますが、解釈には熟練が必要なほか、解釈の標準化が困難であり、検査者によって解釈に違いが生じる可能性が挙げられます。

HTPテストのやり方

HTPテストは、まず実施前に「絵の上手・下手を調べる検査ではないこと」「できるだけ上手に描いてもらうこと」「何かモデルのあるものをそっくりに描く模写ではないこと」を伝えます。

【HTPテストに必要な道具】

  • B5またはA4の画用紙3枚
  • 鉛筆
  • 消しゴム

この3枚の画用紙では、1枚目に家、2枚目に木、3枚目に人を描いてもらいます。

この時の注意点として、画用紙をクライエントに渡す際には、家の絵を描くときには横向き、木の絵と人の絵は縦向きにします。

なお、クライエントが描画をしている最中には、そのような順番で書いたか、気になるような言動をしていないか、描き出しと書き終わりの時間の記録を取るようにします。

クライエントが木の描画を終えた後、PDI(Post Drawing Interrogation)と呼ばれる絵の気になった点についての質問や、絵についての感想について訊き、その記録を取ります。

HTPテストの発展形

HTPテストは発表されてから様々な改良が多くの研究者によって試みられ、発展形としてHTPPテストS-HTPテスト(統合版HTPテスト)が開発されました。

HTPテストの発展形①:HTPPテスト

HTPPテストとは、HTPテストの変法の一つであり、日本の高橋雅春が開発した心理検査です。

HTPPテストは家・木を描くまではHTPテストと同様の流れで進みますが、画用紙は4枚用意し、人を描く際には最初に描いた人物と逆の性別の人を4枚目の画用紙に描いてもらうという流れで実施されます。

この異なる性の人物を2人描くことにはどのような意味があるのでしょうか。

2人の人物のうち、クライエントと同性の人物には自己の現実像が反映され、異性の人物画には「異性に対する捉え方」が反映されていると考えます。

そして、男女のどちらから書いたのか、性別によって表現の違いがあるのか(例えば、男性は筋肉質で力強く描いているが、女性は見るからに弱弱しいなど)も解釈に生かすことができます。

HTPテストの発展形②:S-HTPテスト(統合版HTPテスト)

HTPテストの発展形として用いられているのがS-HTPテストです。

S-HTPも日本の細木らが1971年にHTPテストの変法として家・木・人を1枚の紙に描くという方法を始めて施行した「多面的HTP」が元となっています。

これは、統合型HTPテストとも言われ、描かれる内容は家・人・木と通常のHTPテストと変わりませんが、これらを1枚の画用紙に描いてもらうという点で大きく異なります。

検査を実施する際には、「家と木と人を入れて、何でも好きな絵を描いてください」と教示します。

1枚の紙に描かれるよう枠を狭めることは、「森の中に建っている家に住んでいる人」のような何らかの流れ、つまり家と木と人が統合されやすくなることに繋がります。

これによって、HTPテストにおいて家・木・人それぞれが持つ意味の関係性までも把握することができ、「何でも好きな絵を描いてください」という自由度の高い教示から家と木と人以外にも付加物が描かれやすいという特徴があります。

描画法の検査は、心理的特徴を判定する上で細部よりも全体評価の重要性が指摘されてきましたが、従来のHTPテストよりもより多様な全体的評価が可能となったことで、子どもの発達に関する問題や精神的・心理的問題について、より客観的な評価が可能になったという指摘もあるようです。

HTPテストの解釈方法

HTPテストでは、検査で描かれた絵の内容に関する分析に加え、描画を行っている際の様子や描画後の質問や語りの中で現れた内容を総合し、解釈を行っていきます。

描かれた絵に関する分析は以下のの3つの観点から行われます。

形態分析

全体から受ける印象(明るい印象、暗い印象)や家・木・人の各部位ごとのバランス(あまりにも頭が大きい人物を描く、幹が細すぎる木を描く)などに着目して分析を行います。

以下は解釈のポイントの一例です。

屋根:空想や知性
(例)屋根が大きい・・・空想に耽りがち

壁:自我の強さ
(例)壁の基線が弱い・・・外界からの圧力が強く、自我の力が弱い

扉:人間関係への態度
(例)扉が小さい・・・他者との接触を避けようとする

窓:外界や他者との接触
(例)窓が描かれていない…外界への関心が欠如している

幹:生命力やエネルギー
(例)幹が太い・・・活力に溢れている 幹が細い…疲れている

根:無意識の衝動、現実との接触の仕方
(例)根がない・・・不安感・緊張感が強い

地面:他者との対人関係
(例)地面の線が歪んでいる・・・対人関係が不安定・順応できていない

枝:知性や情緒
(例)枝先が尖っている・・・攻撃衝動がある

顔:他者とのコミュニケーションの中心的部分
(例)大きく描く・・・知性・理性、人間関係の重視

目:外界の情報の取り入れ
(例)目が大きい・・・外界への関心・好奇心、目が小さい・・・外界からの刺激を回避

鼻:権力や男根の象徴
(例)鼻が大きい・・・権力や支配への欲求

口:他者とのコミュニケーション、性的象徴
(例)口が小さい・・・他者とのコミュニケーションの回避

耳:他者の見解への感受性や過敏性
(例)耳が描かれていない・・・他者からの批判の無視

腕・手:自己や外界への働きかけ、対人関係への適応
’(例)大きい手・・・外界を操作することへの関心の高さ、他者支配への欲求

脚:パーソナリティの安定性や自律性
(例)脚が省略されている・・・自律心の欠如、不安定で抑うつ的

動態分析

鉛筆での線が乱雑でないか、線のつながりが途切れたりしていないかなど鉛筆の使い方や筆圧などに着目して分析を行います。以下は解釈のポイントの一例です。

筆圧が強い・・・行動力がある・積極的
筆圧が弱い・・・消極的・不安がある
ストロークが速い・・・衝動的・せっかち
ストロークが遅い・・・慎重

空間分析

画用紙の使い方(空白がとても多くないか、絵がはみ出していないか)や奥行きのある絵の描き方をしているかなどについて分析を行います。以下は解釈のポイントの一例です。

余白が多い・・・不安が強い、自尊心が低い、抑うつ感
余白が少ない・・・自己顕示的、過活動
上方に偏っている・・・観念や空想の世界
下方に偏っている・・・現実的・具体的な世界
左側に偏っている・・・内向的、過去への退行
右側に偏っている・・・外向的、未来の象徴

量的分析と質的分析

HTPテストの解釈には量的分析質的分析のアプローチがあると言われています。

質的分析は、上述したような描かれた絵の内容や取り組み姿勢などから、パーソナリティ傾向を分析する方法となります。

他方、量的分析は、評価表に基づいて描かれた絵をスコアリングしていく方法であり、知的能力を算出することができるとされています。

HTPテストの解釈例

具体的にHTPテストの解釈はどのように行われるのでしょうか。

今回は、栗岩ら(2002)が、中学生の不登校児に対し実施したHTPテストの分析例をご紹介します。

(※栗岩瑞生・渡辺タミ子・大山建司(2002)『House-Tree-Person test を用いた不登校児の心理分析』より)

この症例の男児は家庭環境の急激な変化や友人関係の問題から不登校になったとのことでした。

家の分析

特徴的な部位:全体的に過大サイズ、切断、不安定な筆圧、大きい扉、取っ手の強調、窓枠のない窓

過大サイズは自己顕示性を、屋根や壁の線の不安定さは自我が弱まっていることをうかがわせます。

また、8つに仕切られたアパートは家族関係の親密さに欠け、取っ手の強調は外界に対して自分を閉ざしていること、インターホンの強調は外界を拒絶する気持ちを表しています。

加えて、閉ざされた窓は家庭内の問題を外へ見せたくない気持ち、窓枠、カーテンのない窓は外界との直接的・短絡的な関係づけしかされていません。

木の分析

特徴的な部位:強い筆圧・ひこばえ・半解放の太い幹・空白の樹皮・樹幹の小ささ

強い筆圧から自己主張の強さが伺え、根と地面が接地していないことから現実吟味に乏しいこと、ひこばえは自我が育ってきていることを示しています。

また、幹の線が滑らかでないことは行動面で不適応で、内面に満たされないものを持っているものと思われます。

さらに、幹は太く、対人関係で自分を強く押し出したい気持ちが垣間見えます。

人の分析

特徴的な部位:過小サイズ・目や東部の強調・対照的でない足

紙と目の強調は自己防衛したい気持ちを、顎の線の強調は自己顕示性、対照的でない足は行動の不安定性を伺わせます。

HTPテストの診断への用いられ方と留意点

HTPテストは何らかの診断基準を示すようなテストではありません。

そのため、査定面接や他のテストの結果の結果と合わせ、総合的に診断が下されるべきであり、あくまで補助的なツールであることを忘れないようにしましょう。

ただ、HTPテストはIQの把握に用いたり、ロールシャッハテストの抑うつや過剰警戒指標との関連が示されていることから、これらの関連疾患を診断する際の判断材料として用いられる可能性があります。

HTPテストについて学べる本

HTPテストについて学べる本をまとめました。

描画テスト

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本書はHTPPテストの実施から解釈のポイントをしっかりとまとめた一冊です。

特に、4枚の画用紙に絵を描くHTPPテストは解釈のポイントも多くなるため、事例を参考にしながらイメージをつかみましょう。

[POD版]S-HTP法: 統合型HTP法による臨床的・発達的アプローチ

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誠信書房
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S-HTPテストと言ったらこの本という一冊です。

豊富な事例に目を通すことは、実際に検査を行ったときに、どこか似ている雰囲気がするという気づきを促すでしょう。

ぜひ、この本の豊富な事例でS-HTPテストに慣れましょう。

HTPテストに関連するキーワード

今回ご紹介したHTPテストに関連するキーワードをまとめます。サイト内に記事があるものについてはリンクを付けておりますので、併せてご参照ください。

家と木と人が象徴するもの

HTPテストは描画法の中でもより広いテーマの描画を求めるものであり、それぞれの解釈のポイントは多様で、実施には熟練度が求められるでしょう。

しかし、それらをまとめ上げた時とき、これまでの語りの中では見えなかったクライエント像が浮かび上がってくるかもしれません。ぜひ、HTPテストへの学びを深めましょう。

【記事のまとめ】

HTPテストとは、バックにより開発された描画法(投影法)の心理検査であり、家・木・人の絵を描いてもらい、表現された内容から心理的特徴を読み取る検査である

・HTPテストを含む描画法は、無意識的な部分を捉えることができることが特徴であり、質問紙や面接と組み合わせることで全体的な状態像をつかむことが可能となる

・3枚の画用紙を用い、1枚目に家・2枚目に木・3枚目に人を描いてもらい、描画後に質問を行う手続きを取る。描画の最中には、描く順番や所要時間、気になる言動などを観察する

・HTPテストの発展形として、3枚目に描いた人とは逆の性別の人を4枚目に描くHTPPテスト、家・木・人を1枚の画用紙の中に描くS-HTPテストなどが挙げられる

・HTPテストの解釈としては、描かれた絵の内容に関する分析に加え、描画中の様子や描画後の質問への反応などを総合して解釈を行う

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【参考文献】

  • 高橋雅春(1974)『描画テスト入門』文教書院
  • 纐纈千晶(2012)『S-HTP研究の文献検討: 研究テーマの多様化を中心に』名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要. 心理発達科学 59, 101-109
  • 渋川瑠衣・松下姫歌(2007)『統合型HTP法に関する研究の展望--「統合性」・「遠近感」・「人と家・木との関係付け」に着目して』広島大学大学院心理臨床教育研究センター紀要 (6), 52-66
  • 栗岩瑞生・渡辺タミ子・大山建司(2002)『House-Tree-Person test を用いた不登校児の心理分析』山梨大学看護学会誌 1(1), 13-17
  • 高橋依子(2011)『描画テスト』北大路書房

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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