心理学の用語 社会・経済

認知的不協和理論とは?具体例や実験方法、マーケティング応用術も詳しく解説

2つの認知の間に矛盾が生じ、ストレスを感じることを認知的不協和と言います。人はこの不協和を放っておくことが出来ず、行動や思考を合理化させる生き物です。今回は、認知的不協和理論をより分かりやすく具体的に解説します。マーケティングや恋愛での応用術もぜひご参考にしてください。

このサイトは心理学の知識をより多くの人に伝え、
日常に役立てていただくことを目指して運営しています。

Twitterでは更新情報などをお伝えしていますので、ぜひフォローしてご覧ください。
→Twitterのフォローはこちら 

認知的不協和理論とは

まずは認知的不協和理論の概要と具体例をご説明します。

認知的不協和理論の概要

認知的不協和とは心の中に生じる矛盾のことを言います。例えば「痩せたいのに間食する」「テストが近いのに勉強しない」といった、心の中のもやもやした気持ちや不快感のことです。

さらに、人はこの不快感(不協和)を動機づけによって解消しようと試みます。動機付けとは、行動を起こしたり方向づけることです。何かしら納得のいく理由をつけて行動や思考を正当化させることで、もやもやした気持ちを晴らすのです。

この一連の現象を統一的に説明したものを、認知的不協和理論と呼びます。

特に認知的不協和が発生されやすい状況は以下の通りです。

  1. 何かを決定した後
  2. 強制的に承諾をさせられたとき
  3. 意図せず偶然に情報を得てしまったとき
  4. 社会的な不一致
  5. 自己の感情や信念が、現実と食い違っているとき

認知的不協和理論の具体例

店頭で見かけたスニーカーを気に入って、購入したとします。しかし、暫くしてネットで口コミを見たら「ダサい」「安っぽく見える」など散々な評価が書かれていました。そんな時あなたの中に認知的不協和が生じます。

「自分はかっこいいと思ったのに」「しかも何度か履いているから、もう返品できない」そんなことを考えてモヤモヤするでしょう。

ここで認知的不協和を解消させるには、購入したことを正当化させる考えや行動に切り替えることで可能になります。

  • 認知要素の一方を変化させる 「批判してる奴のセンスが悪い」
  • 不協和な認知要素の過小評価 「そこまで安っぽくは感じない」
  • 協和的な認知要素の過大評価 「やっぱり何度見てもかっこいい」「自分は満足している」
  • 新しい協和認知要素を加える 「実際とても歩きやすい」「購入時、定価より安かった」
  • 不一致の重要性を低める 「別に地元で履けばいいや」「最悪弟に譲ろう」
  • 不協和をもたらす情報の選択的回避 「もう口コミは見ない」
関連記事
確証バイアスとは?具体例や実験で問題点・対策をわかりやすく解説

続きを見る

認知的不協和理論に関する心理学実験・論文

認知的不協和にはどのような実験があるのか見てみましょう。

認知的不協和の提唱(フェスティンガーの実験)

認知的不協和理論は、アメリカの社会心理学者であるレオンフェスティンガーにより提唱されました。その際に行った実験をご紹介します。

  1. 実験参加者の大学生たちに、非常に退屈でつまらない作業を60分課す
  2. 作業終了後、次に同じ実験を受ける参加者たちへ「この実験はとても面白いよ」と嘘の感想を伝えるようにお願いする
  3. 嘘の感想を伝える参加者には報酬が支払われ、高額の20ドル群と低額の1ドル群に分けた。さらに、感想の報告はしなくて良いが報酬も支払われないグループも用意した。
  4. このあと参加者たちは別室にて、取り組んだ課題の面白さや、再参加の希望の有無、科学的重要性を問われる

【実験結果】

低額の1ドルしか支払われなかった群は、他2群に比べて課題の内容を高く評価しました報酬が低いほうが、退屈な作業を面白いと感じるという「認知的錯覚」が引き起こされたのです。

本当は退屈な課題だったのに「面白い」と嘘を伝えなくてはならず、実験者には認知的不協和が生じます。そしてこの不快感を解消したくなります。嘘をついたことはもう取り消せないので、課題の印象を変えることでこの不協和から抜け出そうとしているのです。

報酬が20ドルの群は、高額な報酬を受け取っているため「嘘をついても仕方ない」と自分の行動を正当化出来ます。よって課題の印象を変えなくても認知的不協和は解消出来るのです。

ディカーソンの実験

「やったほうが良いのは分かっているけど、なかなか実行に移せない」という感情は誰しも抱いたことがあるでしょう。そんな時は、不協和の低減を利用すれば行動に導くことが出来ます。

ディカーソンらは、大学のシャワー室に入ろうとする学生に対して

  1. シャワーの使用に関する簡単な質問に答えてもらう(質問条件)
  2. 「シャワーの水を節約しましょう。洗っている間は水を止めましょう。私ができるんだから、あなたもできる!」と書かれたチラシに署名するように求める(署名条件)
  3. 同じように署名を求めると同時に質問にも答えてもらう(質問+署名条件)

という条件を作り、それぞれの学生が実際にシャワーを浴びる時間を計測した。

引用:現代心理学入門4 社会心理学p70

【実験結果】

3.の条件を与えた大学生のシャワー時間が最も短くなりました

「他者には節水するよう求めた(署名)」「なのに自分は実行していない(質問回答)」という相反する事実を認知し、不協和を起こしたのだと考えられます。署名は既に済ませてしまったので、自ら節水を心掛けることでこのギャップを埋めたのです。

「偽善者にはなりたくいない」という感情をうまく利用した実験だと言えるでしょう。

認知的不協和理論の日常生活への応用

認知的不協和から抜け出したいという気持ちを逆手に取った方法は他にもあり、私たちの日常でも活かすことが出来ます。いくつかの例を見てみましょう。

マーケティング

認知的不協和を応用したマーケティング事例は非常に多く存在します。人は不協和が大きいほど放置することが出来ないので、なるべく大きな矛盾を打ち出すのがポイントです。

  • 「食べるほど痩せていく!!ダイエットの新常識」
  • 「賢い人は損をする?ストレスフリーな暮らし方」
  • 「寝ながらできちゃうお小遣い稼ぎー副業を始めようー」

このように、相反する内容のキャッチコピーは非常に目を引きます。「嘘じゃないの?」という違和感が購買者の認知的不協和を煽るのです。この違和感を解消したいという考えが、書籍を手に取るきっかけになったり、広告をクリックする後押しとなります。

教育・学習

「子供に勉強をしてほしいからなるべく沢山の参考書を買い与えている。なのになかなか手を付けようとしない。」そんな悩みを持つ保護者も多いことかと思います。

そのような場合はまず、子供と一緒に本屋へ行きましょう。そして本人に参考書を選ばせて、本人のお小遣いで購入させます。

初めのうちは今まで同様、放置されてしまうかもしれません。しかしその内に「自分のお金で買ったのに、一度も読まないのは勿体ない」という感情でもやもやします。これも認知的不協和です。

子供は参考書の購入を後悔しないためにも

  • 「来年は受験生になるし」(新しい協和認知要素の追加)
  • 「そもそも赤点はカッコ悪い」(認知の変化)

などと理由をつけて、勉強に取り組むようになるでしょう。参考書を活用するほど、不協和の回避に繋がるというわけです。

ディカーソンの実験を参考に、目標や宣言を紙に書かせて人目の付く場所に貼っておくのも効果的です。

恋愛

気になる人がいるとします。しかしなかなか相手に興味を持ってもらえません。そんな時は、積極的にデートに誘い、色々な場所に出掛けてみましょう。

次第に相手の心の中には「好きでもないのに、デートに行く」という認知的不協和が生じます。そして不協和を解消するために、自身の行動を肯定する考えが芽生えるのです。

  • 「別に嫌いなわけではない」(不協和な認知の過小評価)
  • 「デート時間は楽しいものだった」(協和的認知要素の過大評価)
  • 「周りのみんなも恋人を作っているし…」(新しい協和認知要素の追加)

といった具合です。

共に過ごす時間を相手が前向きに捉え始めたことで、二人の関係性にも変化が生じるかもしれません。

認知的不協和理論について学べる本

認知的不協和理論について書かれた書籍のご紹介です。

認知的不協和の理論 社会心理学序説

created by Rinker
¥8,200 (2021/06/23 15:34:14時点 Amazon調べ-詳細)

レオンフェスティンガーの本です。原書は認知的不協和理論が提唱された1957年に発行されており、その概要がより詳しく記されています。

理論や定義などが分かりやすくまとめられているので、認知的不協和理論について更に知見を広げたい方はぜひ手に取ってみてください。

※一部実験データは古くなっている恐れがあります

予言が外れるとき

「世界滅亡」「UFO襲来」などの予言を行う宗教団体。実は予言が外れた後のほうが、より宗教活動が活発になり信者も増えるそうです。

フェスティンガーらのグループは、観察者を団体へ潜入させます。設立の背景から予言が外れる瞬間、そしてその後の宗教団体の詳細を、細やかに記録したのが本作です。

ドキュメンタリーと社会心理学、どちらの側面からも非常に興味深い内容で、価値ある一冊と言えるでしょう。

不協和を解消するなら前向きな方向へ

認知的不協和の解消は、自身を良い方にも悪い方にも導くことが出来ます。すぐに諦めたり挫折してしまう人は、相反する認知の間で揺らいだ時にマイナスの方向へ合理化しがちです。

そんな時はこの記事を思い出し、ぜひ前向きな解消方法を模索してみてください。目標を達成できる日もそう遠くないはずです。

関連記事
確証バイアスとは?具体例や実験で問題点・対策をわかりやすく解説

続きを見る

参考文献

  • 安藤清志・大坊郁夫・池田謙一(1995).『現代社会学入門4 社会心理学』岩波書店 69-70
  • 古畑和孝・岡隆(2002).『社会心理学小辞典(増補版)』有斐閣 188
  • 井上隆二・山下富美代(2000).『図解雑学 社会心理学』ナツメ社 68-69
  • 山戸昭三(2020).『自己の一貫性と正当化が引き起こす錯覚

関連記事

    • この記事を書いた人

    kinu

    臨床心理学科卒。主に発達心理学、学校心理学について学んでいました。

    -心理学の用語, 社会・経済

    © 2020-2021 Psycho Psycho