心理学の用語 臨床・心理療法

行動療法とは?意味や技法例、認知行動療法との違いなどをわかりやすく解説

行動療法は学習理論(行動理論)を適用した治療方法です。今回は、行動療法の意味、技法例、認知行動療法との違い等についてわかりやすく解説します。行動療法に関する研究や学会、行動療法について学べる本についてもご紹介していきます。

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行動療法とは

そもそも、行動療法とはどのようなものなのでしょうか。

行動療法の意味

行動療法は、学習理論(行動理論)を適用した治療方法です。

心理学で使われる学習という意味は、練習や経験からもたらされる、長続きする行動の変化です。

行動療法の目的

学習理論では、行動は学習されたものだと考えるので、行動を変えるには学習しなおせば良いという事になります。

つまり、行動療法の目的は、問題行動を減らして望ましい行動を再学習する事と言うことができます。

行動療法の特徴と認知行動療法との違い

行動療法の特徴や、認知行動療法との違いを見ていきましょう。

行動療法の特徴

行動療法は、クライエントの行動を対象とするため言語能力を必要としません。

そのため、言葉を使えない乳幼児や言語化が得意でないクライエント、さらには人以外の動物といった幅広い対象に適用することができます。

行動療法と認知行動療法との違い

最近では、認知行動療法という言葉を良く聞くのではないでしょうか。

認知は、ものの考え方や信念です。1970年代になると、行動や感情の問題を引き起こすのはこのような認知なのだ、という考え方が出てきました。

例えば、「テストで悪い点を取った」という出来事を考えてみます。

決して悪い点を取ってはいけない、とか親に叱られてはいけないという認知を持っていた場合、強い不安に襲われたり、テストを隠すという行動をとるかもしれません。

反対に、テストの点が悪くても次に頑張ればいいや、とか親に叱られても構わないという認知を持っていた場合、それほどストレスを感じず次のテストに向けて頑張るという行動をとるかもしれません。

このように、認知が問題行動の原因と考えると、治療は行動そのものよりも思考パターンや信念を対象とするものになります。これが認知療法です。

行動療法をベースとして、認知療法的な技法を組み合わせた方法を認知行動療法と言います。

※認知行動療法については以下の記事で解説しています。

認知行動療法とは何か?背景理論から日常生活での応用まで分かりやすく解説

続きを見る

行動療法の技法例

行動療法には色々な技法があります。行動療法では、クライエントの状況にあった技法を使い分ける事になります。

今回は、よく使われる技法である系統的脱感作法とオペラント条件づけ療法について見ていきましょう。

系統的脱感作法

ウォルピが考案した系統的脱感作法は、不安を静止する方法です。系統的脱感作法は、制止の原理と脱感作の原理を組み合わせた技法です。

逆制止の原理は、ストレス反応とリラックス反応という逆の現象は同時に生じにくく、一方反応が生じている時は他方の反応が生じにくいという原理です。

つまり、十分にリラックスした状態であるほど、不安・緊張・恐怖というストレス反応を予防しやすいといえます。

脱感作の原理は、弱い刺激から徐々に強い刺激にしていく事により、刺激に対する敏感が徐々に減少するという原理です。

脱感作の原理は、アレルギー治療に用いられる事もあります。アレルギー原を少量から徐々に増加して注射していく事により、次第にアレルギー反応が収まっていくのです。

系統的脱感作法の具体的手続きは、以下の通りです。

リラクゼーション反応を習得します。

② 不安反応の低い場面から高い場面を段階的に並べた不安階層表を作成します。

③ ②で作成した不安階層表に基づき、不安反応の低い場面からイメージし、引き起こされた不安をリラクゼーションによって制止します。

④ 不安階層表で最大の不安反応場面での不安を制止できれば、治療終了となります。

オペラント条件づけ療法

アメリカの心理学者スキナーが行ったオペラント条件づけ(道具的条件づけ)の理論を行動療法に用いたものがオペラント条件づけ療法です。

オペラント条件づけでは、行動は学習によって習得されたものであると考え、行動直後に強化子(きょうかし)を与える事でその行動を身につけたり増やしたりする事ができるとしています。

オペラント条件づけ療法の1つであるシェイピング法による治療例について、次項で見ていきます。

子どもの行動療法に関する研究

行動療法に関する研究の中から、今回は子どもの行動療法に関する研究について見ていきましょう。

安東(1991)は、オペラント条件づけ療法により長期化した登校拒否の治療を行なっています。今回は、そのうちの1ケースについて見ていきます。

問題

本人(小1男児)は入学式後3日目から学校に行けないまま夏休みに入りました。家庭でどう接したら良いかという訴えで母親と来談しました。

治療方針

親が強制的に登校させる態度を一旦保留とし、登校のレディネスを形成します。登校のレディネスが形成されてから、登校の対人ストレスへの耐性を強化し、社会的適応力を高めます。

※レディネスについては以下の記事で解説しています。

レディネス(学習の準備性)とは何か?実生活を例に分かりやすく解説

続きを見る

治療手続

遠隔地のため、電話相談を中心に月1回の親子面接を行います。

まずレディネス形成期では、1日の生活時間割を子供に立てさせ、時間割に沿った行動が取れたら言語称賛による強化を行います。また、親が登校刺激等の嫌悪刺激を出さないようにすると共に、子供が登校へつながる行動をとった時は強化します。

レディネス形成後は、教室での在席時間割を1時限目から4時限目へと段階的に延長していきます。この際、親は廊下で待機します。

教室への適応が確認されたら、漸次親の付き添い時間を短縮していきます(フェイディング)。そして最終的に自主登校を確立します。

以上のような治療方針及び手続を治療者から担任に説明する事で、協力体制をつくります。

治療経過

レディネス形成段階では、次第に時間割にそった行動が取れようになり、担任やクラスの子供達の家庭訪問を心待ちにするようになりました。また、登校時間に合わせて食事ができるようになり、家にいて退屈すると言うようになりました。

登校行動形成段階では、登校を拒否しても4時間目に登校出来たりしながら、父母が交互で付き添って登校しました。その後も登校日数や時間も次第に増え、担任と共に運動場に出たり算数の授業で発表する事ができるようになりました。

ここからは親の付き添い時間を短縮していくと共に、教室に1人でいたらシールを貼り、5枚でカブトムシなどと交換できるようにしました(トークン・システム)。

最終的には登校班で登校するようになり、給食前までいられるようになった所で治療終了としました。

考察

登校の行動形成前のレディネス形成期に、親が共同治療者として行動理論による治療をよく理解しておく必要があります。

また、学級担任の理解と協力も不可欠です。さらにカウンセリングによって親の不安を軽減しておく事も必要です。

つまり、実際の登校の行動形成がスムーズに行くためには、以上のようなレディネスの十分な形成が重要であるという事が推察されました。

行動療法に関する学会・資格

行動療法に関する学会としては、日本認知・行動療法学会があります。

日本認知・行動療法学会は、1976年に発足した日本行動療法学会が2014年に改称したものです。学会では、認知行動療法士等の資格認定を行うほか、認知行動療法のセミナーも開催されています。

行動療法について学べる本

行動療法について学べる本についてご紹介します。

行動療法の基礎から実践まで学べる「はじめてまなぶ行動療法」

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基礎的な「パブロフの犬」の実験から、認知行動療法、マインドフルネスまで、行動療法の世界をわかりやすく学ぶ事ができます。

本書の目次は以下の通りです。

  • 第1章 行動療法の全体像ーーその歴史から実践まで
  • 第2章 レスポンデント条件づけの基本
  • 第3章 系統的脱感作からエクスポージャーへ
  • 第4章 オペラント条件づけの基本
  • 第5章 分化強化とシェイピング
  • 第6章 文脈の中でのオペラント
  • 第7章 機能分析とスキル・トレーニング
  • 第8章 暴露反応妨害法と行動活性化ーー回避行動としてのうつと不安
  • 第9章 言語行動とルール支配行動
  • 第10章 関係フレームづけ
  • 第11章 アクセプタンス&コミットメント・セラピー
  • 第12章 セラピー関係と言葉の技術
  • 第13章 機能分析心理療法と動機づけ面接
  • 第14章 機能的ケースフォーミュレーションと介入のスパイラル
  • 第15章 機能的文脈主義

わかりやすい教育心理学の入門書「やさしい教育心理学[第5版}」

教育心理学の理解は、行動療法の実践的理解に役立ちます。本書は教育心理学の全体像がわかりやすく学べるように書かれた入門書です。

行動療法については、第12章「カウンセリングとは」の中で説明されています。

本書の構成は以下の通りです。

  • 第1章 記憶力がいいとはどういうことか
  • 第2章 学ぶことと考えること
  • 第3章 ほめることの大切さ
  • 第4章 「やる気」を考える
  • 第5章 学級という社会
  • 第6章 どのように教えるか
  • 第7章 児童・生徒をどう評価するか
  • 第8章 人間の発達について考える
  • 第9章 知的発達のメカニズム
  • 第10章 人格発達の基礎
  • 第11章 困難を抱える子どもたち
  • 第12章 カウンセリングとは

犬と楽しく暮らすために「最新犬の問題行動診療ガイドブック」

人と犬のコミュニケーション方法はかなり違います。犬にことばが通じないとは言えませんが、人に対するほど細かくは伝える事が出来ません。

そんな人と犬の関係を改善するために、言語に頼らない行動療法は最適です。本書には、薬物療法・外科的療法と共に、行動療法の説明や実例が詳しく載っています。

本書の構成は以下の通りです。

  • 第1章 問題行動の原因と治療
  • 第2章 主要な治療方法
  • 第3章 問題行動の実例とその対処方法
  • 第4章 知っておきたいさまざまな問題

言語に囚われない療法

カウンセリングや心理療法というと、クライエントが頭の中で考えた事をセラピストに聞いてもらうイメージがあります。

けれど言葉にした途端、自分の感覚とズレてしまったり、そもそも言葉にする事が難しい場合もあるでしょう。

行動療法は、ことばに頼る必要がないため、自己分析よりも目先の行動を変えたいという時に役に立ちます。

クライエントの話を傾聴するカウンセリング力に加えて、言語に頼らない療法として行動療法を身につけておく事で、より多様なクライエントのニーズに応えられるでしょう。

認知行動療法とは何か?背景理論から日常生活での応用まで分かりやすく解説

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レディネス(学習の準備性)とは何か?実生活を例に分かりやすく解説

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参考文献

安東末廣(1991) シェイピング法による登校拒否の治療〜レディネスの形成から登校行動の形成への段階的治療〜

荒田明香・藤原良巳・渡辺格(2011) 薬物療法・行動療法による実例を集録 最新犬の問題行動診療ガイドブック 誠文堂新光社

鎌原雅彦・竹綱誠一郎(2019) やさしい教育心理学[第5版] 有斐閣

三田村仰(2017) はじめてまなぶ行動療法 金剛出版

文部科学省 在外教育施設安全対策資料【心のケア編】

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    こころ

     臨床心理学・実験心理学等を学んだ後、心理カウンセラーとして勤務。現在はライターとして活動中。

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