スキーマ療法とは?ヤングの開発したカウンセリングのやり方や効果、資格を解説

米国の心理学者であるジェフリー・ヤングが開発したスキーマ療法と呼ばれるカウンセリングの手法は、心理臨床の現場で非常に治療が難しいと言われているパーソナリティ障害などにも有効とされ、多くの注目を集めています。

それでは、スキーマ療法とはいったいどのような心理療法なのでしょうか。そのやり方や効果、モード、資格などについて解説していきます。

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スキーマ療法とは

スキーマ療法とは、アメリカの心理学者であるジェフリー・ヤングの開発した心理療法です。

スキーマ療法のベースは、歪んだ認知を修正し、行動を変容させることで気分の安定を図る認知行動療法ですが、その治療モデルにはアタッチメント理論、ゲシュタルト療法、対象関係論、構成主義、精神分析など様々な臨床心理学が取り入れられています。

スキーマとは

スキーマ療法では、スキーマと呼ばれるものに対しアプローチを行うという特徴があります。

スキーマとは発達心理学や哲学、認知心理学など様々な領域で用いられている概念であり、一般的には構造や枠組み、輪郭などの意味を持っている単語です。

そして、心理学の領域において用いられるスキーマは主に次のように定義されています。

【スキーマの定義】

過去の経験や記憶によって形成された認知的な枠組み

例えば、天気予報で雨が降りそうなときに私たちは傘を持ち歩くでしょう。

しかし、雨が降っていない時に畳んでいる傘を持った人を見て、「棒を持ち歩いている変な人がいる」とは思わないでしょう。

これは、私たちが傘とはどのように形が変わるものなのかを既に知っており、雨絵が降るときに使うものという情報と結び付けた認知的な枠組みがあるために、じっくりと考えなくても自然に「傘を持っているのだ」と思いつくことができます。

スキーマとは?心理学での意味や定義、理論を具体例でわかりやすく解説

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スキーマ療法における「早期不適応的スキーマ」

スキーマは私たちの思考のベースともなるものであり、スキーマが歪んでしまうことで、それによって生じる思考や行動、感情も不適応的な性質を帯びるとされています。

そして、このようなスキーマ療法で治療の対象となるスキーマのことを早期不適応的スキーマと呼びます。

それでは早期不適応的スキーマはどのようにして形成されるのでしょうか。

スキーマ療法の開発者であるヤングは、早期不適応的スキーマの起源として、生得的気質中核的感情欲求という2つを挙げています。

生得的気質

人のパーソナリティは遺伝的な要因と発達の過程で環境から受ける刺激によって形成されると考えられています。

そのため、認知的な枠組み、思考のクセであるスキーマがどのような傾向で形成されやすいのかということは、少なからず遺伝的な影響を受けると考えてよいでしょう。

中核的感情欲求

生得的な傾向をベースとしたうえで、早期不適応的スキーマの形成において最も重視されるのが中核的感情欲求です。

中核的感情欲求には次のような種類があり、発達の早期でこれらの重要な欲求が満たされていないために歪んだスキーマが形成されると考えます。

ヤングによる中核的感情欲求と早期不適応的スキーマの対応関係

早期不適応的スキーマの領域中核的感情欲求
第1の領域断絶と拒絶他者との安全なアタッチメント
第2の領域自律性と行動の損傷自律性・有能性・自己同一性の感覚
第3の領域他者への追従正当な要求と感情を表現する自由
第4の領域過剰警戒と抑制自発性と遊びの感覚
第5の領域制約の欠如現実的な制約と自己制御

スキーマ療法ではクライエントの持つ満たされなかった中核的感情欲求を、適応的な方法で自ら満たす方法を習得するよう支援します。

早期不適応的スキーマの種類

上記のように、中核的感情欲求に対応して大きく5つの領域に分類することができる早期不適応的スキーマは、さらに18個のスキーマに細分化することができます。

【見捨てられ/不安定スキーマ】

他人とのかかわりが不安定で、他者は自分を見捨ててしまうのではないかと感じる

【不信/虐待スキーマ】

全ての他者は自分を利用したり、いじめてくるような危険な存在と感じる

【情緒的剥奪スキーマ】

自分は誰からも愛されず、理解されないと感じている

【欠陥/恥スキーマ】

自分は欠陥のあるダメ人間で恥ずかしい存在だと感じる

【社会的孤立/疎外スキーマ】

自分は人とは異なっていて、どこにも馴染めない孤立した存在だと感じる

【依存/無能スキーマ】

自分は無能で助けが無ければ生きていけないと感じる

【損害や疾病に対する脆弱性スキーマ】

今にも破局的な出来事が起こり、それに対する対処は出来ないと感じる

【巻き込まれ/未発達の自己スキーマ】

自分のアイデンティティを感じることができず、他者の感情に巻き込まれてしまっていると感じる

【失敗スキーマ】

自分に自身が無く、何をやっても失敗するだろうと感じている

【服従スキーマ】

自分が見捨てられないようにするには自分を犠牲にして服従するしかないと感じている

【自己犠牲スキーマ】

自分より他者を優先し、他者の機嫌を取ることに過度にとらわれている

【評価と承認の希求スキーマ】

他者からの評価や承認にとらわれ、人の目を気にして行動する

【否定/悲観スキーマ】

自分のネガティブな面に注目し、ポジティブな面を無視するマイナス思考

【感情抑制スキーマ】

感情を感じたり、表すことを過度に恐れ、感情を抑え込もうとする

【厳密な基準/過度の批判スキーマ】

非常に高い基準を自分に課し、自分や他者はその基準を満たすよう行動すべきだと感じている

【罰スキーマ】

失敗を許すことができず、失敗をしたら厳しい罰を受けるべきだと考え、過去の失敗を簡単に許すことができない

【権利欲求/尊大スキーマ】

自分は他者とは異なる特別な存在だと過大な価値を置き、他者より優位に立つことにとらわれる

【自制と自律の欠如スキーマ】

欲求のコントロールが出来ず、欲求を抑えたり、目標に向かって計画的に行動することができない

早期不適応的スキーマとコーピング

人間に根付いているスキーマは強固なものであり、人生が一変するような出来事に遭遇したり、治療を受けるなどの特別なイベントが無ければ、早期不適応的スキーマは持続して本人に影響を与え続けます。そして、スキーマを通じて感じられた内容に応じて行動が促されます。

早期不適応スキーマから導かれる対処行動、つまりコーピングは次のような不適応的性質を備えているとされます。

【不適応的なコーピングスタイル】

  • スキーマへの服従:スキーマの言いなりになること
  • スキーマの回避:スキーマに直面したり、スキーマが活性化しないよう常に用心すること
  • スキーマの過剰補償:スキーマと正反対のことが正しいと信じ、そのようにふるまうことでスキーマに対抗しようとすること

例えば、幼少期に虐待を受けることで、トラウマ体験がパーソナリティの領域まで根付く複雑性PTSDという疾患があります。世の中のあらゆることを過剰に警戒し、虐待に関わる刺激を過度に恐れ回避行動をとったり、解離症状を呈したりすることなどが特徴的です。

このような人は、「親から大事にされ、愛されたい」という中核的感情欲求が満たされていません。

すると、周囲の人間を信頼できない「不信/虐待スキーマ」や、自分は誰からも愛されず守ってもらえないと考える「情緒的剥奪スキーマ」、虐待した親への怒りや恐怖などを感じないよう抑え込む「感情抑制スキーマ」といった早期不適応的スキーマが形成されます。

このことにより、例えば、感情抑制スキーマに対し服従するコーピングを取ることによって、外に出ることを恐れるなどの過度な回避症状が生じる可能性があります。

スキーマ療法における「モード」

スキーマ療法を学ぶ上で、もう1つ大事な概念として挙げられるのがモードです。

特定の早期不適応的スキーマや不適応的なコーピングが活性化されると、それに伴って苦痛な感情や不適応行動が引き起こされます。このようなときに、個人の中で優位になっている感情状態やコーピング反応のことをスキーマモードと呼ぶのです。

スキーマモードは次のような4カテゴリーに分けることができます。

【スキーマモードのカテゴリー】

  1. チャイルドモード
  2. 非機能的コーピングモード
  3. 非機能的ペアレントモード
  4. ヘルシーアダルトモード

スキーマモードは必ずしも不適応的なものとは限りませんが、非機能的なスキーマモードは自己に統合されていない、つまりその人の人格から解離したもう一つの自己であると捉えられています。

スキーマ療法のやり方

スキーマ療法の目指すべきところは不適応的なスキーマの修復です。

そのためには自分を苦しめている早期不適応的なスキーマについて理解し、満たされなかった中核的感情欲求を治療においてある程度満たす必要があるのです。

スキーマ療法では主に次の4つの治療戦略を用います。

【スキーマ療法の治療戦略】

  1. 認知的技法
  2. 体験的(感情的技法)
  3. 行動的技法
  4. 治療関係の活用

認知的技法

スキーマ療法での認知的技法は、認知行動療法における認知的な技法と同様です。そのため、クライエントに生じる非合理な自動思考を同定することにより、クライエントの認知面の歪みを浮き彫りにします。

そのうえで、そのような不適応的な思考パターンを様々な角度から検討し、新たな適応的・機能的な思考を身に着けられるよう話し合っていくのです。

この時に、単ん位頭だけを働かせるのではなく、思考と付随して生じる強い感情や身体感覚、イメージなどを含め再構成するように働きかけることが重要です。

体験的(感情的)技法

体験的技法では、ありありとしたイメージや生き生きとした気分・感情や身体感覚を対象とします。

そして、ゲシュタルト療法のエンプティチェアやロールプレイなどのワークを通じてクライエントの体験における気づきを促していくのです。

ただし、満たされなかった中核的感情欲求には、傷つき体験が付随しているケースも少なくありません。

そのような場合、感情が強く揺さぶられクライエントが不安定になってしまう可能性もあるため、どのように対応をするのかをしっかりと考えておく必要があります。

行動的技法

行動的技法はその名の通り、行動に焦点を当てたアプローチです。

基本的には認知行動療法と同様であり、主要な技法としては、社会的スキル訓練やアサーション訓練、エクスポージャーなどが行われます。

この行動的技法は、ある程度認知的技法による介入を行い、不適応的なスキーマの変容がなされてから行われるとよりスムーズに治療が進むと考えられています。

治療関係の活用

スキーマ療法における治療関係には「共感的直面化」と「治療的再養育法」という2つの特徴があります。

共感的直面化とは、クライエントの「いま・ここ」で起こっている体験に関し、十分な共感を示しつつ、治療モデルを心理教育することを通じてクライエント自身に直面化し、客観視をしてもらえるよう促すことを指しています。

例えば、治療場面や日常生活において話し合っていて大きな感情の動きなどがあった際には、外在化したスキーマのシートを見せ、どのスキーマに当てはまりそうか尋ねるなどにより不適応的なスキーマに対する気づきを促していきます。

また、治療的再養育法とは治療において、まるで保護者のようにクライエントの満たされなかった中核的感情欲求を満たしてあげる姿勢です。

これにより、甘えることのできなかったクライエントは安心してクライエントに甘えることができ、不適応から立ち直るだけの心理的サポートを心の中に内在化できるのです。

スキーマ療法の効果

スキーマ療法は、私たちの思考や感情、行動に深く関わっているスキーマへ介入する手法です。

そのため、普通の心理療法では治療が難しいとされているパーソナリティ障害に対して効果的であるとする報告があります。

スキーマ療法の開発においては、ヤングは認知療法の創始者であるベックの指導を受けていますが、パーソナリティ障害、特に境界性パーソナリティ障害を対象に認知行動療法を拡張したという経緯があります。

特にパーソナリティ障害の患者はクライエントの治療に対する動機づけやアプローチの仕方が複雑であり、自らの思考や感情をモニターすることが難しいケースが多いことが指摘されています。

しかし、スキーマ療法では、認知と行動の変容を柱としながらも、感情の変化や、体験的技法、治療関係など多面的なアプローチを行うため、このような治療が難しいケースにも有効なのです。

スキーマ療法の資格

スキーマ療法に関する日本での認定資格はまだ設立されていないようです。

しかし、国際スキーマ療法協会(ISST)では、必要なトレーニングを受けたセラピストに対しスキーマセラピストの認定を行っています。

ISSTによるスキーマセラピストには、スタンダード・レベルとアドバンスド・レベルという2つの認定レベルがあり、それぞれ定められた講義の受講に加え、実勢形式での練習や、スーパーバイザーからの指導など必要な要件を満たすことで取得できるようです。

日本でも、ISSTのトレーニングプログラムを実施するものとして認められた訓練者が実施するトレーニングプログラムを受講することで国際資格の取得が可能ですが、そのためにはISSTの正会員になるなど必要事項があるため、事前に確認しておきましょう。

スキーマ療法について学べる本

スキーマ療法について学べる本をまとめました。

初学者の方でも手に取りやすい入門書をまとめてみましたので気になる本があればぜひ手に取ってみてください。

スキーマ療法入門 理論と事例で学ぶスキーマ療法の基礎と応用

スキーマ療法の入門書としておすすめの1冊です。

スキーマ療法の基盤は認知行動療法ですが、アタッチメント理論や対象関係論など様々な理論・技法を取り入れられており、それらを予習していないとなかなか理解が難しいかもしれません。

本書は、理論的な背景に加え、様々なケースの事例においてスキーマ療法がどのように用いられているのかを紹介しているので、初めてスキーマ療法を学ぶ方も読み進めやすいでしょう。

心の体質改善「スキーマ療法」自習ガイド アスクセレクション

スキーマ療法は専門家の元でじっくりと時間をかけて行われる専門的な治療です。

しかし、その要素は自習するために簡便に紹介している本書を読めば、実際にスキーマ療法で何が行われるのかが体験的につかめるはずです。

様々な理論的背景を取り入れた心理療法

スキーマ療法は、認知行動療法をベースとしながら、理論的背景にこだわらず、治療に有益だと思われる様々な技法を取り入れた心理療法です。

古くから行われている心理療法には、現在でも重視される考えや技法が残っており、様々な治療法を幅広く知っておくことが難治例にも有効でしょう。

ぜひ、これから心理療法を学ぶ方は、理論的背景にこだわらず様々な心理療法について学びましょう。

【参考文献】

  • 山口千晴(2020)『表象と行動の変容をもたらす心理療法 : パーソナリティの困難に対する介入を考える』お茶の水女子大学心理臨床相談センター紀要 (21), 67-75
  • 加藤雄士(2021)『<研究ノート>スキーマの概念とスキーマ療法のレビューに関する一考察 : スキーマの修復に関する人材開発手法の研究のために』産研論集 (48), 63-75
  • 内田知宏・川村千慧子・三船奈緒子・濱家由美子・松本和紀・安保英雄・上埜高志(2012)『日本版Brief Core Schema Scaleを用いた自己,他者スキーマの検討:――クラスターパターンの類型化および抑うつとの関連』パーソナリティ研究 20(3), 143-154
  • 洗足ストレスコーピング・サポートオフィス,https://www.stress-coping.com/sukiima.html

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    • この記事を書いた人

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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