ペルソナとは?ユング心理学での意味やシャドウ・夢分析を解説

2020-12-23

ペルソナは「自己の外的側面」、つまり周囲に見せている自分のことを指します。今回は、ペルソナの定義やペルソナと反対の概念であるシャドウ、ペルソナの意義と問題について解説します。また、ペルソナに関連する関連するユング心理学・夢分析やペルソナのことを学べる本をご紹介します。

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ユング心理学におけるペルソナとは?

ユング心理学とは、スイスの心理学者であるカール・グスタフ・ユングの名前をとって作られた心理学の学術用語です。

深層心理学の中の一つで、人間の心理は無意識の働きが大きく締めているのではないかという考え方に基づいています。別名分析心理学とも呼ばれます。

ここでは、そのユング心理学におけるペルソナの意味や具体例についてご紹介します。また、ペルソナとの関連が深い概念であるアニマ・ア二スムについても解説します。

ペルソナの由来と意味

元々、ペルソナという言葉はラテン語でした。

ペルソナは、ラテン語で「仮面」という意味です。そこから派生して、仮面が演劇で使われていたことから、俳優が演じる「役割」という意味でも使われるようになりました。

さらに、そこからまた派生して「自己の外的側面」という意味でも使われるようになりました。これが今回解説する「ペルソナ」です。

つまり、簡単に言うとペルソナとは、「他人から見た自分」という意味です。

ペルソナの具体例

例えば、仮にあなたが就職活動中の学生として第一志望の企業に入りたいとします。

その第一希望の企業は、「真面目で何事にも誠実に取り組める人材」を求めているため、普段時間にルーズな性格であったりしたとしても「真面目で誠実な人間」の仮面を被って、就職活動をするでしょう。

また、もし仮に、就職活動をしている際に面接官に圧迫面接をされた場合、その面接官は上司に「学生のストレス耐性を見たいから圧迫面接をしてくれ」と指示されているのかもしれません。この場合、この面接官は「圧迫面接する怖い人事の人」というペルソナ、つまり仮面を被って面接を行っているといえます。

アニマ・ア二スム

男性にも女性にも、それぞれ性別に則ったペルソナがあります。

例えば、男性であれば「力強さ」とか「頼もしさ」が一般的には求められますし、女性であれば、「優しさ」や「包容力」が求められます。

ユングは、そんな性別に則ったペルソナを保つために無意識に異性の性格を唱えており、それがアニマとア二スムです。

そのため、アニマは、男性の中にある無意識な女性的傾向のことを言い、逆に、ア二スムは、女性の中にある無意識な男性的傾向のことを言います。

ペルソナと反対の概念・シャドウ

ペルソナと反対の概念にシャドウという言葉があります。

シャドウとは、自分自身の中に押さえ込んでいる一面のことです。つまり、裏の顔ということです。

それでは、具体例でシャドウについて紹介します。

シャドウの具体例

まず、A君という男性がいるとします。

A君は、春から大学生です。高校までは人見知りであまり友人がいませんでした。しかし、そんな自分を変えたいと思い、ファッションやヘアースタイルを研究します。

また、人とうまく付き合うために、どのようにコミュニケーションをとれば好感度が上がるのかも勉強しました。彼は、いわゆる大学デビューをしようとしています。

そして大学入学初日、受け身だけでは友達ができないと積極的に話しかけた結果、A君には友達ができました。今では充実した大学生活を送っています。

この場合、大学生になったA君は、友人たちから見るとおしゃれで積極的で話し上手な同級生と思われています。一方、本当のA君は、人と話すのが苦手で人見知りな部分があります。この部分をシャドウというのです。

ペルソナと夢分析

ユングは夢分析にも興味を示しており、人間の夢は自分自身の無意識のイメージを体現しているのではないかと考えました。

つまり、自分自身の夢の中で、自分は求められている偽りの自分を演じているのか検討していると考えたのです。

ペルソナの問題

ペルソナは「偽りの自分」とも言われます。人々は社会で生きていくため、常にいくつかの人格を演じています。

このことが時にはストレスとなり、問題を生じることがあります。ここでは、ペルソナとストレスの関係、そしてアイデンティティへ与える影響について見ていきましょう。

ペルソナとストレス

少し想像してみるとわかるかと思いますが、本来の自分ではない偽りの自分を演じ続けることは、ストレスになります。

例えば、あなたは好きな人と付き合いたいとします。相手は、「明るくてよく笑う性格の人」が好きです。ところが、あなたはどちらかというと人見知りな性格で、笑うのが苦手です。

相手に好かれたいと考えたあなたは、自分自身の性格を偽ることを決めました。その人の前では明るいふりをして、よく笑うように振舞います。

この場合、最初のうちは好きな人から好意を抱いてもらうために頑張れるかもしれません。しかし、その人の前では常に明るく振る舞わなければならなくなります。

偽りの自分を演じるのは労力がいるため、本来の自分を見せられないことに対して、次第にストレスを感じるようになるのではないでしょうか。

このように、ペルソナとストレスには関連があるといえます。

ペルソナとアイデンティティ

ペルソナがアイデンティティに影響を及ぼすこともあります。

例えば、あなたは飲食店で働いていますが、その店は人手不足だとします。休む暇もなく働き続けると、本来の自分ではなく「店員」としての役割を果たす自分に、「自分っていったい何なのだろう?」と疑問に感じるようになるかもしれません。

こうしたことは、ペルソナを長時間被っていることによって生じると考えられます。ペルソナによって問題が生じる場合には、一度その環境から離れることも必要かもしれません。

ペルソナについて学べる本

ペルソナについて学べる本を2冊紹介します。

脳科学者初の自伝「ペルソナ 脳に潜む闇」

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「脳科学の観点からペルソナがどんなものなのか知りたい」という人にオススメの本です。この本は中野信子さんという脳科学者の方が書いた自伝書で、発売から1ヶ月で10万部を突破しています。

人間関係が昔から苦手だった中野さんは、なぜ脳科学者を目指したのか…、昔は今よりも男社会という風潮が強かったがその世の中でどのような生活を送ってきたのか考えさせられる一冊です。

例えば、生きていければ男性は「男らしさ」を求められ、女性は「女らしさ」を求められます。「〇〇らしさ」が求められる社会って息苦しいですよね、という中野さんの本音が描かれています。

この本は、現代社会に疲れてしまった人たちが病まないで済む「心の本」でもあります。学校や会社行きたくない…と一回でも感じたことがある方は、一度読んでみてはいかがでしょうか?

心には法則が存在している「心の絶対法則 なぜ「思考」が病気を作り出すのか?」

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ユサブル
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この本は、心理学の観点からペルソナについて触れている本です。

「人間には必ず負の感情があり、その感情が病気を作り出している」と作者は考えています。

例えば、2020年は新型コロナウイルスが流行りました。気を付けていてもコロナに感染してしまった場合もあるのに関わらず、コロナウイルス感染者に対して誹謗中傷が行われてしまい、家に石を投げ込まれたりした場合もあるそうです。

彼らは誹謗中傷によって新型コロナウイルス感染者の心を傷つけているのにも関わらず、正義面をしています。コロナウイルス感染のことを悪だと決めつけ、自分自身を正当化して誹謗中傷、暴行などといった犯罪を犯してしまう…そんな人間の奥底に眠った深層心理について細かく触れています。

「ペルソナ以外にも深層心理について興味がある」という方は、この本を読んでみてください

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ペルソナをかぶり続けることの弊害

ペルソナについて解説してきました。社会生活を営む上で、多くの人が偽りの仮面をかぶらなければならない場面に出くわすことがあるでしょう。

そうすることで上手くいっている場合は問題ありませんが、時には強固な仮面をかぶり続けることで本来の自分がわからなくなったり、ペルソナがストレスを引き起こすこともあるかもしれません。

時には自分を振り返り、内面と向き合うことも大切です。もし耐えられなくなったら、その状況から一度距離を置いて自分を見つめ直してみましょう。

参考文献

高尾浩幸(2018)ペルソナ心理学の課題 -二つのわたしの心理学-,人間科学研究,40,1-12

木村昌子(1999)ペルソナ -仮面と素顔をめぐって-,哲学年報,46,15-20

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    • この記事を書いた人

    yasusho

    はじめまして。 20歳男で大学生です。 大学で、社会心理学について専攻しており 主に、社会心理学を中心とした心理学関係の 情報発信を行っています。

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