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閾とは?意味や刺激閾と弁別閾の違い、測定法をわかりやすく解説

閾という言葉をご存知ですか?あまり聞きなれないかもしれませんが、私たち人間の感覚や知覚の仕組みを知るうえで、とても重要な役割を果たします。ここではそれぞれの閾の違いや代表的な実験方法を、具体的な例を交えてわかりやすく解説していきます。

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閾とは

まずは閾の基本的な意味合いについて見ていきましょう。

閾・閾値の読み方と意味

通常心理学の分野では、閾は「いき」閾値は「いきち」と読みます。闘争の闘の字と似ているため「とうち」と読んでしまう方もいるようですが、それは間違いです。

閾値とは、ある反応を引き起こすための最低限の刺激量のことを言います。また量や刺激の変化に気付く最小の値のことでもあります。

閾値は大きく分けると、刺激閾(絶対閾)と弁別閾(丁度可知差異)の2種類があります。

刺激閾(絶対閾)

刺激閾とは感覚を生じるのに必要な最小の刺激強度のことを言います。もう少し簡単に説明すると、何もないところから確実に変化を感じ取れた瞬間の刺激の値ともいえます。

例えば、2ℓの水に少しずつ砂糖を足し、初めて甘いと感じられたところがあなたの甘味に対する刺激閾です(なお、元の水の量は変わらないものとします)この刺激閾は絶対閾とも呼ばれます。

弁別閾(丁度可知差異)

弁別閾とは2つの刺激の強さや、性質の区別を感じ取るのに必要な最小の値のことを言います。

先ほどの甘いと感じた水にさらに砂糖を足し続け、さっきよりも甘くなった!と感じられたところが弁別閾です。弁別閾は丁度可知差異とも呼ばれます。

感覚や知覚の感度に当たるのが刺激閾、精度が弁別閾ということです。「甘い」「甘くない」という感覚は変動的なので、統計では50%の確率で感覚を生じさせる刺激の値で示されます。

ウェーバーの法則

1840年代、E.Hウェーバーは弁別閾について調べました。

例えば200gの重りに対し205gで初めて重さの差異が分かったとすると、400gの重りでは弁別閾は5gではなく10gになります。ウェーバーはこの実験結果から、標準重量をI 弁別閾をΔIとすると、IとΔIの比はほぼ一定になると考え、このような式を導き出しました。

ΔI/I=k ΔI=k・I(kは定数)

これがウェーバーの法則です。実際に先ほどの数字を上の式に当てはめてみると5g/200g=kとなります。では、おもりが1000gの時は何gで重さの変化に気付くでしょうか。kの値は1/40なので1025gになりますね。

閾の測定法

閾の測定方法はさまざまです。今回は主に代表的な3つの測定方法について、それぞれのメリット、デメリットも含めてご紹介します。

調整法

調整法とは被験者自ら刺激を変えられる測定方法です。

主に主観的等価点(PSE)の測定に向いています。主観的等価点とは、2つの対象物の長さやサイズがちょうど等しく見えた位置のことを指します。

メリット:短時間で簡単に実施することが可能

デメリット:感覚が生じる境目である刺激閾の測定には不向き

被験者本人が刺激量を調整するため、正確な測定ができない恐れがある

極限法

極限法とは実験者が上昇下降系列の一定間隔で刺激を送り、被験者の刺激閾を求める方法を指します。

身近なところでは聴覚検査がそのひとつです。徐々に音量を上げて聞こえ始めた点、徐々に音量を下げて聞きとれなくなった点を交互に数回ずつ測定し、その平均値を調べます。

メリット:実験者、被験者ともに負担が軽い

デメリット:刺激が一定方向にしか加わらないため、慣れや期待といったバイアスが加わり予測ができてしまう

恒常法

恒常法とはあらかじめ決めてある範囲で不規則な刺激を与え、被験者の刺激閾を求める方法です。

引き続き聴覚検査で例えると、いろいろな強度の音をランダムに流して被験者の反応を調べます。

メリット:極限法のように刺激が一定方向ではないため、バイアスが小さくなり良いデータが取れる

デメリット:ランダムないくつもの刺激に対する反応を調査するため、時間と労力がかかる

その他の心理物理学測定法

上記の測定法の他にも、閾値の測定方法は様々なものが考案されています。ここでは簡単にご紹介しますので、詳しく知りたい方は後ほど紹介する本も参考にしてください。

  • 上下法(階段法) 

極限法に似た手法です。上下法では、被験者の回答が変化したら刺激強度の方向を逆転させます。

  • マグニチュード推定法

標準刺激を10としたら、比較物はいくつになるか尋ねる方法です。精神物理学者のスティーブンスが提唱しました。

  • 一対比較法

複数個の中から2つの対象を比較させ、すべての組み合わせに対する好みや印象を求めます。マグニチュード測定法と同じく主観的感覚量を測定するのに適しています。

閾に関する心理学実験例

次に具体的な実験例をご紹介します。

二点弁別閾の測定

コンパスなど先の尖ったもので皮膚表面に触れたとき、先端にある二点が一定の距離を保っていれば二点だと認識できます。しかし感覚が狭まると、その刺激は一点だと感じてしまうのです。

この先端が二点だと認識できる最小値のことを二点弁別閾といいます。

人間の体の中で二点弁別閾が最も大きいのが背中で約7cm、最も小さいのが舌先の1mmです。

閾について学べる本

感覚系の研究は精神物理学や心理物理学という名で広まりました。関連する本を数冊ご紹介します。

心理物理学 方法・理論・応用(上下巻)

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1976年に出版されたこの本は、精神物理学の基本原理を学ぶために最も適した一冊です。世界中の学生と学者からも大きな信頼を得ています。

閾に興味を持ち、もっと専門的な知識を深めたい!と思われた方は入門書としてぜひご一読ください。

【新版】 音楽の科学 音楽の物理学、精神物理学入門

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音楽はなぜ存在するんだろう?ということに関心をお持ちなら、まずは本書で音と感覚の結びつきについて科学的に理解するのがお勧めです。

著者のローダラーはオーストリア育ちの宇宙科学者。この本では物理学・音響学・精神物理学・神経生物学といった多角的な視点から音を紐解いていきます。

閾の知識を応用すれば良好な人間関係を築ける

 日頃何気なく感じとっている感覚や知覚にも一定の法則がありました。

ですが人それぞれ閾値は違います。痛みに弱い人、音に敏感な人、いろいろなタイプが存在するのです。他人が何を刺激と感じるかはわからない、だからこそ思いやりを持って接したいですね。

閾の知識が人との関わり合いにおいてプラスに働くことを願います。

参考文献

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    • この記事を書いた人

    kinu

    臨床心理学科卒。主に発達心理学、学校心理学について学んでいました。

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