X理論・Y理論とは?意味や応用例についてわかりやすく解説

2021-10-20

皆様は「人は基本的に仕事が嫌いであり強制しなければやらない」と考えますか?それとも「人は仕事を通じて認められたり、自らの目標を達成したりするために自発的に働きたがる」と考えますか?

これは、アメリカの心理学者・経営学者のマクレガーによって提唱されたX理論・Y理論という、人間観や動機付けに関する2つの対立的な理論です。

因みに、前者(強制しなければ働きたくない)のような考え方を「X理論」、後者(自発的に働く)のような考え方を「Y理論」と呼びます。

今回は、このX理論・Y理論とは何か、それぞれの理論に基づいたマネジメントの例を挙げながら紹介していきます。

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X理論・Y理論とは

X理論・Y理論とは、人間観やモチベーションを引き出すマネジメントなどに関する2つの対立的な理論であり、アメリカの心理学者・経営学者であるダグラス・マグレガーによって提唱されました。

X理論とは

X理論とは、いわゆる「性悪説」に基づいたものであり、人間は本来怠け者であるため、放っておくと仕事をしなくなると考えます。

そのため、人を動かすには、命令や強制で管理し、目標が達成できれば報酬を与え、達成できなければ処罰するといった「アメとムチ」が必要であるとされています。

Y理論とは

Y理論とは、いわゆる「性善説」に基づいたものであり、人間には仕事を通じて認められたいとの欲求があり、自発的に働きたがると考えます。

そのため、個人の自主性を尊重し、目標と責任を与えることで、人は自己実現の欲求を満たすために努力をしたり、責任を取ろうとしたりして、力を発揮することができるとされています。

(参考)マズローの欲求段階説

X理論・Y理論は、マズローの欲求段階説に基づいていると言われています。

人間の欲求は①生理的欲求②安全欲求③社会的欲求(愛と所属の欲求)④尊重欲求(承認欲求)⑤自己実現欲求の5つの段階がピラミッド状(下から①→②→③→④→⑤と重なる)に構成されています。

そして、低次の欲求が満たされると、より高次の欲求を満たそうとすると考えられています。

X理論は、①生理的欲求(食事・睡眠など生きるために必要な欲求)や②安全欲求(身体・経済的に安定した状態を得たい欲求)など低次の欲求を比較的多く持つ人間の行動モデルと言われています。

一方、Y理論は④承認欲求(評価されたい・認められたいという欲求)や⑤自己実現欲求(自分らしく生きてきたい欲求)などの高次の欲求を比較的多く持つ人間の行動モデルと言われています。

なお、現代においては生活水準が上昇し、低次の欲求(生理的欲求や安全欲求)が満たされていることが多い状況であり、X理論よりもY理論を念頭に置いて、動機付けを行うことの方が有効な場合が多いとされています。

X理論・Y理論に基づいたマネジメント

X理論・Y理論は、マネジメントスタイルに活用されることが多いです。以下、それぞれのマネジメントの特徴についてまとめていきます。

X理論によるマネジメントと具体例

X理論において、人間はできることなら働きたくないと考えており、責任を回避しようとすると捉えられています。

そのため、従業員には強制や命令によって仕事を与えて、報酬と処罰といった「アメとムチ」を使いながら管理していくマネジメント手法となります。

マクレガーは、Y理論によるマネジメントの必要性が高いと示していますが、現代においても正確性が重視される業務などでは、X理論に従ってしっかりと管理するマネジメントの方が効果的と言えます。

例としては、製造ラインなど業務内容が明確で体系化されている場合、危険な作業・危険物の取扱いなどわずかなミスが大事故につながる場合、機密情報を扱うなど個人の自主性に任せた管理ではリスクが大きい場合などが挙げられます。

Y理論によるマネジメントと具体例

Y理論において人間は、自らの目標に対して自主的・積極的に働き、自ら責任を取ろうとすると捉えられています。

従業員は承認欲求や自己実現欲求の充足を望んでおり、強制的に管理をするよりも魅力のある目標を与えることで人を動かしていくマネジメント手法となります。

Y理論によるマネジメントが効果的な例としては、研究開発やデザイン、接客業など個別性や創造性が求められる業務が挙げられます。そのほか、個人の自主性を重んじる組織にも有効です。

目標管理制度(Y理論の活用)

目標管理制度とは、従業員が個人の目標を設定し、その達成度合いによって人事評価を決めるマネジメント方法を指します。

自分で目標を設定することから、組織から一方的にコントロールされている感じがなくなり、モチベーションを引き出すことができると考えられています。

これは個人の自主性を尊重するY理論に基づいた管理であると言えます。

 

X理論・Y理論どちらの理論に基づいたマネジメントが適しているかは、対象となる組織や業務の特性によって変わってきます。

例えば、製造ラインにおいて、Y理論に基づいて自主性を尊重しすぎてしまうと、業務が属人的になり、生産性が下がってしまうことが懸念されます。

逆に商品開発やデザインの業務においてX理論に基づいたマネジメントになると、個人に裁量権や挑戦する機会が十分に与えられず、イノベーションを生み出すことが難しくなることが懸念されます。

Z理論の誕生(X理論・Y理論の発展)

X理論とY理論は対立的な理論として提唱されたものですが、アメリカの経済学者であるウィリアム・オオウチは、双方の良い部分を集めた「Z理論」という新しい理論を提唱しました。

Z理論は、命令と強制によって上から押さえつけるX理論と従業員の自主性を尊重するY理論の間を取るような、上下や横のコミュニケーションが存在するX理論とY理論を発展させた理論と言えます。

Z理論は、当時(1970年代)経済的成長を遂げていた日本企業の経営手法に着目して展開されたと言われています。

日本企業特有の終身雇用や人に対する全面的な関わり(職場だけでない人間関係の形成)など平等で親密な関係性や雰囲気が、従業員を主体的に動かしていくとZ理論においては考えられています。

X理論・Y理論について学べる本

最後に、X理論とY理論について詳しく学ぶ上で参考になる書籍を紹介します。

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マクレガーの著書であり、X理論・Y理論について詳しく学ぶことができます。Y理論に基づくマネジメントやリーダーシップについて実践的な内容もまとめられています。

X理論・Y理論をはじめとした、様々なモチベーションに関する理論が一冊にまとめられており、非常に参考になる一冊です。

X理論・Y理論を上手に使い分けることが重要

今回は、X理論・Y理論について紹介しました。2つは性悪説と性善説に基づいた対立した理論ではありますが、本文で紹介したように業務によっても効果的な理論は異なってきます。

また、組織内にはX理論・Y理論どちらの従業員もいますし、さらに言えば、人はX理論の側面(放っておくと仕事をしない)もY理論の側面(主体的に努力する)も持ち合わせていると考えられます。

そのため、状況に応じて適切に使い分けることで、モチベーションの維持・向上を図ることが重要であると言えそうです。

 参考文献

  • 村山昇 著 若田紗希 イラスト(2018)『働き方の哲学 360度の視点で仕事を考える』ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 著(2009)『【新版】動機づける力―モチベーションの理論と実践(Harvard Business Review Anthology)』ダイヤモンド社
  • 鈴木泰平 著(2021)『科学的に正しいチームメソッド30 メンバーが実力以上の力を発揮できるチームの作り方』翔泳社村

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    • この記事を書いた人

    blue_horizon

    民間企業在職中に心理カウンセラーを志し、心理学を学び始める。臨床心理士指定大学院卒業後は、司法及び産業領域の心理職として稼働。公認心理師・臨床心理士。

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