プルキンエ現象とは何か?メカニズムや日常への応用例について解説

2022-06-06

プルキンエ現象とは、暗くなると青や緑が明るく、赤や黄が暗く見えるといった、明るさが異なると同じ対象でも色彩が異なるように見える現象を指します。

私たちは目の視細胞の働きによって光の波長を受け止め、それを脳に伝えることで色を認識しています。プルキンエ現象は、網膜で働く視細胞(錐体桿体)の働きの違いによって起こる現象です。

今回はプルキンエ現象とは何か・なぜ起きるのか、メカニズムや日常への応用例について解説します。

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プルキンエ現象とは

プルキンエ現象とは、明るさが異なると、同じものを見ていても色彩が異なるように見える現象を指し、具体的には暗くなると青や緑が鮮やかで明るく赤や黄がくすんで暗く見える現象が生じます。

チェコの生物学者であるプルキンエ(J.E.Purkinje)が発見した現象であることから、プルキンエ現象と名付けられています。(※プルキニエ現象と表記されることもあります)

例としては、日中に見た赤い花が、日が暮れて暗くなると黒ずんで見えて目立たなくなる一方、緑の葉の方が明るく感じられるような体験が挙げられます。

色の感じ方の仕組み

生物は網膜の視細胞の働きによって、光として感じる波長の電磁波を受け止め、それを脳に伝えることで色を認識しています。この目に見える波長の電磁波を可視光線と呼びます。

可視光線の波長の範囲は380~780nm程度と言われており、最も波長の長い部分が赤短い部分が紫に見えます。波長は長い方から赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の順に並んでいます。

また、波長の範囲を大きく3つに分け、長い方から長波長・中波長・短波長と呼ばれています。長波長の光は赤く中波長の光は緑に短波長の光は青く見えます

例えば、りんごを見て赤いと感じるのは、長波長の光が目に入って、脳が赤いと認識したためであると考えられます。

プルキンエ現象はなぜ起きるのか?仕組み・メカニズムについて

プルキンエ現象は網膜にある視細胞である「錐体(すいたい)」「桿体(かんたい)」の働きの違いによって起こる現象と言われています。まずは、錐体と桿体の働きについてまとめます。

錐体(すいたい)

錐体とは、光の量が多い(明るい)ところで働く視細胞であり、網膜上の中心部に多く分布しています。錐体が働いているときの視覚の状態を明所視と呼びます。

色の感覚を受け持つ細胞であり、光に対する感度は低いですが、色を識別することができます

明順応:明所に入ったときに目が慣れて物が見えてくる現象を表します。桿体の機能が抑制され、錐体が主に機能することで生じ、比較的速やかに完了(1分以内)することが特徴です。

桿体(かんたい)

桿体とは、光の量が少ない(暗い)ところで働く視細胞であり、網膜上の周辺部に多く分布しています。桿体が働いているときの視覚の状態を暗所視と呼びます。

明るさの感覚を受け持つ細胞であり、色の識別はできませんが、光の明暗を認識する感度が高いとされています。

暗順応:暗所に入ったときに目が慣れて物が見えてくる現象を表します。作用する視細胞が、錐体から桿体に切り替わることで生じ、比較的時間が掛かる(20分以上)とされています。

プルキンエ現象の仕組み

では、なぜプルキンエ現象が起きるのか、そのメカニズムについてまとめます。

上述の通り、明るい場所では錐体暗い場所では桿体の働きが強く、錐体と桿体では光の波長に対する感度(どのくらい吸収するか)が異なります

具体的には、錐体の働く明所視では長波長側(赤)に感度が高く桿体の働く暗所視では短波長側(青)に感度が高くなっています。

そのため、明るさが変化して明所視から暗所視へ移る際、明所視と暗所視に感度のズレによって、赤が相対的に暗くなり、青が相対的に明るくなる現象が起こります。

プルキンエ現象の日常への応用

プルキンエ現象はデザインや防犯など私たちの日常生活における様々な場面で応用されています。

道路標識のデザイン

運転していると目にすることの多い、行き先を示す道路標識の案内板は青地に白の文字で構成されていることが多いです。

これは夕暮れや夜間でもドライバーから見えやすいように考慮された配色であると言われており、暗い場所では青が明るく見えるといったプルキンエ現象を応用した例と言えます。

街路灯・防犯灯

プルキンエ現象は照明技術にも応用されており、街路灯や防犯灯に活用されているケースもあります。

人間が明るく感じる波長成分を多く含むことによって、夜間の暗い道を明るく見せることができ、歩行者の安全や防犯環境の向上が期待されています。

プルキンエ現象について学べる本

最後にプルキンエ現象について詳しく学ぶ上で参考になる書籍を紹介します。

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色の感覚や知覚の仕組みから、配色など生活や文化についての話題もあり、色に関して幅広く解説されており、参考になる1冊です。

カラーの絵・イラストが多く、視覚的にも非常に分かりやすくまとめられています。

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感覚・知覚について幅広く解説されています。視覚のパートにおいては、明るさ知覚や色覚の仕組みなど基礎的な理論について理解することができます。

色覚の仕組みを知ることで、より良い暮らしに活かしていく

色覚の仕組みやプルキンエ現象のメカニズム、日常生活への応用例などについて解説しました。

日頃、私たちは余り意識することなく色を認識しているものですが、色覚のメカニズムを知ることで、より安全で便利な暮らしの実現に役立てることができるかもしれません。

参考文献

  • 城一夫 著(2009)『徹底図解 色のしくみ―初期の光学理論から色彩心理学・民族の色彩まで』‎新星出版社
  • 無藤隆 森敏昭 遠藤由美 玉瀬耕治 著(2018)『心理学 新版 (New Liberal Arts Selection) 』有斐閣

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    • この記事を書いた人

    blue_horizon

    民間企業在職中に心理カウンセラーを志し、心理学を学び始める。臨床心理士指定大学院卒業後は、司法及び産業領域の心理職として稼働。公認心理師・臨床心理士。

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