ストレス社会で働いている社会人の方により身近な精神障害の代表例として、適応障害が挙げられます。
適応障害に罹患し、心身の不調をきたした場合、休職を余儀なくされることも少なくないでしょう。そのような場合、復職をしようとするとすることが怖くなってきてしまうかもしれません。
今回は安心して復職できるよう、復職までの必要な手順をご紹介していきます。
目次
適応障害で復職が怖い?
そもそも適応障害とは、長時間労働やきついノルマ、人間関係などのストレスによって心身に不調をきたしてしまう精神障害の1つです。
代表的な症状としては、憂鬱な気分になる、やる気が出ない、些細なことにいら立って疲れやすくなった、よく眠れないなどが挙げられます。
そして、ストレスを原因とした諸症状により、仕事に行けなくなってしまうなど社会生活を送ることが困難になった状態を適応障害と呼ぶのです。
復職をする際に何が怖い?
それでは適応障害となってしまった後、いざ復職をするときにどのようなことを怖いと感じるのでしょうか。
【怖いと思う出来事の代表例】
- また適応障害になってしまうのではないか
- 精神的に弱い人間だと思われていないだろうか
- 復帰した後、職場にうまくなじめるだろうか
- 休んでしまったため、仕事が前のようにできるのだろうか
小学生の時、長期間学校を休んだら、何となく学校に行くことに不安を抱いたりすることはなかったでしょうか。
適応障害になり、このような不安を抱くのはむしろ自然なことであり、復職の過程でさらなるストレスを抱えることは好ましくありません。
そのため、復職を行う過程でこのような不安を払しょくしていく必要があるのです。
ぜひ、事前にどのような流れで復職をしていけばよいのかを知っておきましょう。
安心して復職するには?休職期間中の望ましい過ごし方
復職をする前に重要となるのが、適応障害により休職している期間の過ごし方です。
安心して復職するためには、休職期間でいかに健康な生活を取り戻せるよう過ごすかが非常に重要なのです。
基本的な生活習慣を整える
休職前は仕事をするために、決まった時間夜は寝て、朝は起きる、電車に乗って会社へ行き、昼食を食べなどの規則的な生活を送っていたはずです。
しかし、生活リズムの軸となっていた仕事が休職期間にはなくなるため、より意識して生活習慣を整えるようにしなければなりません。
体調が回復してきたら、仕事に行っていたときのように早寝・早起きをし、栄養バランスのとれた食事を心がけ、適度な運動をするようにしましょう。
こうすることで、いざ復職する際に体力面で仕事をまたできるだろうかという不安を抱えずとも済むでしょう。
しっかりとした治療を受ける
復職をするにあたって、もちろん適応障害が治っていることは絶対条件です。
しかし、休職期間が長くなり、職場から離れるほど復職する際の不安・プレッシャーは大きくなってしまいます。
そのため、休職期間中はしっかりと医療機関へ通い、適切な治療を受け、なるべく早く適応障害を直す必要があるのです。
コーピングを身につける
休職期間中にすべきことの1つとして重要なのがコーピングを身に着けることです。
そもそも、適応障害は心理社会的ストレスが原因となり発症するものであり、その症状はストレスに対する心理、生理的な反応、つまりストレス反応です。
そのため、復職後もストレスに負けず、適応障害を再発しないようにするために、ストレスへの対処法でありコーピングを身に着けることが重要なのです。
しっかりとしたコーピングを実行することができれば、ストレスフルな出来事に曝されたとしてもストレス反応は生じません。
そのため、復職後のことも考え休職期間中にコーピングを身に着けておくと復職の際の不安も少なくなるでしょう。
休職から復職までの流れ
復職が怖いのであれば、復職がどのような流れで行われるのかを知っておく必要があり、抱えている不安を解消できるような手続きを踏む必要があるでしょう。
厚生労働省はメンタルヘルス対策における職場復帰支援として次のステップを踏むことを推奨しています。
病気休業開始及び休業中のケア
まず、休職をするためには主治医の診断書が必要となります。
これは心療内科や精神科などの医療機関を受診することで取得することができるでしょう。
その診断書を職場に提出することで休職が開始となるのですが、職場に次のような事項を確認しておくと安心して休職に入ることができます。
- 傷病手当金などの経済的な補償
- 不安・悩みの相談先の紹介
- 公的または民間の職場復帰支援サービス
- 休業の最長期間
主治医による職場復帰可能の判断
休職し、職場へ復帰しようかと考えられるようになれば、まずは職場へ復職の意思を伝えましょう。
しかし、本人の自己判断のみで復職が可能となるわけではありません。
再度主治医の元を訪れ、職場復帰が可能とする診断書をもらう必要があります。
ここで気を付けたいのは、主治医は適応障害の症状の回復程度を判断している場合が多く、職場に復帰した後しっかりと元の仕事ができるのかについては不透明です。
そのため、職場の産業医に業務遂行能力に関する情報を考慮した意見をもらえるようにすると、本当に自分が職場に復帰し、仕事ができるようになっているのかがわかるでしょう。
職場復帰の可否判断及び職場復帰プランの作成
適応障害の再発を防ぎ、スムーズに職場復帰するために必要なのが、職場復帰支援プランの作成です。
これは職場の産業保健スタッフ、上司、休職者の間でよく話し合いながら、無理のないペースでの復職をどのように進めていくのかについて計画していきます。
このプランには復帰日はもちろんのこと、業務内容や業務量をどうするのか、職場でどのようなフォローアップが必要となるのかを話し合いながら進めるため、この段階をしっかりと行えれば職場復帰の具体的なイメージがわき、復職に対する不安も薄れるはずです。
最終的な職場復帰の決定と復帰後のフォローアップ
このような段階をへて、職場は最終的な職場復帰の決定を行います。
そして、復職前に建てたプランが無理ないものなのか、症状が再燃していないのか、求めるほかの支援はないのかを産業保健スタッフがフォローアップを行い、必要に応じて職場復帰プランの評価や見直しがなされます。
そのため、職場復帰プランを立てたけれど、本当にそれで大丈夫なのだろうかという不安を抱えている人でも、必要に応じてプランは修正できると知っておきましょう。
適応障害で復職が怖い方が読むべき本
適応障害になってしまい、復職が怖いと感じられている方にぜひ手に取って頂きたい本をまとめました。
今回ご紹介した本を読んで、安心して復職でいるようしっかりと学びましょう。
メンタル不調者のための復職・セルフケアガイドブック
適応障害になり、こころが疲れてしまった人には休職とセルフケアが重要です。
そして、しっかりと休養し、必要なケアを行った後に復職することができます。
ぜひ本書を読んで、メンタル不調者のセルフケア、そして復職で必要となることを学びましょう。
復職のススメー戻るか、辞めるか。復職と休職を繰り返した男の体験に基づく話。
適応障害になり、仕事を続けられなくなったときの選択肢は休職・復職と退職という2つがあります。
そのどちらが自分に合っているのかは状況によって異なるでしょうが、退職し、仕事を再開する時には全く新しい環境で再就職するということは大きな負担になってしまうかもしれません。
ぜひ、休職と復職を繰り返した体験談から、復職することはどのようなメリットがあるのかを学びましょう。
無理せず周囲を頼りながら復帰しましょう
適応障害で仕事を続けられなくなってしまったらまず自分の身を守るためにも休職し仕事から距離をとることは有効な対処法の1つです。
ゆっくりと休み、心の不調が治った時改めて復職すればよいのです。
そして、職場への復帰は自分一人でできるものではありません。
主治医や職場の上司、同僚など周囲の人に頼りながら、無理ないペースで復職できるよう心がけましょう。
【参考文献】
- 平島奈津子(2018)『適応障害の診断と治療』精神経誌120,6,514-520
- 新開隆弘(2021)『うつ病理解と精神科医と産業医との連携』精神神経学雑誌 123 (2), 75-80
- 厚生労働省『メンタルヘルス対策における職場復帰支援』