鏡像認知(自己鏡映像認知)とは?犬などの動物にも成立する?

私たちは身だしなみを整えるときなどに鏡を日常的に使いますが、そこに移っているのは紛れもなく自分であるという確信を持っています。

このような認識が成立するのは鏡像認知と呼ばれる機能が作用しているためであると心理学的には考えられています。

それでは鏡像認知(自己鏡映像認知)とはいったいどのようなものなのでしょう。犬などの動物にも成立するのでしょうか。鏡像認知を調べるミラーテストの研究についても詳しく解説していきます。

このサイトは心理学の知識をより多くの人に伝え、
日常に役立てていただくことを目指して運営しています。

Twitterでは更新情報などをお伝えしていますので、ぜひフォローしてご覧ください。
→Twitterのフォローはこちら 

鏡像認知(自己鏡映像認知)とは

鏡像認知(自己鏡映像認知)とは、その字の通り、鏡に映った自分の像を見て、それが紛れもなく自分であると認識できることを指します。

この鏡像認知に係る研究は、進化論を唱えたことで有名なダーウィンが自身の子どもを観察することからスタートしたと言われています。

その後、鏡像認知の研究は乳幼児を対象にした鏡像認知の発達過程に言及します。研究の結果、一般的に鏡像認知が成立する過程は次のような段階を経ると指摘されています。

自己鏡像認知の発達段階

  • 第1段階:生後半年~1歳(鏡像を完全に実在しする段階)
  • 第2段階:1歳ごろ(他人の鏡像は実物ではないことが理解される段階)
  • 第3段階:1歳半ごろ(自己の鏡像を自分とは半ば独立した分身として遊ぶ段階)
  • 第4段階:2歳以上(自己の協同は自分自身ではなく、鏡に映った像だと理解できる段階)

このように、人間も生まれたばかりでは、鏡に映る自分の姿が自分を鏡が映しているものであると正しく認識できないのです。

その後、ギャラップが自己鏡像認知はチンパンジーにも成立するという衝撃的な報告を1970年にしたことによって、鏡像認知研究はさらに活発なものとなっていったのです。

鏡像認知の成立を調べるテスト

ギャラップがチンパンジーの鏡像認知を調べるために行ったテストは、ルージュ課題と呼ばれました。

そもそもギャラップは、チンパンジーが鏡を見ながら毛づくろいをしたり、口のなかを見たりするしぐさのなかで、私たちが身だしなみを鏡で確認するように、チンパンジーも鏡に映っている像が自己像であると認識できているのではないかと考えたのです。

ルージュ課題は次のような手続きで行われます。

【ルージュ課題の手続き】

  1. 被験体であるチンパンジーに麻酔をかけ、眠らせる。
  2. 眠っているチンパンジーの額にルージュ(口紅)をつける。
  3. 麻酔から覚めたチンパンジーに鏡を見せ。その反応を観察する。

このテストは、眠っている間に顔に落書きをして、鏡を見せるという非常に単純なものです。

しかし、鏡像認知が成立していなければ、自分の顔に落書きがなされているとは気づくことはできないでしょう。

この時、鏡を見て、自分の額に着けられているルージュに気づき、さわるようなしぐさをとることができれば、鏡像認知が成立しているとみなすのです。

鏡像認知は犬などの動物にも成立する?

ギャラップのチンパンジーを対象とした、動物への鏡像認知実験の報告から、動物の自己認知はどこまで成立するのかという問題が乳幼児や霊長類、鳥類、イルカ、ゾウ、ペットなどの飼育動物など、様々な動物へと広がっていきました。

その結果、鏡像認知が成立する動物は以下のように非常に限られるということがわかっています。

【鏡像認知が成立する動物】

  • 人間
  • 大型のサル
  • ゾウ
  • イルカ
  • カラス

鏡像認知について学べる本

鏡像認知について学べる本をまとめました。

初学者の方も読み進めやすい入門書をまとめてみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみてください。

魚にも自分がわかる ――動物認知研究の最先端 (ちくま新書)

動物の認知を調べることで、人間の認知の特徴を浮き彫りにすること。

これは古くから心理学研究において行われてきた動物実験を行う理由の一つです。

鏡像認知研究はその最たるものであり、私たちが当たり前だと思っていることがいかに人間に特徴的な複雑な心的機能なのかを改めて知ることが出来ます。

ぜひ本書から動物の認知について詳しく学びましょう。

資料でわかる 認知発達心理学入門

created by Rinker
¥2,310 (2024/04/30 02:57:44時点 Amazon調べ-詳細)

鏡に映った自分の姿を見て、それが自分であるとわかる。

これは心理学的に自己認知の1側面であるということが出来ます。

鏡像自己認知に興味があるのであれば、ぜひ様々な自己認知がどのように育っていくのかについても学んでみましょう。

鏡の自分が自分だとわかるのは当たり前か

私たちは日常的に鏡に映った自分を見ており、鏡に映った姿が自分であるとわかるのは当たり前だと思っています。

しかし、その当たり前だと思える現象にも実に高度な認知機能が働いていることが鏡像認知研究を調べるとわかります。

ぜひ、日常に新たな視点をもたらすためにも鏡像認知研究を学んでいきましょう。

【参考文献】

  • 草山太一・池田譲・入江尚子・陳香純・坪川達也・武野純一・酒井麻衣(2012)『自己鏡映像認知への温故知新』 動物心理学研究 62 (1), 111-124
  • 加藤 弘美(2012)『乳幼児における自己鏡像認知研究の近年の動向と今後の展望 』人間発達学研究 3 1-8
  • 百合本 仁子(1981)『1歳児における鏡像の自己認知の発達』The Japanese Journal of Educational Psychology 29 (3), 261-266

こちらもおすすめ

    • この記事を書いた人

    t8201f

    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

    -知覚・認知

    © 2020-2021 Psycho Psycho