心理学の用語 知覚・認知

感覚記憶とは?意味や種類、短期記憶・長期記憶との関係について具体例とともに解説

感覚記憶とは、まだ記憶として意識される前の情報です。

今回は、感覚記憶の意味や種類について具体例を挙げながら解説します。また、感覚記憶と短期記憶、長期記憶との関係、感覚記憶についての実験などについても記載していきます。

最後に、感覚記憶について学べる本もご紹介しますので、参考にしてみてください。

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保持時間に基づく記憶の分類:感覚記憶・短期記憶・長期記憶

記憶は、保持時間に基づいて、感覚記憶、短期記憶、長期記憶に分類されます。

環境から入力された情報は、まず認知的な処理を受けないままの形で感覚記憶として数秒間保持されます。そのうち注意が向けられた情報については短期記憶に送られます。そして最終的に、短期記憶から長期記憶に転送された情報のみが、ほぼ永久に保持される事になります。

今回はこれらのうち、感覚記憶について解説していきます。

感覚記憶とは?

まずはじめに、感覚記憶の意味と具体例を見ていきましょう。

感覚記憶の意味

リチャード・アトキンソンとリチャードシフリンは、環境から入力された情報は、感覚レジスタを通して短期貯蔵庫に流れ、そこから長期貯蔵庫に送られるという情報多重貯蔵モデルを提唱しました。

これによると、感覚器官に入力された情報が短期記憶に送られるまでほんの数秒間、認知処理を受けずにそのまま保管されているものが感覚記憶ということになります。

感覚記憶の具体例

感覚記憶は、処理される前の情報ですから、記憶という認識がなく意味も理解されていません。

例えば朝起きてまず「明るさ」を感じたとします。意識がはっきりと「朝の光だ」と感じるまでのほんのわずかの間のことです。

また、読書に夢中になっている時に自分の名前を呼ばれた瞬間の、「何か聞こえた」という感覚がそうです。これも「自分の名前が呼ばれた」と認識するまでの、ほんのわずかの記憶です。

さらに、火傷をした時、「熱いっ!」と思うまでの短い間もそうです。後で思い出す記憶は「火傷をして熱かった」という記憶だとしても、「熱いものに触れた」という認識をするもっと前に感覚記憶が生じています。

感覚記憶の種類

感覚記憶は感覚器官から入力された情報ですから、感覚器官の種類だけあります。その中からいくつかを見てみましょう。

感覚記憶と視覚

視覚的な感覚記憶は、アイコニック・メモリーと言い、その保持時間はたったの1秒程度しかありません。

例えば、目の前のコップを見て「コップ」だと認識するくらいの間です。もっと複雑なものでは、それが何かを認識できないほどの時間でしょう。

この短い時間に、可視光線が何の処理も受けない状態で感覚登録機に保持されているのです。

そして、膨大なアイコニック・メモリーの中から、注意を向けられた情報のみが短期記憶に送られる事になります。

感覚記憶と聴覚

聴覚的な感覚記憶は、エコイック・メモリーと言い、その保持時間は3〜4秒と、アイコニック・メモリーよりは長い事が知られています。

この間、音波が何の処理も受けない状態で感覚登録機に保持されます。

そして、膨大なエコイック・メモリーの中で、注意が向けられた情報のみが短期記憶に送られるのです。

感覚記憶と嗅覚

嗅覚刺激は、揮発性の臭覚刺激物質です。視覚や聴覚に比べると嗅覚記憶についての研究は多くありません。

けれども、香りによって記憶された情報が、同じ香りによって思い出されるというブルースト効果が知られています。

ブルースト効果は、フランスの作家であるマルセル・ブルーストの小説「失われた時を求めて」で、主人公が紅茶に浸したマドレーヌの香りから幼少期の記憶が蘇るという場面から名付けられたものです。

感覚記憶の実験

感覚記憶についての実験を見ていきましょう。

アイコニック・メモリーに関する実験

アイコニック・メモリーに関する実験として、スパーリング(Sperling, 1960)が行ったものがあります。

まず、ランダムに3行4列に並べたアルファベットを被験者に一瞬提示し、正当数を調べると、平均4.5文字でした。(全体報告法)

けれどこの方法では、答えを報告するまでの間に忘れている文字が存在する事になります。

そこで、アルファベットを呈示したすぐ後に音を鳴らし、その音が高音なら上段行の文字、中音なら中段、低音なら下段を答える方法にした所、正当数は平均9.8文字と示唆されました。(部分報告法)

この事は、全体報告までの数秒間は持続しないが、部分報告までのごく僅かな時間だけ保持される記憶がある事を示しています。

このような実験から、アイコニック・メモリーの存在が明らかになるのです。

ブルースト効果に関する実験

ブラウン大学のレイチェル・ハーツは、実験参加者に次の3つの事柄に関する記憶があるかどうかを尋ねました。

  1.  キャンプファイア
  2. 芝刈り
  3. ポップコーン

そして選んだ事柄について、視覚・聴覚・嗅覚の手がかりを与え、どの程度感情や出来事が鮮明に思い出せるかを評定させました。

その結果、視覚や聴覚に比べて嗅覚の手がかりが最も感情や出来事をはっきりと思い起こすことができたのです。

このことから、嗅覚情報が、記憶と最も結びつきが強い事が示唆されます。

感覚記憶について学べる本

より深く学びたい方に向けて、感覚記憶について学べる本をご紹介します。

豊富なカラー写真や図で理解しやすい「意識的な行動の無意識的な理由」

知覚・記憶・思考・言語といった認知心理学の分野について、豊富なカラー写真やイラストでわかりやすい解説がされている本です。

「II 記憶のワンダーランド」では、多重貯蔵モデルから始まり、記憶の仕組みとその不思議さが書かれています。

感覚記憶を含む記憶に関する認知心理学的な考え方を楽しみながら学ぶことができます。

はじめて認知心理学を学ぶ大学生向け「基礎から学ぶ認知心理学」

単に知識を詰め込むだけではなく、学んだ事を実際に使えるようになる事を意識して書かれた本です。

各章毎のまとめや、WORKなど、認知心理学を身につけるための工夫が満載です。

感覚記憶については、「3章 知覚」を読んでから「4章 記憶の基礎」を読むと理解が深まるでしょう。

五感を研ぎ澄ます

私たちが使う多くの記憶は長期記憶か短期記憶です。感覚記憶は、使おうとした時にはもう残っていません。

けれども、今ある記憶のすべてが、元々は感覚記憶だったのです。どれほど短い時間であろうとも、まずは感覚記憶としてキャッチされなければ、今の記憶はあり得ないのです。

そのように考えると、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚という、あらゆる感覚が愛おしく感じられるような気がします。

朝の光を浴び、深呼吸をし、散歩をし、人と話し、本を読み、料理を作って食べ、日記を書く。

「アイアム冒険少年」ほどの体験ができなくても、日々の生活の中でアナログで丁寧な暮らしを取り入れる事で、記憶の入り口となる五感を研ぎ澄ます事ができるのではないでしょうか。

参考文献

行場次朗・箱田裕司(編)(2014) 新・知性と感性の心理ー認知心理学最前線 福村出版

越智啓太(2018) 意識的な行動の無意識的な理由 心理学ビジュアル百科 認知心理学編 創元社

子安増生・二宮克美(2011) キーワードコレクション 認知心理学 新曜社

日本認知心理学会(編)(2013) 認知心理学ハンドブック 有斐閣

Sperling G.(1960) The information available in  brief visual presentations. Psychological Monographs: General and Applied,74,1-29

服部雅史・小島治幸・北神慎司(2015) 基礎から学ぶ認知心理学ー人間の認識の不思議 有斐閣

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    こころ

     臨床心理学・実験心理学等を学んだ後、心理カウンセラーとして勤務。現在はライターとして活動中。

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