カクテルパーティ効果とは?具体例・実験・仕組みをわかりやすく解説

2020-10-15

カクテルパーティ効果

とは、パーティのようなザワザワとした騒音がある中でも、必要な情報を選択して聞き取れる現象のことを指します。

この記事では、カクテルパーティ効果に関する実験やメカニズムについてご紹介します。また、日常生活に応用する方法やカクテルパーティ効果を持たない人、鍛える方法はあるのかといった点についても解説します。

このサイトは心理学の知識をより多くの人に伝え、
日常に役立てていただくことを目指して運営しています。

Twitterでは更新情報などをお伝えしていますので、ぜひフォローしてご覧ください。
→Twitterのフォローはこちら 

カクテルパーティ効果とは

カクテルパーティ効果とは、パーティでの歓談のように多くの人が同時に話している中でも、自分の名前や自分に関係する話題を自然と選択して聞き取ることができるという現象のことです。

カクテルパーティとは、カクテルなどの飲み物や軽食の出る立食形式のパーティのことで、この効果がよく見られることから言葉の由来になっています。

カクテルパーティ効果の具体例

例えば、人の多いショッピングモールや遊園地に遊びに行った時、周囲はザワザワとした雑音にあふれています。そういった環境だと自分の耳に入ってくる音は非常に多いはずですが、私達は一緒に行った友達の声を拾い上げて聞き取り、自然に会話をすることができます。

また、そういった場所で自分の名前が聞こえたりすると、周囲の会話を全く意識していなかったにも関わらず、そちらの方へ自然と意識が向いて会話が聞こえてきたりします。

こうしたことが、日常生活でみられるカクテルパーティ効果の例です。

カクテルパーティ効果に関する代表的な心理学実験

カクテルパーティ効果は認知心理学の分野で古くから知られている現象で、長年研究が行われてきました。ここでは、カクテルパーティ効果に関する代表的な実験と最近の研究を取り上げてご紹介します。

チェリーによる両耳分離聴の実験

カクテルパーティ効果の代表的な実験は、コリン・チェリーが行った両耳分離聴の実験です。

コリン・チェリーは、実験の参加者に左右の耳から同時に異なる音声を聞かせて、片方の音にだけ注意を向けるように指示しました。すると、注意を向けなかった方の音声が聞こえにくくなるという結果になったのです。

この時、注意を向けていない方の耳に、音声に加えて「ピー」という音を入れたところ、音声の内容を聞き取ることはできないものの、「ピー」という音が含まれていること自体には気づくことも判明しました。

こうした実験の結果から、

  • 人は注意を向けた情報を優先して処理していること
  • 注意を向けていない情報については、音声の内容は理解できない(意味的な処理はされていない)ものの、音自体は脳まで届いている(物理的な処理はされている)こと

が明らかになりました。

カクテルパーティ効果が起きるメカニズム

これまでに行われてきた実験の結果から、カクテルパーティ効果のメカニズムについては様々な説が唱えられてきました。ここでは代表的なものを取り上げてご紹介します。

選択的注意

カクテルパーティ効果は、選択的注意の代表例と言われています。選択的注意とは、多くの情報がある中から必要な情報だけを選択して、その対象に注意を向ける機能のことです。

こうした選択的注意は、脳のパンクを防ぐために必要な機能だと考えられています。普通の日常生活の中でも、私たちの周りには様々な色や音、匂いなどが溢れていて、これら全てを同じように受け取ろうとすると、脳の処理が間に合わなくなってしまいます。

そこで、脳は自分にとって必要だと認識した情報だけを優先的に処理して、そのほかの情報は無視しているのではないかと考えられています。

注意の「フィルターモデル」と「減衰モデル」

【フィルターモデル】

心理学者のブロードベントは、コリン・チェリーが行った研究結果などを踏まえて注意の「フィルターモデル」を提唱しました。このモデルでは、情報処理の初期の段階に、処理する情報を選択するフィルターが存在すると仮定されています。フィルターにかけられ、注意が向けられなかった情報はそのまま失われてしまうと考えられます。

【減衰モデル】

一方、心理学者のトリーズマンが行った実験では、注意を向けていない側の耳から得られる情報は完全に失われているわけではないことが判明しました。それどころか、意識していなくても意味的な処理まで行われていることが分かり、ここから「減衰モデル」が提唱されました。

「減衰モデル」では、情報処理の初期段階で注意が向けられなかった情報は完全に失われず、弱められるだけであると考えます。そのため、トリーズマンの「減衰モデル」は、カクテルパーティ効果を説明するモデルといえるでしょう。

カクテルパーティ効果を含む選択的注意に関するモデルは、上記の他にも様々なものが提唱されていますが、どのモデルが正しいのかについてはまだ決着がついていません。

カクテルパーティ効果が現れない場合:発達障害と難聴

【発達障害】

発達障害で聴覚過敏を伴う場合、カクテルパーティ効果が働きにくいことがあるようです。特に、自閉症スペクトラム障害(ASD)では、雑音を遮断することができず、騒音がある場所での聞き取りが困難な場合があります。

【難聴】

難聴の場合にもカクテルパーティ効果が弱まり、雑音下での聞き取りが難しくなることが知られています。ただ、難聴の場合には適切な補聴器をつけることで改善することがあります。

カクテルパーティ効果を鍛える方法と効果

ネット上では、脳トレとしてカクテルパーティ効果を鍛える方法を紹介しているサイトがあるようです。

こうした方法の効果は確かではないためここでは紹介しませんが、興味のある方は試しに実践してみても面白いかもしれません。

カクテルパーティ効果の日常生活への応用

カクテルパーティ効果は選択的注意の代表例であり、詳しいメカニズムはわかっていないものの、非常に身近に起きる心理学現象です。

こうしたカクテルパーティ効果を、意識的に日常生活へ応用することはできるのでしょうか?

恋愛

例えば、カクテルパーティ効果では、自分の名前が呼ばれたり、自分の関心がある話題が出るとそちらに注意が向く、というものがあります。これを応用することで、気になる相手の気を引くことができるかもしれません。

マーケティング

また、カクテルパーティ効果のような選択的な注意は視覚などでも行われていると考えられるので、特定の集団や人物が興味を持ちやすい話題や言葉選びを行うことで、マーケティングにも応用できる可能性があります。

カクテルパーティ効果は日常の中で無意識に役立っている効果ですが、活用できるシーンは意外と幅広いかもしれませんね。

カクテルパーティ効果は身近な現象

カクテルパーティ効果について解説してきました。ここまで読んでくださった方は、カクテルパーティ効果がとても身近な現象であること、そして、私達の知覚において非常に重要な役割を果たしていることをご理解いただけたのではないでしょうか。

「注意」の研究においても興味深いカクテルパーティ効果は、普段私達がどのようにして脳で情報を処理しているのかを探る手がかりでもあります。これから更に研究が発展することを期待しましょう。

参考文献

・Arons B. (1992). A Review of The Cocktail Party Effect, Journal of the American Voice I/O Society, 12, 35-50

・箱田 裕司, 都築 誉史, 川畑 秀明, 萩原 滋 (2010) 『認知心理学』有斐閣

・公益社団法人 日本心理学会:心理学Q&A  ガヤガヤした場所でも話ができるのはなぜ?

・Phonak Insight:両耳での聞こえ 両耳装用における両耳間通信の重要性

こちらもおすすめ

    • この記事を書いた人

    PsychoPsycho編集部

    心理学サイトPsychoPsycho編集部です。初学者の方にもわかりやすい解説を心がけ、より多くの方が心理学に興味を持っていただけるよう情報を発信していきます。

    -知覚・認知

    © 2020-2021 Psycho Psycho