適応障害になりやすい人とは?性格や環境の違いなど、なりにくい人の特徴も解説

ストレス社会と呼ばれる現代において、適応障害は非常に身近な精神障害であると言われています。それでは、適応障害になりやすい人はどのような性格や環境で過ごしているのでしょうか。逆になりにくい人の特徴についても解説していきます。

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適応障害とは

適応障害になりやすい人の特徴の前に、まずは適応障害とはどのような精神障害なのか知っておきましょう。

適応障害とは、外的環境からのストレスにより心身の不調をきたす精神障害です。

代表的な精神症状として抑うつや不安などが挙げられ、意欲が湧かなかったり、憂鬱感など気分の落ち込みがみられます。

そのため、うつ病と混同されることも少なくありませんが、適応障害は明確なストレスを感じる要因により発症するもので、うつ病とは異なる精神障害であると考えられているのです。

適応障害になりやすい人の特徴

適応障害はいくつかの要因が関連しあうことで発症する精神障害です。そのため、なりやすい人の特徴をいくつかご紹介していきます。

適応障害になりやすい環境

適応障害の発症には、ストレスが深く関連していることをご紹介しました。適応障害にスポットが当たりやすい状況としては、就労者が精神的問題をきたして休職に至るケースが挙げられます。

就労者が抱えるストレスの代表的なものとしては、残業時間の長さや仕事の責任の重さ、業務量の多さ、職場での人間関係などが挙げられます。

また、プライベートでも転居や結婚、親の介護など環境の変化や責任を伴う家事などはストレスとなりうる要因でしょう。

そこで、中村(2008)は、精神科疾患のために休職を余儀なくされた休職者の周辺を取り巻く環境要因に関して調査を行いました。

その結果、「精神的な健康度の悪化」及び「希死念慮とうつ傾向」に影響を与える主な環境要因は次のようなものが挙げられることが見出されています。

【精神的健康度への悪化】

  • 仕事への満足度
  • 残業時間

【希死念慮とうつ傾向】

  • 残業時間
  • 配偶者の有無
  • 職場での信頼できる人の存在

この結果を見てみると、長時間に渡り不満を感じている職場環境は適応障害になりやすいと考えられます。

それに加え、職場やプライベートにおいて自分の悩みや辛さを吐き出し、心理的サポートを得られるような環境になければストレスを抱え込んでしまいやすいのです。

適応障害になりやすい性格

適応障害の発症にはストレス因が大きく関連していることはすでに述べましたが、同じストレスフルな環境に置かれたとしても、全ての人が適応障害を発症するわけではありません。

つまり、適応障害の発症は環境的な要因に加え、心理的な要因の影響も受けるのです。

適応障害をはじめとする現代型うつ病では性格形成の未熟さの関与が指摘されています。

古城ら(2012)は健康管理センターのストレスドック受診者を対象にY-G性格検査における性格特性とストレス自覚症状の関連を検討しています。

Y-G性格検査は、それぞれの性格特性を測定すると共に、検査結果に特徴的な性格類型に当てはめることが出来る検査です。

【Y-G性格検査の各性格類型とその特徴】

D型(情緒安定積極型)活動的で問題は少なく、情緒の安定、社会適応的など良い面が外に出やすい好ましい性格
C型(情緒安定消極型)情緒は安定し、社会適応が良いが、活動的でなく内向的
A型(平均型)全ての尺度において平均的で、特徴を示さない平凡な性格
B型(情緒不安定積極型)情緒は不安定で社会不適応的。活動的な特徴が合わさることで性格の不均衡が表に出やすく、環境や素質に恵まれない子どもは非行傾向が強くなる
D型(情緒不安定消極型)情緒不安定で非活動的なため、ノイローゼ傾向が強い

そして、これらの類型のうち、D型が最もストレス自覚症状の出現率が高いことが示されています。

そのため、D型に特徴的な「情緒が不安定、非活動的、内向的な人」はストレス対処力が低く、生じたストレスを抱え込んでしまいやすいと考えられます。

このような特徴が適応障害に繋がりうることは他の研究からも支持されており、休職者に対し、現代のパーソナリティ研究で最も支持されているビッグファイブ理論の質問紙であるNEO-FFIを実施した研究では、神経症傾向の高さ、そして外向性の低さがみられました。

神経症傾向は情緒の不安定さやネガティブなことへの反応のしやすさを表し、外向性が低いことは、社交的場面に消極的な様を表します

そのため、ストレスを受けると情緒が不安定となる弱さ、そして悩み相談など人との交流を積極的に行えないとストレスをため込み適応障害になってしまいやすいでしょう。

また、完全主義という性格傾向もストレス反応を導きやすいため要注意です。

完全主義は目標を高く設定し、自他ともにその目標に達することに重きを置くので、自分が完璧に仕事をこなせているかを常に疑いやすい性格であると言えます。

そのため、自分の仕事に関する評価を気にしすぎるがあまり自分を追い詰めてしまうのです。

適応障害になりにくい人の特徴

それでは、適応障害になりにくい人はどのような特徴を持っているのでしょうか。

適応障害になりやすい人は、完璧主義で失敗してしまうと情緒が不安定になり、一人で抱え込むタイプの人でした。

その逆となると、おおらかな性格で、情緒が安定しており、人との交流を多く持っている人物像、つまり明るい人が思い浮かびます。

明るい人は適応障害になりにくい?

明るい人、つまりポジティブな人の特徴を示す最たるものとして楽観性が挙げられます。

この楽観性はポジティブ心理学において中核となる概念とされ、「ポジティブな結果をお期待する傾向」として、性格特性の1つであると捉えられています。

そして、楽観性が高い人はストレスフルな事態にも強いことが知られています。

その理由としては、楽観性の高い人は、「上手くいくだろう」、「何とかなるだろう」とポジティブな結果を思い浮かべることが出来るため、何らかのストレスフルな事態に陥ったとしても粘り強く取り組み、問題解決を放棄しないため、最終的に高いパフォーマンスを発揮するということが指摘されています。

それに加え、楽観性の高さはストレス場面に応じて、適切なストレスコーピングを用いることが指摘されています。

そもそも、ストレス反応というものは、個人に対しストレッサーが与えられると直ちに生起するものではありません。

まずストレッサーが与えられると、それに対する認知的な評価(そのストレッサーが自分にとってどのくらい脅威的か、自分で対処できそうなものか)を行い、それによってストレスに対する対処法であるストレスコーピングを選択します。

この流れにおいて、適切なストレスコーピングを採用することが出来れば、ストレス反応は生起しないもしくはストレス反応が弱められます。

そのため、楽観性の高い人、つまり明るい人は、ストレスフルな出来事に対してもポジティブな未来を抱き、適切にふるまうことが出来るため、適応障害になりにくいと考えられます。

適切なストレスコーピングとは

それでは、楽観性の高い人が用いる適切なストレスコーピングとはどのようなものなのでしょうか。

もちろん、どのコーピングが適切なのかはその状況の文脈に依存しているため、一概には言えませんが、コーピングは大きく「問題焦点型コーピング」と「情動焦点型コーピング」に大別することが出来ます。

【コーピングの種類】

  • 問題焦点型コーピング:ストレスの原因となる問題を解決しようとする
  • 情動焦点型コーピング:ストレスを感じている気持ちを軽減しようとする

それぞれのコーピングにはメリットとデメリットがあります。

例えば、問題焦点型コーピングはストレスの原因に対して行動を起こすため、問題が解決できた後はストレスを感じることはありませんし、自分で解決できたという達成感を得ることが出来ます。

例えば、職場の残業時間がストレスとなっているため、人事部に相談しワークライフバランスの取れた職場へ改善するということが挙げられます。

しかし、このような場合、人事や周囲の理解を得ることが出来ず問題の解決が行えないこともあるでしょう。

このように、問題焦点型コーピングでは、問題を解決しようと試みてもそれが実現できなかった場合、達成できない自分の評価が低下する、解決過程で新たなストレスを抱えてしまうなどのリスクもあるのです。

逆に、情動焦点型コーピングは気晴らしや悩み相談、逃避などストレッサーから感じるいら立ちや不安などを低減させようという試みです。

しかし、このアプローチではストレスの原因自体は無くならないため、一時的にストレス反応を低減させることには役立ちますが、情動焦点型コーピングで対処しているうちにさらにストレスが強い環境になってしまうというデメリットがあります。

どちらのコーピングもメリットとデメリットがあるため、適応障害にならないよう、バランスを取ったコーピングを採用できるようになりましょう。

適応障害になりやすい人について学べる本

適応障害になりやすい人の特徴について学べる本をまとめました。

初学者の方でも手に取りやすい入門書をまとめてみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみてください。

ある日突然やってくる。適応障害こんにちは!: <簡易診断付き> (健康美容ブックス)

適応障害になりにくい人はどのような人なのかを知るためには、まず適応障害とはいったいどのような精神障害なのかを詳しく知っている必要があるでしょう。

適応障害を易しく解説してある本書には、適応障害の簡易診断もついているため、自分が適応障害の危険があるのかどうかについても知ることが出来ます。

ぜひ本書で適応障害になりやすい性格や考え方について知りましょう。

適応障害で休職した私が6か月でフルタイムに復帰した方法: 毎日を穏やかに過ごすヒントをあなたに

適応障害になりやすい人に知っておいてもらいたいのは、適応障害が治すことのできる精神障害であるということです。

発症してしまうと、憂うつな気分となり、将来に肯定的な見通しを持つことが難しいため、適応障害になってしまったらどのように回復を目指していくべきなのかについて知っておくことは非常に重要です。

ぜひ、本書で適応障害から回復するために必要なことを学びましょう。

過ごしやすい環境と明るさを大切に

適応障害は個人の特徴に心理的なストレスがかかることによって発症する精神障害です。

そのため、いかに適応障害にかかりにくい特徴を持っていたとしても強いストレスがかかれば誰しもが発症するリスクはあるのです。

そのため、今回ご紹介した適応障害になりやすい原因について改めて考え、適応障害になりにくい生活を手に入れていきましょう。

【参考文献】

  •  中村晃士(2008)『 休職に至る就労者を取り巻く環境と就労者の特性について』科学研究費補助金研究成果報告書,https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19790839/
  • 古城美香・吉本稔・金城領哉・川上利光・小渡康行・武田義次(2012)『性格特性とストレス自覚症状の関連 -ストレスドック受診者を対象に-』人間ドック (Ningen Dock) 27(3), 617-623
  • 渡辺将成・長谷川晃(2017)『楽観性と悲観性がコーピング方略に与える影響 ―重要性の異なる2場面を設定した上での検討―』カウンセリング研究 50(2), 73-80

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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