日常生活への応用

承認欲求とは?強い人の特徴やSNSとの関連についても解説

動物には様々な欲求が存在しており、その欲求に突き動かされ生きるために必要な行動を起こしています。もちろん人間にも欲求があることは周知の事実ですが、社会的動物である人間には強い(自己)承認欲求が備わっています。それでは承認欲求とはどのような特徴を持っているのかについて解説していきます。

このサイトは心理学の知識をより多くの人に伝え、
日常に役立てていただくことを目指して運営しています。

Twitterでは更新情報などをお伝えしていますので、ぜひフォローしてご覧ください。
→Twitterのフォローはこちら 

承認欲求とは

承認欲求とは「他人から認められたいという欲求や自分が周囲から一目置かれるような存在でありたいと願う願望の総称」のことです。

承認欲求は他者から受ける評価と深く関わっているため、他者により良いイメージを持たれようと振舞う自己呈示行動を促します。

承認欲求は古くから心理学研究で注目されてきた概念であり、マズロー,Aによる欲求段階説に登場することで有名です。

マズローの欲求段階説と他者承認・自己承認

マズローは、人間の欲求がピラミッドのような階層構造を成しており、人間にはある段階にある欲求が満たされることによって、さらに上の階層の欲求を満たそうとする傾向があると考えました。

それぞれの段階は次の通りです。

  • 生理的欲求:食欲・睡眠欲など生命維持と密接なかかわりを持つ根源的な欲求のこと。
  • 安全欲求:犯罪や災害、貧困や病気などに脅かされない安定した生活を求める欲求のこと。
  • 社会的欲求:職場や学校などの集団に所属して安心感を得ようとする欲求のこと。
  • 承認欲求:所属する社会集団の中で高く評価されたり、自分の能力を認めてもらいたいとする欲求のこと。
  • 自己実現欲求:自分にしかできないことを成し遂げたいなどといった「理想的な自分」を追求しようとする欲求のこと。

この欲求段階説の4番目の欲求として登場するのが承認欲求です。承認欲求では社会的集団に所属するという前提のもとに発現する欲求であり、さらに他者承認自己承認の2つに分類されます。

他者承認は、認めてくれる対象を他者に求めます。つまり、自分が他人から注目を浴びたり、賞賛されるという他者の視点という基準で自己の価値を判断します

これに対し、自己承認では、認めてくれる対象は自分となっています。つまり、自分の中の価値観や目標に照らし合わせ、自分で納得できるかを重要視するのです。自己承認の場合、人から褒められるためという他者中心の価値基準から脱し、自分の中の喜びや達成感に焦点をあてて行動を起こすとされています。

賞賛獲得欲求と拒否回避欲求

ここからは、他者承認についてより深く見ていきましょう。人が他者から認められるということには以下の2つの方向性があります。

  • 集団の中で素晴らしい能力をもっていると評価される
  • 他者から嫌われない

基本的に人は他者から「肯定的な評価を獲得」し、「否定的評価を避ける」ことで、周囲から受け入れられ、人間関係を築き、継続させようとする傾向があります。

そして、肯定的評価を得ようとする欲求を賞賛獲得欲求否定的評価を避けようとする欲求を拒否回避欲求と呼びます。

例えば、賞賛獲得欲求を満たすための行動としては、褒められるためにテストで良い点を取ることなどが挙げられます。

また、拒否回避欲求を満たすための行動としては、反感を買って嫌われることが無いように空気を読むことなどが挙げられます。

承認欲求との類似概念:自己愛(ナルシズム)

承認欲求は周囲から受け入れられるために、自らの優れた点をアピールするという行動を導きます。

インターネット上に自分の顔写真などをアップして「かっこいい」「かわいい」といった賞賛を受ける人をナルシストだと言うことがありますが、自己愛(ナルシズム)も承認欲求と非常に近い性質を持っているということは想像に難くないでしょう。

というのも、自己愛の概念には、「他者から自分の良い面をアピールして、自己評価を高く保つことで自分を守ろうとする欲求」(注目・賞賛欲求)が含まれているからです。

そこで、鈴木・本田(2009)は「自己愛的な賞賛獲得欲求」と「承認欲求に由来する賞賛獲得欲求」の比較を行いました。

その結果、両者は近い性質を持つ概念ながら、

  • 「自己愛的な賞賛獲得欲求」は自分のすぐれた点をアピールするなど、積極的に自ら行動を起こすことによって他者から賞賛されることを求める
  • 「承認欲求的な賞賛獲得欲求」は単純に他者から賞賛を得ようとする

という若干の性質の違いがあることが示されています。

承認欲求が強い人の特徴

それでは、承認欲求の強さはいったいどのような特徴と関連しているのでしょうか。

鈴木・菅原(2014)は賞賛獲得欲求および拒否回避欲求とデモグラフィック要因(人種や性別、年齢などといった個人の基本的な要因)との関連を検討しています。

再度確認すると、人から肯定的評価を得ようとする欲求が賞賛獲得欲求、否定的評価を避けようとする欲求が拒否回避欲求でしたね。

研究では次のような結果が示されました。

【デモグラフィック要因と承認欲求の関係】

  • 男性のほうが賞賛獲得欲求が高い
  • 男性において結婚しているものは賞賛獲得欲求が高い
  • 女性のほうが拒否回避欲求が高い
  • 男女ともに年齢が高くなるにつれ、賞賛獲得欲求・拒否回避欲求は低くなる

この研究において男女で承認欲求の形が異なるという結果が示されたことは興味深いと言えるでしょう。

つまり、男性は周囲から褒められたり高い評価を受けるため、自分の存在をアピールし、良いところを他者に理解してもらおうとしやすいと考えられます。

これに対し、女性は周囲から嫌われることが無いよう自分の欠点をさらけ出さないよう気を付けることを重視しやすいのです。

このような差が生物学的な違いからくるものなのか、それとも性役割(男性らしい振る舞い、女性らしい振る舞いを求められること)に由来するのかは明らかにされていませんが、男女平等の社会が近づくにつれ、男女の承認欲求のあり方が変わってくる可能性もあるのです。

承認欲求とSNS利用

現代はTwitterやFacebookといったソーシャル・メディアが発展し、個人であっても不特定多数の人々に対し情報を発信できる世の中です。

そして、多くのSNSで「いいね」などのリアクションが得られることは、承認欲求の広がりと密接な関連を持っているように思われます。

加納(2019)は承認欲求とSNSの利用頻度の関係性を調査し、承認欲求が高いほどTwitterやInstagramを利用する傾向が強まり、常時スマートフォンに接触しているスマホ依存との関係性を明らかにしています。

また、吉野(2008)は承認欲求の下位分類である賞賛獲得欲求・拒否回避欲求とSNSのアクセスの関係について検討しました。その結果、男性では拒否回避欲求が高いほど、女性では賞賛獲得欲求が高いほどSNSへのアクセス頻度が高いことが示されています。

これは先にご紹介した男性・女性における承認欲求の特徴と真逆の結果となっています。

SNSというバーチャルの世界での人間関係は、嫌な人をブロックして表示しないようにできたり、匿名性が高いという特徴があります。あくまで推測の域を出ませんが、現実では男らしさ、女らしさに従った自己呈示が求められているのに対し、バーチャルの世界では現実の自分と違った自己呈示をしやすいのかもしれません。

承認欲求と不安に関する心理学的研究

承認欲求はどの人にも備わっているとされる基本的な欲求の一つですが、不安に関連していることがあります。中でも、対人関係において抱える不安「対人不安」に影響を与えると考えられています。

対人不安があまりにも強い場合、強い不安は対人関係を避けるような回避行動を導き、学校や会社に行けないというような社会不適応につながってしまう恐れがあります。

これまでの承認欲求に関する研究では、拒否回避欲求が対人不安を促進し賞賛獲得欲求が対人不安を抑制するという働きがあることが指摘されています。

こうした研究について詳しくみていきましょう。

社交不安と承認欲求

社交不安とは対人不安の1つです。所謂あがり症のことで、人前で何かをするときに強い緊張や不安を感じることを指し、次の2つから構成されています。

  • 対人交流に対する不安:人と交流するその場面そのものが苦手で不安を抱く
  • 対人交流場面における効力感の低さ:人前でうまく振舞うことが出来ないかもしれないという不安を抱く

これらは多かれ少なかれ誰しもにあることですが、「職場にいけない」「体調を崩す」「パニックになる」など社会適応に支障をきたすまで発展すると、社交不安障害となってしまう可能性があります。

吉澤(2020)は「他者に対し特定の印象を与えたいが、思い通りの結果になるか疑わしい時に生じる」という社交不安が生起するメカニズムに着目し、承認欲求と評価への恐れ、社交不安との関連を検討しました。

研究の結果では、以下のことが示されました。

  • 拒否回避欲求が高いほど対人交流場面そのものに不安を抱きやすい
  • 賞賛獲得欲求が高いほど対人交流場面における効力感は低くなりにくい

拒否回避欲求が高い、つまり人からの否定的な評価を避けたいと思っている人ほど、人との交流場面に不安を抱きやすいというのは理解しやすいでしょう。

一方、賞賛獲得欲求が高い、つまり肯定的な評価を求める人ほど、人との交流場面での効力感が低くなりにくいというのは、理解がしにくいかもしれません。

効力感が低くなりにくい=人前でうまく振舞うことが出来ないかもしれないという不安を抱きにくい、ということですが、人前で自分のすぐれた面をアピールしようとするほど、人前で失敗したときに恥をかくリスクは高まるはずです。

この結果の解釈としては、賞賛獲得欲求の高い人は同時に自信があるという特徴を併せ持ち、そのため、人との交流でうまく振舞えないかもしれないという不安が生じにくい、といったことが考えられます。

承認欲求のタイプと対人不安

ここまで賞賛獲得欲求と拒否回避欲求を分けてご紹介してきましたが、実際には、賞賛獲得欲求もしくは拒否回避欲求のみという場合はあまりないでしょう。現実は賞賛獲得欲求と拒否回避欲求が拮抗しながら作用していることが考えられます。

そこで、佐々木ら(2001)は賞賛獲得欲求の高低と拒否回避欲求の高低によって次の4群に分け、それぞれの対人不安の傾向を検討しました。

  • 両高群(賞賛獲得欲求高×拒否回避欲求高)
  • 賞賛獲得欲求高×拒否回避欲求低群
  • 賞賛獲得欲求低×拒否回避欲求高群
  • 両低群(賞賛獲得欲求低×拒否回避欲求低)

各群における対人不安傾向の比較を行った結果、賞賛獲得欲求低×拒否回避欲求高群のみが他の群よりも対人不安傾向が強く、そのほかの群では統計的に有意な差が確認されませんでした。

つまり、拒否回避欲求が低いときには対人不安の程度には影響を及ぼしません。しかし拒否回避欲求が高いときには、

  • 賞賛獲得欲求の低い場合:対人不安が強くなる
  • 賞賛獲得欲求の高い場合:対人不安が見られない

ということです。

このことから、賞賛獲得欲求の高低が対人不安に影響を及ぼしており、賞賛獲得欲求は対人不安を生じにくくする(抑制する)ことが考えられます。

これは先に紹介した吉澤(2020)の賞賛獲得欲求が社交不安に抑制的な働きをするという知見とも一致しています。

承認欲求を学ぶための本

承認欲求について学べる本についてまとめました。

人間性の心理学―モチベーションとパーソナリティ

created by Rinker
¥5,500 (2021/09/27 13:47:15時点 Amazon調べ-詳細)

欲求の5段階説で第4段階の欲求である承認欲求。

その理論を唱えたマズローが書いた本書はこれから承認欲求に関して学びたい初学者が手に取るべき一冊です。

欲求の5段階説では低次の欲求が満たされることではじめて次の欲求が表れるという前提に立っているため、他の段階の欲求に関しても併せて学んでおきましょう。

承認欲求―「認められたい」をどう活かすか?

created by Rinker
¥1,730 (2021/09/27 03:37:37時点 Amazon調べ-詳細)

承認欲求は不適応との関連を指摘されることもありますが、「認められたい」という思いは大きなモチベーションとなることもあります。

本書ではそんな承認欲求をビジネスの場面でどのように扱うべきなのかを認められたい会社員、認める立場の管理職とそれぞれの視点に立ちながら紹介しています。

人に認められる喜びに振り回されないこと

社会的動物である人間が、他者と良好な関係を築こうとする承認欲求は欠かせないものであるのは明白です。

しかし、過剰な承認欲求に導かれた行動が他者を傷つけるものであったり、脆い自尊心を創り上げているとすればそれは不適応的でしょう。

マズローが述べている高次の承認欲求のように、自分の中の喜びや達成感に焦点をあてて行動を起こし、その結果として他者からも認められる健全な承認欲求が望ましいといえます。

参考文献

  • 鈴木公啓・菅原健介(2014)『承認欲求と種々のデモグラフィック要因:―性別、年齢、体型、結婚、そして職業―』東京未来大学研究紀要 7(0), 89-99
  • 鈴木公啓・本田周二(2009)『承認欲求の賞賛獲得欲求と自己愛の賞賛獲得欲求 : この2つは何が違うのか?』日本パーソナリティ心理学会発表論文集 18(0), 92-93
  • 加納寛子(2019)『承認欲求とソーシャルメディア使用傾向の関連性』情報教育 1(0), 18-23
  • 吉野岳(2008)『SNSのアクセスを高める要因としての賞賛獲得欲求・拒否回避欲求の検討』日本青年心理学会大会発表論文集 16(0), 34-35
  • 吉澤英里(2020)『承認欲求と評価への恐れが社交不安に及ぼす影響』社会心理学研究 36(1), 10-15
  • 佐々木淳・菅原健介・丹野義彦(2001)『対人不安における自己呈示欲求について : 賞賛獲得欲求と拒否回避欲求との比較から』性格心理学研究 9(2), 142-143

関連記事

    • この記事を書いた人

    t8201f

    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

    -日常生活への応用

    © 2020-2021 Psycho Psycho