バイオフィードバック療法とは?やり方や効果についてわかりやすく解説

2021-09-11

私たちは、日々多くのストレスや緊張に曝されており、意識的にリラックスする時間を持つことが大切であると言われています。

では、リラックスした状態とは一体どのような状態を指すのでしょうか。一般的には、自律神経(内臓や筋肉、血管など体内の活動を調整する神経)のうち「副交感神経」の働きが優位になっている状態がリラックスした状態であると考えられています。

しかし、自律神経の働きは実際に見て感じることが出来ず、捉えにくいものです。そのため、自律神経の作用による身体の反応を計測し、データとして捉えることで自律神経の働きを把握しようとします。この方法をバイオフィードバックと呼びます。

そして、このバイオフィードバックを活用し、心身の不調の改善を目指す手法がバイオフィードバック療法です。ここでは、バイオフィードバック療法とは何か、バイオフィードバック療法のやり方や効果などをわかりやすく解説します。

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バイオフィードバックとは

バイオフィードバックとは、心拍数や血圧、脳波などの身体反応を測定し、数値やグラフなど知覚できる情報として返す(フィードバックする)ことによって、自身の身体の変化を捉え、コントロールしていく方法を指します。

自分では認識しにくい身体の変化が、目で見える形として表れるため、身体の状態の理解が進み、より良い状態へと調整できることが期待されます。

バイオフィードバックは、自律神経失調症や心身症の改善、リラクセーションの促進など心理療法に用いられているほか、様々な領域で活用されています。

例えば、スポーツの領域においては、緊張が大きいと身体に力が入って思うようなパフォーマンスが発揮できないことから、精神状態が身体に及ぼす影響を分析し、緊張をコントロールして本来の能力が発揮できるよう目指すといった心身の管理などに活用されています。

その他、リハビリテーションの領域においても、筋電図バイオフィードバックといった、自分の筋緊張状態を確認しながらトレーニングしていくことなどに役立てられています。

バイオフィードバック療法とは

バイオフィードバックを疾患の治療や症状の緩和に活用したものがバイオフィードバック療法です。

身体の変化を客観的に捉えることができる特徴から、心身症(心理社会的ストレスが関係して発症する身体的な疾患)や自律神経失調症(自律神経のバランスが崩れることで起こる様々な症状)などに用いられています。

また、身体反応を見ながら不安感や緊張をコントロールするトレーニングも可能となり、不安障害などにも活用されています。

そのほか、バイオフィードバック療法単体ではなく、自律訓練法や漸進的筋弛緩法などのリラクセーション法と併せて用いられることも多いです。

リラクセーション法によって身体反応を引き起こしながら、バイオフィードバックで身体の変化を測定することで、変化を客観的に確認することができ、意識的にリラックスした状態が作りやすくなると考えられます。

◆自律訓練法とは

以下の「公式」と呼ばれる身体の状態を感じる言葉を唱えながら、自己暗示を掛けていき、身体の変化を感じることでリラックス状態を作り出す方法です。

背景公式 「気持ちが落ち着いている」
第1公式 「両手両足が重たい」
第2公式 「両手両足が温かい」
第3公式 「心臓が規則正しく打っている」
第4公式 「楽に息をしている」
第5公式 「お腹が温かい」
第6公式 「額が気持ちよく涼しい」

>自律訓練法とは?やり方や効果、注意点と学べる研修・書籍について解説

◆漸進的筋弛緩法とは

各部位の筋肉に60~70%くらいの力で力を入れて緊張させた後(10秒程度)、力を抜いて弛緩する(15~20秒程度)といった基本動作を、顔・首・肩など各部位に順次行います。

一旦筋肉を緊張させてから、筋肉を緩めることで、その違いが体感しやすくなり、リラックス状態に導くことが期待されます。

> 漸進的筋弛緩法(PMR)とは?やり方や効果、学べる書籍について解説

バイオフィードバック療法のやり方

様々な測定機器を用いて、身体反応(心拍数、血圧、脳波、筋肉の緊張等)の情報を測定し、データとして本人が意識できる形として提示します。

そして、示されたデータを確認しながら、自分がどのような状態で緊張し、リラックスしているときはどのような状態であるかなどを客観的に認識し、自らで望ましい状態を作っていけるようトレーニングする方法がバイオフィードバックです。

回数を重ねていくうちに、スムーズに望ましい状態が作りやすくなり、最終的には機材を使わなくても自身でコントロールすることができるようになると考えられています。

また、リラクセーション法に取り組むクライエントに測定機器を接続することで、どれくらい訓練が進んでいるかを明確化し、トレーニングの手掛かりとすることもできます。

筋電図を用いて筋肉の動きを記録し、筋肉が緊張しているとき、緩んでいるときを把握しながら筋弛緩法を進めたり、心拍や末梢皮膚温を測りながら自律訓練法の効果を測ったりするなどが挙げられます。

バイオフィードバック療法の効果

バイオフィードバックは目に見えない精神性や身体の反応(自律神経の働きなど)を見える形に表すことで自身の状態をコントロールしやすくさせ、心身症や自律神経失調症をはじめ多くの疾患や不調の治療に有効性が認められています。

さらに、数値やグラフなどの指標として表れるといった特徴から、目標が明確に立てやすくなったり、効果や進展が確認しやすくなったりすることから、治療に対するモチベーションの維持・向上にも役立つものと思われます。

バイオフィードバック療法について学べる本

最後に、バイオフィードバック療法について詳しく学ぶ上で参考になる書籍を紹介します。

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バイオフィードバックとは何かといった理論が分かりやすくまとめられています。さらに、自律訓練法や漸進的筋弛緩法などのリラクセーション法との組み合わせによる活用法も紹介されており、実践的なイメージが持てます。

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バイオフィードバックの理論が押さえられているほか、それぞれの疾患や症状への実践について、スポーツやビジネスへの活用事例などについても分かりやすくまとめられています。

心身の変化を可視化して、セルフコントロールに活かす

バイオフィードバックは、心身の変化を客観的に把握することに役立ちます。

リアルタイムで、力の入れ方や抜き方、呼吸のリズムなどを確認しながら、調整していくことで、自身の身体をコントロールする助けとなります。

自分でコントロールできる実感が得られることはモチベーションの向上につながり、目標や進捗が目に見える形にも表れますので、前向きにトレーニングに取り組むことができるものと考えられます。

最近では、スマートフォンのアプリなどでも、様々な身体データを測定することが可能となってきており、セルフトレーニングに活用しやすくなっています。興味を持たれた方は是非試してみてください。

参考文献

竹林直紀 編著  神原憲治・志田有子 著(2011)『補完・代替医療バイオフィードバックとリラクセーション法』金芳堂
廣田昭久 著(2016)『バイオフィードバック療法のための基礎知識』バイオフィードバック研究43(1)27-32, 2016
都田淳・端詰勝敬 著(2016)『心身症の治療におけるバイオフィードバック療法の実践』バイオフィードバック研究 43(1) 33-37, 2016
佐瀬竜一 著(2016)『自律訓練法とバイオフィードバック』バイオフィードバック研究 43(2)71-75, 2016
日本バイオフィードバック学会ホームページ(2021/9/1参照)

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    • この記事を書いた人

    blue_horizon

    民間企業在職中に心理カウンセラーを志し、心理学を学び始める。臨床心理士指定大学院卒業後は、司法及び産業領域の心理職として稼働。公認心理師・臨床心理士。

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