具体的操作期とは?特徴や形式的操作期との違い、保存の概念について解説

2022-07-27

人間は身体だけでなくこころも発達することは広く知られており、記憶や思考などの認知機能も発達段階によって質的に異なることが知られています。

今回はピアジェという学者の提唱した認知発達理論における具体的操作期を取り上げます。具体的操作期とはいったいどのようなものなのでしょうか。その特徴や形式的操作期との違い、保存の概念などを具体例でわかりやすく解説していきます。

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具体的操作期とは

具体的操作期とは、ピアジェの提唱した認知発達段階論で示された発達段階の1つです。

ピアジェの認知発達段階論

ピアジェの提唱した認知発達段階論では、次のような4つの段階を経ると考えられています。

【ピアジェの認知発達段階論】

  1. 感覚運動期
  2. 前操作期
  3. 具体的操作期
  4. 形式的操作期

この発達段階のうち、第3段階に位置するのが具体的操作期であり、おおむね6~7歳から12~13歳の頃であるとされています。個人差はありますが、具体的操作期が成立するのはおよそ小学生のころです。

具体的操作期の特徴

具体的操作期は、論理的思考の獲得時期です。

具体的操作期の具体とはその名の通り、具体的な事物のことを指しており、操作とは実際に身体を動かさなくても頭の中で情報処理を行うことを指しています。

つまり、具体的操作期は現実に存在する具体的事物を対象とした論理的思考を行えるようになる時期であると言えます。

例えば、就学前の子どもの多くはモノを数えたり、足し算をするときには指を折って計算を行わなければなりません。しかし、小学生になると、指を折らなくても計算が行えるようになります。

身体を使わなくても、頭の中のみで思考を行えるようになるのです。

保存の概念と具体例

具体的操作期にみられる大きな特徴として、保存の概念の獲得が挙げられます。

保存の概念とは、姿かたちが変わってもモノの量は変化しないことを理解することを指します。

保存の概念をテストする課題

保存の概念の成立を表す有名な課題として、コップに入った液体の体積の推論が挙げられます。

この課題では、底面積の異なる透明な細いコップと太いコップの2種類を用意します。そして、太いコップに入れた液体を細いコップへの移し替えます。

そうすると、太いコップにあった時よりも、底面積の小さい細いコップの水面は上昇するでしょう。

大人であればコップのなかの液体は単に移し替えられただけであることがわかるため、体積は変化していないことが理解できます。

しかし、具体的操作期以前の子どもは水面が上昇したことにより、体積が増えたと勘違いしてしまうのです。

このように、形が変わっても体積は変わらず保たれたままであるということを理解することができるのが具体的操作期の特徴なのです。

具体的操作期と形式的操作期の違い

具体的操作期は具体的な事物に対し思考が行えるようになる認知発達段階です。この次の段階こそが形式的操作期であり、およそ12歳以降であると言われています。

それでは具体的操作期と形式的操作期の違いは何なのでしょうか。

形式的操作期では、思考の対象が具体的な事物でなくても成立するという特徴があります。

例えば、算数の問題で、「リンゴはバナナよりも価格が高い。メロンはリンゴよりも価格が高い。この中で最も価格が高いものは何か?」という問題があったとしましょう。

この時、実際にリンゴとバナナとメロンが目の前にあり、それぞれに価格が提示されている状況であれば、具体的操作期の子どもも値段を見比べ正しく回答することはできるでしょう。

しかし、形式的操作期に達すると目の前に思考の対象が存在していなくても論理的思考を行うことができるのです。

このように、形式的操作期では大人のような抽象的な推論を行うことのできるという点で、具体的操作期と大きく異なると言えるでしょう。

具体的操作期について学べる本

具体的操作期について学べる本をまとめました。

初学者の方でも読み進めやすい入門書をまとめてみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみてください。

発達心理学ガイドブック――子どもの発達理解のために

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具体的操作期について学ぶとき、その発達段階のみを学ぼうとしても、子どもの発達像はうまくとらえられません。

そのため、ピアジェの提唱した発達の流れについてしっかりと押さえておく必要があると言えるでしょう。

ピアジェの理論を簡潔にまとめてある本書から他の発達課題との違いを理解し、具体的操作期とはどのような特徴を持っているのかを学びましょう。

学力を無理なく伸ばす花まるママのらくらく家庭学習術 5歳からはじめる「楽学」のすすめ 9歳の壁・つまずきしらずの工夫満載!

具体的操作期にみられる現象に9歳の壁が挙げられます。

この9歳、10歳という時期は小学校低学年の前操作期から具体的操作期の過渡期を脱し、学習の内容が一気に論理的思考を求められるものであるからであるとも言われています。

ぜひ本書から9歳の壁に躓くことのない学習について学び、どのようにすればスムーズに具体的操作期に至ることができるのかを学びましょう。

発達段階を適切に把握することの意義

発達段階の適切な把握はなぜ必要なのでしょうか。

それは子どもとのかかわり方の重要なヒントとなるからです。

具体的操作期の子どもは具体的な事象に対してのみ、論理的な思考が可能であり、抽象的な話についてくることができません。

そのため、子どもとのコミュニケーションにおいて子どももわかるような話し方、コミュニケーションの取り方を選択することで子どもの発達をより促進することができるでしょう。

ぜひ具体的操作期に加え、そのほかの子どもの発達段階についても詳しく学んでいきましょう。

【参考文献】

  •  西村泰夫(2009)『心理学論考ノート--「ヒト」はいかに「人」になるか:知性の生成変換過程とその数理構造』放送大学研究年報/ 放送大学 編 (27) 35-54
  • 中垣啓(2011)『ピアジェ発達段階論の意義と射程』発達心理学研究 22 (4), 369-380
  • 大須賀隆子(2016)『児童期の認知発達と心理発達の特徴と支援について』帝京科学大学教職指導研究 : 帝京科学大学教職センター紀要 1 (1), 161-167

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    • この記事を書いた人

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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