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エンカウンター・グループとは?目的・分類・効果を具体例と共に学ぶ

エンカウンター・グループは、参加者の成長などを目的として行われる集団療法のグループです。今回は、ベーシック(非構成的)エンカウンターと構成的エンカウンターの特徴を学びます。また、エンカウンター・グループに関する研究や、ワークショップについても見ていきます。

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エンカウンター・グループとは

そもそも、エンカウンター・グループとはどのようなものでしょうか。

ロジャーズによるエンカウンター・グループの提唱

クライエント中心療法の創始者であるロジャーズが、学生に対してグループセッションを実施したのが、エンカウンター・グループの先触れです。

エンカウンター・グループの意味と定義

エンカウンターとは、出会う事です。エンカウンター・グループは、自分や他者との出会いを通して、人間的な成長やコミュニケーションの向上を目指すグループ療法が行われる集団です。

ベーシック(非構成的)エンカウンター・グループでは自由なやりとりが行われるのに対し、構成的エンカウンター・グループでは予め用意された課題に沿って進められます。

エンカウンター・グループの目的

エンカウンター・グループの目的は、メンバー同士の出会いを通して自己理解や他者との関係を学ぶ事です。

ベーシックエンカウンター・グループでは、主に深い人間関係を通して感じられる自己受容を体験する事が目的とされる場合が多いようです。下田(2015)は、ベーシックエンカウンター・グループは、「『人と人が心を開いて共に居る』ことを目指すものである、と考えるとよいのではないか」と述べています。

これに対し、構成的エンカウンター・グループでは、主にサイコエデュケーション(心理教育)を目的をしたものが多いようです。

つまり、ベーシックエンカウンター・グループでは「Being」がより重視され、構成的エンカウンター・グループでは「Doing」が重視されると言えるのではないでしょうか。

T(トレーニング)グループとエンカウンター・グループの違い

ロジャーズがベーシックエンカウンター・グループを始めた頃、社会心理学者のクルト・レヴィンがT(トレーニング)グループを始めました。

Tグループは元々、指導者の訓練(リーダーシップトレーニング)のために企画されたプログラムでした。

一方、ロージャーズの創始したベーシックエンカウンター・グループの当初の目的は、カウンセラーの養成でした。ロジャーズの想定するカウンセラーで重視されるのは、リーダーシップではなく、自己一致や受容、共感です。

このことからも、Tグループとエンカウンター・グループの違いが想像できます。

ロジャーズが訓練(トレーニング)という言葉を嫌っていた事は、ロジャーズの次の言葉からもわかります。

<訓練>は、職業的に使用することができるような何かの商売か、芸術か、仕事に熟達させることを意味している。しかし、人は決して個人を人間に<訓練>することはできない

(ロジャーズ,1973)

このような考えから、ロジャーズはグループでカウンセラー的役割を果たす存在を、リーダーではなくファシリテーター(促進者)と呼んだのです。

ベーシック(非構成的)エンカウンター

ここからは、ベーシック(非構成的)エンカウンターについて見ていきます。

実施方法

ベーシックエンカウンターは、ファシリテーターとその他のメンバーから構成されます。

ファシリテーターは、メンバーと共に過ごしながら、メンバーの心理的成長を見守る役割をします。ファシリテーターは、自分の自己一致の状態を常に確認しつつ、グループで起きている事に心を開いてそこに居続けようとします。

ベーシックエンカウンターでは、ファシリテーターを含めた10人程度のメンバーが数日間合宿を行います。

最も重視されるのは、メンバーが安心してそこにいられることです。

具体例

松浦(2012)は、ベーシックエンカウンター・グループの効果について調査をしています。

メンバーは大学生13名とファシリテーター1名です。3泊4日で、約3時間のセッションが全9回行われました。

1日目2日目3日目4日目
受付・オリエンテーション起床・朝食など起床・朝食など起床・朝食など
→第1セッション→第3セッション→第6セッション→第9セッション
→夕食・入浴等など→昼食など→昼食など→昼食など
→第2セッション→第4セッション→第7セッション→振り返り・解散
→夕食・入浴など→夕食・入浴など
→第5セッション→第8セッション

これらのセッションを通して、他者内面の理解と他者受容が促進されました。

このことから、ベーシックエンカウンターが、カウンセラーの3条件の中でも「受容」と深い関わりがある、と考察されています。

メリット

ベーシッエンカウンターのメリットとデメリットはどのようなものでしょうか。

まず、メリットを考えてみましょう。ベーシッエンカウンターでは、課題をこなすことではなく、自分自身や人との関わりを感じながらその場にいる事に専念できるため、メンバー間の絆が深まりやすくなります。

じっくりと自分に向き合う事ができるため自己理解が深まり、受容的な雰囲気の中で安心して自分を表現するという体験が可能となります。

受容してもらい、傾聴してもらう経験を通して、参加者がファシリテーターとしての能力を身につけて行く事もできます。

デメリット

対して、ベーシックエンカウンターのデメリットは、適用が限定的な事です。

まず、ベーシックエンカウンターで重要なファシリテーターは、高い傾聴能力が必要とされます。また、時間も長くかかり、実施場所も長時間メンバーが快適に過ごせるだけの場所が必要となります。

加えて、ベーシックエンカウンターでは言語的コミュニケーションを主な手段とするため、対象年齢は主に大学生以上とされる事が多いようです。

構成的エンカウンター

次に、構成的エンカウンターについて見ていきます。

実施方法

心理学者の國分康孝が提唱した構成的エンカウンターでは、リーダーが中心となってプログラムを進めていきます。

リーダーは予め、実施する課題の内容や時間、プログラム中の過ごし方などを細かく決めておきます。

具体例

構成的エンカウンター・グループを、国語教師が授業に活かした例があります。

西原(1992)(國分(1992))は、「竹取物語」を用いて教師と生徒、生徒と生徒が対話をする過程で、次の6つの事を繰り返し体験させています。

  1. 本音を知る
  2. 本音を表現する
  3. 本音を主張する
  4. 本音を受け入れる
  5. 友達に受け入れられた自分を知る
  6. 友達に積極的に関わる

教師や他の生徒との対話を通して、生徒一人一人が古典「竹取物語」と対話をしたと述べられています。

メリット

構成的エンカウンターのメリットはどのようなものでしょう。

國分(1992)は、自らが構成的エンカウンターを提唱する主たる理由を5つ述べています。

  • 所定の時間内に収められること。
  • 参加者の心的外傷を予防しやすいこと。
  • リーダーはプロのカウンセラーでなくても可能であること。
  • 多人数のグループにも活用できること。
  • リーダーは支配的な人物が適しているため、教師や企業人の中から容易に見つけやすいこと。

デメリット

構成的エンカウンター・グループでは、人よりも課題そのものを重視するため、出会いそのものは浅くなりがちです。

また、リーダーが提示する課題をこなす能力が参加者に要求されるため、その能力やエネルギーのない参加者にとっては辛くなる事も考えられます。

エンカウンター・グループの効果に関する研究

エンカウンター・グループの効果に関しては、様々な研究があります。

本山(2012)は、高校生に3日間のグループ・エンカウンターを行った結果、自己肯定感が高まり、その効果が3ヶ月後まで継続したと報告しています。

エンカウンター・グループのワークショップ

エンカウンター・グループのワークショップをご紹介します。

人間関係研究会

50年の歴史を持つ団体です。

コロナウイルスによる感染拡大により、現在は中止となっているワークショップもありますが、元来は大阪や名古屋など、各地でワークショップが開催されています。

日本教育カウンセラー協会

北海道、富山、埼玉など、各地で構成的エンカウンターのワークショップを開いています。やはりコロナウィルス感染拡大により、中止となっているものが多いようです。

エンカウンター・グループについて学べる本

エンカウンター・グループについて学べる本をご紹介します。

構成的エンカウンターの提唱者、國分氏による本「構成的グループ・エンカウンター」

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國分氏が編著者となり、様々な著者が学校や企業における実践例を解説している本です。

気軽にファシリテーターを実践する「たった5分でクラスがひとつに!学級アイスブレイク」

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学校やセミナーで気軽に使える、居心地の良い集団作りに役立つヒントが載っています。

グループのパワーを借りてみる

任されたクラスやチームの運営が上手くいかない時、自分の能力のせいにして落ち込んだことはありませんか?

そんな時こそ、グループのメンバーの力を借りてみるのです。肩の力を抜いて、メンバー同士が自ら成長させ合う力を信じてみます。

メンバーがあなたの指揮棒から視野を広げて、お互いのリズムを合わせようとし始めた時、心地の良いメロディーが生まれてくるかもしれません。

参考文献

江越喜代竹(2016) たった5分でクラスがひとつに!学級アイスブレイク 学陽書房

カール・ロジャーズ 畠瀬稔・畠瀬直子(訳)(1973) エンカウンター・グループ 人間関係の原点を求めて ダイヤモンド社

板口典弘・相馬花恵(編著者)(2017) ステップアップ心理学シリーズ 心理学入門 こころを科学する10のアプローチ 講談社

國分康孝(編者)(1992) 構成的グループ・エンカウンター 誠信書房

下田節夫(2015) エンカウンター・グループ  [全訂]ロジャーズークライアント中心療法の現在,116-127 村瀬孝雄・村瀬嘉代子(編著)日本評論社

松浦光和(2012) Basic Encounter Group経験の効果についての実証的な研究 研究論文集114号

本山智敬(2012) 高校生を対象としたエンカウンター・グループの効果:参加者の個人プロセスとの関連から 福岡大学研究部論集B:社会学編 5,35-44

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    • この記事を書いた人

    こころ

     臨床心理学・実験心理学等を学んだ後、心理カウンセラーとして勤務。現在はライターとして活動中。

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