忘却曲線とは?忘却の主要理論から復習に最適なタイミングを解説

2021-12-20

勉強や仕事をしていて「もっと効率的に記憶できれば良いのに」と思ったことはありませんか。

心理学の研究では記憶も対象となっており、古くからどのようにして人間は忘れていってしまうのかは追及されてきました。

今回はそのような研究の1つである忘却曲線を取り上げます。忘却に関する有名な理論やエビングハウスやウォータールー大学の忘却曲線を取り上げ、最適な復習のタイミングを考えていきましょう。

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忘却曲線とは

忘却曲線とは、人間の記憶が失われていく時系列をグラフで表したものです。

人間の記憶は、記銘・保持・想起という3段階を経て思い出されますが、この3段階のいずれかで失敗が起き、想起が出来ないことを心理学では忘却と呼びます。

そして、記憶の保持量を縦軸、時間を横軸として忘却の起こっていく時間経過をグラフとして可視化したものが忘却曲線なのです。

忘却に関する主要理論

それでは忘却とはどのようにして起こるのでしょうか。

実は明確に、どのようにして忘却が起こるのかは解明されていませんが、いくつか有力な説が提唱されています。

主要なものとしては、以下が挙げられます。

  • 記憶の減衰説
  • 記憶の干渉説
  • 検索失敗説
  • 検索誘導性忘却説

記憶の減衰説

記憶の減衰説とは、大脳に保管されている記憶情報が時間経過とともに徐々に薄れることで、バートレットという心理学者により提唱されたものです。

これは、ある事柄を記憶させて、一定の期間を開けた後に覚えていることを再生させる実験を行ったところ、記憶から再生までの時間を長くするほど再生率が低下したという結果から見出されました。

記憶の干渉説

記憶の干渉説とは、記憶する事柄に対し、別の記憶が干渉することで、再生が失敗する説のことを指します。

例えば、よく睡眠中に記憶が定着することは指摘されますが、実際にジェンキンスとダレンバックという学者は睡眠をとった群と取らない群のどちらが忘却しやすいかを検討したところ、睡眠をとらないほうが忘却しやすかったという結果が示されました。

そして、睡眠中は外部からの情報の取入れが少なくなるためであると考え、記憶したい情報を他の情報が干渉することによって記憶の失敗が起こるという干渉説が提唱されたのです。

なお、記憶の干渉には次の2種類があります。

  • 順向干渉:既に記憶されている古い記憶が新たな記憶に干渉すること
  • 逆向干渉:新しく覚えようとする情報が古い記憶に干渉すること

検索失敗説

検索失敗説とは、保持されている記憶情報が消失したのではなく、それをうまく見つける(検索する)ことができず、思い出せないために、忘却が生じるとする説です。

心理学実験から、記憶に関わる何らかの手がかりが想起を促進することが分かっていますが、この適切な手掛かりを見つけることができないために、記憶情報の再生ができないとされます。

検索誘導性忘却説

検索誘導性忘却とは、ある記憶を思い出そうと保持されている記憶情報の中から検索をしていることに伴い、それと似ていたり、関連する情報の想起が抑制される現象のことを言います。

これは、思い出そうとするターゲット項目と同じカテゴリにまとめられている(例えば、リンゴ、レモン、イチゴは果物カテゴリー)対象は、検索に用いる手がかりも同様であり、検索に必要な資源をターゲット項目の検索によって奪われてしまうためだと考えられています。

エビングハウスの忘却曲線

このような様々な忘却に関する理論がある中で、忘却曲線は減衰説に従って忘却が起こっていく流れをまとめたものになります。

忘却曲線の中でも最も有名なエビングハウスの忘却曲線は、記憶力が正常な健常者に対し、無意味綴りを記憶させ、時間経過に沿ってその際成立を測定し作成されました。

出典:永田ら(2011)『記憶障害』より

この曲線はいったい何を表しているのでしょうか。

この曲線によれば、20分後に残っていた記憶は58.2%と忘却が急激に起こり、1時間後には44.2%、9時間後には35.8%、1日後に33.7%まで減少します。

それ以降も記憶の低下は緩やかになり、6日後には25.4%、1か月後には21.1%が保持されているという状態だったことがこの図から読み取れます。

ウォータールー大学の忘却曲線から学ぶ最適な復習のタイミング

しかし、エビングハウスの実験は、自身の記憶の保持率というスモールサンプルで、日常的に触れることのない無意味綴りを使用しているということから現実の忘却の様相を反映していないのではないかと多くの批判を集めました。

そこで、カナダのウォータールー大学は、1時間の講義を行った後、時間経過とともにその内容が失われていく様子を次のような曲線で示しました。

出典:University of Waterloo『Curve of Forgetting

この図の左端は講義を開始する時点を示しており、講義が進んでいくことで記憶がどんどん増えていくことを表しています。

そして、講義修了後の記憶を100%とすると、1日の間隔が空くことで、50~80%の記憶が失われるとしているのです。

そして7日後まで、忘却は急激に起こり続け、30日後にはもともとの2~3%しか残っていなかったとのことです。

これだけであれば、エビングハウスの忘却曲線とそれほど大きく結果は変わっていないように見えるかもしれませんが、ウォータールー大学の研究の興味深いところは、復習の機会を設けると記憶の保持量はどうなるのかを検討していることです。

その結果、黄色の線で示されているように、1日後に10分間、1週間後に5分、30日後に2~4分で構わないので復習を行うと記憶量の減少を抑えることができるとしています。

効率的な勉強を考えている方は、この忘却曲線から見出された科学的な復習を行ってみると良いのではないでしょうか。

忘却曲線を学ぶための本

忘却曲線を学ぶための本をまとめました。

脳が認める勉強法

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忘却曲線に興味がある方の多くは、最適な記憶や勉強の方法にご興味があるのだと思います。

脳科学に基づいた勉強法をテーマに掲げる本書は、なぜ忘却が起こるのかというメカニズムから最適な勉強法を提案しています。

試験勉強、テスト勉強に取り組まれている方は手に取ってみるのはいかがでしょうか。

もの忘れの脳科学 最新の認知心理学が解き明かす記憶のふしぎ (ブルーバックス)

忘却で一番日常的な現象と言えば、もの忘れが挙げられます。

それでは、もの忘れとはどのようにして起こるのでしょうか。

認知心理学の記憶研究を総合的に紹介した入門書であるこの本を読んで詳しく学んでみましょう。

忘れることで適応を保つことも

忘れることはネガティブなことだと思われがちですが、実は人間は忘れるからこそ、こころの研究を保てているという視点もあります。

例えば、対人間のトラブルがあったとしても、時間が経つことで、その出来事に付随するリアルな感情などの情報が忘れられていくこそ仲直りが成立するのでしょう。

そのため、覚えておきたいことを集中して記憶に定着させるためにはどうすればよいのかを取り扱っている認知心理学の研究についても深く学びましょう。

【参考文献】

  • 丹藤克也・仲真紀子(2007)『検索誘導性忘却の持続性』心理学研究 78(3), 310-315
  • 長田乾・小松広美・渡邊真由美(2011)『記憶障害』認知神経科学 13(1), 118-132
  • University of Waterloo『Curve of Forgetting』Curve of Forgetting | Campus Wellness | University of Waterloo (uwaterloo.ca)

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    • この記事を書いた人

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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