小学生という学童期は友達を作り遊びの中で多くのことを学びながら発達していきます。その時期に顕著にみられるものにギャングエイジというものがあります。
それではギャングエイジとはいったいどのようなものなのでしょうか。その特徴や表れる時期、接し方のコツ、いじめとの関連やその対応などについてわかりやすく解説していきます。
目次
ギャングエイジとは
ギャングエイジという概念はアメリカの社会学者スラッシャーによって提唱されました。
小学校高学年ごろからみられるこの現象は、男の子だけもしくは女の子だけの同年代のグループを作りその中で多くのことを学んでいきます。
このような集団もしくはその集団をめぐる現象のことをギャングエイジと呼ぶのです。
ギャングエイジが表れる時期
ギャングエイジは児童期と青年期の境界となる小学校高学年から中学生ごろに形成されるとされています。
この時期は自我の芽生えにより親への自立や反抗期ともなる時期と重なります。
家庭という親の作った家族集団の中で過ごしていた子どもも、成長により家庭から離れます。そのとき、いきなり新たな集団に飛び込むのではなく、自分と似た境遇の仲間たちと親密になるのです。
その後のアイデンティティの確立に備えて、多くのことをギャンググループのなかで学ぶのです。
ギャングエイジの特徴
ギャングエイジにみられる特徴は次のようなものが挙げられます。
【ギャングエイジにみられる特徴】
- 家族から離れて、自分たち独自の自由な世界を作ろうとする
- 家庭と学校の間に存在する間隙集団であり、他の集団との対立や軋轢を生むこともあるため葛藤集団という性質をもちうる
- 集団内でのスポーツや遊び、勝負(時には非行)などの多様な活動を通じて子どもたち同士の連帯や協働の精神を養う経験の場となる
- 子どもにとって家庭や学校にはない精神的安定を得られる場になる
- 独立性や自律性がみられ、それが度を過ぎると反社会性へと移行する危険性を持っている
このようにギャングエイジは同姓、同年齢の子どもたちの集団であり、自分たちの独自のルールのある集団の中で活動を行うことによって連帯や協働の精神を育むことができるのです。
もっとも代表的なギャングエイジの例を挙げると、スティーヴン・キング原作の映画「スタンド・バイ・ミー」が挙げられるでしょう。
秘密の小屋に集まる少年4人が協力しながら旅をする姿には少年期特有のギャングエイジ的特徴がよく見てとれます。
ギャングエイジの経験がもたらすもの
それではギャングエイジの経験からどのようなことが得られるのでしょうか。
伊藤ら(2015)は小学校5年生の頃のギャングエイジでの遊び経験と青年期となった時の社会性の関連を検討しています。
その結果、少年期のギャング的遊び経験は青年期の社会的スキルや集団でのリーダーシップに影響を与えることが示されています。
ギャングエイジは集団のルールが確立され、凝集性が非常に高いことが特徴です。
そのため、意見が異なる子どもたちが一つのグループとしてまとまりをもつためには、他者と衝突を避けながら意見交換をする社会的スキルや集団をうまく導くリーダーの存在が求められます。
そして、このような少年時代の遊びの中で培われる社会的スキルやリーダーシップは青年期になっても残り続けるものであり、このギャングエイジに得た経験がその後の社会性に大きな影響を与えるのです。
ギャングエイジに接する際のコツ
ギャングエイジは学校や家庭といった集団から離れ、自分たちの世界に浸ろうとする思いから起こる現象です。
仲間内だけの価値観やルールが優先されると大人に対して反抗的な態度をとったり、うそをつくような行動が目立つこともあるでしょう。
ほかにも親と一緒に出掛けることを嫌がったり、遊んでいる様子を話そうとしないということも起こるかもしれません。
しかし、このような子どもの変化は自立に向かううえでの過程で起こりうるものであり、大人は子どもを見守る姿勢をもって接する必要があります。
頭ごなしに子どもをしかりつけたり、否定すると子どもとの関係がこじれてしまう可能性もあります。
しかし、ギャング的遊びがエスカレートし、悪いことをすることはさけなければなりません。そのため、頭ごなしにしかることはせず、しっかりと子どもの意見を聞くようにしましょう。
そのうえで、間違っていることはしっかりと叱り、善悪の区別を身につけさせることが必要となるのです。
ギャングエイジといじめへの対応
ギャングエイジではグループ内のトラブルなどもうまく乗り越えることで社会的スキルを獲得していくことのできる経験の場です。
子どもたちの間でささやかな行き違いは日常的に行われていますが、それが度を過ぎてしまうといじめへと発展し、長期的なトラウマを残すような事態になってしまいかねないため、注意が必要です。
特にギャングエイジ期にはいじめの問題に気を付けなければなりませんが、それはなぜなのでしょうか。
ギャングエイジはそのつながりの強さから集団内の地位をめぐる過酷な競争が行われることもあります。
そのため、他者よりも優位な位置に立とうと攻撃や排除の行動がいじめへとエスカレートすることもあるでしょう。
また、いじめられた子は教師や保護者に知らせることが発覚した際のいじめのエスカレートや仕返しを恐れることは知られていますが、それに加え家庭や学校と距離を取ろうとするギャングエイジの心性から大人へ告げ口し、仲間を売り渡すことへの背徳感を感じやすくなってしまいます。
そのため、いじめを初期の段階で発見することが難しくなりやすいのです。
ギャングエイジのいじめを防ぐためには成長に必要な期間であると程よい距離感をとりながらも、困ったことを率直に相談できる信頼における大人の存在が欠かせません。
そのため、むやみな詮索はせず、日ごろから子どもとコミュニケーションをとり、温かく見守る姿勢が求められるのです。
ギャングエイジについて学べる本
ギャングエイジについて学べる本をまとめました。
初学者の方でも読み進めやすい入門書をまとめてみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみてください。
ギャング・エイジ―秘密の社会をつくる年頃 (1968年)
ギャングエイジは子どもにとって親や学校から離れ、独り立ちをしようとする準備期間の第一歩であるともいえます。
それまでは親と良好な関係を築いていても、干渉してこないようよそよそしくなったり反抗的な態度が見えることに混乱する方もいるかもしれません。
しっかりとギャングエイジについて学び、健全な発達で誰もが通る過程について学びましょう。
2・3・4年生がなぜか言うことをきいてしまう教師の言葉かけ
子どもがギャングエイジに突入すると、コミュニケーションのスタイルにも工夫が必要かもしれません。
仲間内でのルールが大切となり、大人のいうことに反抗してくることにまいってしまっている方もいるのではないでしょうか。
ぜひ本書からギャングエイジの子どもにスッと伝わる言葉がけはどのようなものなのかを学びましょう。
閉ざされた空間から学び取ること
ギャングエイジは大人から離れ、子どもたち独自の世界を作り上げることで協働性やトラブルへの対応、コミュニケーションなど社会的スキルを身に着ける貴重な場です。
大人から隠れて行動することに不安を感じることもあるかもしれませんが、子どもたちがしっかりと成長するために必要な機会であることは間違いありません。
ぜひギャングエイジについて詳しく学び、子どもと適切な関係性を作れるようにしましょう。
【参考文献】
- 深谷和子(1986)『いじめ--青少年の発達的危機の考察』家政学雑誌 日本家政学会 編 37 (7), p623-627
- 伊藤 崇達・光浪 睦美・王 松・久木山 健一・神藤 貴昭, ・門田 幸太郎・小石 寛文(2015)『小学校5年生時の遊び経験と青年期の社会性との関連(4)―レジリエンスに影響を与える要因―』日本心理学会大会発表論文集 79 (0), 1PM-010-1PM-010
- 谷口清(2013)『学齢期におけるいじめ・対人トラブルと発達障害 』自閉症スペクトラム研究 10 (1), 19-27