適応障害の人への接し方とは?かけてはいけない言葉を解説

2023-02-05

ストレスにさらされることが日常的にある現代において、適応障害は非常に身近な精神障害であり、身の回りの人が適応障害に罹患することも十分にあり得ます。

そのような適応障害となってしまった人への接し方はどのようにすればよいのでしょうか。職場の同僚や家族、友達、子供に対する望ましい対応やかけてはいけない言葉、相談先について解説していきます。

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適応障害とは

適応障害とは、心理社会的なストレスが原因となり、抑うつや不安、不眠、意欲の低下など多彩な症状を呈する精神障害です。

うつ病の人に対する接し方などは取り上げられることは多いですが、適応障害についてはそれほど多くありません。

適応障害の人への接し方を考えるためにはまず適応障害とはいったいどのようなもので、どのような特徴があるのかを知っておく必要があるでしょう。

抑うつ神経症と適応障害成立の契機

伝統的な精神医学の疾患分類によれば、適応障害はもともと心理的要因によって発症する神経症と呼ばれる疾患の1つでした。

神経症には強迫神経症やヒステリー、不安神経症など様々な種類がありますが、その中の抑うつ神経症と呼ばれるものがあり、これが適応障害の前身となるものであると言われています。

その後、米国精神医学会の発行する精神障害の診断と統計マニュアル第3版(DSM-Ⅲ)が登場したときに神経症という概念が見直されることとなり、抑うつ神経症に含まれていた様々な疾患が整理され、初めて適応障害という概念が生まれました。

適応障害の定義

その後2回の改訂がなされており、最新のDSM-5では、うつ病概念から独立した「心的外傷およびストレス関連障害」群の1つとして分類され、次のように定義されています。

【適応障害の定義】

はっきりと確認できるストレス因子により、3か月以上にわたり社会的機能が著しく障害されているもののうち、ほかの精神障害の基準を満たしていないもの

この定義をもう少し解説してみると、「はっきりと確認できるストレス因子により」とは、適応障害の症状を呈している人が「残業時間が多い」、「学校でいじめにあっている」などストレスを感じているであろうイベントが明確であることです。

これは、ストレスが原因となり、その症状を呈しているということを表します。

そして、「3か月以上にわたり社会的機能が著しく障害されているもの」というのは、適応障害の症状によって、「仕事に行くことに著しい苦痛を感じている」、「またいじめられるかもしれないと思い学校に行けなくなってしまった」のように、通常の社会生活を送るうえで重大な支障をきたしていることを表します。

つまり、ストレスフルなイベントによって、心身に不調をきたし、それによって健全な社会生活を送れなくなってしまう状態が適応障害であると言えるでしょう。

適応障害と新型うつ

適応障害は抑うつ症状を呈することが多いため、ストレス社会での「うつ」として取り上げられる病態の多くは適応障害であると考えられます。

精神医学での伝統的なうつ病は何もストレス因との関連によって発症・持続する病気ではなく、脳機能に異常があるため適応障害とは全く別物だと考えられています。

しかし、近年「新型うつ」という用語が用いられることも増え、その概念に混乱が生じています。

新型うつとは、正式な疾患名ではなく、様々な病態がまとめられた総称のことであり、様々なよくうつ状態が含まれています。

【新型うつに含まれる状態像の例】

  • 逃避型うつ
  • 未熟型うつ
  • ディスチミア親和型うつ
  • 職場結合型うつ

このように様々なうつ状態が列挙されることは新型うつと呼ばれる言葉が示すものはますます曖昧にしており、そこには神経症、適応障害、怠業、逃避行動、一過性のストレス反応など様々な不適応反応が含まれているとされています。

そして、新型うつはストレスとなる出来事と個人の有するストレス耐性の弱さの相互作用によって発症する、抑うつ状態であると考えることができ、その発症メカニズムや症状の類似性から適応障害と概念的な重なりが大きい状態であると言えるでしょう。

適応障害(心因性うつ状態)の特徴

もともと、適応障害は抑うつ神経症として心因性のうつとまとめられていたように、適応障害(心因性うつ)はうつ病と異なった特徴を示すことが知られています。

主な適応障害の特徴とうつ病との比較は次の通りです。

うつ病適応障害
発症年齢中年・初老に多い若年層に多い
日内変動朝は調子が悪く、夕方に向かって軽減規則性なし(気分屋)
睡眠障害必発必ずしも生じない
責任・罰の方向自責的他責的
他者依存性まれしばしば
発病前の適応良いあまり良くない
性格真面目不定(わがまま・利己的)
抗うつ薬への反応比較的良好必ずしも良くない
休養中の態度真面目オフで元気に

適応障害の人への対応とかけてはいけない言葉

適応障害の特徴をこれまで見てきましたが、その特徴は適応障害の人への対応を考えるうえでとても参考になるでしょう。

うつ病との比較で取り上げた特徴から、適応障害の人の傾向としては、ストレスとなる原因を責める他責的な態度や自分で治そうとするのではなく他者に依存する、仕事には行けないけれど気分を発散できるイベントには積極的に出かけるなどのわがまま、無責任に見える行動が見えるかもしれません。

そのため、適応障害の人が怠けているように見え、いらだちをぶつけてしまったりする可能性があるので、十分な注意が必要です。

適応障害は軽症のうつであるとしてそこまで気を使わなくても良いと考えてしまう人もいますが、適応障害の診断を受けた人がうつ病の診断を受けるまで症状が発展するケースも存在するため、十分な注意が必要となるのです。

そのため、適応障害の人にかけてはいけない言葉と適切な言葉がけについてしっかりと学びましょう。

職場の同僚に対して

職場の同僚が適応障害となった場合、なかなか休職から復帰しないことなどが考えられます。

職場から一人人員が抜けるという負担に対し、なかなか復職の姿勢が見られないことにいら立ちを感じることもあるでしょう。

うつ病の対応の基本は、まず休息をしっかりと取り、薬物療法を中心とした治療戦略のもとで行われることになりますが、適応障害は薬への反応性がそれほど良くないという報告もあるように、うつ病をベースとした治療戦略をそのまま適用することは効果的ではないという指摘があります。

場合によっては休職を認め、ほかの支援を行わなかったときにかえって就労意欲のなさを助長してしまう可能性があるとされています。

そのため、早く復職するようなプレッシャーをかけるかかわりはもちろん避けるべきですが、関係が良好な上司や同僚(関係の悪い人からの連絡はかえって本人にストレスとなってしまうでしょう)から励まされる、背中を押される、出来たことを認められるようなポジティブな接し方が有効でしょう。

家族・友達に対して

家族や友達が適応障害となってしまった場合、あなたには適応障害の苦しさを吐き出してくることが大いに考えられます。

確かに本人にとって、つらい苦しみを受け止めてくれる存在は嬉しいかもしれませんが、心因性の抑うつは他責傾向、対人依存傾向がみられることに注意しなくてはなりません。

例えば、「そんな愚痴ばっかり言ってもしょうがないじゃない」などというと、本人は他責傾向から自分を理解しようとしないあなたに攻撃性を向けてくるかもしれません。

また、「いつでも愚痴を言っていいんだよ」と優しすぎる対応では、かえって愚痴を言うことに依存し、社会復帰を目指さなくなってしまうでしょう。

そのため、本人の感じている辛さに理解は示しつつ、専門機関への受診を進め、一日も早い回復をサポートする姿勢を見せるのが良いでしょう。

子供に対して

子供が適応障害となってしまった場合、学校へ行くことが出来なくなってしまうケースがあり得ます。

しかし、そのような状況で学校へ行くよう投稿刺激を与えてしまってはかえって本人を追い詰めてしまう可能性もあります。

子供は自分のストレスに感じていることをうまく言語化して伝えることが難しい場合もあるため、どのようなことがストレスなのかを問い詰めることも逆効果です。

例えば、学校でいじめにあっているなど強いストレスを感じる出来事がなかったのかを学校の先生に相談してみる、児童精神科などで遊技療法を行い、非言語的な表出体験をしてみることが有効である場合もあります。

特に自分の子供だと、親である自分の力で子供の苦しみを何とかしてあげたいと思い勝ちですが、そこは焦らず子供に温かい態度で接し、何か困ったことがあれば言ってもらえるような関係性づくりに努めるとよいでしょう。

適応障害となった場合の相談先

適応障害は「単にストレスを感じて一時的に不調になってしまっているだけ」、「本人が弱いのが問題である」と安易に考えてしまうのは非常に危険です。

適応障害はれっきとした精神障害であり、適応障害かもと思ったら、もしくは周囲にそのような人がいたら心療内科や精神科など近くの医療機関に速やかにつながなければなりません。

インターネット検索で「心療内科」や「精神科」などと入力をすると、近くの専門機関が表示されますので、無理をせず「おかしいな」と感じたら専門機関を知り、早めに相談するようにしましょう。

適応障害の人への接し方を学べる本

適応障害の人への接し方を学べる本をまとめました。

書が買う者の方でも読み進めやすい入門書をまとめてみましたので、気になる本があればぜひ手に取ってみてください。

もしかして、適応障害? 会社で“壊れそう”と思ったら

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ストレス社会において、適応障害は非常に身近な精神障害であり、その対応方法、接し方については知っておくことが非常に有益であると考えられます。

その接し方を考えるうえで、まず本書で適応障害の人が感じていることについて知りましょう。

もし、部下が適応障害になったら 部下と会社を守る方法

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職場のストレスによって適応障害、抑うつ状態になり休職・退職するケースは少なくありません。

もし職場の部下が適応障害となってしまったとき、自分のマネジメント不足なんだろうか、本人は復職できるのだろうか、会社からどのような評価を受けるのだろうか、どのように部下に接すればよいのだろうかということが頭を巡ることでしょう。

そのような不測の事態に備えるためにもぜひ職場で部下が適応障害になった場合、部下と会社を守るための方法を知りましょう。

適応障害への接し方のポイント

適応障害はうつ病のような症状を呈することがありながら、その特徴の違いから対応の仕方、接し方には注意を払う必要があるでしょう。

本人の不適応行動を助長させるような言動は控えつつ、社会復帰へ導いていくことが望ましいですが、1人で適応障害の人を抱えようとしてつぶれてしまうことは最も避けなければいけません。

ぜひ、本人に温かな接し方を心がけつつ、必要に応じて専門機関へつないであげるよう心がけましょう。

【参考文献】

  • 平島奈津子(2018)『適応障害の診断と治療』精神神経学雑誌 120 (6), 514-520
  • 井上萩乃・甲田宗良(2020)『「新型うつ」の特徴と現状に関する文献レビューと今後の研究の展望』人間科学研究 28 11-21
  • 生田孝(2014)『臨床現場における新型うつ病」について』労働安全衛生研究 7 (1), 13-21

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    • この記事を書いた人

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    臨床心理士指定大学院に在学していました。専攻は臨床心理学で、心理検査やカウンセリング、心理学知識に関する情報発信を行っています。

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